孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエルが示すコロナワクチン普及後の社会  イランとの間で互いに船舶を爆破?

2021-03-15 23:05:07 | 疾病・保健衛生

(【2月24日 NHK】 イスラエル ジム入場時の「グリーンパスポート」チェックでしょうか?)

 

【ワクチン接種者に「グリーンパスポート」 施設入場や店内飲食が可能に】

新型コロナワクチンに関しては、その接種率で見ると、イスラエルが世界最速ペースで進んでいることは周知のところです。

 

その背景には、汚職疑惑の渦中にあるネタニヤフ首相が政治的生き残りをかけてワクチン確保に邁進したことに加え、多様な人種に関するデータが得られると言う製薬会社側の事情、保険制度・個人情報管理などイスラエル国内の事情などもあります。

 

****イスラエルで進む「巨大な実験」の行方 ワクチンでの集団免疫は実現する?****

ワクチン接種が世界最速レベルで進む中東の国、イスラエル。2月25日時点で人口約900万人の半数近くが少なくとも1回のワクチンを接種し、2回目をすませた人も300万人以上にのぼる。

接種が進む背景には政治的な状況がある。

イスラエルでは3月23日に総選挙投開票が予定され、ネタニヤフ首相が続投を目指す。ワクチン入手で各国が苦心するなかファイザーから買い付け、最高経営責任者(CEO)との個人的なパイプのおかげ、と宣伝した。

ファイザーにとってもイスラエルとの連携は渡りに船だ。人種の多様性とハイテクでは中東随一の国。デジタル化された各人種の医療データがタイムリーに提供されるのだから、巨大な「実験場」を確保したに等しい。

国民皆保険のイスラエルでは日本の健康保険組合のような非営利の「健康維持組織(HMO)」が4種ある。それぞれが医療機関やスタッフを擁し、サービスを競い合う。政府が昨年12月、60歳以上などへの接種を決めると各機構とも一斉に電話やメッセージで利用を呼びかけ、瞬く間に1~2カ月待ちになった。

一般に、ユダヤ人は迫害の歴史から危機に敏感だとされる。政府の対応に共感すれば即刻従うが、納得しないと動かない。

例えば接種の呼びかけに素早く応じた60歳以上。感染すると重症化しやすい世代だが、1948年の建国当初から国を守ってきた自負が強く、危機には「戦時メンタリティー」で臨むことで知られる。そのせいか政府も「接種で勝利」と戦時さながらのポスターを病院に張り巡らせている。

だが16歳以上の全住民に対象が拡大された2月初めごろから、こうした流れは鈍化を見せている。若い世代が慎重なのだ。イスラエルの平均年齢は30.5歳。感染しても重症化しにくい世代で、むしろ副反応を気にしている。加えて若年人口が特に多いアラブ系やユダヤ教超正統派は政治的にも反ネタニヤフで呼びかけを無視する構えだ。

新型コロナではワクチン接種が人口の6~7割まで進まないと集団免疫は実現しないとされる。イスラエルで実現するのか。今後も目が離せない。【3月15日 AERA,dot】
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そのイスラエルでは、「ポスト・コロナワクチン」とも言うべき、ワクチン接種が進んだ後の社会の在り様を示す動きも始まっています。

 

2月21日には、全2回の接種者に「グリーンパスポート」を発行し、スポーツジムや文化施設など感染リスクが高いとされる場所に入る際、提示を義務付ける制度が始まっています。飲食店でも「グリーンパスポート」保持者の店内飲食が可能に。

 

****イスラエル、店内飲食再開 「グリーンパス」保持者対象****

イスラエルは7日、新型コロナウイルスワクチン接種証明書「グリーンパス」の保持者を対象に、飲食店やバー、カフェの店内利用を再開した。国民の約40%が接種を完了する中、イスラエルは生活の正常化に向けて歩みを進めている。
 

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、エルサレムのカフェで菓子にナイフを入れる自身の動画をフェイスブックに投稿し、「日常が戻りつつある」と宣言した。(中略)
 

イスラエルは先月、ワクチン接種を完了した人と感染から回復した人に証明書「グリーンパス」を発行し、ジムやプールなどの利用を認める取り組みを開始した。
 

飲食店では7日から、テーブル間隔を2メートル空け、入店可能人数を定員の最大75%、上限は100人とすることで、店内利用が可能となった。
 

グリーンパスの保持者はバーの利用も可能となったが、同居者以外とは1席ずつ空けて着席することが条件となる。【3月9日 AFP】

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【ワクチン外交 国内批判で凍結】

ワクチンが新型コロナ禍脱出の切り札であるのは言うまでもありませんが、外交上もいろいろと使い勝手の良い「有効」なカードとなっています。

 

