孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  女子教育再開をめぐりタリバン政権内に意見対立も

2023-04-19 23:40:03 | アフガン・パキスタン

(警察学校の卒業式で演説するアフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権のシラジュディン・ハッカーニ内相=首都カブールで2022年3月5日 【3月4日 毎日】)

【更に女性就労に制約 国連女性職員も勤務禁止に 懸念される人道支援活動の停滞】
アフガニスタン・タリバン政権が女性の教育・就労を厳しく制限していることは再三取り上げているところですが、これまでは例外的に認められていた国連女性職員にも出勤停止が及んでいるようです。

****タリバン、国連女性職員も勤務禁止に アフガン****
国連は4日、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン政権が女性のNGO勤務を禁止する措置を国連ミッションにも拡大したとして、「容認できない」と非難した。

国連アフガニスタン支援団は同日、東部ナンガルハル州で国連の女性職員の活動が禁じられたと報告した。

アントニオ・グテレス国連事務総長のステファン・ドゥジャリク報道官は記者会見で「UNAMAが、女性職員の活動を禁じる通達をタリバン暫定政権から受けた」とし、各方面から「対象は国内全土」との情報を得ていると述べた。

タリバンは昨年12月、女性が国内外のNGOで働くことを禁じたが、国連関連は対象外としていた。

ドゥジャリク氏は、書面による禁止命令は届いておらず、5日に首都カブールでタリバン側と協議して確認するとした。

グテレス氏はタリバン側の出方について「受け入れられない。率直に言ってあり得ない」と非難。国連がアフガンで2300万人を対象に行っている人道支援に女性職員は不可欠だと訴えた。 【4月5日 AFP】
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アフガニスタンのように男女の区分が厳しい社会にあっては、一般女性を対象にした業務を行うためには女性スタッフが必要になります。従って、女性職員の出勤停止は単に当事者だけの問題ではなく、女性向けの対象業務がストップすることを意味します。

国連によると現在アフガニスタンでは2830万人ほどが救命のための支援を必要としており、うち2千万人が食糧難に直面し、600万人ほどが飢え死にする危険性を抱えていると言われています。

国連は、今回の女性職員就労禁止は、そのような危機的状況にある人たちに悪影響を及ぼすと警告しています。

【タリバン政権内部に女子教育をめぐる意見対立も “あの”武闘派ハッカニ内相が女子教育再開を求める】
ここまでの話であれば、「やれやれ、タリバンの女性に対する施策は相変わらず・・・」ということになりますが、興味深いのは女性の教育をめぐってタリバン政権内で意見対立があると報じられていることです。

****アフガニスタン女子教育再開撤回 タリバン強硬派が反対****
アフガニスタンで停止が続く女子中等教育について、イスラム主義組織タリバンの最高指導者アクンザダ師が、学校で新年度が始まる3月21日からの再開方針を一部閣僚にいったん伝えたが、強硬派の反対を受け撤回したことが2日、複数のタリバン暫定政権関係者への取材で分かった。

国際社会は女子教育の制限を問題視し政権を承認していない。タリバン内部でも反発が強まっており、アクンザダ師は再開を迫る有力閣僚の反目を恐れて再開方針を伝えたとみられる。

アクンザダ師は独自のイスラム法解釈による統治徹底を図る強硬派の中心人物で、教育政策を巡りタリバン内の溝が深まっている。

複数の暫定政権関係者によると、有力派閥「ハッカニ・ネットワーク」を率いるハッカニ内相と、タリバンの初代最高指導者オマル師の息子ヤクーブ国防相、ムッタキ外相らが2月と3月中旬、アクンザダ師と計4日間にわたり協議。国際社会から孤立している現状を懸念し、日本の中学・高校に当たる女子の中等教育を再開するよう求めた。【4月2日 共同】
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もちろん、どんな政権や政治グループでもそうでしょうが、タリバンも一枚岩などでは決してなく、政権奪取以前の昔から穏健派と武闘派の対立などがありましたので、女子教育をめぐる意見対立があること自体は当然と言うべきことでしょう。

ただ、興味深いのは女子教育再開を求めたのがハッカニ内相らという点です。

ハッカニ内相はバリバリの武闘派・強硬派で、彼が率いるハッカーニ・ネットワークは、これまでアフガニスタン軍や欧米の連合軍に対する最も暴力的な攻撃に関与しており、アメリカはハッカーニ・ネットワークをテロリスト組織に指定しています。

そうしたハッカニ内相が「アメリカや国連の言うことなど無視すればよい」と言ったのであれば“さもありなん”といったところですが、逆に女子教育再開を求めたというところが“驚き”でした。

****タリバンで深まる内部対立 強硬派が異例の苦言、不安定化の懸念****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の強硬派、シラジュディン・ハッカーニ内相が最高指導者アクンザダ師を暗に批判した演説が波紋を呼んでいる。

タリバンの閣僚が公の場で身内に苦言を呈するのは異例で、アクンザダ師の独断的な姿勢に不満を抱いているとみられている。タリバン内で同調する声もあり、政治情勢の不安定化が懸念されている。

「権力を独占し、体制の評判を傷つけることが常態化している」。支持者がツイッターに投稿した動画によると、ハッカーニ氏は2月中旬に南東部ホースト州のイスラム教宗教学校の卒業式に登壇してそう訴えた。

アクンザダ師を名指しすることはなかったが、「こうした状況は容認できない」と続けた。さらに「人々の権利が奪われてはならない」と述べ、タリバン側が市民に歩み寄る必要性を訴えた。

ハッカーニ氏の発言は支持者の間では女子教育に関する政策を想定したと受け止められている。2021年8月に首都カブールを制圧して以降、タリバンは女子の中等学校の再開を延期している。容認してきた女性の大学教育も、22年12月にヘジャブが適切に着用されていないことなどを理由に停止した。

あるタリバン幹部によると、タリバン内部で女性の教育を肯定する人は少なくなく、強硬派の中でも女性の大学教育の停止には疑問を呈する声があるという。

タリバン内部では、国際社会との協調を重視する穏健派と、イスラム法の厳格な解釈に基づく統治を目指す強硬派の対立があると指摘されてきた。

ハッカーニ氏はアクンザダ師と並ぶ強硬派の一角で、米国人らが死亡したテロ事件などに関与した疑いで米連邦捜査局(FBI)から指名手配されている。米国がテロ組織に指定する「ハッカーニ・ネットワーク」を率いるハッカーニ氏はタリバンがカブールを陥落させた際にも主導的な役割を果たしたとされるだけに、今回の発言が注目を集めている。

また、アフガンメディアは2月下旬、タリバンの初代最高指導者オマル師の息子のムハンマド・ヤクーブ国防相が警察官らを前に「全能のアラーは私たちに知性を与えた。私たちは無分別に誰かに従ってはいけない」と語ったと報じた。同じく名指しは避けたものの、現体制に対する批判と捉えられている。

ハッカーニ氏らが苦言を呈する背景には、アクンザダ師とごく限られた側近の間で政策が決定されていることへの不満があると指摘されている。

22年12月に女性の大学教育が停止された後、アフガンメディア「トロニュース」は内務省関係者の話として、ハッカーニ氏とヤクーブ氏が女性教育の再開に向けて協議し、2人が南部カンダハルを訪ねてアクンザダ師とも問題を協議すると報じた。しかし、あるタリバン幹部によると「(アクンザダ師は)彼らと会おうとしなかった」という。

タリバン内には、閣僚らが参加する意思決定機関「指導者評議会」があるが、このタリバン幹部は「(アクンザダ師は)評議会のメンバーを3~5人ずつ個別に呼び寄せて意見を聞いているが、大半のメンバーの助言を聞き入れていない」と語った。

「タリバン内部でも過半数がハッカーニ氏らの意見を支持している」と語り、現在の政策決定方法に不満を抱くタリバン関係者の間で影響力を強めているとみられる。

女性の教育機会の制限を巡っては、国際社会から大きな批判を浴びただけでなく、一般のアフガン市民の間でも反感が広がった。

女性の大学教育が停止されたことを受け、抗議のためにカブール大学を辞任したバハドゥール・シャー助教は取材に対し、「私はこの国の明るい未来に貢献したいと思って教師になった。女性たちの教育が奪われてしまった今、明るい未来を思い描くことすらできない」と訴えた。

小学5年生と今年大学生になる2人の娘の父でもあり、「娘たちには勉強して自分の未来を切り開いてほしい。このまま教育を受けることも就労することもかなわなければ、彼女たちはどうなってしまうのか」と嘆く。

これまでアクンザダ師が表に出て発言したことはほとんどなく、22年7月に宗教学者らが集まった大規模な集会で演説した際も、音声のみが報じられた。

その一方で、ハッカーニ氏とヤクーブ氏が演説する様子は写真や映像とともに報じられ、ネット交流サービス(SNS)でも拡散している。

地元記者は「ハッカーニ氏とヤクーブ氏は一般のアフガン市民の共感を得ることに成功している。アクンザダ師が2人に対して何らかの措置を講じれば、自らの身を滅ぼすことになりかねない」と指摘する。

タリバンが反政府勢力だった旧民主政権時代には、内部対立によって離脱して新たな勢力を結成する幹部もいた。また、離脱した戦闘員が過激派組織「イスラム国」(IS)に合流する可能性も指摘されている。

地元記者は「現在のタリバンが直ちに内部分裂することはないとみられるが、中枢メンバーによる批判的な発言が続けば、暫定政権にとって最大の脅威になるだろう」と話した。【3月4日 毎日】
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ハッカーニ内相の言動は、最高指導者アクンザダ師とその側近に対する権力闘争的な側面もあるようですが、それだけでなく、長く民衆の中で闘ってきた経緯から、一定に民衆の望むところや現実の問題に配慮する現実主義的な面もあるのでしょう。

アフガニスタンの現状は惨憺たるもので、国際社会の支援を緊急に必要としています。

****アフガン、国民の85%が貧困層=タリバン政権奪取後1.8倍に****
アフガニスタンで昨年、生活に必要最低限の収入を下回る水準で暮らす貧困層が約3400万人に上ったことが、18日に公表された国連開発計画(UNDP)の報告書で分かった。国民のおよそ85%に当たるという。

2020年のデータでは、貧困層は約1900万人。21年8月にイスラム主義組織タリバンが政権を奪取して以降、約1.8倍に増えた。【4月19日 時事】 
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こうした現状にハッカーニ内相らが危機感を感じたとしても、あるいは「何のために闘ってきたのか」という思いを抱いたとしても不思議ではないです。もちろん、彼の心中は全くわかりませんが。

いずれにしても、上記【毎日】にあるように、タリバン政権内部に対立の火種が存在するようです。

国際社会の批判に耳をかそうとしない、また民意が反映されるような政治ステムでもないアフガニスタンにあって、女性の人権や貧困に対する対応が変わる唯一の現実可能性は、そうした内部対立からの路線変更だけのように思われますので、注目されるところです。

【タリバン政権支援を改めて示す中国 関心は自国影響力拡大だけか】
タリバン政権へ圧力をかける欧米・国連などの一方で、中国は公式にはタリバン政権を認めていないものの、改めて政権支援の考えを明らかにしています。

****中国、タリバン政権を後押し アフガン問題で立場表明****
中国外務省は12日、アフガニスタン問題に関する立場を表明する文書を発表した。イスラム主義組織タリバン暫定政権が「前向きな努力を続けることを望む」と強調。中国政府は公式には暫定政権を認めていないが、後押しする姿勢を改めて打ち出した。2021年の駐留米軍撤退を受け、地域での影響力拡大を狙っている。

中国外務省によると、秦剛国務委員兼外相は12〜13日、アフガン情勢を巡る近隣国の外相会合に出席するためウズベキスタンを訪問。会合に合わせ、従来の主張を文書で11項目にまとめた。

文書は、米国がアフガン問題の「元凶」だと指摘。対アフガン制裁の即時解除を求めた。【4月12日 共同】
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多くの女性の人権が制約されていることをどのように考えているのか問いたいところですが、ウイグル・チベットで人権を無視している中国にとっては「内政には干渉しない」ということなのでしょう。国際政治は、中国の影響力を高めるためのパワーゲームに過ぎないということか。

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アフガニスタン  教育・仕事を奪われ、家庭に閉じ込められ、DV夫に対し離婚も認められない女性

2023-03-26 23:02:51 | アフガン・パキスタン

(アフガニスタン東部ガズニ州の裁判所で被告の主張を聞く判事(左から2人目、2022年11月28日撮影)【3月6日 AFP】 

2001年に旧タリバン政権が崩壊した後、アフガニスタンには新しい司法制度が構築され、多くの女性が活躍の場を得ました。しかしタリバン復権後、その制度は廃止され、裁判や量刑などはすべて男性が取り仕切るようになり、裁判の判断基準はシャリア(イスラム法)となっています。

この写真1枚からも、女性の権利を擁護するような判断がなされるとは思えない実態がうかがえます。)

【「アフガニスタンを見捨てない」・・・とは言うものの】
****アフガン支援団、1年延長=国連総長に評価求める―安保理****
国連安保理は16日、イスラム主義組織タリバン暫定政権下で混乱が続くアフガニスタンで活動する国連アフガン支援団(UNAMA)について、派遣期間を来年3月まで1年間延長する決議を全会一致で採択した。
また、国際社会が「総合的で一貫した」対応を取るため、グテレス事務総長に対し、11月中旬までに現状の評価を行い、安保理に提言するよう求める決議も全会一致で採択した。【3月17日 時事】 
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この決議は日本とアラブ首長国連邦(UAE)が議論を主導する「ペンホルダー」としてまとめたもので、UAEのヌサイベ国連大使は「これはアフガニスタンとその国民に対して、安保理が見捨てていないという強いメッセージだ」と語っています。

「見捨てていない」・・・アフガニスタンに暮らす人々のことを思えば見捨てることは出来ませんが、ただ、“現地の状況は悪化の一途をたどっている”なかで、タリバン政権の在り様は改善の期待を抱かせるようなものではありません。

【人道犯罪レベルの女性の人権状況】
常々指摘されるように、特に女性の人権状況は人道犯罪レベルにあります。

****タリバンの女性処遇は「人道犯罪の恐れ」、国連が報告書*****
国連は6日、人権理事会で発表した報告で、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンによる女性と少女の処遇が人道犯罪の領域に達している恐れがあると警告した。

2021年8月に実権を掌握したタリバンは、高校や大学通学の阻止など、女性の権利と自由を極度に制限している。

22年7─12月の期間を対象にした報告で、アフガンの人権状況に関する国連特別報告者のリチャード・ベネット氏は、タリバンによる女性と少女の扱いは「ジェンダー迫害であり、人道犯罪の領域に達している恐れがある」と分析。

人権理事会で「タリバンの意図的かつ計算された政策は、女性と少女の人権を剥奪し、一般生活から抹殺することを目的とするもの」とし、「当局の責任によるジェンダー迫害という国際犯罪に当たる恐れがある」と指摘した。

タリバン側情報当局の広報担当者はコメント要請に応じていない。

ベネット氏は、人権理事会が「女性と少女に対する悪辣な扱いは、宗教を含むいかなる背景の上においても容認も正当化もされない」という強いメッセージをタリバンに送るべきと訴えた。【3月7日 ロイター】
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アフガニスタンはアフリカと並んで飢餓が懸念される地域ですが、タリバンの頑なな姿勢は、本来必要とされる国際社会からの人道支援を縮小させるものにもなっています。

****タリバンの女性権利侵害、アフガン支援減少につながる恐れ=国連****
国連アフガニスタン支援団(UNAMA)トップのローザ・オトゥンバエワ氏は8日、イスラム主義組織タリバン暫定政権による女性の権利侵害を受け、同国への支援や開発の資金が縮小する可能性が高いとの見方を示した。

アフガンでは国民の3分の2に当たる2800万人に支援が必要とされ、同氏は安全保障理事会で、国連が今年、単独国家として最大となる46億ドル相当の支援を要請していると説明。しかし、タリバンが女性の高等教育や援助団体での勤務などを禁止しており、支援実施が脅かされていると指摘した。

また、女性は男性親族を伴わずに自宅から外出することを禁止され、顔を覆うことを義務付けられている。

オトゥンバエワ氏は「女性の労働が認められなければアフガン支援の資金は減少するだろう」などと述べた。【3月9日 ロイター】
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【教育でも、仕事でも】
最近のアフガニスタンに関するニュースは“相変わらず”ではありますが、“相変わらず”でスルーしてしまうと「見捨てる」ことにもなりかねませんので、その“相変わらず”のニュースをいくつか。

教育でも、就業でも、女性は大きな制約に直面しています。

****アフガンで大学始業 女子は依然禁止****
アフガニスタンでは6日、大学の冬休みが終わり新学期が始まったが、イスラム主義勢力タリバンは依然、女子の大学教育を禁じている。

中部ゴール州出身のラヘラさんは「私たちは家にいなければならないのに、男子が大学に行っているのを見るのはつらい」と話した。「これは女性に対する差別だ。イスラム教は女性の高等教育を認めているのに。私たちの学びを止める権利は誰にもないはずだ」

タリバンは昨年12月、女子学生が新たに導入された厳格な服装規定や、登下校に男性親族の同伴を求める規則に従っていなかったとして、大学での女子教育の無期限停止を命じた。

禁止令以前でも、ほとんどの大学ではタリバン復権以降、すでに入り口や教室を男女別に分けていた。また、女子学生の授業は、女性教員もしくは高齢の男性教員しか担当できないようになっていた。 【3月6日 AFP】
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****アフガンの女性就業者25%減少、タリバン実権掌握以後=ILO****
国際労働機関(ILO)が発表したアフガニスタンの調査によると、2021年8月にイスラム主義組織タリバンが実権を掌握して以後、女性の就業者数が25%減少した。女性の労働や教育に対する規制で状況が悪化したという。

調査は21年第2・四半期から昨年第4・四半期までを対象に実施。この間の男性就業者数の減少は7%だった。

ILOのアフガン担当シニアコーディネーターは声明で「女性と少女に対する規制は、教育とともに労働市場の展望に深刻な影響を及ぼしている」と指摘した。

タリバンは、大半の女子生徒や学生の高校・大学通学を禁止したほか、非政府組織(NGO)の大部分の女性職員に就労を禁止した。

一方、タリバンの実権掌握を受けて外国政府が開発支援から撤退し、同国中銀の資産を凍結。経済危機で雇用が壊滅している。

ILOは、アフガンの21/22年国内総生産(GDP)が30─35%減少したと推計している。【3月8日 ロイター】
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「女性専用」図書館であっても、女性が家庭外で読書や勉強することも認められないようです。

****「女性専用図書館」閉鎖=タリバンが圧力、開設から半年余―アフガン****
アフガニスタンの首都カブールにある女性専用の図書館が開設から半年余りで閉鎖を余儀なくされた。女性の権利に厳しい制限を課すイスラム主義組織タリバン暫定政権からの圧力が理由という。開設した活動家の女性が13日、明らかにした。

図書館は、通学を禁じられた女性に安心して読書や勉強ができる場を提供するため、昨年8月下旬に開設。ロイター通信によれば、教師らから寄贈された小説や学術書など1000冊以上をそろえていた。【3月14日 時事】 
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【閉じ込められた家庭では、夫のDVによる離婚も許されない】
女性が閉じ込められる「家庭」にあっては、夫のDVも耐えなければならず、離婚も許されないようです。

:****タリバン復権で離婚無効、夫から再びDV被害 アフガン****
アフガニスタンに住むマルワさん(仮名、40)は、元夫にすべての歯を折られるなどの虐待を受けてきた。いったんは離婚が認められたものの、復権したイスラム主義勢力タリバンに無効とされ、夫の元に戻った。現在は夫から逃れて8人の子どもと暮らしている。

アフガニスタンでは女性の権利がほとんど認められておらず、ドメスティックバイオレンスが横行している。米国が後ろ盾となっていた前政権下では、少数ながら離婚が認められた。マルワさんもその一人だった。

だが、2021年にタリバンが再び実権を握ると、元夫は離婚を強要されたと主張し、マルワさんはタリバンに復縁を命じられた。

複数の弁護士がAFPに語ったところによると、タリバンに離婚を無効とされた女性が再び夫から虐待を受けるようになったという報告がある。

夫の元に戻ったマルワさんは数か月間、家から出ることを許されず、殴打に耐え続けた。手や指の骨も折られた。
「気を失ったことも何度かあり、娘たちに食事を口に運んでもらった」とマルワさん。「夫にしょっちゅう髪を強く引っ張られ、円形脱毛症になった。歯も全部へし折られるほど殴られた」と話す。

その後マルワさんは、娘6人、息子2人と共に数百キロ離れた親戚の家に逃げ込んだ。
「子どもたちは、『お母さん、ひもじいくらいどうってことないよ。今は暴力から逃げられたんだから』と言ってくれる」

夫に見つかるのを恐れ、近隣住民にも存在を知られないように身を潜めて暮らしているという。

国連のアフガニスタン支援ミッションによると、同国ではパートナーから肉体的・性的・精神的暴力を受ける女性は10人中9人に上る。しかし、離婚は虐待以上にタブーとされることが多く、離婚した女性は白眼視される。

米国が支援していた前政権下では、一部の都市で離婚率が徐々に上昇。教育と雇用面を中心に女性の権利もわずかに向上した。

■DVによる離婚は認められない
虐待を受けた女性による離婚の訴えを100件前後成立させた女性弁護士は、「イスラム教でも離婚は認められている」と説明した。だが現在は、国内での弁護士活動は許されていない。

前政権下では、女性の判事と弁護士が離婚訴訟を扱う特別な家庭裁判所が設立されていたが、タリバン復権後は裁判や量刑などはすべて男性が取り仕切るようになった。

別の女性弁護士は、タリバン政権下で離婚が認められるのは、夫が薬物依存症の診断を受けるか国を離れた場合のみで、「DVや、夫が同意しないケースでは裁判所は離婚を認めない」と指摘した。

タリバン高官はAFPに対し、離婚した女性が復縁を強制されているケースについては調査を行うと述べた。

最高裁の広報担当者は「申し立てがあれば、シャリア(イスラム法)に従って調査する」と主張。前政権下で成立した離婚を認めるかどうかについては「重要で複雑な問題」だとして、イスラム教最高権威機関のダール・アル・イフタによる統一見解が待たれるとした。

縫製で生計を立てているマルワさんと娘たちの心には深い傷が残っている。
マルワさんは娘たちを見やりながら、「この子たちを結婚させられないのではないかと心配している」と話した。
「娘たちは、『お母さんのひどい結婚生活を見ていたので、夫という言葉が嫌でたまらない』と言うんです」と続けた。 【3月25日 AFP】AFPBB News
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【出口がまったく見えない現状】
もちろん、こうした状況を生み出しているのはタリバンだけの問題ではなく、女性差別を当然視するような、あるいは、離婚した女性は白眼視されるような、社会全体の認識が根底にあってのことです。

タリバンは、そうした社会の考え・認識を現実的な規制・ルールに具現化しているに過ぎない面もあるでしょう。

それで皆が納得しているなら、よその人間がとやかく言うこともないのでしょうが、教育を、仕事を、安全な家庭生活を求める多くの女性も存在している以上、この状況を看過できません。

しかし、改善の方法が見当たりません。

書いているだけで息苦しくなる現状ですが、アフガニスタンの人々は、その中で今日も、そして明日も暮らしています。
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アフガニスタン  「救援機」の偽情報に殺到する人々 顔を覆われたマネキン

2023-02-17 23:03:19 | アフガン・パキスタン

(【1月17日 佐藤太郎氏 Newsweek】 アルミホイルで顔を覆われたマネキン、カブール すべての権利を奪われたアフガニスタンの女性たちの悲痛な顔のようにも見えます)

【国外脱出の希望からデマの「救援機」に殺到した群衆 治安部隊が威嚇射撃】
最近印象的だった“悲しいニュース”

****「救援機に乗れる」空港殺到 アフガン、地震で誤情報****
アフガニスタンの首都カブールで、トルコでの大地震に関連して「被災者支援のための救援機に乗れる」との誤情報が出回り、市民数百人が空港に殺到、治安部隊が威嚇射撃で追い払う騒ぎがあった。地元メディアなどが10日までに報じた。生活難から国外脱出を試みた人が多くいたとみられる。

騒ぎがあったのは8日。地元メディアが伝えた映像では、空港近くの通りを暗闇の中、大勢の人々が叫びながら走り、銃声も響いた。

空港へ駆け付けた男性(26)は「トルコの人々を助けられるし、この国を脱出する良い機会だと思った」とAP通信に語った。【2月10日 共同】
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治安部隊が「うわさは事実ではない」として、混乱は翌朝までに鎮圧したとのこと。

国連児童基金(ユニセフ)によると、アフガニスタンの人口の半数以上となる約2440万人が人道支援を必要としています。失業や貧困の生活苦から逃れるために国を出たい人も多いでしょう。

タリバンの暴力、前政権時代への報復に怯える人々も多いでしょう。

タリバンによる極端・特異なイスラム法の解釈で、女子生徒たちは中学生になると教育が受けられず、女性の就労も制限されている状況で、希望が見いだせない人々も多いでしょう。

群衆の中には女性や子どももいたようで、何とか自国を出たいと群がる人々の混乱、治安部隊が威嚇する銃声・・・なんとも痛ましいニュースです。

タリバンによる統治の様相については、下記のようなニュースもありますが、これはむしろ「タリバンなら当然そうなるだろう」といったところ。

****タリバン、バレンタインデー禁止令 生花店は閑散****
アフガニスタンの首都カブールでは14日、イスラム主義組織タリバンがバレンタインデーを禁止したため、しおれたバラの花束や売れ残りの風船を手に、露天商らが悲痛な面持ちで客待ちをしていた。

アフガンではバレンタインデーはそれほど広がっていないが、近年は都市部富裕層の間で祝う習慣となっていた。だが今年、カブールの有名なフラワーストリートに立ち並ぶハート形の花輪やぬいぐるみを売る店は閑散としていた。

ある店の窓には、「恋人たちの日を祝うな!」と警告する勧善懲悪省のポスターが貼られていた。バレンタインデーは「イスラム教でも、アフガニスタンの文化でもなく、異教徒の呼び掛けている日だ」「恋人たちの日を祝うことは、ローマ教皇に同情するに等しい」と書かれていた。武装した護衛を連れた勧善懲悪省の職員が、カブールの街中を巡回していた。(中略)

若いカップルがいそいそと花を買ったが、道徳警察がパトロールしているのを目にしてサッとその場を離れた。 【2月15日 AFP】
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【顔をアルミホイルで覆われたマネキン すべての権利を奪われたアフガニスタンの女性たちの悲痛な顔のようにも】
偶像崇拝を禁じるイスラムの教えにのっとって・・・ということで、カブールでは店のマネキンも首を切り落とすか、顔を隠すかするように命じられているとか。

****「マネキンも捕らえられ、閉じ込められている」タリバン支配下のマネキンは斬首を免れた......****
タリバン政権の支配のもと、アフガニスタンの首都カブール中の女性服店のマネキンは、頭部に布袋で覆われたり、黒いビニール袋で包まれたりして、街は異様な光景を呈している。頭巾をかぶったマネキンは、タリバンの純血主義的なアフガニスタン支配を象徴するようだ。

しかし見方を変えると、カブールのアパレル小売業者による、ささやかな抵抗と創造性の表れとも捉えられる。

ある店のマネキンの頭部は、着用している伝統的なドレスと同じ素材で作られた袋のようなものを被せられている。紫色のドレスのマネキンは、同じ紫色の頭巾を。もう一人は金の刺繍が施された赤いドレスで、顔には赤いベルベットの仮面、頭には優雅な金の冠をかぶっている。

「マネキンの頭にプラスチックや変なものをかぶせると、ショーウインドーも店も見栄えが悪くなってしまうから」と、店のオーナーのバシルさんは言う。他のオーナーと同様、彼は報復を恐れてファーストネームのみを名乗ることを条件にAP通信の取材に応じた。

当初はマネキンの斬首を命じられた
地元メディアによると、2021年8月に政権を奪取して間もなく、タリバンの宗教警察である「勧善懲悪省(悪徳美徳省)」は、すべてのマネキンを店の窓から撤去するか、首を切り落とさなければならないと命じたという。

偶像として崇拝される可能性があるため、人間の形をした像や画像を禁じるイスラム法の厳格な解釈に基づく命令だった。

服の売り手の中には、これに従う者もいたが、反発の声も上がった。
マネキン斬首令に異論を唱えた衣料品店のオーナーたちは、服をきちんと展示できなくなる、あるいは貴重なマネキンを傷つけなければならなくなると訴え、タリバンに規則の修正を求めた。これを受け、タリバンは命令を修正し、マネキンの頭を覆うことを許可した。

マネキンの斬首は免れたものの、店主たちの次なる課題は、頭部を覆ったマネキンの見栄えを如何によく見せるか、ということだ。タリバンへの従属と、顧客へのアピールのバランスに頭を悩ませた。

その結果行き着いたのが、マネキンが着用するドレスとセットのヘッドピースのようにも見えるスタイリングだ。

別の店主ハキムさんは、マネキンの頭にアルミホイルをかぶせた。光に反射し煌めくアルミ箔をマネキンの頭にかぶせることで、商品に華やかさを添える意図だ。「この脅威と禁止令をチャンスと思い、マネキンが以前より魅力的に見えるようにしました」

経済低迷でアパレル小売の売り上げは半減
アフガニスタンでは結婚式はタリバン以前から結婚式は男女別だった。保守的な同国では結婚式は女性にとって最も美しく装う、心踊る場だった。

タリバン政権下では、結婚式は以前以上に数少ない社交の場となった。しかし、経済は低迷し国民は貧しさで苦しんでいる。限りあるわずかな収入を、結婚式に費やすことはなくなってきている。
前出の衣料品店のオーナーであるバシルさんは、売上が以前の半分になったことを明かした。(中略)

なお、これは女性マネキンに限ったことではない。街のショーウインドーには頭を覆った男性マネキンも少なからず見受けられ、当局が一律に禁止令を適用していることを示唆している。

別の店主によると、「勧善懲悪省(悪徳美徳省)」のエージェントが定期的に店やモールを巡回して、マネキンの首が切られているか、覆われたりしているかどうかを確認しているそうだ。

頭を覆われたマネキンはアフガン女性そのもの
マネキンに課せられた規則に反対だったこの店主は「マネキンが偶像でないことは誰もが知っているし、誰もそれを崇拝したりはしない。すべてのイスラム教の国では、マネキンは服を展示するために使われています」

タリバンは当初、1990年代後半の最初の統治時代と同じような厳しい規則を社会に課すことはないと言っていた。にも関わらず、特に女性に対し、多くの制限を徐々に課してきた。

ある日、買い物中の女性は、フードをかぶったマネキンを見て、こう言った。
「このマネキンを見ていると、このマネキンも捕らえられ、閉じ込められているように感じ、恐怖を覚えます」

この店のショーウインドーの向こうに、すべての権利を奪われたアフガニスタンの女性たちの悲痛な顔が見える気がする。【1月17日 佐藤太郎氏 Newsweek】
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【強化される女性の権利侵害】
重大な権利侵害とみなされている女性の教育・就労の制限については、国際社会の批判にもかかわらず、改められる気配はありません。

****国連副事務総長、タリバン当局者に懸念 女性の権利侵害巡り****
国連は(1月)20日、アミーナ・モハメッド副事務総長がアフガニスタン南部カンダハルを訪問し、当地のイスラム主義組織タリバン当局者に同国における女性の権利の侵害について懸念を示したと発表した。

モハメッド氏は4日間のアフガニスタン訪問を終了。首都カブールではタリバン幹部とも会談した。タリバン政権が女子学生の高校・大学への通学を停止するなどの措置を取ったことを受けた。

タリバン最高指導者が拠点を置くカンダハルで、モハメッド氏は副知事と面会。地元当局によると、副知事はモハメッド氏に対し、タリバン政権が世界との強い関係に加え、指導者に対する制裁の解除、国連に大使を派遣できるようになることを望んでいると伝えた。

2021年8月にタリバンが権力を掌握して以来、どの政府もタリバン政権を正式に承認していない。【1月23日 ロイター】
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国連副事務総長に応対したのが州副知事・・・タリバンははなから国連を相手にしていないようにも見えます。

タリバンは昨年12月、女性の教育・就労の制限を露わにしました。

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まず(2022年12月)20日、それまで認めてきた大学での女性への教育を停止するとしました。決定は、最高指導者アクンザダ師によるものだとしています。

女性の教育について、タリバンはおととし再び政権を掌握して以降、日本の中学・高校にあたる中等教育でも通学を認めておらず、女子が通えるのは小学校のみとなりました。

理由として男女共学などを問題視していますが、だからといってタリバンが女性専用の教育施設を全国に拡充するような動きは見られず、一方的といわざるを得ません。

さらに、続いて24日には、国内で活動するNGOに対し、女性職員の出勤を停止するよう命じました。理由については、イスラム教徒の女性が人前で髪を隠すのに使うスカーフ「ヒジャブ」を正しく着用していなかったためだとしています。【1月26日 NHK「アフガニスタン 女性の権利制限で孤立の懸念」】
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この動きは改まるどころか、強化されています。

****タリバン、女子の私大受験禁止に 女子教育で締め出し強化****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の高等教育省は、各私立大学に対し、女子に入学試験を受けさせないよう命じた。「次の指示があるまで」としており、無期限での受験禁止となる。地元民放トロテレビが28日、報じた。暫定政権は昨年12月、全国の公立と私立の大学で女子教育を停止しており、締め出しを強めた。

高等教育省は理由には触れず、違反すれば「法的措置を受ける」として各私立大学に順守を迫った。暫定政権は日本の中学・高校に当たる女子中等教育も停止しており、女性が通えるのは小学校だけとなっている。【1月29日 共同】
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IS系武装組織などのテロも頻発しており、治安は悪化しています。どの勢力によるものかはわかりませんが、女性の社会進出を実践していた女性が標的となることも。

****アフガンの元女性議員、銃撃され死亡****
アフガニスタンの首都カブールで、元国会議員の女性が自宅で複数の侵入者に襲われ、銃で撃たれ死亡した。警察が15日、発表した。
暗殺されたのはムルサル・ナビザダ氏。2021年8月にイスラム主義組織タリバンが復権するまで国会議員を務めていた。(中略)

アフガンでは米国の侵攻以降の20年間に女性の社会進出が進み、裁判官やジャーナリスト、政治家が誕生。しかし、タリバンの復権後、そうした職業に就いていた多くの女性が国外に逃れた。

元同僚議員によると、ナビザダ氏も国外脱出を勧められたが、「人々のために残る」と断った。元同僚議員は「身の危険をかえりみず、信じるもののために闘った真の先駆者だった」と、死を悼んだ。 【1月16日 AFP】
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【女性の権利制約の背景には、社会的な風潮も】
女性への制約はタリバンだけの考えではなく、アフガニスタン社会に根深い社会風潮に基づくものでもあります。

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アフガニスタンの社会では、農村部を中心に伝統的な家父長制が色濃く残り、「女性は家庭にとどまるべきだ」という保守的な考えがいまだに根強いのが実情です。

タリバンは、イスラム教に基づいた統治をアピールすることで、長年、こうした男性を中心とした保守層からの支持を政治的な基盤としてきました。

専門家や外交関係者は、国内が疲弊し、国民の不満もくすぶる中、政権基盤を固めるためにも、女性の社会進出を好ましくないと考える保守層からの支持をつなぎとめる狙いがあったのではないか、そしてタリバンの統治に反発する人たちの引き締めを図ったのではないかと指摘します。【1月26日 NHK「アフガニスタン 女性の権利制限で孤立の懸念」】
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そうした考えは、女性に対する“名誉殺人”的な風潮をも生みます。

****「現代的」生活送る姉殺害、アフガン人男2人に終身刑 独****
独ベルリンの地方裁判所は16日、「現代的な」ライフスタイルを送る姉に不満を抱き、殺害したとしてアフガニスタン人の男2人に終身刑を言い渡した。

被害者のマリヤム・Hさん(当時34)は2021年7月、首都ベルリンの自宅から失踪。数週間後、南部バイエルン州の丘に埋められているのが見つかった。マリヤムさんには子どもが2人いた。

マリヤムさんが失踪したのと同時期に、20代の弟ユサフ、マフディ両被告がスーツケースを重そうに運ぶ様子が駅の防犯カメラの映像に捉えられていた。中にはマリヤムさんの遺体が入っていたとされる。