よく取り沙汰されるのは中国の「ワクチン外交」ですが、イスラエルも負けていません。

多量の確保したワクチンを国民生命以外の外交目的で使用しています。

 

****イスラエル、「捕虜交換」見返りにシリアに露製ワクチン提供か****

イスラエルの有力紙イディオト・アハロノトなどは20日、シリアで拘束されたイスラエル人女性を解放してもらう見返りに、イスラエル政府がシリアに新型コロナウイルスのロシア製ワクチンを購入する密約を交わしたと報じた。事実ならワクチンが「身代金」代わりにされたことになる。

 

報道によると、購入するのは露ワクチン「スプートニクV」数十万回分で、費用は100万ドル(約1億円)超という。

 

女性は今月2日、徒歩でシリアに入り、拘束された。女性はスパイではないと判断され、両国がロシアの仲介で交渉した結果、イスラエルで拘束されていたシリア人羊飼い2人との「捕虜交換」の形式で19日に解放されたという。

 

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は20日、疑惑を記者団に問われると、国民向けのワクチンは「一本も使われていない」と釈明した上で「ロシアの要求を尊重する」として詳細なコメントは避けた。シリア国営通信は20日、「捏造ねつぞうされた情報だ」と疑惑を否定した。【2月22日 読売】

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****イスラエルがワクチン外交へ 大使館のエルサレム移転後押し****

イスラエル政府は23日、諸外国に新型コロナウイルスワクチンを提供すると発表した。国名は挙げなかったが、複数のイスラエルメディアは外交筋の話として、チェコやホンジュラスが含まれると報道。

 

いずれも大使館のエルサレム移転に前向きで、イスラエルがワクチン外交を活発化させ移転の着実な実施を促す思惑があるとみられる。

 

これとは別に、パレスチナ自治政府の医療スタッフにも提供する。

 

チェコ通信などによると、5千回分の米モデルナ製ワクチンがこの日、イスラエルからチェコに到着。ホンジュラス政府はイスラエルから5千回分のワクチンを期待していると明らかにした。【2月24日 共同】

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しかし、こういう外交目的でのワクチン「ばらまき」は国内でも批判があり、凍結されたとか。ワクチンがまわらじイスラエル占領下のパレスチナからの批判も。

 

****イスラエル国防相が「ワクチン外交」凍結を表明、法的問題浮上で****

スラエルのガンツ国防相は25日、「ワクチン外交」として批判が集まっている新型コロナウイルスワクチンの海外向け提供計画を凍結する方針を明らかにした。

ネタニヤフ首相は友好関係にある諸外国にワクチンを贈与する方針を示しており、イスラエルが占領しているパレスチナ地域の住民からは、なぜこちらにもっと供給しないのかと不満の声が出ている。

ネタニヤフ氏は24日記者団に対して「これは外交的な友好姿勢を買うものだと思う」と認めた一方で、既に多くの見返りを得ている国家情報戦略上の判断だと説明して、詳細な内容の公表を拒否した。

こうした中で公共放送カンは、マンデルブリット検事総長が計画について法的な問題をクリアにするよう求めていると報じた。

右派のネタニヤフ氏と連立政権を組む中道連合を率いるガンツ氏は、ワクチン贈与は「適正な手続き」を経るべきで、ネタニヤフ氏が勝手に行える権限はないと指摘した。【2月26日 ロイター】

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チェコへのワクチン供与は凍結されたものの、事情はよくわかりませんが、外交事務所移転は予定どおり進んでいます。

 

****チェコがエルサレムに外交事務所、パレスチナ自治区が非難****

パレスチナ自治政府当局とアラブ連盟は13日、チェコ共和国がエルサレムに外交事務所を開設したのは国際法違反と非難した。

チェコは11日、テルアビブの在イスラエル大使館の支部をエルサレムに開設。開設式典にはチェコのバビシュ首相が出席した。

2週間前、イスラエルはチェコにモデルナ社の新型コロナウイルスワクチン5000回分を「ワクチン外交」の一環で送付した。このプログラムは後に法的に問題になり、凍結されている。