遺体の両手、両足、口、鼻にはテープが貼られていた。マリヤムさんは窒息死した後、のどをかき切られたという。

裁判長は両被告が、自分たちの影響下から姉が離れつつあったため、殺害したと指摘。検察は、両被告は姉が「一部現代的なライフスタイル」を送ることに反発し、アフガン人の夫と離婚後、新しいパートナーと交際を始めることを禁止しようとしていたと主張した。

両被告の弁護人は、ユサフ被告が口論の最中に誤って姉を死なせてしまったとし、マフディ被告の無罪を主張していた。 【2月17日 AFP】
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【スポーツカーを作っている場合か?】
こうしたなかで、「一体、何考えているのか・・・?」といったニュースも。

****「日常生活は地獄」......しかし、タリバンは、アフガニスタン初の国産スポーツカー発表****
アフガニスタンは、初めての国産スポーツカー(と思われるもの)を発表し、タリバン関係者はその功績を讃えている。

1月15日に、タリバンの報道官ザビフラ・ムジャヒドは、件の車の動画をツイッターに投稿した。アフガニスタンのニュースチャンネル「Tolo News」が伝えるところによると、「Mada 9」と名付けられたこの車。アフガニスタン製のスポーツカーは初めてのことという。

報道官ザビフラ・ムジャヒドの「この車は国にとって名誉なこと」というコメントを英テレグラフ紙が伝えている。

Tolo Newsによると、「Mada 9」はEntopという企業と、アフガニスタン技術職業訓練機関 (ATVI) のエンジニアとデザイナー30人から成るチームが共同で開発した。5年を費やしたそうだ。

まもなく電動化に対応する予定で、Entopは、アフガニスタン国内での販売を経て世界でに広める計画だと、タイムスオブインディアが伝えている。しかし量産時期については明らかになっていない。価格や車両の性能、仕様やスピードについても口を閉ざしている。

(中略)とはいえ謎が多すぎる。タリバンの報道官が共有したビデオ以外には、この車が高速で移動したり、難しい操縦をしたりする映像はない。

ATVIの校長は、このエンジンは運転手が速度を上げることができるほど「強力」だと語っている。しかし、このエンジンは2000年製のトヨタ・カローラのものという。

スポーツカーを作っている場合か
アフガニスタンは2021年8月にタリバンが国を占領して以来、経済が崩壊している。米国平和研究所によると、同国の経済は政権支配下の1年間で20~30%縮小した。

2021年10月から2022年1月の間に100万人以上のアフガニスタン人が国外に脱出したと、ニューヨーク・タイムズ紙が移民研究者の話を引用して報じた。

2022年1月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、同国の悲惨な現状について、各国に警鐘を鳴らした。「タリバンによる占領から6カ月、アフガニスタンの人々にとって、日常生活は地獄と化している」

スポーツカーが、アフガニスタンの人々の生活を救うメシアになるとは考えにくいだろう。【1月20日 佐藤太郎氏 Newsweek】
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アフガニスタン  女性の大学教育無期限停止に続き、NGOでの女性の就労も禁止に 抵抗する人々も

2022-12-31 23:17:03 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタン首都のカブール大学前で、大学での女子教育禁止に一人で抗議するマルワさん(2022年12月25日撮影)【12月27日 AFP】 おそろしく勇敢な女性ですが、後に続く同調者が出ないところが悲しい現実。)

【タリバン NGOでの女性の就労を禁じる NGO活動の多くが実質的に停止に】
世界には「どうして?」という腹立たしいニュースが溢れていますが、その中でもこの1年、個人的に苛立たしさが募ったのがアフガニスタンの状況。

****アフガンの子栄養失調急増 ウクライナ侵攻で小麦高騰****
赤十字国際委員会(ICRC)は25日までに、アフガニスタンで同委員会が支援する全国33の病院で、今年の子どもの栄養失調患者数が、昨年1年間と比べて既に90%増加していると発表した。ロシアによるウクライナ侵攻などで経済危機が深まり、小麦や食用油の価格が高騰していると指摘した。

各地で干ばつや洪水も相次ぎ農作物に被害が出た。人々の収入減も相まって、食料難が深刻化している。子どもの栄養失調患者数は昨年3万3千人だったが、今年は6万3千人を超えている。【11月25日 共同】
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イスラム原理主義組織タリバンが統治するアフガニスタンでは深刻な食糧不足が起きおり、国際支援を必要としていますが、一方で、タリバンは女性教育の制限を強化するなど人権無視の姿勢を強めており、アフガニスタン支援が結果的にタリバンを利することになりかねない状況で、国際支援もなかなか進んでいません。

タリバンが女性の大学教育を無期限停止した件は、12月25日ブログ“アフガニスタン 女子大学教育無期限停止を命じたタリバン 圧政で行き場を失う人々の暮らし”でも取り上げましたし、国際的にも強い批判が起きています。

加えて、「タリバンが小学校に対しも、女子生徒の受け入れ禁止を命じた」との情報が。
“タリバン政権、小学校~大学まで女学生追放 学校で教育を受ける女性の権利をはく奪”【12月26日 The News Lens】 The News Lensは台湾を中心とする情報サイトのようです。

タリバンの中に「女性は10代で結婚し、家事や育児をするのが役割だ」「女子教育は小学校だけで十分だ」とする考えがあることは周知のところですが、更に進んで小学校も・・・

ただ、この件は重大な事柄であるにも関らず、他のメディアによる報道は目にしていませんので、誤報の可能性も大きいようにも思えます。

小学校の話はともかく、この1年でアフガニスタンにおける女性の教育・権利が大きく後退したことはまぎれもない事実です。

男女の区分が厳格に行われているアフガニスタンでは、医療現場などで女性への対応は女性専門職でないと出来ないという面もありますので、女子教育が停止され、女性専門職の育成が止まるということは、女性全般の福祉・社会サービスが危機に瀕するということでもあります。

女性の大学教育無期限停止に続いて発表された「NGOへの女性出勤停止」もNGO活動を事実上停止に追い込むものとして国連なども強く反発しています。

****タリバンのNGO女性職員勤務禁止令、国連が撤回要請****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が、国内で活動する非政府組織(NGO)における女性職員の勤務を禁じたことについて、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)は撤回を求めた。

UNAMAは声明で「アフガンでは数百万人が人道支援を必要としており、障壁を取り除くことが不可欠だ」と主張。UNAMAのラミズ・アラクバロフ代表代行がハニフ経済相と面会したことを明らかにした。

経済省は24日、タリバンの解釈によるイスラム教の服装規定に一部女性が従っていないことを理由に、NGOに女性職員を働かせないよう命令。命令は国連には直接適用されないが、国連のプログラムの多くはNGOが実行している。

各NGOは女性職員がいなければプログラムを運営できないとしており、世界の4大NGOなどが既に活動停止を発表した。支援機関によると、アフガンでは人口の半分以上が人道支援に頼っており、特に冬場は基本的支援が不可欠になる。

経済が崩壊したアフガンにおいて、NGOは女性を中心に重要な働き口ともなっている。【12月27日 ロイター】
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****女性排除「約束反する」=タリバン非難声明―安保理****
国連安保理は27日、大学での女子教育やNGOでの女性の就労を禁じたアフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権に対し、「アフガンの人々に誓った約束に反している」と非難する報道機関向け声明を発表した。

安保理は声明で、大学からの女性排除について「危機感を募らせている」と表明。既に禁じられている女子の中等教育学校への通学と併せ、人権と基本的自由の尊重がさらに失われているとして「学校の再開とこうした政策の早急な廃止」を要請した。【12月28日 時事】
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****タリバンによるNGOへの女性出勤停止で国連担当者が交渉へ****
(中略)国連では29日、アフガニスタン問題を担当するラミズ・アラクバロフ氏が記者会見し、人道問題を担当するグリフィス事務次長が近くアフガニスタンを訪問してタリバン側と協議に臨むことを明らかにしました。(中略)

アラクバロフ氏によりますと、国連がアフガニスタンで行う活動のおよそ7割はNGOなどと共同で実施され、支援に携わる職員の3割は女性だということで、「女性を排除することは決してできない」と強調しました。【12月30日 TBS NEWS DIG】
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単に人員が足りなくなるというだけでなく、女性でないと対応できないサービスが出来なくなるということでもあります。

【タリバンの目を盗んで女子教育を続ける人々 しかし、タリバンの規制強化で「地下学校」が次々に閉鎖に】
こうした厳しい状況にあっても、タリバンの目を盗んで女子教育を続ける人々・組織も存在します。

****アフガニスタン「秘密の学校」タリバンの脅迫にも屈しない…抑圧される女性を教育で支援する現場の苦闘****
(中略)
社会や家庭で弱い立場にいる女性たちは、貧困や食料不足などの影響を受けやすい。女児が男児より軽視されるような価値観が残る国も多く、人身取引まがいの児童婚や強制労働の増加が懸念されている。

こうした中、途上国の女性を支援する団体は、教育機会の確保を重視。昨年8月にイスラム主義組織タリバンが復権したアフガニスタンでは、現地NGO「ガフワラ」が日本の中高生にあたる女性を対象にした「シークレット・スクール(秘密の学校)」を始めた。タリバンが女性の権利を抑圧し、女子中等教育ができなくなっているためだ。

ガフワラ代表のザビーフ・マハディさん(33)はオンライン取材に「教育こそが未来を変える」と訴える。(中略)代表のザビーフ・マハディさん(33)らは、タリバンに見つかる危険を覚悟の上で、学校を懸命に運営している。

◆「裁縫教室」に偽装した民家で
アフガン国内に2カ所ある学校は、机や椅子のない一般住宅の部屋を教室に使い、対面とオンラインの授業を無料で提供する。日本の中高校生に相当する女子生徒約30人が物理や化学、歴史などを学ぶ。

マハディさんによると、学校は電子メールで脅迫を受けたこともあり、そのたびに休校や教室の場所を変えてきた。生徒らは通学時、タリバン兵に行き先を尋ねられた際には「裁縫教室に行く」と答えて逃れているという。実際に「裁縫教室」と記した看板を掲げていたが、何者かに壊されてしまった。

◆「脅迫に負けない」学びへの思い
「ガフワラ」はアフガンの公用語の一つダリー語で「ゆりかご」の意味だ。以前は幼稚園や学校などに絵本を寄贈し、子どもたちへの読み聞かせの活動などをしていた。しかし、タリバン復権後は安全への配慮から大半の活動を中断。こうした状況を打開するため、昨年10月ごろに始めたのが「秘密の学校」だった。

私たちの将来や社会、人々のためにも、子どもたちは学び、私たちは教育しないといけない」。教師の女性は決意を話してくれた。女子中等教育が認められない現状は「受け入れられない。誰もが教育を受ける基本的な権利があるはずです」と訴えた。

生徒たちも取材に「脅迫に負けずに勉強を続ける」「勉強すれば自分たちの将来のためになる。医者や教師にもなれる」と口々に思いを語った。

◆「未来を変える唯一の方法」
(中略)マハディさんは「できることを続ける。教育こそ未来を変える唯一の方法だと信じている」と話す。アフガンへの国際的な関心が薄れているとして、「再びテロや過激主義の温床になってからでは遅すぎる。アフガンは『時限爆弾』のように、いつ爆発するか分からない」と憂慮する。

教育を含む女性の権利抑圧は、国際社会によるタリバン政権承認への障害の一つ。国連アフガニスタン支援団(UNAMA)は9月、声明で「少女やアフガンの未来にとって大きな損害だ」と非難した。【10月2日 東京】
******************

タリバンの目を盗んで行われる女子教育には、まったくの秘密裏におこなわれるものと、表向きは女性が編み物や刺繍、コーランなどを学ぶ学校という形でタリバンの「承認」を得ているものの2タイプがあるとか。

****アフガニスタン 日本人記者が「地下学校」に潜入取材 タリバンの女子教育禁止に広がる抵抗****
(中略)タリバンによる政権奪取以降、アフガニスタン国内でも市民たちによる抵抗が広がっているが、その一つの形が学校に通えない少女たちがひそかに勉強を教わる「地下学校」だ。厳しい取材規制のなか、首都カブールで女子教育をめぐる最新事情を追った。

この日、向かったのは市内の住宅街の一画、1階が商店、2階以上がアパートの小さなビルだった。人に見られぬよう車から降り、地下へと続く階段を下りる。ここは「地下学校」という女子向けの非合法の施設だという。

地下には、日本の学校のクラス二つ分ほどの広さのホールがあり、風船で飾り付けられたステージが作られていた。何かのお祝いがあるらしい。そこに別の部屋から、ヒジャブと長衣をまとった少女たちが次々に入ってきてホールは満杯になった。その数100人以上。

これほどの数の生徒たちが集まった「地下学校」の映像はメディアでも見たことがない。この「学校」は6カ月が1学期で、きょう行われるのは学期末の修了式だという。

「地下学校」には大きく二つの種類がある。一つは、個人の自宅などでひっそりと少人数を集めて勉強を教えるもので、存在自体が秘密にされている。

一方、この日修了式を取材した「地下学校」は、タリバン政権の教育省から「専門学校」の認可を得ている。表向きは女性が編み物や刺繍、コーランなどを学ぶ学校ということになっているのだが、それは「隠れ蓑」で、女子が学ぶことを禁止されている英語や数学、物理、歴史など中等教育の教科も教えているのだ。

式典で生徒一人ひとりに修了証を手渡すのは40歳代の女性の校長先生。記念撮影をしたあとは、大きな書物の形をしたケーキにナイフを入れ、校長が生徒たちの口に小さく切ったケーキを放り込んで、厳かななかに笑い声がもれる楽しい会となった。

修了生を代表して一人の女子生徒が英語でスピーチを行った。テーマは「女性について」。
「コーランによれば、女性は男性と同じく社会の重要な役割を果たすべきである。また、知識を求めることはすべてのムスリムの義務である。私たちはタリバンに女子の学校を開くよう、女子が科学を勉強することを禁じることをやめるよう要求する」

慣れない英語でたどたどしく、しかし堂々と仲間に語りかける。あどけなさの残る真剣な表情を見ながら、これほど自立心旺盛な女性をアフガン社会は生み出したのだな、と感慨深いものがあった。

校長はこの「地下学校」を去年10月、たった一人で立ち上げた。学校の教員だった彼女は、女性に差別的なタリバンの施策を見て辞職。

「学校に行けなくなったと絶望して泣く少女たちを見て、いてもたってもいられなくなりました。他人事ではありません。私にももう少しで中等教育の年齢になる女の子がいるのです」という。

またタリバンが再び権力を奪ったときに国を出た友人もいたが、「みんなが逃げたら、誰がこの国の女性たちのために立ち上がるのでしょう。私は残って闘うことに決めました」と悲壮な決意を語る。

タリバンからの弾圧、妨害
いま校長を悩ませているのは「学校」の運営資金が行き詰っていることだ。経済制裁の影響もあって暮しが厳しいなか少女たちに負担をかけたくないと、授業料は無料とした。家賃、教師への謝礼などの維持経費は膨らみ続ける。

彼女はネットによる語学講義で収入を得、それを「学校」の運営費に回しているがとても追いつかない。他には親しい友人たちからのわずかなカンパがあるだけで、月末のたびに資金繰りで四苦八苦するという。
 
タリバンからの弾圧、妨害にも気をつかう。行政による立ち入り調査に備え、生徒も教師もヒジャブと長衣で体を覆っているよう細心の注意をし、つねにコーランを持ち歩いている。

実際にタリバンの役人が教室に入ってきたことがあったが、授業をさっとコーランの朗読に切り替えて彼らの目をごまかすことができたという。

この校長、修了式の訓示では「みなさん、私たちの挑戦は今日が最後ではありません」と言ったきり、感極まって言葉を続けられなくなった。この事業を運営・維持する苦労、重圧の大きさを思う。

いま、この「学校」の人気が高まって参加希望者が急増しており、12月6日にはカブール市内に三つ目の分校ができた。これで生徒総数はおよそ1000人を超えるという。こうした「地下学校」はここだけでなく、各地で自然発生的に生まれ、静かに広がっているという。

実はタリバンの子弟も…
強面一辺倒にみえるタリバンの女子教育をめぐる施策だが、実は原則があいまいで揺れ動いており、政策の施行にも統一性を欠く。

去年12月、タリバン政権のムッタキ外相は、全土34州のうち10州で女子の中等教育機関が開かれていると語った。タリバンは決して一枚岩ではなく、現在も内部で大きな亀裂と激しい駆け引きがつづく。

それが国民の目にも明らかになったのが、今年の新学期での女子教育再開の取り消しだった。政府は以前から、3月23日に始まる新学年度から女子の学校が再開されると公式に発表していた。当日、1年ぶりの授業再開を待ちわびて登校した女生徒たちは、学校に着いてから突如帰宅せよと告げられたという。

ニュースでは学校の入り口でショックのあまり泣き出す少女の映像が流れた。教師も寝耳に水で、教育省高官すら当日朝になって授業再開の取り消しを知った。

この土壇場での方針転換は、指導部内での暗闘の激しさを物語る。

タリバン内にも女子教育を認める声は少なくない。実は取材した「地下学校」にはタリバンの子弟も通ってきていると校長がそっと教えてくれた。

治安当局はここで中学高校のカリキュラムを教えている実態をつかんでいたはずだが、女子教育を求める市民の声の大きさ、そしてタリバン内の女子教育容認派の存在も相まって、規制しにくい状況にあったと思われる。

しかし今回、女子の大学教育まで否定する通知が出たことは、タリバン内で強硬な保守派の影響力が強まったことを示している。

アフガニスタンでは小学校でも男女別学であり、女子児童は女性教師にしか教わることができないし、女性の患者は女医にのみ診てもらうことができる。だから、女性教師や女医など一定数の女性専門職は不可欠である。

タリバンは政権内に高等教育省を置き、男女の教室を別にするなどの条件の下で、女子が大学で学ぶことを認めてきた。この「地下学校」には、大学進学を目指して勉強に励んでいた生徒が多い。今年10月に行われた大学入試では、この学校から25人の合格者を出したばかりだった。

来春からの大学生活を楽しみにしていた少女たちの顔が思い浮かぶ。どんなにか悲しみ、怒っていることだろう。カブールでは今回の通知に対する女性たちの抗議デモが起き逮捕者が出た。また筆者には、通知が出た直後から市内の「地下学校」が次々に閉鎖に追い込まれているとの情報も届いている。

女子教育をめぐるタリバンと市民のせめぎあいは一気に緊迫の度を増している。【12月29日 高世仁氏 デイリー新潮】
*****************

【たった一人の抵抗】
一人でタリバンに立ち向かう女性も。

****アフガン18歳女子学生、大学教育禁止に単独で抗議*****
アフガニスタンで実権を掌握したイスラム主義組織タリバンが先週、女子の大学教育を禁止したことを受け、女子学生が25日、単独で抗議活動を行った。
 
抗議を行ったマルワさんはAFPに対し、「私は人生で初めて誇りを抱き、強さを感じた。タリバンに立ち向かい、神がわれわれに与えた権利を要求することができたのだから」と語った。
 
タリバン復権後、特に今年初めに中心的な活動家が拘束されて以降は、女性主導のデモが減少している。デモに参加すれば、逮捕されたり暴力を受けたりする危険があり、社会的な汚名を着せられる恐れもある。
 
今回のタリバンの決定に対し抗議を試みた女性もいたが、デモは即座に解散させられていた。だが、マルワさんの意志は固かった。タリバン警備員が配置されているカブール大学正門前で25日、アラビア語で「イクラー(読め)」と記したプラカードを無言で掲げた。

「本当にひどい言葉を浴びせられたが、私は冷静さを失わなかった。アフガンの一人の女性の力を、たった一人でも抑圧に立ち向かえるのだということを見せたかった」とマルワさん。他の女性たちも自身の行動に続いてくれることを願っている。
 
タリバンは昨年8月に復権した後、以前よりも穏健な統治を約束したものの、女性に対しては厳しい制限を適用している。タリバン暫定政権は24日、アフガニスタンで活動する国内外の全ての支援団体に対し、女性の出勤停止を命じた。これ以前にも、女性たちは公園やスポーツジム、公衆浴場への立ち入りを禁じられている。
 
タリバンはこうした女性に対する厳しい規制について、女性たちが頭髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」の着用などイスラム法の厳格な服装規定を順守しないことが原因だと説明している。
 
画家になるのが夢だというマルワさんは、アフガンは女性にとって刑務所のような場所になってしまったと嘆く。「捕らわれの身にはなりたくない。私には実現したい大きな夢がある。だから抗議すると決めた」と話した。
【12月27日 AFP】
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来年が上記マルワさんにとって、アフガニスタン女性にとって、アフガニスタン国民にとって、良い年でありますように。
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アフガニスタン  女子大学教育無期限停止を命じたタリバン 圧政で行き場を失う人々の暮らし

2022-12-25 23:07:48 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタンの首都カブールで、女子の大学教育禁止に抗議する女性たち(2022年12月22日撮影 【12月23日 AFP】)

【イスラム主義的動きを強めるタリバン政権】
これまでにも取り上げてきたように、アフガニスタンを支配するイスラム原理主義勢力タリバンは、復権当初の国際社会への一見宥和的な言動も取下げて、本来の価値観であるイスラム主義を前面に押し出しつつあります。

****タリバン、イスラム法の完全執行命令 アフガン****
アフガニスタンの実権を掌握するイスラム主義組織タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は、同国の裁判官に対し、公開処刑や石打ち、むち打ち、窃盗犯の手足の切断など、シャリア(イスラム法)のすべての側面を完全に執行するよう命じた。ザビフラ・ムジャヒド報道官が13日夜、発表した。(中略)

タリバンは1996〜2001年に政権を握った際、抑圧的な支配体制を敷き、競技場でのむち打ちや公開処刑などを定期的に行っていた。昨年の政権掌握時にはより穏健な統治を約束していたが、徐々に国民の自由と権利の締め付けを強化している。(後略)【11月15日 AFP】
*******************

上記方針に沿って、実際に公開むち打ち刑の執行相次いでいるようです。

****「シャリーアに基づき」タリバン暫定政権、公開むち打ち刑の執行相次ぐ…少年少女にも****
アフガニスタンのイスラム主義勢力タリバン暫定政権が、犯罪などに対する刑罰にシャリーア(イスラム法)の解釈を適用する姿勢を強め、むち打ち刑の執行が相次いでいる。

1996〜2001年の旧政権時代に国際社会などで問題視されていた公開処刑や身体刑などが復活しつつあるとして、懸念が強まっている。

最高裁は19日に出した声明で、北東部タハール州で11日、州裁判所の命令に基づき女性9人を含む19人に公開のむち打ち刑を執行したと明かした。19人は姦通や窃盗などの疑いで逮捕され、「シャリーアに基づく調査後、39回のむち打ちが言い渡された」という。

タリバン指導部の意向を反映したものであるのは明らかだ。暫定政権の報道官は13日、ツイッターで、最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師がタリバンの判事との会談で、公開処刑やむち打ちなどの身体刑を含むシャリーアに沿った刑罰の完全実施を指示していたと明かしていた。

中部バーミヤン州の関係者によると、指示があったと公表された後、同州で違法行為をしたとされる少年と少女へむち打ち刑が執行された。東部ロガール州でも23日、男女14人に対して執り行われた。いずれも裁判所が命じたという。

タリバンは昨年8月の復権後、戦闘員らが罪を犯したとされる人に裁判を経ずにむち打ちする様子が、SNSなどに度々投稿されていた。国民に対する抑圧を次第に強めている暫定政権が厳しい刑罰の実施を拡大させていく可能性が高い。【11月26日 読売】
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公開むち打ち刑の執行以外にも、イスラム主義強化の動きが報じられています。

****タリバン、アフガン首都に屋外スピーカー400個新設 礼拝呼び掛けで****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は24日、礼拝への参加を促すため、首都カブールに屋外スピーカーを400個新設したと発表した。

勧善懲悪省はさらに、誰もが集団礼拝に参加できるよう、市内の空き店舗や使われていない建物数百軒をモスク(イスラム礼拝所)に改装したと明らかにした。

同省は「前政権下で一部の屋外スピーカーが撤去され、アザーン(礼拝の呼び掛け)を聞けなくなっていた」とツイッターに投稿した。同時にアザーンを聞くことができるよう、新しいスピーカーは市内各地に設置されるという。

現地メディアは同日、勧善懲悪省がカブールの特定地域の商店に対し、最も重要とされる金曜礼拝の際には店を閉めるよう命じたと報じている。(後略)【11月24日 AFP】
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“礼拝の際には店を閉めさせる”というのは、以前、マレーシア観光中に、イスラム原理主義勢力PAS(全マレーシア・イスラーム党)が実権を握る地域で目にしたことがありますが、拡声器を手にした男性の指示で突然市場の屋台がクローズされ、ひと気が消えるという異様な光景でした。

“米政府系ラジオ、一部で禁止=国営のイスラム法専門局設立―アフガン”【12月5日 時事】といったメディア対応も。

タリバンの政策で国際的に最も評判の悪い女性の権利侵害に関しても、悪化が進んでいます。

****女性へのSIMカード販売禁止=タリバン、新たな行動制限か―アフガン南部****
アフガニスタン南部ウルズガン州で、携帯電話の通信に必要となるSIMカードの女性への販売が禁じられた。地元民放トロTVが23日、伝えた。

イスラム主義組織タリバン暫定政権の影響下にある州当局者は、女性の販売員がいないことが理由と説明したという。
暫定政権は今月に入り、女性が公園や公衆浴場、ジムなどに立ち入ることを全土で禁止した。女性の行動制限を一層強めており、今回の措置もその一環の可能性がある。【11月24日 時事】
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【女子大学教育無期限停止で女子教育は小学校のみに】
そうした状況で、「?? タリバンも軟化したのかな?」と思ったのが、タリバンが示した“善意”

****タリバン、アフガンで拘束の米国人2人を解放=米国務省****
米国務省のプライス報道官は、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が拘束していた米国人2人を解放したと発表した。囚人交換や金銭が絡む取引ではないとし、善意を示す狙いがあるようだと説明した。(中略)

「少なくともタリバン側の説明に沿えば、善意のしるしだとわれわれは理解している」と語った。(後略)。【12月21日 ロイター】
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タリバンにも“善意”があったのか・・・とも意外に思ったのですが、やっぱり幻想だったようで、同日のニュースで周知の女子大学教育無期限停止が報じられました。国連・欧米は激しく反発しています。

****タリバン、アフガン女子の大学教育を停止 米英や国連が批判****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の高等教育省は20日、公立と私立の大学に対し、女子教育を直ちに停止するよう命じた。別途通知があるまでとして期限を設けておらず、米英や国連からは強い非難の声が上がった。

米国を含む諸外国はこれまで、タリバン暫定政権が女子教育に関する方針を転換しない限り、政権の正式承認を検討することはないとしてきた。

米国務省のプライス報道官は大学の女子教育停止は「許容できないもので、タリバンに重大な結果をもたらし、国際社会からのさらなる孤立を招く」と強調した。

米国のウッド国連次席大使はこの日開かれたアフガン情勢を巡る安全保障理事会の会合で、「タリバンが全てのアフガン人の権利、とりわけ女性の人権や基本的自由を尊重するまでは国際社会の正当な一員にはなれない」と強調した。

ウッドワード英国連大使は大学教育停止は「女性の権利を一層ひどく制限し、女子学生一人一人に深い失望を与えるものだ」と批判。

タリバン暫定政権は3月に日本の中学・高校に当たる中等教育の女子通学を延期しており、国内外の批判を招いていた。

国連のドゥジャリク事務総長報道官は大学の女子教育停止で「タリバンは再び約束を破った」と非難し、「非常に憂慮すべき動きだ」と語った。【12月21日 ロイター】
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昨年8月に権力を握り返したタリバンは、中高生年代の少女の通学を1年以上にわたって禁止する一方で、小学校や大学の再開は認めてきました。今回の措置で女子が通えるのは小学校だけになりました。

理由については、いろいろ報じられています。
“暫定政権の幹部は取材に対し、「タリバンを支持する地方の有力者の中には、女性は10代で結婚し、家事や育児をするのが役割だと考える人が少なくない」として、女性の教育を制限する理由を打ち明ける。”【日系メディア】

“今年2月に公立大が再開した際に暫定政権が男女別授業を条件としたため男子の授業時間が減少し、高等教育省が問題視したことがきっかけとなったことが21日、同省幹部らへの取材で分かった。”【12月21日 共同】

公式見解としては「服装規定違反」があげられています。

****女子大学教育の禁止、理由は「服装規定違反」 タリバン****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権のネダ・モハマド・ナディーム高等教育相は22日、大学での女子教育を禁止した理由として、女子学生が服装規定などの指示に従っていなかったと主張した。
 
ディーム氏は20日、国内の全大学に対し女子教育の停止を命じ、国際社会の反発を呼んだ。同氏は国営テレビのインタビューで、女子学生たちが頭髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」着用の指示にも従わず、「結婚式にでも行くような服装をしていた」と述べた。

タリバンは昨年の政権掌握以降、女性の権利に対する締め付けを強化。大半の地域では、日本の中学・高校に当たる中等教育の女子通学も1年以上にわたって停止されている。タリバンはこれを一時的な措置だとしつつも、さまざまな理由をつけて再開を拒んでいる。 【12月23日 AFP】
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「服装規定違反」も“さまざまな理由”のひとつで、要するに“女性は10代で結婚し、家事や育児をするのが役割だ”という考えのあらわれでしょう。

【女性の抗議、男子学生の連帯、有名人や他のイスラム教国からの批判はあるものの、事態を動かす力とはなっていない】
“カブールで女性らが抗議デモ タリバンが女子教育停止受け”【12月22日 日テレNEWS】といった動きもありますが、数十人規模と小規模で、タリバンは女性らをムチで打つなどしてデモを解散させたということです。

“男子学生の間でも衝撃が広がっており、東部ジャララバードでは一部の学生が抗議として試験をボイコットした”【12月22日 AFP】といった男子学生の連帯や、下記のような用名人や他のイスラム教国からの批判もありますが、事態を改善する力とはなっていません。

****タリバンの女性大学教育停止へ抗議 クリケット選手も「連帯」****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが女性の大学教育を停止したことを受け、国内外で抗議の動きが広がっている。

女子学生が大学前で抗議を続けているだけでなく、国民的スポーツのクリケットの選手たちが非難の声を上げる動きもある。他のイスラム教国からも方針撤回を求める声明が相次ぎ、タリバンは国際的に孤立を深めている。

「私たちの社会と国は、女性の教育を切実に求めていることを認めないといけない。明るい国の未来は(男性と女性)双方の教育と努力によって保証されるからだ」。クリケットでアフガン代表チームの主将を務めたモハンマド・ナビ選手は、フェイスブックでこう訴えた。

他のクリケット選手たちもツイッターに「#LetAfghanGirlsLearn(アフガンの少女たちに教育を)」のハッシュタグ(検索目印)を付けて、「アフガンの姉妹や娘たちに連帯して立ち上がる」などと投稿した。

報道によると、22日も首都カブールなどで女子大学生が教育停止の撤回を求めて抗議した。また、抗議の意思を示すために試験をボイコットする男子学生や、辞表を提出する教職員も出ている。

タリバン暫定政権は昨年9月に、事前に当局の許可を得ていないデモを禁止する通達を出している。国連アフガニスタン支援団(UNAMA)の報告書によると、タリバンの政策に反対するデモの参加者が拘束される事例が相次ぎ、抗議活動は減少していた。

ソーシャルメディア上では、今回のデモ参加者の一部が拘束されたとする投稿もあり、抗議の広がりが実際にタリバンの方針に影響を与えるかは不透明だ。

一方、イスラム教国からも非難が相次いでいる。AP通信によると、トルコのチャブシオール外相は22日、女性の大学教育の停止について「イスラム教的でも人道的でもない」と述べ、タリバンに再考を求めた。サウジアラビア、パキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)の外務省も方針の撤回を要求している。(後略)【12月23日 毎日】
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【タリバン政権下で抑圧される人々、困窮する市民生活】
下記は、女子大学教育無期限停止以前のものです。今は事態は更に悪化しています。

****将来への不安で精神を病む若者急増、女子校の閉鎖400日超に タリバン支配下で今、起きていること―安井浩美のアフガニスタン便り****
アフガニスタンでイスラム主義組織、タリバン政権が復権して2年目の年を迎えようとしている。昨年8月の大混乱がうそのように、街は落ち着いて見える。しかし、人々のタリバンに対する不信感がなくなったわけではない。「諦め」に近い状態に人々は陥っているのかもしれない。

12月になって首都カブールを含めアフガニスタン各地で雪が積もりだした。マイナス20度にもなる厳寒の冬を乗り切るための冬支度に忙しいのが普通だが、経済破綻でままならない。日雇い仕事もほとんどなく、職に就けない若者はもんもんとした日々を過ごす。

中学や高校で勉強するはずだった女子学生も「学校閉鎖」が長引き「もう疲れた」という言葉が聞かれるようになっている。

今が繁忙期であるはずの薪や石炭ストーブを売る店主は、売り上げが激減し悲鳴を上げている。例年の2割程度の売り上げでこのままだと店を畳んで別の商売をするしか生きる道はないと話す。一方、消費者は、食料を買うお金もままならず薪や石炭を買う余裕はないというのが本音だ。

急増する精神を病む若者
「若者の8割は、精神を病んでいる」という言葉をテレビのニュースを初めとして最近いろんなところで聞く。人と会うのがおっくうで元気がなく、うつ気味で一日中考え込むなど精神を病む若者が増えている。アフガン保健省は「一人で考え込まないように、先生や両親、友人など信頼できる人に相談しましょう」とテレビコマーシャルを通じて若者の精神ケアについて啓発し始めた。自殺する若者も出ている。アフガニスタンでは家庭内の問題に干渉しない傾向が強いが、それだけ精神的に追い詰められた人が多いということになる。(中略)

▽拍車が掛かる女性への圧力
タリバン政権下では、女子教育が事実上認められなくなった。タリバン復権後まもなく、日本の中高等教育にあたる7年生から12年生の女子校が閉鎖され、400日以上が過ぎている。国際社会、イスラム聖職者からの要請にも応じないタリバン。勧善懲悪省のハナフィ大臣は「女子教育は、ムダだ」とまで言い出している。

一方で、タリバン内部でもスタナクザイ外務副大臣のように「女子教育は女性の権利であり、教育を受けることは重要だ」と言う人もいる。タリバン内に穏健派がいるということはせめてもの救いだが、あるタリバン関係者によると、政権内の9割が女子校の再開を望んでも、事態は変わらない可能性が高いという。閉鎖が続く理由ははっきり分からないが、タリバン最高指導者のハイバトゥラ師からの許可待ちという見方もある。

 人権活動家のマフブバ・セラジさん(74)は「タリバン政権下で女性のおかれる状況は最悪だ。女性の存在自体がアフガニスタンには、ないのも同じだ」と声を荒らげる。 タリバン復権後1年以上が過ぎた今の状況を「アフガニスタンの将来がどうなるのか誰にも予測できない。ただ次に起こる事態を待つ以外に何もできない」と嘆いた。(中略)

▽危ぶまれる伝統工芸
アフガニスタンの伝統工芸といえば、手織りのじゅうたんが挙げられる。世界有数の手織りじゅうたん技術が存続の危機に直面している。(中略)

タリバン復権後は、海外へのじゅうたんの輸出がほとんどなくなり、外国から買い付け人も来なくなった。そのしわ寄せはじゅうたん織りを行う貧しい村をもろに直撃した。(中略)

じゅうたん織りで生計が立たなくなった今、別の仕事を見つけるにしても地元では難しい。残る手段は故郷を捨て、街に出て仕事を見つけることだが、アフガニスタン全体で経済が破綻しており、都市部の状況は地方よりも厳しいともいえる。(中略)

国内で一番貧困率の高いファリヤブ州の州都マイマナ市にある子ども病院では、タリバン政権後1年以上たった今も早産での未熟児や栄養失調児の子どもたちが多数入院していた。国連の報告によると、人口の半数以上が食糧支援を必要としている。(中略)