パレスチナ外務当局はチェコの動きを「パレスチナ人とその権利に対する露骨な攻撃であり、目に余る国際法違反」とし、和平の展望を損なうと表明した。

一方、アラブ連盟のアブルゲイト事務局長はカイロで声明を発表、「エルサレムの法的地位は、国の代表事務所開設決定により影響を受ける。東エルサレムは国際法上は入植地となっている」と指摘した。

チェコ外務省は、エルサレムの事務所は大使館ではないと強調した上で、事務所開設はチェコとイスラエルの戦略的パートナーシップ強化と当地のチェコ市民に対するサービス向上が目的と説明した。【3月15日 ロイター】

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【イランとの緊張関係 互いに船舶爆破?】

ワクチン以外のイスラエル関連のニュースでは、相変わらずイランとの関係が問題となっています。

 

****イスラエル船の爆発、イランの関与は「明らか」=ネタニヤフ首相****

スラエルのネタニヤフ首相は、同国所有の船舶が先週、オマーン湾を航行中に爆発したことについて、イランが関与したことは明らかだとの認識を示した。

ただ、報復するかどうかについては明言を避けた。

爆発を起こしたのは車両運搬船「MVヘリオス・レイ号」で、先月25日から26日午前にかけて爆発。米当局者によると、船体の両側に穴が開いた。

ネタニヤフ首相はイスラエル公共放送協会(KAN)ラジオに「確かにイランによる作戦だった。それは明らかだ」と発言。

イスラエルは報復するのかとの質問には、イランの核開発を防ぐ決意を改めて表明し「われわれは地域全体で(イランを)攻撃している」と述べた。

イランは爆発についてコメントしておらず、イランが関与した可能性があるとのイスラエル側の主張にも反応を示していない。

KANによると、ネタニヤフ首相のインタビューは先月28日夜に事前に録画された。その後、シリアは、イスラエルがシリアの首都ダマスカス近郊の標的をミサイルで攻撃したと非難した。

イスラエルは、シリアへの攻撃について事実確認を避けているが、同国は先に、シリア国内でのイランの配備や武器引き渡しに対して、頻繁に軍事攻撃を行っていることを明らかにしている。【3月1日 ロイター】

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やられて黙っているようなイスラエルではありません。

 

****船爆発、イスラエル関与か イラン、破壊工作と断定****

地中海を航行中のイランのコンテナ船で爆発があり、イラン捜査当局者は13日、敵対するイスラエルが関与した可能性が高いとの見方を示した。イラン外務省は「破壊工作」と断定した。イランメディアが伝えた。

 

報道によるとコンテナ船は10日、爆発物によって攻撃され、小規模な火災が発生、船体の一部が破損した。船員らにけがはなかった。

 

捜査当局者は、爆発物は航空機から発射された可能性があると述べた。同船は欧州に向かっていたという。【3月14日 共同】

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アメリカ・バイデン政権のイラン核合意復帰を阻止したいイスラエルとイランの緊張はしばらく続きそうです。

 

【パレスチナでの「戦争犯罪」容疑】

イスラエルのパレスチナに対する軍事行動が戦争犯罪に当たるのでは・・・という捜査も。

 

****イスラエル軍事作戦を捜査 戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所*****

国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)のベンスダ主任検察官は3日、イスラエル占領下の東エルサレムやヨルダン川西岸などで2014年6月以降に行われた戦争犯罪などの容疑で本格捜査を始めたと発表した。イスラエルのパレスチナに対する軍事作戦が中心とみられる。

 

パレスチナ自治政府外務省は捜査開始を歓迎。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「反ユダヤ主義と偽善の極み」などとICCを非難する声明を発表した。米政権も捜査に懸念を示している。

 

ベンスダ氏はパレスチナ側による犯罪も捜査する考えを示した。【3月4日 共同】

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新型コロナワクチン接種に伴う問題 「優先順位」とワクチンパスポート

2021-02-06 22:45:25 | 疾病・保健衛生

(新型コロナウイルスの免疫パスポートのイメージ...... Tanaonte-iStock【1月29日 Newsweek】)

 

【世界的に突出してワクチン不信感が強い日本社会 政府・メディアの責任も】

日本社会のワクチン懐疑論というか、恐怖症は、以前取り上げた記事“ワクチン懐疑論、世界で後退=接種希望急増、日本は停滞―国際調査・新型コロナ”【1月30日 時事】にもあるように、世界的に突出しています。

 