赤十字国際委員会(ICRC)の最近の報告では、支援する国内33か所の病院で栄養失調の子どもが昨年と比べ90%増えているといい、5歳未満の肺炎発症率は昨年より55%増加している。厳冬で栄養不足の子供たちが肺炎を発症し命を落とす羽目にならないことを願っている。【12月10日 47リポーターズ】
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今回の女子大学教育無期限停止で電話取材を受けた女子学生は、“タリバンによる通学停止の決定をSNSで知り、涙が止まらなくなった。何かの間違いであって欲しいと願って翌朝に大学に向かったが、銃を持ったタリバンの戦闘員たちに止められ、校内に入ることはできなかった。”と語っています。

更に「大学生活は、私たち女性にとって唯一の希望だった。タリバンは私たちの息の根を止めようとしている」と涙ながらに語り、「国際社会にはこの決定を覆すよう、私たちを支援して欲しい。このままだと、夢も希望も持てない」と訴えたとのこと。【日系メディアより】

こうした悲痛な叫びに応えられない国際社会の無力さが残念です。

【タリバンは女性の権利制限を加速】
タリバンの強硬姿勢は更に明らかになっています。

****タリバン NGO女性職員の出勤停止 人道支援への影響懸念****
アフガニスタンのイスラム主義組織、タリバンは、国内で女性がNGO=非政府組織で働くことを認めないと発表しました。女性の権利をめぐっては、大学教育が停止されたばかりで締め付けが強まっています。

ロイター通信などによりますと、タリバンの経済省は、24日、アフガニスタンで活動する国内外のNGOに対し「追って通知があるまで」女性を働かせないよう命じました。「イスラム法の解釈に基づく服装の規定を守らない人がいたため」と主張していて、従わない場合は「活動の許可を取り消す」としています。

タリバンによる実権掌握以降、アフガニスタンでは制裁などの影響で貧困が拡大。ロイター通信は人道援助に携わる人の話として、男性職員が女性に対する支援を行うことは「規定や文化的な慣習」から難しいことが多く、NGOにおいて女性職員は不可欠だと伝えていて、今回の命令による影響が懸念されます。

タリバンは、20日にも全国の大学に対し女性が通うことを認めないよう命じ、国内外から非難が殺到。24日には西部の都市ヘラートで「教育は私たちの権利だ」と声をあげて抗議する女性たちに対し治安部隊が放水するなど、女性の権利に対する抑圧はいっそう強まっています。【12月25日 TBS NEWS DIG】
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アフガニスタン  イスラム主義による厳格・抑圧的な統治を強めるタリバン政権

2022-11-15 22:37:06 | アフガン・パキスタン
(治安部隊の女性たち(タリバン暫定政権の内務省)【11月5日 日テレNEWS】)

【タリバン政権 イスラム主義による厳格・抑圧的な統治を強める】
政権掌握時には旧政権時代より穏健な統治も示していたアフガニスタンのイスラム原理主義組織タリバンですが、次第に(彼らが信じる)イスラム主義による厳格・抑圧的な統治の色合いを濃くしています。

****タリバン、イスラム法の完全執行命令 アフガン****
アフガニスタンの実権を掌握するイスラム主義組織タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は、同国の裁判官に対し、公開処刑や石打ち、むち打ち、窃盗犯の手足の切断など、シャリア(イスラム法)のすべての側面を完全に執行するよう命じた。ザビフラ・ムジャヒド報道官が13日夜、発表した。

同報道官はツイッターへの投稿で、アクンザダ師が裁判官と会談後に「義務的」命令を出したと説明した。同師は、昨年8月にタリバンが政権を掌握して以来、公の場に姿を見せておらず、同組織発祥の地である南部カンダハルから法令を出して同国を統治している。

タリバンは1996〜2001年に政権を握った際、抑圧的な支配体制を敷き、競技場でのむち打ちや公開処刑などを定期的に行っていた。昨年の政権掌握時にはより穏健な統治を約束していたが、徐々に国民の自由と権利の締め付けを強化している。

ソーシャルメディアでは1年間以上にわたり、タリバン戦闘員がさまざまな犯罪の疑いで人々にむち打ちの刑を執行する動画や写真が拡散している。タリバンはまた、銃撃戦で死亡したとされる誘拐犯の遺体を何度か公の場にさらしている。農村部では、金曜礼拝の後、不倫をした人がむち打ちの刑に処されているとの報告もあるが、真偽は不明だ。 【11月15日 AFP】
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国内でのタリバン統治への不満、タリバン政権を承認しない欧米との軋轢、IS(イスラム国)系のテロ活動などによる安定しない治安状況・・・等々へのタリバン政権の苛立ちを示すもののように思われます。

****アフガン首都の自爆攻撃、死者35人に ハザラ人女性が抗議デモ****
アフガニスタンの首都カブールで9月30日、大学入試の模擬試験会場が自爆攻撃を受けた事件で、国連は1日、死者が35人に達したと発表した。

国連アフガニスタン支援団によると、最新情報では少なくとも35人が死亡、82人が負傷した。うち20人以上が少女と女性だという。(筆者注:国連は10月3日、死者が53人に増えたと発表。うち46人は少女や若い女性とのこと。)

模擬試験の会場となった教育施設があるカブール西部のダシュテバルチは、イスラム教シーア派の住民が多く、中でも長年迫害されてきた少数民族ハザラ人が居住している地区。

1日にはハザラ人女性約50人が、イスラム主義組織タリバンの集会禁止令を無視し、地元での惨事を受けて抗議デモを実施。黒いヒジャブとスカーフに身を包み、「ハザラ人虐殺を止めろ、シーア派教徒であることは罪ではない」などと叫びながら、負傷者が入院している病院の前を行進した。

目撃者はAFPに対し、攻撃の実行犯は、男女別のホールのうち女性用のセクションで自爆したと語った。

デモに参加していた女性はAFPに、この攻撃は「ハザラ人とハザラ人の少女たちに対するもの」だと述べ、「こうした大量殺害をやめるよう求める。私たちは自分たちの権利を要求するために抗議している」と語った。 【10月2日 AFP】
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“犯行声明を出している組織はないが、シーア派を異端視するイスラム過激派組織「イスラム国」は過去に同地域で少女や学校、モスク(イスラム礼拝所)を標的とした攻撃を繰り返してきた”【10月4日 AFP】

統治を厳格・抑圧的なものにするタリバンの姿勢を反映したものには、以下のような動きも。

****“全身黒ずくめ”ヘルメットに盾を持つ女性たち タリバンが女性治安部隊を創設 その狙いは****
アフガニスタンで実権を握るタリバンは、今週、治安部隊に元警察官の女性約100人を採用したと明らかにした。女性への抑圧が懸念される中、その狙いは何なのか。
 ◇◇◇
目以外の全身を黒い服で覆った女性たち。頭にはフェイスシールド付きのヘルメットを装着し、盾を持っている。
タリバン暫定政権で国内の治安維持を担う内務省は、今週、女性による治安部隊の創立を明らかにした。元警察官の女性100人を再雇用したのだという。

治安部隊の女性(タリバン暫定政権の内務省)女性隊員らは「暴動を防ぐための訓練は有益だった」「仕事を離れていた女性警察官たちに、職務に戻るようお願いしたい」などと話していた。

タリバン復権後、多くの女性が役所などの公的な仕事につきにくくなったと指摘される中、元女性警察官の職場復帰は、歓迎すべき動きにも見える。

しかし、タリバンは、いまも、女性の権利を訴えるデモなどを許さず、厳しい取り締まりを続けている。今週も、記者会見場にタリバンがやってきて、女性活動家が逮捕されるということがあった。

治安部隊の女性たち(タリバン暫定政権の内務省)女性治安部隊は、警備や暴動鎮圧のための訓練を受けているとされ、女性たちの抗議デモを取り締まる目的があると指摘されている。

女性治安部隊が、力づくで、女性の権利を訴えるデモを取り締まる状況が訪れるのか、懸念が広がっている。【11月5日 日テレNEWS】
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****タリバン、公園・遊園地への女性の入場禁止 アフガン首都****
アフガニスタンの実権を掌握するイスラム主義組織タリバンは今週、首都カブールの公園や遊園地への女性の入場を禁止した。

タリバンは実権掌握以来、男性の付き添いなしで旅行するのを禁止し、外出の際には常にヒジャブやブルカの着用を義務付けるなど、女性の公共の場での権利を制限してきた。女子中等教育機関も、ほぼ全国で1年以上閉鎖されている。

勧善懲悪省の報道官は9日夜、AFPの取材に応じ、「われわれはここ1年3か月、問題解決に最善を尽くしてきた」「しかし、いまだ一部の場所、いや、実際には多くの場所で規則が破られている」と語った。
「(男女が)分けられておらず、ヒジャブの着用も守られていないため、今回の判断に至った」

ある女性は、公園で遊ぶ子どもたちを近くの飲食店の窓から見守りながらこう話した。「学校も、仕事もない。少なくとも私たちも楽しめる場所が欲しい」

その隣のテーブルでは、姉妹と一緒に1日を過ごそうと公園に来た、大学でイスラム法を学ぶ女性が「家にいるのに飽き飽きしていたので、楽しみにしていたのに」とがっかりした様子で言った。「イスラム教では外出して、公園に行くことは明らかに認められている。何の自由もないのなら、この国に住む意味があるのだろうか」

女性だけではなく、施設開発に多額の投資をしてきた公園管理者らも落胆を隠せない。
数キロ先にあるザザイ遊園地では、入場者数があまりにも少ないため、観覧車などほとんどの乗り物を突如運休にした。

ハビブ・ジャン・ザザイ氏は、1100万ドル(約16億円)を投じ、遊園地を共同開発した。250人の従業員がいるが、遊園地を閉鎖しなければならないのではないかと心配している。

ザザイ氏は「女性が来なければ、子どもたちも自分たちだけでは来ない」と訴える。今回の決定により、国外在住のアフガニスタン人は投資を避けるようになり、税収にも影響が出るだろうと警告する。
「政府は税金で運営されている。投資家が税金を払わなければ、どうやって国を運営していくつもりなのだろう」 【11月10日 AFP】
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首都カブールの遊園地では今年4月以降、男性と女性で入場できる曜日を分けて対応していましたが、今月に入って女性の入場は認められなくなったとのこと。

女性が禁止されれば、子供も連れて来られない・・・ほとんど利用する人のいない公園・遊園地、髭面の男だけの遊園地といった奇妙で愚かしい光景になるのかも。

タリバンは、基本的に人々が娯楽を楽しむことが気にいらないのでしょう。(旧政権時代は、音楽も、演劇も、凧あげも、闘犬も“娯楽”は全て禁止されました) 人々は家でおとなしくコーランを読んでいればいいという発想でしょうか。 もっとも、政権奪取直後、遊園地で嬉々として遊ぶタリバン一般兵士の姿などが報じられていましたが・・・。

【強権支配政権との付き合い方】
こうした抑圧姿勢を強めるタリバンとの付き合い方は難しいところ。
日本を含め、タリバン政権を政府承認した国は現在もありませんが、日本は首都カブールで大使館の一部業務を再開させました。

****アフガン タリバン暫定政権 日本大使と会談 業務の再開を歓迎****
アフガニスタンのイスラム主義勢力、タリバンの暫定政権はハッカーニ内相代行が首都カブールで大使館の一部業務を再開させた日本の大使と会談し、関係の強化につながるとして歓迎したことを明らかにしました。

アフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンの暫定政権は、治安対策などを担当するハッカーニ内相代行とアフガニスタンに駐在する日本の岡田隆大使が、23日に首都カブールで会談したことを明らかにしました。

アフガニスタンの日本大使館は、前の政権が崩壊した去年8月以降、一時閉鎖されていましたが、先月から業務を一部再開させています。

タリバン側の発表によりますと、会談でハッカーニ内相代行は、日本が大使館の業務を再開させたことについて「関係強化につながる効果的な一歩だ」として歓迎し大使館の安全を守ると約束したということです。

一方、日本大使館によりますと、会談ではタリバンが認めていない日本の中学校と高校にあたる学校に通う女子生徒に対する授業の再開など、国際社会が抱いている懸念についても、意見を交わしたとしています。

タリバンの暫定政権をめぐっては、女性の権利を制限しているなどとして、国際社会からの批判が強く、これまで承認した国はなく、日本がどのような関係を築いていくかが課題です。【10月24日 NHK】
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欧米諸国がどういう対応をしているのかは知りません。
ただ、日本はかつてのスリランカやミャンマー軍事政権など、欧米諸国が人権抑圧を理由に関係を断つ政権と、経済関係優先、あるいは中国との影響力競争などの視点から宥和的な外交をする傾向もありますので、今後のタリバン政権との関係が注目されます。

アフガニスタンと日本のつながりでは、公益財団法人ジョイセフによる「思い出のランドセルギフト」事業という活動も。

****思い出のランドセルギフト」とは****
日本で役目を終えたランドセルをアフガニスタンに寄贈し、子どもたち、特に教育の機会に恵まれない女の子の就学に役立てる国際支援活動です。2004年の開始以来、およそ26万個のランドセルが贈られました。

ランドセルを贈ることで、子どもたちが学校で学ぶ機会が得られ、読み書きができるようになり、自分自身や家族を守る知識や情報を身につけられるようになることを目指しています。この活動は、小学校4年生の国語や中学校の英語の教科書といった教材にも取り上げられています。9,360個のランドセルがアフガニスタンに届きました

2021年8月に起きたタリバンの全権掌握により不安定な情勢が今なお続くアフガニスタンに2021年11月〜2022年7月までに寄贈された9360個のランドセルをナンガハール州のヒスラク郡とシェルザッド郡の小学生1年生から3年生の子どもたちへ配付しました。

配付は10月に開始され、11月も配付が続けられます。ヒスラク郡は昨年の政変までタリバンの支配下にあったため、20年間、国際支援が届けられなかった地域です。ヒスラク郡もシェルザッド郡の子どもたちにも今回初めて日本のランドセルと学用品を届けることができました。(後略)【11月4日 公益財団法人ジョイセフ】
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こうした活動を行うためにはタリバン政権との一定のパイプが必要にもなります。
より広範な話としては、飢餓に苦しむタリバン国民への食糧支援の問題もあります。

人権抑圧政権を無視すればいいというものでもありません。さりとて、人道支援が強権支配政権を利することにつながるのも釈然としない・・・ということで、悩ましいところです。


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アフガニスタン  「人権は存在しない」」「女性の存在は消されている」 鈍い国際社会の対応

2022-09-14 23:27:05 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタン東部ナンガルハル州で、水が入った容器を運ぶ少女(2022年9月11日撮影)【9月13日 AFP】)

【「監視と弾圧はかつての政権と同じで、本質は変わっていない」】
これまでも再三再四取り上げているアフガニスタン・タリバンによる弾圧、特に女性に関する問題。
「またか」と言われそうですが、最近でも連日のように報じられており、事態が一向に改善しない状況がうかがわれます。

9月8日で、タリバン暫定政権が始動してから1年となりましたが、タリバン統治が旧政権時代と本質的に変わっていないことが次第に明らかになっています。

****マーライオンの目 タリバン「穏健路線」の嘘****
「日本は米国の仲間だろう」。イスラム原理主義勢力タリバンが実権を掌握して1年が過ぎたアフガニスタンを訪れた。首都カブールで取材中、タリバン戦闘員にこう詰め寄られ、カメラ内のデータの削除を求められた。目を離した隙にカメラからSDカードを抜いて隠し、その場は何とか切り抜けたが、厳しい監視の一端がうかがい知れた。

カブールなど各都市で目についたのは街中にあふれる戦闘員だ。「治安維持」を名目に監視を行い、米軍で勤務した人物らへの弾圧を展開している。

タリバンは昨年8月の首都制圧後、旧タリバン政権(1996〜2001年)が実施した公開処刑など恐怖政治を、表向きは行っていない。「穏健路線」をアピールしている形だが、実態は違う。取材に応じた音楽家や女性活動家は「監視と弾圧はかつての政権と同じで、本質は変わっていない」と異口同音に語った。

タリバン支配が固定化する一方、急速に拡大する貧困に対してタリバン上層部は有効な解決策を持たない。国内では国際社会の目がウクライナ情勢などに向き、アフガンの注目度が下がっていることに懸念の声が上がっている。「アフガン国民にとって地獄は、むしろこれからだ。世界はアフガンを見捨てないでほしい」。音楽家の男性の言葉が胸に響いた。【9月14日 産経】
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****タリバン、報道弾圧を強化 国外移転しネットで対抗****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が始動してから8日で1年となった。

暫定政権は記者の拘束や検閲を通じて報道への弾圧を強め、既存メディアの弱体化が指摘される。国際社会の制裁による経済危機の影響もあり、この1年で記者の人数は約6割減少。国外に拠点を移し、インターネットの自社サイトで政権批判を続けて対抗する地元紙も出ている。
 
タリバンは既存メディアに対し、報道の自由を認める一方、イスラム法の尊重と国益保護を要求。政権の動向や治安に関する報道は情報文化省からの事前許可が必要で、事実上の検閲が横行している。【9月8日 共同】
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【懸念される女性への暴力、教育打ち切り】
連日の女性問題に関する報道をいくつか。

****アフガン女性、タリバン幹部によるレイプ・強制結婚を告発****
アフガニスタンの女性が、イスラム主義組織タリバンの幹部から暴行やレイプを受け、強制的に結婚させられたと訴える動画をネットに投稿した。この幹部は女性の主張を否定している。
 
動画が投稿されたのは先月30日。エラハと名乗る女性が、内務省で報道官を務めたサイード・ホスティ氏から性的暴行を受けたと主張している。ヒジャブをかぶったエラハさんは20代半ばとみられ、カブール大学の医学生だと述べている。
 
ホスティ氏は、エラハさんとは「合意に基づき結婚」し、その後離婚したとしている。
これまでに、双方の主張がソーシャルメディアで数千回共有されている。アフガニスタンで、タリバン構成員による性的暴行の告発や、特定個人の詳細が流布するのはまれ。
 
エラハさんは動画で「2月に、内務省報道官だったサイード・ホスティに内務省の建物内で強制的に結婚させられた」「殴られ、レイプされた。どうしたらいいか分からなかった」と涙ながらに語った。2人が知り合った経緯には触れていない。
 
アフガニスタン軍幹部の娘だというエラハさんは逃亡を試みたが、パキスタンと国境を接するトルカムで拘束され、首都カブールの刑務所に入れられた。ホスティ氏から謝罪を求められ、拒否すると殴られたという。
 