英調査会社によれば、「もしワクチンを接種できるなら、接種しますか」との質問に対する回答で、「ぜひしたい」の割合はブラジル(68%)、英国(66%)などが高かったのに対し、感染者、死者が世界最多の米国は42%。日本は17%と調査対象の中で最低だったとか。

 

「日本の常識、世界の非常識」といった類。そんな日本でもようやく接種準備に関するニュースなどが。

 

“日本でのワクチン不信は、被害をめぐる訴訟、メディアの誤情報、さらには政府の過剰なほどの慎重な姿勢の悪循環が原因”【下記AFP】だと専門家らは指摘しています。

 

****過去の苦い記憶 日本のワクチン展開の影響を懸念****

(中略)日本人がワクチン接種に「消極的」なのは「政府の情報に対する信頼がないから」と、感染症学専門で国際医療福祉大学の矢野晴美教授がAFPに語った。

 

■信頼の喪失

古くは1970年代、天然痘ワクチンの副反応やその他ワクチンをめぐり政府相手に集団訴訟が起きた。

さらに、ジフテリア、百日咳、破傷風の三種混合ワクチンの副反応が問題になったこと、また投与後に2人が死亡したことで接種は一時中断された。数か月後、接種年齢を引き上げるなどして再開されたが、信頼は回復しなかった。

 

1980代末から90年代初頭にかけ、はしか、おたふくかぜ、風疹の新三種混合ワクチンを受けた子どもたちに無菌性髄膜炎の副反応が報告され、予防接種騒動が再燃。同ワクチンは中止となった。

 

重要な転機となったのは集団訴訟における1992年の東京高裁判決だ。北里生命科学研究所の中山哲夫特任教授(臨床ウィルス学)によると、科学的な根拠がないような現象も副反応と認めるという判決だった。

 

「訴訟をいろいろ抱えた後、ワクチンを積極的にやろうとして何かがあったら訴えられる」と国は考えたのだろう、と中山氏は話す。

 

「ワクチンを打つと、いろんなことが起きるのでは」と思われてきたと教授は付け加えた。日本のワクチン制度は「結果15年、20年、何も進まなかった」。(中略)

 

■「適切なリスクコミュニケーション」

(中略)ワクチン接種率が、医療従事者による明確な説明や責任ある報道に左右されると矢野教授は言う。「100%安全はありえない。そういうのを望まれると、ワクチンも立ち行かないと思う」

 

また、メディアは何が「うける」かではなく「何のために報道するのか」考えてほしい、と話した。 【2月1日 AFP】********************

 

メディアは何が「うける」かではなく「何のために報道するのか」・・・おそらく、実際にワクチン接種が始まれば、「当然に」副反応事例はでますので、メディアはこぞって取り上げるのでしょう。視聴率が稼げますので。

「街の声」として「やっぱり、ワクチンって怖いわ」といったものが紹介されて・・・。

 

「政府の情報に対する信頼がない」のは日本に限った話ではないので、僅かでも問題が起きるとやみくもに大騒ぎし、そうしたメディアで増幅された「大きな声」に流されやすい日本独自の社会風潮、極力「責任論」を回避しようとする政治風潮が大きく影響しているように個人的には思います。

 

【欧米では、ワクチン接種「優先順位」に関する主張も表面化】

日本ほどではないにしても、ワクチン不信感が強いアメリカですが、一方では、順番を待っていられない、一日も早く接種したいということで「ワクチンチェイサー」といった人々が出現しているとか。

 

****米・LA 急増する「ワクチンチェイサー」****

アメリカ・ロサンゼルスで、廃棄される前の新型コロナウイルスのワクチンを追い求める、「ワクチンチェイサー」と呼ばれる人々が急増しています。

接種会場の近くで並んでいたのは、優先接種の対象ではない「ワクチンチェイサー」と呼ばれる人々です。ロサンゼルスでは現在、医療従事者や、65歳以上の市民などが接種の対象となっていますが、予約当日に何らかの事情で会場に現れないことがあります。

解凍して準備していたワクチンは、保存時間に限りがあり廃棄処分となるため、残ってしまった分を、会場近くにいる希望者らに接種するという状況が生まれているのです。

残ったワクチンを接種しに来た人「午前4時半にここに来た。新型ウイルスは間違いなく脅威だ。ワクチンは私にとって最も重要だ」

関係者によりますと、この会場では連日、数十回分がワクチンチェイサーらに使用されているということです。【1月29日 日テレNEWS24】

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日本以外の国では、実際にワクチン接種が始まれば、ワクチン供給がスムーズに進んでいないという実態もあって、この「優先接種」「接種の順番」が問題になります。

 

****ワクチン不足、欧州で優先接種求める声強まる****

教員や慢性疾患ある人などが政府に働きかけ

 

新型コロナウイルスのワクチン不足が欧米の接種推進の足かせとなる中、優先グループに指定されていない人々は何とか先に接種を受ける権利を得ようと画策している。

 

現在ワクチンの接種を進めている大半の国では、コロナ感染による死亡・重症化のリスクが最も高い層(介護施設の住人やケアワーカー、医療従事者、高齢者)の接種が優先されている。

 

ここ何カ月かは、ウイルス感染の抑制より死者数を減らすことを重視する戦略について、その方針を疑う向きはほとんどなかった。

 

だが、感染者数が高止まりし、変異ウイルスを巡る懸念が高まる中、必要不可欠な業務に従事するエッセンシャルワーカーから教員、慢性疾患を持つ人々に至るまで、さまざまなグループが優先接種を求める声を強めている。

 

米国は早くからワクチン接種に取り組み、進展も比較的速い。多くの州が65歳以上や特定の疾患を持つ人々への投与に動き出している。利益団体からの圧力を受け、複数州で教員や農業従事者の接種も開始された。

 

一方、官僚主義と生産障害により、欧州のワクチン配布は極めて遅い。そうした中で、リスクが最も高い層以外への優先的な接種を求める声も強まっている。

 

ただ、それは道徳上の難しい問いを含むため、政治的に極めて扱いにくい問題ともなる。例えば、寝たきりであったり100歳を優に超えていたりする高齢者を、若いがん患者に優先させるべきか否か。

 

あるいは、教員や警察官、小売業の従業員、バス運転手など、統計的に死亡の確率は低いが時に新型コロナ感染が重症化することのある人々より、経済活動で大きな役割を果たさなくなったグループを優先させるべきなのか。

 

高リスク層を優先させれば、公衆衛生システムの維持につながるものの、それは同時に、職業柄ウイルスに最も接触しやすい人々が順番待ちになることを意味し、教育や経済を犠牲にすることになる。こう指摘するのは、オックスフォード大学で倫理的ワクチン配布を研究するアルベルト・ジウビリーニ上級研究員だ。

 

ジウビリーニ氏は「優先順位付けという概念は、一定の価値観を犠牲にしなければならないことを意味する」とし、「バランスを取るのは極めて難しい」と述べた。

 

フランスではコロナ流行下でも学校はほとんど休校していない。12月初旬から1日当たりの新規感染者数が一貫して増えており、教員たちはワクチン接種の優先対象になろうと政府に働きかけている。(中略)

 

イタリアでも教員労働組合が、他グループに先がけて教員にワクチン接種をするよう政府に嘆願している。欧州の大半の国より長く閉鎖されている学校の再開を進めるため、高齢者や医療従事者に次ぐ優先グループとするよう検討を求めている。

 

一方、英国のワクチン接種は欧州連合(EU)諸国よりはるかに迅速に進んでいる。政府当局は教員や警察官など現場に出て業務に従事する労働者について、優先順位を上げるべきかを検討している。英北部のある教員による嘆願書は50万人近い署名を集め、議会での審議開始を後押しした。

 

英政府は現在、教員など第一線の労働者より先に、50歳以上の全員にワクチン接種を受けさせたい考えだ。配布ペースを踏まえれば、春まで実現しないかもしれない。

 

ボリス・ジョンソン首相は、高リスク層から他のグループへワクチンを振り向ければ、死者数が増えかねないと指摘しており、今後のワクチン計画や段階的なロックダウン(都市封鎖)解除について2月22日の週に道筋を示す予定だ。

 

高リスク層の優先順位が高くなっている国がほとんどではあるものの、中には自分たちは見過ごされていると不満を示す人々もいる。

 

ドイツでは、障がい者や慢性的な希少疾患を持つ人、さらにはがん患者たちが、優先対象になるために当局に働きかけており、訴訟を起こす例まで出ている。(中略)

 

こうした圧力に直面し、独政府の助言機関であるロベルト・コッホ研究所の予防接種委員会は先月、助言内容を更新。新型コロナへの感染で死亡リスクが高くなるかもしれない疾患のある人に関しては、統計的な裏付けがなくてもケース・バイ・ケースで判断することを勧告した。