エラハさんがこの動画をどこから投稿し、現在どこにいるのかは不明。
 
ホスティ氏はツイッターでエラハさんの訴えを否定。「彼女には信仰に関する問題がいくつかあった。話し合いや助言を通じて矯正を試みたが、駄目だった」と主張した。
 
また、エラハさんが望むなら自分を訴えることもできるとし、「イスラム首長国のムジャヒディン(イスラム戦士)と国民に謝罪する。神のお許しを」と続けた。
 
タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は昨年、「強制や圧力によって女性に結婚を無理強いした」場合、厳しい措置を取るよう命じている。 【9月2日 AFP】AFPBB News
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エラハさんによると、女性の権利を訴えるデモに関与したとして拘束された際に警察署を訪れていたタリバン高官に目をつけられ、強制的に結婚させられたとのこと。

人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、9月1日、声明で「タリバンの役人が強制結婚やレイプ、暴行、脅迫行為を行っていたとしても、驚くことではない」とした上で、エラハさんの所在と健康状態について緊急に調査する必要があると訴えています。【9月3日 日テレNEWS24より】

常に問題となる女子教育。

****再開の女子中等教育打ち切り タリバン、生徒が抗議****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は10日、東部パクティア州で部族長らが独自の判断で再開していた女子中等教育(日本の中学・高校に相当)を打ち切った。女子生徒らは抗議し再開を訴えた。地元メディアが報じた。
 
暫定政権は女子教育の尊重を主張する一方で、女子中等教育の全面再開を拒んでいる。国際社会からの批判は強く、今回の打ち切りはさらなる波紋を呼びそうだ。
 
女子生徒らは10日、学校に入ることが許されず、数十人がデモ行進。生徒の1人は地元メディアに「とてもショックだった」と語った。【9月11日 共同】
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カルザイ元大統領も11日、タリバンに対し女子高校を再開するよう求めるとともに、東部パクティア州で女子学生らが学校閉鎖に抗議行動を行っていると住民が伝えている件を称賛しています。

カルザイ元大統領の現在の政治的影響力についてはよく知りませんが、タリバンとは同じパシュトゥン人ということもあって比較的対話・協調も可能な立ち位置で、上から目線でアフガニスタンの権利・独自性を認めず武力掃討中心のアメリカとはそりが合わないところもありました。(アメリカにすれば、カルザイ氏こそは腐敗・汚職・非効率の中心にいるということになりますが)

昨年末もCNNインタビューで“、国際社会はますます緊要となっている援助をアフガニスタンの人々に届けることを優先し、今のところタリバンへの不信感は棚上げにする必要がある”と語っています。

****カルザイ元アフガン大統領、女子高校再開をタリバンに要請****
アフガニスタンのカルザイ元大統領は11日、実権を掌握しているイスラム主義組織タリバンに対し、女子高校を再開するよう求めるとともに、東部パクティア州で女子学生らが学校閉鎖に抗議行動を行っていると住民が伝えている件を称賛した。

カルザイ氏はツイッターで「パクティア州の女子学生たちの声はアフガニスタンの全女子の声であり、全アフガニスタン人の声だ。われわれは暫定政権に対し学校再開を要請する」と投稿した。

タリバンは3月、女子校再開の公約を突然撤回した。パクティア州当局は女子高校を再開したと発表したが、公式に承認されていない。【9月12日 ロイター】
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【アフガニスタンの女性は「家の中の囚人」へ 西側からの動きはないに等しい】
カルザイ元大統領、逃亡したガニ前大統領時代のアフガニスタン政府が十分に女性の権利を保護した訳でもありませんが、それでも少しずつ前進していた女性の地位・権利はタリバン復活で「無」に帰することにもなっています。

****20年間の進歩と希望は「無」に帰した──アフガン女性たちの地獄****
<タリバン復権から1年がたち世界の関心が薄まるアフガニスタンだが、この国に生きる女性たちには再び暗黒の時代が訪れている>
最後の駐留米軍がアフガニスタンを去り、イスラム主義勢力タリバンが政権を掌握してから丸1年。アフガニスタンの貧困、特に女性や少女に対する厳しい抑圧、そして国際的孤立は悪化の一途をたどっている。

アフガニスタンの政治家で人権活動家のアズラ・ジャファリは、2004年に採択された憲法の起草に参加した唯一の女性であり、同国で女性初の市長になった人物だ。今、亡命先のアメリカから祖国の現状を見つめつつ、絶望感を募らせている。

「私たちは20年間、民主主義を機能させていた。この20年間、私たちは希望に満ちていた」とジャファリは本誌に語った。「今や何も残っていない。私たちが20年間取り組んできたものは無に帰してしまった」

当初はあたかも穏健化したかのようなふりをしていたタリバンだが、政権を掌握してからというもの、女性や少女が学校や自宅外の多くの職場に行くことを禁じている。女性たちの着るものや発言、行動は厳しく制限されている。恣意的な逮捕や失踪、拷問や殺害といった人権侵害に遭う例は男女問わず多い。

アメリカとその同盟国が足並みをそろえて外圧をかけない限り、何も変わらないだろうとジャファリは言う。
「アフガニスタンに、タリバンを制御できる集団は存在しないと思う」と彼女は言う。「タリバンが自らイデオロギーを変えることはないだろうから、国際社会は(外圧のための)行動計画を立てる必要がある」。

だがこれまでのところ、女性の権利侵害に対する非難声明を除けば、西側からの動きはないに等しいと彼女は言う。(中略)

悲惨な拷問の末に殺害されたハザラ人女性
国連によれば4月、タリバンは助産師の女性を拷問し殺害した。彼女は両足を切断され、刃物で刺され、12発も弾丸を撃ち込まれた。女でハザラ人だからというのが理由だった。

タリバン政権崩壊後、学校に通う女性や少女の数、そして女性が経営する事業所の数は増加した。下院議員の定員のうち27%は女性に割り当てられた。

タリバン政権下では女性はなかなか医療を受けることができなかったが、新政府は女性が診察を受けられる医療施設を3000カ所以上、建設した。新生児の死亡率は減少し、ブルッキングス研究所によれば女性の平均寿命は01年の56歳から17年には66歳へと大幅に伸びた。
ただし、女性の地位に対する古い考え方は国中に深く根を張っていた。農村部の女性は都市部の女性ほど自由を手にできなかった。

それでも女性の生活はいいほうへと大きく変わった。この進歩はタリバンの復権がなければ続いていただろうとジャファリは考える。だが今は「女性が完全に社会から切り離されてしまう」という彼女の危惧が現実のものになりそうな状況だ。

うわべだけだったタリバンの融和姿勢
1年前、米軍が混乱のうちに撤退した直後、タリバン政権は表向きは融和的な姿勢を見せていた。ザビフラ・ムジャヒド報道官も、女性に対する差別のない、全ての人に平等な政権だとアピールしていた。「シャリーア(イスラム法)の枠内で」とか「われわれの文化の枠内で」というただし書きは忘れなかったが。

それはつまり、大半の女性が働くことを禁じられるという意味だ。これでは女性の稼ぎで生活している家族は貧困に突き落とされてしまう。

さらに、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、この国は財政危機に瀕しているため、働いている女性も適切な賃金が支払われない場合がある。なんとか働き続けていても、厳しい服装規定を守らなければ解雇される。

タリバンは公式声明で、女性は家の中にいればいいと忠告している。「ヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭髪を覆うスカーフ)に従っているという最も分かりやすい印は、家から出ないこと」だからだ。

家の外では女性は顔を覆わなければならず、地域によっては親族の男性が同伴しなければならない。女性が服装規定に違反すると、親族の男性が罰金や懲役を科される。国連によると女性の10人に9人がドメスティックバイオレンス(DV)を経験している国では、こうした状況は暴力を助長しかねない。

今年3月、タリバンは制服がイスラム文化に従っていないとして、女子中高生(7年生以上)の通学再開を当日になって撤回した。

アフガニスタンの女性は「家の中の囚人」だと、HRWの女性の権利局暫定共同局長ヘザー・バーは言う。バーは今年1月に、女性と少女が直面している危機は「終わりが見えないままエスカレートしている」と警告し、タリバンの政策が、この国から「最も貴重な資源」の1つを奪っていると指摘した。

アフガニスタンは今、あらゆる資源を必要としている。この1年で経済は崩壊した。タリバンが再び権力を握った直後に、欧米諸国はアフガニスタン中央銀行の国外資産90億ドル以上を凍結した。タリバン幹部への制裁はインフレを加速させ、基本的な生活必需品の価格が高騰している。多くの家庭が生活のために財産の大部分を売り払い、若い娘を金と引き換えに見合い結婚させている。

「10代の少女の大半は今も学校に戻ることが許されず、児童婚のリスクがさらに高まっている」と、ヘンリエッタ・フォアはユニセフ(国連児童基金)の事務局長を務めていた21年11月に声明で述べている。「教育は、児童婚や児童労働のような負の対処方法から子供を守る最善の手段になることが多い」(中略)

「女性はあらゆる意味でタリバンの囚人だ」
タリバンは変わるつもりがないと分かって人々は「絶望」していると、(タリバン復権まで首都カブールでジャーナリストとして働いていた)レザエイは言う。アフガニスタンから発信される前向きなニュースはどれも、タリバンが国際社会の機嫌を取ろうとしているだけだと、彼女は警告する。「女性はあらゆる意味でタリバンの囚人だ」

市長を5年間務めたジャファリは、地元で「ミスター市長」と呼ばれることを誇りに思っている。彼女もレザエイと同じように、国際社会の関心がウクライナに移りつつあることを痛感している。「悲惨な状況だ、変わるといいねと、みんなが言う。みんなが黙っているのに、どうすれば変わるというのか」

経済制裁が続くことはアフガニスタンの人々にとって破壊的だが、世界がタリバンに対抗する最も強力な武器になっていると、ジャファリはみる。アメリカと同盟国がその経済力を使って、タリバンに国際的な人権基準を遵守するように圧力を強めてほしいと、彼女は働き掛けている。ただし、楽観してはいない。

「国際社会は、アフガニスタンで起きていることを黙ってやり過ごしたいと思っている。この国には多くの活動家やジャーナリスト、少数民族、女性がいて、今も恐怖の中で暮らしている。助けを必要としている。彼らのことを忘れないでほしい」【9月10日 Newsweek】
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国内にタリバンに対抗できる勢力が無い以上、国際社会に訴えるしか道はありません。

****「私たちは消されている」 アフガン女性、国連に行動訴え****
スイス・ジュネーブの国連人権理事会で12日、アフガニスタンの女性・少女の人権をめぐる特別会合が開かれた。出席者は、同国で昨年8月にイスラム主義組織タリバンが実権を握って以降、「性別によるアパルトヘイト(分離)」が広がっているなどとして、国際社会に一致した対応を訴えた。
 
ジャーナリストで人権活動家のマブバ・サラジャ氏は「今日、アフガニスタンでは人権は存在しない」と述べ、女性の人権が奪われていることに警鐘を鳴らしても何も起きないことに「うんざり」していると語った。(中略)

サラジャ氏は「アフガニスタンでは女性の存在は消されている」と指摘。同氏ら出席者は理事会に対し、あらゆる人権侵害を監視する独立した専門家グループを設置し、当事者の責任を問うことができる態勢を構築することを提言した。
 
アフガンの人権状況に関する国連の特別報告者リチャード・ベネット氏も、同国では「性別によるアパルトヘイト」とも言うべき事態が起きているとして、責任追及態勢の強化が急務だと強調した。
 
ベネット氏は、アフガンでは女性の人権が「がくぜんとするほどの後退」を余儀なくされているだけでなく、ハザラ人などイスラム教シーア派系の少数民族も迫害を受けていると報告した。 【9月13日 AFP】
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アフガニスタン国内の活動もまったくない訳ではありませんが、常にタリバンの脅威にさらされています。

****アフガンに「女性図書館」 タリバン標的の可能性も「学び続けられる場所を」****
イスラム原理主義勢力タリバンが実権を握ったアフガニスタンの首都カブールで、このほど「女性図書館」がオープンした。女性活動家らが設置したもので、タリバンが女性の教育を制限する中、教育の助けにしたい考えがある。タリバンの標的となる可能性もあるが、設立者は「それでも教育の火を消してはならない」と話している。

図書館は8月24日にオープンし、小説や学術書など約千冊を所蔵する。本のほとんどは寄贈されたものだ。海外からの寄付で運営するという。

共同設立者の1人である女性活動家、ライラ・バシムさんは、設立の目的について「女性が学び続けられる場所を作りたかった。教育を受ける機会を少しでも確保することが大切だ」と話す。(中略)

現在のところ、図書館をめぐってタリバン側から警告や嫌がらせはない。「ただ、将来的にタリバンがどう出てくるかは分からない。国際的にこの図書館の知名度が高まれば妨害しづらくなるだろう」とバシムさんは話した。【9月1日 産経】(
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国内の対抗勢力という点では、IS以外に、北東部パンジシール州でタリバンに抵抗を続ける故アフマド・シャー・マスード司令官の息子がトップを務める武装勢力「民族抵抗戦線」もありますが、どれほどの影響力を有しているかは知りません。

“タリバン、抵抗勢力40人殺害と主張 パンジシール渓谷で”【9月14日 AFP】
「民族抵抗戦線」は、北部を中心とした12州で戦いを続けるとしています。
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アフガニスタン  米軍撤収から1年 米・露・中国等関係国の対応

2022-08-31 22:28:22 | アフガン・パキスタン
(15日、アフガニスタンの首都カブールで、政権掌握から1年を祝うタリバン戦闘員たち=AP【8月29日 東京】)

【米軍撤収から1年 「神が異教徒を追い出してくれた」】
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は、駐留米軍の撤収が完了してから1年に合わせ、31日を祝日に指定しました。首都カブールでは前夜、花火を打ち上げたり祝砲を放ったりして国土の支配回復を祝い、イルミネーションで彩られた通りもあったとか。【8月31日 時事より】

****タリバン、外国部隊撤退から1年祝う****
アフガニスタンから米軍主導の外国部隊が撤退してから31日で1年を迎えた。イスラム主義組織タリバンは同日を祝日とし、首都カブールでは花火の打ち上げやライトアップが行われた。

タリバンは実権掌握後、シャリア(イスラム法)を再び厳格に適用。多くの州で中等教育から女子を排除し、政府の仕事に就くことを禁止している。

ただ、こうした厳格な規制が導入され、人道危機も深刻化しているにもかかわらず、外国部隊がいなくなったことを歓迎する人も多い。

カブール在住のザルマイさんは、「神がわが国から異教徒を追い出し、イスラム首長国を建国してくれてうれしい」と話した。

カブールでは、米国、旧ソ連、英国3か国に対する勝利を祝う横断幕が見られた。イスラム教への信仰告白の文言が記されたタリバンの白い旗も多数、街灯や政府庁舎に掲げられた。 【8月31日 AFP】
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【アメリカ 威信低下の傷、未だ癒えず】
一方のアメリカは、タリバン復権となったアフガニスタン戦略の失敗、支援国・米軍協力者を見捨てるような形にもなった混乱の中の撤退によって威信を失墜することにもなっており、その傷はまだ癒えていません。

****米の威信回復はなお途上 アフガン撤収から1年****
大混乱を伴った米軍のアフガニスタン撤収から30日で1年。バイデン米政権が20年間の戦争終結を優先した決断は、イスラム原理主義勢力タリバンを勢いづかせ、プーチン露大統領のウクライナ侵攻の決断にも影響を与えたとされる。米国にとって失態の教訓は何か。威信回復はなお途上にある。

アフガン復興に関する米特別監察官は昨年8月16日に公表した報告書で「アフガンを自立国家に導き、米国の安全に脅威を及ぼさないようにすることが目標だとしたら、その結果は暗澹たるものだ」とアフガン戦争を総括した。

報告書によると、米国は1450億ドル(約20兆円)をアフガン復興に、8370億ドルを戦費に投じた。米国と同盟国の兵士3587人、アフガン兵士約6万6千人、アフガン市民4万8千人が死亡。報告書発表の前日の15日にはタリバンが首都カブールを制圧した。

バイデン大統領は一定程度の兵力を残すべきだとする国防総省の勧告を聞き入れず、米中枢同時テロ発生から20年となる昨年9月11日までの米軍完全撤収にこだわったとされる。

下院共和党は今月、独自にまとめた報告書でバイデン氏の決定を「タリバンを勢いづかせた」とし、バイデン氏がその後も誤判断を改めず、撤収に伴う混乱を招いたと批判した。11月の中間選挙で同党が過半数を獲得すれば、〝失政〟を再び追及する可能性もある。

「米国は信用できない、と思われても仕方がない理由を世界中に与えた」。今月15日、米戦略国際問題研究所(CSIS)のイベントでマイケル・ナガタ元陸軍中将は撤収の影響についてこう語った。

「ロシアや中国、イラン、北朝鮮と競争しているときに、われわれが信用されていないのは実に恐ろしい」とも述べ、現状変更勢力と対決する米国の信頼はまだ回復していないとの見解を示した。

プーチン氏や中国の習近平国家主席は米国の信用失墜を見逃さなかった。プーチン氏は米軍の介入はないとみて、ウクライナ侵攻への意思を強めたとされる。中国は昨年9月末から、台湾の防空識別圏(ADIZ)に軍用機を大規模に進入させた。中露は以後、結託を強めた。

米国は欧州でウクライナへの軍事支援と北大西洋条約機構(NATO)の対露抑止力の強化、インド太平洋で中国の台湾侵攻阻止という事実上の二正面作戦を迫られている。

7月、アフガンで国際テロ組織アルカーイダの最高指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者の殺害に成功したことは「対テロ戦に終わりはない」(ナガタ氏)ことも提起した。

重大局面での「関与の欠如」(ペトレイアス元陸軍大将)がアフガンの教訓であれば、米国の威信回復には、国際秩序を守るための関与を持続する強い意思と力に裏打ちされた指導力を再構築する以外に道はない。【8月29日 産経】
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8月初旬、ペロシ下院議長の訪台時に行われた台湾のネット世論調査でも8割近い回答者がアメリカと台湾の間の安全保障の枠組みを信頼していないことが示されています。「アメリカは結局同盟国・支援国を見捨てる」といった思いが見て取れます。

アメリカといえど「世界の警察」でもありませんし、自国の利害が優先するのは当然と言えば当然で、アメリカを頼みとする国々にとって、アメリカの支援を「過信」しないという教訓になった面も。