 

医療当局者は優先順位を付けるという戦略について、特定の人口層へのリスクを巡る新たな研究が発表されたり、新しいワクチンが承認されたりするのに伴い、時間と共に変化するとみている。

 

ドイツの場合、優先順位が低いグループの一部でも、より早期にワクチン接種を受けられるかもしれない。アストラゼネカの新型コロナワクチンを巡り、政府が65歳以上への使用を承認しないことを決めたため、より若い成人向けに供給が回る可能性が出てきた。【2月6日 WSJ】

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日本の場合は、もともとワクチン接種希望圧力が弱いことに加え、「自分たちを先に」といった自己主張はしずらい社会風潮がありますので、この「優先順位」は「お上」の決定どおりで、あまり問題になることはないと思います。

 

【ワクチンパスポートによる「区別」は健康状態による「差別」か?】

ワクチン接種が進むにつれて表面化するもうひとつの問題は、ワクチン接種をすませて免疫を獲得した可能性が高い者と未接種の者を、「自粛」措置などで同列に扱うのか、区別を設けるのかという問題。

 

****世界でワクチン接種が進むなか、「免疫パスポート」は有効?の議論が再燃****

<史上最大規模の世界的なワクチン接種がすすめられるなか、新型コロナウイルスへの免疫を持つ人に「お墨付き」を与え、行動制限を解除する「免疫獲得証明書(免疫パスポート)」の是非が再び議論の的となっている...... >

 

世界初の新型コロナウイルスワクチンの集団接種が2020年12月8日に英国で開始されて以来、米国、ドイツ、フランス、シンガポールなど、世界60カ国で8640万回以上の接種が完了している(2021年1月28日時点)。

 

史上最大規模の世界的なワクチン接種がすすめられるなか、新型コロナウイルスへの免疫を持つ人に「お墨付き」を与え、行動制限を解除する「免疫獲得証明書(免疫パスポート)」の是非が再び議論の的となっている。

 

検疫措置を免除し、国境を超えた往来を後押しするのが狙い

免疫獲得証明書」は、2020年春、新型コロナウイルスの急速な感染拡大により世界各国で都市封鎖の措置が講じられた際、出口戦略のひとつとして提案された。新型コロナウイルス感染症から回復して免疫を獲得した人から優先的に社会経済活動に復帰させるというアイデアだ。

 

北欧アイスランドでは、2021年1月から、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した国民に対して「ワクチン接種証明書」を発行している。渡航先で「ワクチン接種証明書」を提示することで検疫措置を免除させるなど、国境を超えた往来を後押しするのが狙いだ。

 

世界最速のペースで集団接種をすすめているイスラエルでも、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した人と新型コロナウイルス感染症から回復した人に「グリーンパスポート」と呼ばれるワクチン接種証明書を発行し、イベントの参加や外食、海外への渡航などを認める案を検討している。

 

観光立国では、今夏のバカンスシーズンに向けて、感染拡大のリスクを抑制しながら、多くの観光客を迎えるための方策を模索している。ギリシアのキリアコス・ミツォタキス首相は、2021年1月、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長に、欧州連合(EU)全体でワクチン接種証明書を導入するよう促す書簡を送った。

 

スイスの非営利団体「コモンズプロジェクト」や世界経済フォーラムらは、個人のプライバシーを保護しながら、渡航先の検疫で必要な健康データを共有できる世界共通の電子証明書「コモンパス」を共同で開発している。健康状態申告書やPCR検査証明書、ワクチンの接種履歴などのデータを記録できる仕組みだ。

 

分断を招き、格差がさらに悪化するおそれ

しかし、「免疫獲得証明書」には、依然として多くの懸念が示されている。社会経済活動に復帰できる人とそうでない人との分断を招きかねず、格差がさらに悪化するおそれがある。

 

優先的に行動制限を解除してもらおうと、偽造が横行したり、新型コロナウイルスに意図的に感染しようとする人が増えるおそれもある。

 

また、「ワクチン接種によって新型コロナウイルスへの免疫がどれだけ持続するのか」、「新型コロナウイルス感染症から回復した人はワクチン接種と同等の免疫を保持しているのか」といった点がまだ十分に解明されておらず、「免疫獲得証明書」の有効期限をどのように定めるのかも不明だ。

 

「免疫獲得証明書」は、社会経済活動の回復に向けた手段のひとつとして有望ではあるものの、その実用化に向けて解決すべき課題が多く残されている。【1月29日 松岡由希子氏 Newsweek】

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「実用化に向けて解決すべき課題が多く残されている」のは、そうなんでしょうが、個人的な「本音」で言えば、「グズグズして先進国最後尾なった政府、異様にワクチンを警戒する社会風潮に引きずられて、せっかくワクチンで免疫できたのに、グダグダ言って接種を受けない人達と同列に自粛を強要されるのはたまんないな・・・」といったところ。(もちろん、心の中の「本音」であり、表だって言う際は、もっと差し障りのない言い方をしますが)

 

公的サービスにおいて「区別」を設けるのは問題があるでしょうが、民間の企業・店舗のサービス提供、コンサートなどのイベント、旅行などで「区別」がなされるのを、政府が「差別してはいけない」と禁止できるか?という問題が起きます。

ここ数日、「接種証明書」のニュースが。「接種証明書」が出されるということは、その後、それが何らかの形で「活用」されるという話になります。

 

“デンマーク、独自にデジタル・パスポートを開発、ワクチン接種証明書も表示、まずは出張で活用”【2月4日 トラベルボイス】

“スウェーデン、ワクチン接種の電子証明書を計画 夏までに”【2月5日 ロイター】

 

また、「世界共通仕様」作成の動きも。

 

****世界共通「ワクチン接種証明書」 Microsoftなど開発へ****

米マイクロソフトやオラクル、顧客情報管理のセールスフォース・ドットコムなどでつくる有志連合は14日、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けたことをスマートフォンのアプリ上で証明できる世界共通の国際電子証明書「ワクチンパスポート」を開発すると発表した。各国でワクチンの普及が進むのに合わせて早期から国境間の移動や経済活動の再開を促す狙いがある。(中略)

 

新たに導入をめざすワクチンパスポートは、利用客の接種記録をスマートフォンのアプリや紙に印刷されたQRコードで提示する。飛行機の搭乗時だけでなく、出勤や登校、イベントへの参加や食料品店での買い物などでの活用も想定する。

 

複数あるワクチンのうちどの種類の接種で入国を受け入れるかなど、独自のルールを設定できるようにする構想だ。

 

コモンズプロジェクトの最高経営責任者(CEO)を務めるポール・マイヤー氏は、今後はコロナ検査の陰性またはワクチンの接種済みのいずれかを証明すれば利用客が入国できるよう、複数の政府と協議を進めていると明らかにした。

 

現在はコロナ検査の陰性結果を示すデジタル証明書を発行しており、ワンワールド、スカイチーム、スターアライアンスの3大航空連合で使用されている。

 

(中略)欧州ではすでに、国や地域単位で電子証明書の作成を探る動きも出ている。デンマーク保健省はワクチンを接種した市民が、接種が義務付けられている国に旅行するためのワクチンパスポートの作成に着手した。

 

エストニアは世界保健機関(WHO)と、ワクチン接種データを国境を越えて共有できるようにする電子証明書を開発する契約に署名した。ギリシャ政府は欧州委員会に対し、全ての欧州連合(EU)加盟国を対象にした接種証明書の共通ルールを早急に作るよう求めている。

 

接種履歴を活用する上では、十分な免疫効果が得られているかの検証も必要となる。感染力が従来より強いとされる「変異種」がみつかった英国は、ワクチンの接種が感染や入院、死亡率の減少に効果がどの程度出ているかを精査するまで、ワクチンパスポートの検討は見送る方針だ。

 

共通証明書の導入をめぐっては、人々を健康状態で区別し、公共サービスを利用する権利や移動の自由を制限することも可能になるなど、個人情報や人権保護の観点から問題があるとの指摘もある。

 

ギリシャのミツォタキス首相はこうした懸念に対し、予防接種を受けた人には自由な旅行を認めるべきだとする一方で「予防接種を義務付けたり旅行の前提条件にしたりするつもりはない」と述べた。【1月15日 日経】

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人々を健康状態で区別することの人権保護の観点からの問題・・・すでに現在でも、多くの店舗で体温チェックとかごく普通に行われており、また、私の住む田舎では東京方面を過去2週間に訪問した者は歯の治療も断られるという実態があります。「今更・・・」という感も。

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フランス  ワクチン接種に懐疑的 しかし、最近は希望者が急増 日本は依然として慎重姿勢

2021-01-31 22:52:00 | 疾病・保健衛生

(【1月29日 FNNプライムオンライン】)

 