【タリバンとの関係強化を図るロシア・中国】
国際的には未だタリバン暫定政権を承認している国はひとつもないという「孤立」が続いていますが、そうした状況でも、アメリカが手を引いた「空白」を利用して関係を強めようとする国もあります。

その一つが、やはり欧米から拒絶されているロシア。

****除け者国家同士、タリバンとロシアが石油で手を組む****
<アフガニスタンの政権を奪取して約1年、国際的な経済制裁に苦しんできたタリバンは、ロシアから石油と食料を買うことにした>

アフガニスタンのタリバン政権とロシア政府が、貿易協定をまとめようとしている。国際的に孤立したタリバンが、喉から手が出るほど欲しいエネルギーを購入できるようにすると共に、厳しい制裁を受けているロシアの経済を下支えする取引だ。

ロイターによれば、タリバンの代表団は8月29日にモスクワを訪問し、小麦、ガス、石油の輸入を確保するためロシアと交渉した。2021年に武力で政権に返り咲いたタリバンは、国際的な制裁と孤立から踏み出そうとしている。

ウクライナへの武力侵攻で西側の制裁に苦しむロシアも同様だ。
アフガニスタン商工省の匿名の幹部はロイターに対し、間もなく契約がまとまる見込みだと語った。

2021年に米国がアフガニスタンから撤退し、強硬なイスラム主義組織であるタリバンが実権を握って以来、世界のどの政府もタリバン政権を正式に承認していない。経済の大部分を依存していた海外援助が止まり、アフガニスタンの人々はさらに貧しくなり、食べる物にも困る有り様だ。

だが、ロシアや中国など米国と敵対する国々は、アフガニスタンの首都カブールに大使館を置いたままにしている。2月のウクライナ侵攻以降、厳しい経済制裁を受けているロシアは、タリバンとの貿易交渉も続けてきた。

送金には第三者の助けが必要
カブールに本拠を置く民間テレビ局TOLOニュースによれば、アフガニスタンはすでに食料と石油の大部分をロシアから調達しており、両国の貿易額は年間2億ドルに達している。TOLOニュースは、アフガニスタン商業投資会議所の情報として、ロシアはすでに、他国より安い小麦や石油をアフガニスタンに提供していると伝えている。

ロシアにとって石油の輸出は、経済の命綱だ。フィンランドのエネルギー・クリーンエアー研究センターの報告書によれば、ロシアはウクライナ侵攻後の100日間に、化石燃料の輸出で約930億ドルの収入を得た。主として中国とインド向けのものだという。ドイツ、イタリア、オランダ、フランス、ポーランドなどがなおロシアにエネルギーを依存していることも貢献したという。

「それでも、多くの国や企業がロシアからの輸入を回避したため、5月の輸入量は侵攻前と比べて15%ほど減少した」と、報告書は述べている。

タリバン政権のアフガニスタン商工省代理公使を務めるヌールディン・アジジはTOLOニュースに対し、ほとんどのアフガニスタンとロシアの銀行は制裁下にあり、金銭のやり取りについては第三国が手助けを借りることになると話した。「技術チームの一部はまだロシアに滞在しており、どのような送金方法があるかなど、詳細を詰めようとしている」【8月31日 Newsweek】
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また、例によって「一帯一路」を進める中国も。

****中国、アフガンで影響拡大 「一帯一路」取り込み図る****
アフガニスタン駐留米軍の撤退完了から30日で1年となる。イスラム主義組織タリバンが暫定政権を樹立し、米国の関与が著しく後退する中、中国が影響力拡大を図っている。

巨大経済圏構想「一帯一路」への取り込みや、豊富な埋蔵資源発掘などに強い意欲を示すが、依然消えないテロへの懸念が障害となっている。

ウズベキスタンで7月に開かれたアフガン情勢を巡る国際会議では、中国代表が一帯一路の拡大による経済発展が「安定に貢献する」と強調。会議で発表されたウズベキスタン、アフガン、パキスタンを鉄道で結ぶ計画を、中国が財政支援するとの観測が出ている。【8月29日 共同】
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中国は新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒の抵抗を抱えていますので、アフガニスタンからの「テロの輸出」を強く警戒しています。そのことがアフガニスタン・タリバンとの関係を深めるうえで制約になっています。

アメリカから制裁を受ける、あるいは対立するロシア・中国・イラン・アフガニスタン・北朝鮮といった国々が相互の関係を強め、アメリカを中核とする欧米・日本・オーストラリアなどとの対立の構図を強めるというのが最近の国際情勢の流れともなっています。

もっとも、アメリカと対立する国々も、本音ではアメリカとの関係を改善したいという思いもあって、そこは条件・利害次第といったところ。東西冷戦のような完全なイデオロギー対立という訳でもないのが微妙なところ。

【タリバンを支援してきたパキスタンとの関係は微妙な面も】
これまでタリバンを支えてきたパキスタンとの関係では、最近はパキスタンとタリバンが対立するなど微妙なものがあることはこれまでも取り上げてきました。下記もそうしたひとつ。

****タリバン、パキスタンを批判 「米無人機の領空使用認めた」****
アフガニスタンのイスラム主義組織・タリバン暫定政権のヤクーブ国防相代行は28日、米無人機がパキスタン経由でアフガンに入ったと主張し、米国による領空使用を認めたとしてパキスタンを批判した。カブールで記者会見した。

米国はカブールで7月、国際武装組織・アルカイダの最高指導者、ザワヒリ容疑者を無人機攻撃により殺害したと発表した。パキスタンは攻撃への関与を否定している。

ヤクーブ師は「われわれへの敵対行為のために領空を使わせるな」とパキスタンに要求した。【8月29日 ロイター】
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【地震・水害で国際支援を必要とするも・・・・】
パキスタンは現在、国土の3分の1が水没するという記録的な水害に見舞われていますが、その水害は隣国アフガニスタンも同じです。

国際的に孤立するタリバン暫定政権も、支援を国際社会に求めています。

****アフガニスタン洪水でタリバンが声明「100万世帯以上が食料などの緊急援助を必要と」****
アフガニスタンでは8月に入ってから、中部や東部の広い範囲で洪水が発生し、死者は192人に達している。

タリバン政権の高官は27日、「100万世帯以上が外国からの衣服やテント、食料などの緊急援助を必要としている」と述べ、国際社会に支援を求めた。また、数千頭の家畜が死に、170万本の果樹に被害が出ていると明らかにし、食料不足への危機感をにじませた。

アフガニスタンは、1年前に「タリバン」が再び実権を掌握して以来、国際金融システムから切り離され、外国からの開発援助も停止し、深刻な経済危機に陥っている。

国連は人口の半分以上の2500万人が貧困状態だと推計。また、6月に起きた地震で1000人以上の死者が出るなど、今年に入って相次いで自然災害に見舞われている。【ABEMA TIMES】
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人道上の緊急の支援が必要な状況ではありますが、現実には女性の権利などに後ろ向きなタリバン暫定政権を支援することにもなりますので、国際社会の対応も鈍ってしまうのが現実です。

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アフガニスタン  「8月15日は暗黒の日」 戦い続ける女性 「一日も早く学校に通いたい」と願う少女

2022-08-14 22:44:59 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタンの首都カブールで、イスラム主義組織タリバンの戦闘員による威嚇射撃で散会させられるデモ参加者ら(2022年8月13日撮影)【8月14日 AFP】)

【「戦争は終わったが、アフガン女性の適切な居場所を求める闘いが始まった。」】
アフガニスタン駐留米軍が撤収を進める中、イスラム原理主義勢力タリバンが2021年8月15日、怒濤の勢いで首都カブールを制圧。ガニ大統領は抵抗することも和平交渉を行うこともなく出国逃避。欧米や日本が支援してきたガニ政権はあっけなく崩壊しタリバンが復権しました。

あれから1年が経過しようとしているということで、アフガニスタンの現状、とりわけ、就業・教育・一般生活におけるこれまでの権利を大きく制約されることになった女性の現状について、幾つかの報道がなされています。

特段の目新しいことはなく、“相変わらず”と言えば相変わらずですが、そうした不当な現実を改めて確認しておくことも必要でしょう。

****タリバン政権発足から1年、自由失った女性の闘い****
アフガニスタンのモネサ・ムバレズさん(31歳)は、20年にわたる民主政権下で獲得した女性の権利をやすやすと手放すつもりはない。

1年前にイスラム主義組織・タリバンが権力の座に返り咲く前、ムバレズさんは同国の財務省で政策監視を担う幹部だった。大都市を中心として、彼女のように自由を勝ち取っていた女性は多かった。1990年代末の前タリバン支配時代を過ごした世代には、夢見ることさえかなわなかった自由だ。

しかし今、ムバレズさんは職を失っている。タリバンがイスラム法を厳格に解釈し、女性の就労を厳しく制限したからだ。タリバンは女性に保守的な服装と行動を義務付け、全国で女子の中等教育学校を閉鎖した。

新政権に女性閣僚はおらず、女性問題省は閉鎖された。

「戦争は終わったが、アフガン女性の適切な居場所を求める闘いが始まった。あらゆる不公平に対し、命果てるまで声を上げていく」と語るムバレズさんは、首都カブールで最も著名な活動家の1人だ。

西側を後ろ盾とした民主政権が転覆した後の数週間、ムバレズさんはタリバンのメンバーによる殴打や拘束のリスクも顧みず、街頭デモに参加した。激しい闘いの末に勝ち取った権利を守るためだ。

そうしたデモも今ではすっかり鳴りを潜め、ムバレズさんが最後に参加したのは5月10日だ。

しかし、彼女らは自宅に集まって女性の権利について話し合い、他の人々にも参加を呼びかけるなど、反抗のための行動を内々に続けている。タリバンが前回アフガンを支配していた時代には、こうした集会はまず考えられなかった。

7月にムバレズさんの家で開いた集会で、女性らは車座になって経験を語り合い、「食料」、「仕事」、「自由」など街頭デモさながらのスローガンを唱えた。

ムバレズさんは、ロイターに「私たちは自らの自由のために、権利と地位のために闘う。国や組織、スパイ機関のために闘うのではない。ここは私たちの国、私たちの故郷であり、私たちはここに住むための全ての権利を有している」と語った。

国連女性機関のアフガニスタン代表、アリソン・ダビディアン氏は、ムバレズさんのような事例は国中にあふれていると言う。

「世界中の多くの女性にとって、自宅の正面玄関から外出するのは日常の一部」だが、「多くのアフガン女性にとって、それは特異なことだ。反抗を示す行動なのだ」とダビディアン氏は言う。

公共の場所における女性の行動について、必ずしも明確なルールは無い。だが、カブールのように比較的自由な都会では、女性は男性の付き添い無しに移動することがよくある。だが、南部や東部など、より保守的な地方では、さほど日常的な光景ではない。また、すべての女性は78キロメートル以上移動する際に、男性の付き添いが義務付けられている。

<勉強はやめない>
国際社会がアフガンの新指導部の承認を拒んでいるのは、タリバンによる少女と女性の取り扱いが主な理由の1つだ。この結果、アフガンは数十億ドルの支援を断たれ、経済危機に拍車がかかっている。

アフガニスタンは少女の高校通学を禁止している世界で唯一の国。タリバンは今年3月、女子の中等教育学校を再開すると発表したが、女子児童が喜んで通学し始めたその朝に決定を撤回した。

民間の学習指導やオンライン授業を通じて、なんとか教育を受け続けている少女もいる。
ケリシュマ・ラシーディさん(16歳)は、一時しのぎの措置として民間の学習指導を受け始めたが「学校再開を期待している」という。学校の閉鎖が続くようなら、学校に戻れるよう両親とともにアフガンを出たいと望んでいる。

「勉強することは決してやめない」とラシーディさん。2020年に北東クンドゥーズの自宅がロケットに攻撃された後、一家はカブールに移り住んだ。

食いつなぐために「新たな日常」を受け入れざるを得なかったと語る女性もいる。

元女性警察官のグレスタン・サファリさん(45歳)は、タリバンに止められて職を変えざるを得なかった。現在はカブールで他の家庭の家事を請け負っている。「自分の職業が好きだった。肉でも果物でも、必要なものが何でも買えた」とサファリさんは振り返った。【8月13日 ロイター】
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【声をあげる女性にタリバン威嚇射撃】
“(自由を求めて戦い続ける)ムバレズさんのような事例は国中にあふれている”というのは、やや誇張した表現でしょう。

そうあって欲しいという願いはありますが、厳しい現実を生きていくのはそうたやすいことではありません。
どんなに現状への不満や将来への希望があったとしても、まずは今日を生きることが優先されます。

そうしたなかにあっても声を上げる女性もいます。
しかし、タリバンの対応は強硬です。


****タリバン、女性の権利求めるデモに威嚇射撃 アフガン****
アフガニスタンの首都カブールで13日、数か月ぶりに行われた女性たちによるデモを、イスラム主義組織タリバンが参加者への殴打や威嚇射撃で暴力的に散会させた。(中略)

AFP記者によると、デモには約40人が参加。教育省前を行進しながら「パン、仕事、自由」とシュプレヒコールを上げた。

タリバン戦闘員は空に向かって威嚇射撃をしてデモを散会させた。近くの店に逃げ込んだ参加者の中には戦闘員に追い掛けられ、銃床で殴られた人もいた。

女性たちは「8月15日は暗黒の日」と書かれた横断幕を手に労働と政治参加の権利を求めて「正義だ正義。無学はもうたくさん」と声を上げた。多くは顔をベールで覆わずに参加していた。

デモ主催者の一人、ゾリア・パルシさんによると、タリバン情報機関の戦闘員がやって来て空に向かって発砲した。戦闘員は、横断幕を引き裂いたり、多くの参加者の携帯電話を没収したりしたという。

参加者の一人、ムニサ・ムバリズさんは「私たちを黙らせたくともそれはできない。家からでも抗議する」と述べ、女性の権利のために闘い続けると語った。

AFP記者によると、デモを取材していた報道陣の中にもタリバン戦闘員に暴行を受けた記者がいる。 【8月14日 AFP】
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イスラム社会において女性の権利が制約されているのは珍しいことではありませんが、“アフガニスタンは少女の高校通学を禁止している世界で唯一の国”というように、アフガニスタンの現状はイスラム教のルールというよりは、(おそらくはタリバンの中核をなすパシュトゥン人部族社会を反映した)タリバン特有のローカルルールであり、宗教指導者の中にも現状を批判する人はいるようです。しかし・・・・

****タリバンの著名な聖職者殺害される 女性教育に賛成****
アフガニスタンのタリバン暫定政権の支持者で、女性教育の推進者として有名だった宗教指導者が首都カブールで発生した自爆テロの標的となり、殺害されたことがわかりました。

現地メディアによりますとアフガニスタンの首都カブールの神学校で11日、自爆テロが起き、宗教指導者のラヒムラ・ハッカーニ師が殺害されました。犯人は義足に爆弾を仕込んで近づいたとみられ、その後、過激派組織「イスラム国」が犯行声明を出したということです。

ハッカーニ師はタリバン暫定政権の支持者でタリバン統治に反対する「イスラム国」を批判、過去にも「イスラム国」のテロの標的となっていました。

アフガニスタンで争点となっている女性に対する教育に賛成していることでも知られ、今年初めイギリスBBCのインタビューを受けた際には「イスラム法では女性に教育を許さないとする正当な理由は全くない」などと話していました。【8月12日 TBS NEWS DIG】
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今回事件はタリバンではなく、「イスラム国」による自爆テロのようです。
ただ、アルカイダ・ザワヒリ容疑者とも近い関係があったタリバン強硬派とアルカイダや「イスラム国」といったテロ組織の間には考え方の差はあまりないようにも思えます。

【教育を奪われた少女の願い「一日も早く学校に通いたい、教育を受けたい」】
****女子教育の機会奪われたアフガニスタン 「夢を絶対に…」少女の訴えは “秘密の学校”も****
アフガニスタンでイスラム主義勢力・タリバンが再び実権を握ってから、まもなく1年です。この1年で女性を取り巻く環境は劇的に変わり、教育の機会も奪われたままです。学校に通えなくなった女子生徒たち、そして彼女らを支える女性が、苦しい胸の内を明かしました。
    ◇
今月、NNNのカメラはアフガニスタンの首都・カブールへ入りました。

平山晃一記者 「カブールでは、街の至る所で『タリバン』による検問が実施されています」

テロを繰り返していたイスラム主義勢力・タリバンが、今は街の治安を守る存在になっていました。
こうした中、カブールに住む12歳の少女・スーサンさんを訪ねました。すると、スーサンさんは日本語であいさつをしてくれました。

「おはようございます、こんにちは。わたし名前はスーサンです」
日本語であいさつした後、はにかんだ表情をみせるスーサンさん。父親の留学の関係で、小学校1年から3年まで日本の小学校に通っていました。「宿題忘れゼロ賞」と書かれた賞状や日本語で書いた作文などを見せてくれました。

「宿題がとても大変でした。でも、日本の先生たちはとても優しく教えてくれて、励ましてくれました」
しかし帰国後の去年8月、タリバンがカブールを占拠し、実権を掌握。タリバンは、いまだ女子の中等教育再開を認めておらず、スーサンさんと姉のマスーダさんは、学校に行けない日々が続いています。

「学校に行く代わりに、テレビを見て勉強をしていますが、将来がとても不安です…」
今年3月には、「女子の中等教育の再開」がアナウンスされましたが、当日に突如、撤回されました。

「学校に行って、イスに座って先生を待っていたら、帰るよう言われました」
顔を曇らせ、涙をぬぐうスーサンさん。夢の実現のため、「一日も早く学校に通いたい、教育を受けたい」と訴えます。

「母の夢でもあった『看護師になる』という夢を、絶対に実現したいです」
    ◇
こうした現状に立ち向かう動きも出てきています。

平山晃一記者 「こちらの場所では、学校に行けない少女たちを対象にした授業が行われていて、イスに座りきれず、床に座っている子たちもいますね」

元教師の姉と大学生の妹が、40人ほどの女子生徒らに、ひそかに授業を行っていました。いわば“秘密の学校”です。
(中略)

“秘密の学校”に通う女子生徒(12) 「将来は医者になって、この国の人を助けたいです。勉強を続けないと、夢をかなえることはできません」

タリバンが再び支配するまでの自由なアフガンを生きてきた元教師の姉は、この1年を次のように振り返りました。

元教師の姉 「この1年間で、女性たちは精神的に多くのダメージを負いました。仕事も勉強も何もかも制限されるようになりました。私たちアフガンの女性は、これからも戦い続けます」

タリバン暫定政権は、「準備が整えば、女子の中等教育を再開する」としていますが、今も少女たちの教育の機会は奪われ続けています。【8月12日 日テレNEWS】
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この少女らの夢がかなうことを切に願いますが、力によってしか変わらない現実を思うとやり場のない思いも・・・。
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アルカイダ指導者のザワヒリ容疑者を米軍がアフガニスタンで殺害

2022-08-02 23:45:48 | アフガン・パキスタン
(国際テロ組織アルカイダ指導者 ザワヒリ容疑者(右)と ビンラディン容疑者【8月2日 NHK】)

【米軍、ザワヒリ容疑者を殺害 アフガニスタン首都カブールで】
バイデン米大統領は1日、国際テロ組織アルカイダの最高指導者アイマン・ザワヒリ容疑者を殺害したと発表したと発表しました。アフガニスタンの首都カブールでドローンを使った攻撃で殺害したとのことです。

ザワヒリ容疑者はアルカイダの黎明期からビンラディン容疑者が全幅の信頼を置いた最高幹部で、長年ナンバー2の「副官」として組織拡大に貢献、ビンラディン容疑者が米軍に殺害された後は結束力が弱まったアルカイダのトップとして組織維持に務めてきました。

****米、ザワヒリ容疑者殺害=アルカイダ最高指導者―アフガンでドローン攻撃****
バイデン米大統領は1日、国際テロ組織アルカイダの最高指導者アイマン・ザワヒリ容疑者を殺害したと発表した。71歳だったとみられる。

ザワヒリ容疑者は2001年9月の米同時テロに深く関与し、11年5月の米軍特殊部隊によるビンラディン容疑者殺害後、アルカイダを率いてきた。アルカイダの一層の弱体化は必至で、壊滅的打撃を受けた可能性がある。

バイデン氏は国民向けのビデオ演説で「正義は下された。このテロリストはもうこの世にいない。世界中の人々はもうこれ以上恐れる必要はない」と表明。さらに「同時テロで奪われた罪のない人々の命を追悼し続ける」とも述べた。

米政府高官によると、米当局がアフガニスタンの首都カブールで現地時間7月31日午前6時18分(日本時間同日午前10時48分)ごろ、ザワヒリ容疑者が建物のバルコニーに出たところをドローン攻撃で殺害した。米メディアは「中央情報局(CIA)による殺害作戦」と報じている。高官は一般市民らにけがはなかったと強調した。

従来はパキスタンとアフガンの国境地帯に身を隠していると考えられていたザワヒリ容疑者がカブールに潜伏中という情報は今年に入って米政府が把握した。監視の結果は約3カ月前からバイデン氏にも逐一報告され、殺害作戦が本格化したのはここ1カ月の話だった。バイデン氏が作戦実行を最終承認したのは7月下旬という。(中略)

バイデン氏は昨年8月末、アフガンから米軍を撤退させた。イスラム主義組織タリバンの全土掌握による混乱で批判を招いたが、今回のザワヒリ容疑者殺害で「アフガンが今後、テロリストの安住の地になることはない」と強調した。【8月2日 時事】 
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映画・ドラマによれば、こういう場面ではホワイトハウス地下のシチュエーションルームに大統領以下の主だった関係者が集まり、モニター等で現地の状況を確認しながら作戦が実行される・・・ということのようですが・・・。

【テロが減少する直接効果はあまり期待できない】
アルカイダから分派したスンニ派過激組織「イスラム国」(IS)がイラクとシリアで台頭すると、アルカイダは求心力を失いましたが、未だイスラム過激派の“トップブランド”としての存在感はあり、独自の指揮系統でテロ活動を行う参加の組織にとってアルカイダの名前はそれなりの価値があると言えます。ヤクザ組織の代紋みたいなものでしょうか。

****米殺害のザワヒリ容疑者 若くして過激思想に傾倒****
米国が殺害を発表したアイマン・ザワヒリ容疑者はウサマ・ビンラーディン容疑者の死後、10年以上にわたり国際テロ組織アルカーイダを最高指導者として率いた。しかし、カリスマ性に欠け指導力を発揮できず、組織は弱体化。重病説も取り沙汰されていた。

エジプト・カイロ郊外で1951年に生まれたザワヒリ容疑者は、世界のイスラム過激思想に影響を与えた原理主義組織「ムスリム同胞団」に学生時代から傾倒した。過激思想に詳しいカイロ・アズハル大のアブドルバセット・ヘイカル教授は、欧米の中東支配に対する反発から「イスラム世界の過激な変化を志向した」と分析した。

ザワヒリ容疑者は74年にカイロ大医学部を卒業後、81年に起きたサダト大統領暗殺事件に関わったとして投獄された。その後、アフガニスタンで対ソ連ゲリラ戦に参加し、ビンラーディン容疑者に出会った。

2001年の米中枢同時テロのほか、1998年のケニアとタンザニアの米大使館爆破事件にも関与したとされ、米政府は懸賞金2500万ドル(約33億円)をかけて行方を追っていた。

2014年にはアルカーイダから分派したスンニ派過激組織「イスラム国」(IS)がイラクとシリアで台頭。求心力を失ったアルカーイダは、中枢が反米イデオロギーを鼓舞するメッセージを発信し、各地の傘下組織が独自の指揮系統でテロ活動を行っていたとの見方が有力だ。

欧米では近年、アルカーイダ本体の関与が明確な大規模テロは起きていない。しかし、中東やアフリカでは政情不安に付け入る形で傘下組織が活発に活動している。米議会調査局は今年5月、米国人らを狙う危険性があるアルカーイダ系組織として、イエメンの「アラビア半島のアルカーイダ」(AQAP)やソマリアの「アッシャバーブ」などを挙げた。【8月2日 産経】
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今回のザワヒリ容疑者殺害の影響は二つあります。
ひとつはアルカイダの組織活動が今後どうなるか? テロ減少につながるのか? という問題。

アルカイダ自身の求心力は更に低下し、組織は大きく揺らぐかと思われますが、上記記事にもあるように、すでにアルカイダが何か企てるというよりは、アルカイダネットワークに参加する各組織が独自活動においてアルカイダの名前を“箔付け”に利用するという感じが強くなっていましたので、ザワヒリ容疑者殺害によってテロが減少する直接効果はあまり期待できないように思えます。

【タリバンとアルカイダの関係が切れていなかったことが証明された】
もうひとつの問題は、殺害されたのがアフガニスタンだったこと。つまりアフガニスタン・タリバン政権が国際テロ組織アルカイダのトップをかくまっていたと推測されることです。

****タリバン、アルカイダ指導者保護でドーハ合意に違反=米国務長官****
米国がアフガニスタンで国際武装組織アルカイダの最高指導者、ザワヒリ容疑者を殺害したことについて、ブリンケン米国務長官は1日、イスラム主義組織タリバンが同容疑者をかくまっていたとし、ドーハでの合意に対する「重大な」違反だと非難した。

「タリバンに合意を守る意向もしくは能力がない中、われわれは揺るぎない人道支援でアフガンの人々を引き続き支え、特に女性や子どもの人権保護を提唱していく」と述べた。【8月2日 ロイター】
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このことが国際テロ組織との関係を断つとしていたアフガニスタンとアメリカ、国際社会との関係にどのような影響を及ぼすか・・・・という問題です。一方、アフガニスタンにしてみれば、自国内での米軍による殺害は主権の侵害という問題にもなります。

****カブール市民「何かの間違い」 ザワヒリ容疑者殺害、重い口****
米国がザワヒリ容疑者殺害を発表した直後の2日朝、アフガニスタンの首都カブールは、普段通り多くの人々が通りを歩いていた。タリバンの暫定政権は「米国によるドローン攻撃」を非難する一方で、死亡したのがザワヒリ容疑者だったことについては言及を避けている。

暫定政権、言及避ける
「どんな理由であったとしても、この攻撃を強く非難する」。暫定政権のムジャヒド報道官は2日昼前に発表した声明で米国を非難。カブール中心部にあるシェルプール地区の民家への空爆があり、米国のドローン攻撃だったことが判明したとした上で「こうした行動は米国、アフガン、そして地域の利益に反する」と述べた。アルカイダに関する言及はなかった。

地元テレビでは、2日朝の段階でザワヒリ容疑者の殺害について報じるニュースは少ない。中心部の検問所で警戒にあたっていたタリバン戦闘員にザワヒリ容疑者の殺害について聞くと、戦闘員は「空き家にロケット砲が着弾しただけで、けが人はいなかったはずだ」と不思議そうな顔で答えた。ザワヒリ容疑者がカブール市内に居住していたことについても「何かの間違いだ」と否定し、「アルカイダとタリバンは関係がない」と述べた。

カブール市内の警備は、アルカイダとのつながりが指摘されるタリバン内の強硬派「ハッカーニ・ネットワーク」の戦闘員が中心的に担っているとされ、市内のいたるところに銃を携えた戦闘員が配置されている。

タリバンを長年取材してきた毎日新聞助手は「アルカイダとの関係を認めてこなかったタリバンは、今回の米国の攻撃で面目をつぶされた形だ。タリバン内部でも動揺が広がる可能性があり、騒動に発展することを警戒して検問も厳しくなるはずだ」と警戒したが、記者(川上)と助手が30分ほど外出した間、検問で止められることはなかった。(中略)

一方、(攻撃の様子を語る住民に)アルカイダやザワヒリ容疑者について話を聞こうとすると、住民の口は一様に重くなった。両替商のアブドル・モヒーンさん(20)は、殺害されたのがザワヒリ容疑者だったことについて「ニュースを見ていないから知らないし、関心もない」と話した。別の男性は「そんなことを聞かないでほしい。ここは民主主義国じゃないんだ」と小声で訴えた。

ザワヒリ容疑者はタリバンの復権に伴い、パキスタンとアフガンの国境付近の潜伏先からカブールに移動した可能性も指摘される。ザワヒリ容疑者を首都で事実上かくまっていた疑いが浮上したことで、国際社会のタリバンへの対応が厳しくなるのは必至だ。【8月2日 毎日】
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****アフガン、なお「テロの温床」 ザワヒリ容疑者 政府機関近くに潜伏****
アフガニスタンの首都カブールで国際テロ組織アルカーイダの最高指導者、ザワヒリ容疑者が殺害されたことは、米軍撤収後のアフガンがいまだに「テロの温床」である実態を浮き彫りとした。

イスラム原理主義勢力タリバンが米国と合意した「国際テロ組織との関係遮断」を履行していない疑いは強い。カブール陥落1年を15日に控え、タリバン統治への不信感が高まる結果となった。

ザワヒリ容疑者が潜伏していた住宅はカブール中心部の高級住宅街シェルプール地区にあり、政府機関やタリバン幹部の自宅からもほど近い。タリバンはザワヒリ容疑者の居場所を把握していたとみられ、ロイター通信はタリバン関係者の話として、タリバンがザワヒリ容疑者に「最高レベルの警備」を与えていたと報じた。

タリバンと米国は2020年2月、カタールの首都ドーハで和平合意に署名した。合意では米軍がアフガンから撤収する一方、タリバンはアルカーイダなど国際テロ組織と関係を断ち、国土を活動拠点として利用させないことが盛り込まれた。

ただ、21年8月に米軍撤収は完了したものの、タリバンはアルカーイダとの関係を維持しているとの見方は根強かった。タリバンは1990年代、アルカーイダ指導者のウサマ・ビンラーディン容疑者を「賓客」として迎え入れて、原理主義化が進んだ経緯があり、両組織の縁は深い。

タリバン暫定政権のザビフラ・ムジャヒド報道官は2日、ツイッターでザワヒリ容疑者の死亡は触れず、米軍のドローン攻撃について「米軍の攻撃は国際的な原則に対する明らかな違反行為だ。米国、アフガン、地域の利益に反する」と反発した。【8月2日 産経】
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“タリバンは1990年代、アルカーイダ指導者のウサマ・ビンラーディン容疑者を「賓客」として迎え入れて・・・”ということですが、何もタリバンが招いた訳でもなく、他に行くあてもない国際的お尋ね者ビンラーディン容疑者が舞い込んできたというところで、また、当時の国際情勢に疎いタリバンはビンラーディン容疑者がどのような人物かもよくわからないまま、客はもてなすという部族の慣習に従って「まあ、おとなしくしているなら、いてもいい」と受け入れたということのようです。

受入れ後も、ビンラーディン容疑者の資金・アラブ世界からの戦闘員の提供を重宝しつつも、国際社会を敵に回すその勝手な活動に(基本的にアフガニスタン国外のことには関心がないオマル師・タリバンは)苛立ったりもしていましたが、「客を追放するのは習慣に反するので、できない」とそのまま置いていくうちに、当時の最高指導者オマル師以下のタリバンが次第に精神的にもアルカイダ思想に取り込まれていった・・・というように思えます。
(参考 高木徹著「大仏破壊」)

ザワヒリ容疑者についても、思想的に共鳴してかくまったというより、他に行くところがないと頼まれると追い出す訳にはいかなかったのかも。

もっとも、アルカイダとのつながりが指摘されるタリバン内の強硬派「ハッカーニ・ネットワーク」と他の勢力の間では、ザワヒリ容疑者への対応に温度差があったかも。

いずれにしても、ビンラーディン容疑者がパキスタンで殺害された際も、パキスタン国軍がかくまっていたと推測され、パキスタンとアメリカの関係がギクシャクすることにもなりました。

タリバンがアルカイダと切れていないというのは誰しも想像することではありましたが、想像することと、実際にザワヒリ容疑者がアフガンにいたということでは重みが違います。

【タリバンが更に国際社会に背を向ける可能性も】
今回事件を受けて、タリバン政権が求めていた国際的な国家承認は更に遠のくことになるでしょうが、そのことでタリバン政権が国際社会との関係を見限って、更に強硬な路線に進むということも懸念されます。

タリバン指導部は実権掌握時は国際社会にも配慮した宥和的姿勢も見せてはいましたが、それから1年、その凶暴な性格が明らかになりつつあります。

****刑、拷問、恣意的拘束…今も続くタリバンによる人権侵害の実態 アフガン実効支配から1年****
イスラム過激派組織タリバンがアフガニスタンで政権を奪取してから、まもなく1年が経つ。

当初、タリバンは自ら記者会見を開いて「我々は変わった」と積極的に発信したり、日本のメディアを含む外国メディアの取材にも応じて英語でインタビューに答えたりするなど、「我々は変わった」アピールに余念がなかったこともあり、日本でもタリバン新政権を楽観視する向きがあった。しかし現実は大きく異なる。

「裁判なしの処刑160件」人権侵害の実態は
国連アフガニスタン支援団(UNAMA)は7月20日、タリバン支配が開始された2021年8月15日以降10カ月間のアフガニスタンの人権状況をまとめた報告書を発表し、タリバンが今も人権侵害を続けている実態を明らかにした。

UNAMAはタリバンによる前政権や治安部隊の関係者に対する裁判なしの処刑(超法規的処刑)160件、恣意的な拘束178件、拷問や虐待56件について、極めて具体的に報告している。タリバンは政権奪取直後の2021年8月17日、前政権や治安部隊などの関係者を対象とした恩赦を発表したものの、「この恩赦は一貫して守られていないようだ」と指摘する。

こうした人権侵害の加害者に対し、タリバン当局が全く処罰していないだけでなく、タリバン当局の勧善懲悪省と諜報局という2つの組織が主体的にこれらの人権侵害を実行している実態について、UNAMAは強い懸念を表明している。

タリバンはジャーナリストの恣意的逮捕や報道機関に対する規制により報道の自由を抑圧しているだけでなく、抗議活動の参加者に暴力をふるったり拘束したりすることにより、反対意見を封殺しているともされる。タリバンによるメディア関係者に対する人権侵害は、163件が報告されている。

奪われる女性の権利、相次ぐ「イスラム国」の攻撃
タリバン支配の最も顕著な犠牲者は女性である。ブルカ(顔を含む全身を覆い隠す長衣)着用の義務付けや移動の制限、立ち入り場所の制限、教育や就業の制限など、タリバン当局が次々と発布する規制により、女性は公共の場から締め出され、社会に参加する権利を徐々に制限され、多くの場合完全に奪われてしまったと報告されている。

国連のアフガニスタン担当特別代表はこれについて、次のように述べた。
「女性と女児の教育および公的生活への参加は、いかなる近代社会にとっても基本的なことだ。女性と女子を家庭内に追いやることにより、アフガニスタンは彼女たちが提供する重要な貢献の恩恵を受けることができなくなる。あらゆる人のための教育は基本的人権であるだけでなく、国家の進歩と発展の鍵なのだ」。

治安に関しても、この10カ月間に「武器を用いた暴力」は大幅に減少したものの、民間人の死傷者は2000人を超え、その大半はイスラム過激派組織「イスラム国」の攻撃によるものとされる。

2021年8月以前は「武力を用いた暴力」を主に実行していたのはタリバンだったが、タリバンは今やそれを取り締まるべき立場にある。しかし「治安は回復した」「我々は『イスラム国』を封じ込めている」「米国は『イスラム国』の脅威をでっち上げている」といったタリバンの主張は、こうした報告書が突きつける事実の前に信憑性を失う。

タリバン政権誕生で状況悪化
タリバンによる政権奪取以降、アフガニスタン経済は崩壊状態にあり、タリバン当局がそれに対してほぼ無策であることが人権状況の悪化に拍車をかけている。

報告書によると、現在アフガニスタンの人口の少なくとも59%が人道支援を必要としており、その数は2021年初頭と比較して600万人増加した。

要するにタリバン政権誕生により、アフガニスタンの人々の状況は悪化したのだ。

UNAMAの報告書は国際社会に対し、アフガニスタンの人々への支援の継続を求めている。しかしいくら国際社会が人道支援をしようと、アフガニスタンを支配するタリバンが、すべてのアフガニスタン人の人権を保護・促進する義務を果たさない限り、根本的な問題解決にはならない。

タリバン当局は人権問題について西側諸国による再三の勧告を無視し、中国やロシアといった権威主義国家との関係を強化しつつある。問題解決への道は遥かに厳しく、そして遠い。【8月1日 イスラム思想研究者 飯山陽氏 FNNプライムオンライン】
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