【夜間外出・入国規制が強化されたフランス “フランスらしい”抵抗・反発も】

フランスの新型コロナ感染状況は、1月30日時点で感染者累計317万人、死者は7万5千人と厳しい状況にありますが、一時期は1日あたり6万人ほどにも達した新規感染者は現在は2万人前後と、少なくはなっています。(日本に比べるとはるかに高いレベルですが)

 

また、感染力が強い変異型ウイルスへの不安も高まっています。

 

こうした状況を受けて、全土で夜間外出制限が行われています。

 

****フランス全土で夜間外出制限強化=「ウイルス、活発に拡大」―新型コロナ****

フランスのカステックス首相は14日、記者会見し、新型コロナウイルス感染防止対策として全土で実施している夜間外出禁止令について、16日以降、開始時間を現行の午後8時から同6時に繰り上げると発表した。同様の措置は既に一部地域で行われていたが、今回の規制強化でパリも対象となった。

 

カステックス氏は「ウイルスは活発に拡大している」と強調。夜間外出禁止令の強化は「少なくとも約2週間」継続すると述べた。また、感染状況が深刻化した場合、再度ロックダウン(都市封鎖)に踏み切ると明らかにした。

 

スーパーマーケットを含む全商店は午後6時に閉店となり、飲食店は夜間は宅配のみ営業可能。一方、休校措置は取らない。【1月15日 時事】 

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フランス政府は29日、新型コロナウイルス感染抑制に向け3回目となるロックダウン(都市封鎖)は行わないと決定、代わりに入国管理と抑制措置違反の取り締まりを厳格化して対応することとしています。

 

****フランス、EU域外からの入国禁止 感染歯止めかからず****

フランスのカステックス首相は29日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えることを目的に、欧州連合(EU)域外からの入国を31日から原則として禁じると発表した。

 

フランスでは連日2万人超の新規感染者を記録。英国などで猛威を振るう感染力の強い変異ウイルスも連日2千件以上確認され、拡大を続けている。

 

カステックス氏は、今月から全土で導入している午後6時からの外出禁止令について、「効果はあったが不十分だ」と指摘。入国を厳しく規制するとともに、夜間の外出禁止を守らない市民への検挙を強化すると明らかにした。

 

フランスに入国できるのは「絶対的な理由」がある場合に限られるとしたが、具体例には触れなかった。

 

昨年春と秋に課した24時間の外出禁止令については、「あらゆる面で影響が重大だ。避けられるチャンスがまだ残されている」として見送った。

 

フランスは今月から、全世界からの入国者に新型コロナ検査の陰性証明の提示を義務づけ、EU域外から入国した場合は1週間の自主隔離を求めている。【1月30日 朝日】

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フランスの場合、日本とは異なり自己主張が強く、政府の言うことを素直にきくような国民性ではない・・・というイメージがありますが、新型コロナに関しては、これまでのところ、そうした国民性にもかかわらず比較的従順にマスク着用や外出制限に従っているようにも見えます。それだけコロナへの不安が強いということでもあるのでしょう。

 

ただ、これだけ規制が続くと、やはり綻びや反発・不満も出てきます。

 

****仏、年末年始に外出禁止令で600人以上拘束 警官13万人動員**** 

フランスのダルマナン内相は1日、12月31日から元旦にかけて新型コロナウイルス対策の夜間外出禁止令に違反したとして、全国で662人を身柄拘束したと発表した。

 

政府は31日の夜から禁止令徹底のため、警察官約13万人を動員。西部レンヌでは、約2500人が集まった違法パーティが摘発された。現在は感染対策で午後8時から午前6時までの外出は禁じられ、室内の集まりは「6人まで」と定められている。

 

フランスで新年は、パーティを開いて祝うのが習わし。毎年、パリのシャンゼリゼ通りは祝杯をあげる人でにぎわうが、内相は「パリで禁止令は、おおむね守られていた」と述べた。(後略)【1月2日 産経】

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****警察署で歌って踊る送別会、コロナ対策を公然と無視か フランス****

フランスで新型コロナウイルス対策のソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)を公然と無視するかのように踊る警察官らの動画が流出したことを受けて、当局が28日、捜査を開始した。

 

ニュースサイト「ループサイダー」に流出した映像には、パリ北郊オーベルビリエの警察署で今月22日、同僚の送別会に参加する警察官が映っていた。

 

レクリエーション室と見られる場所で、少なくとも12人がマスクなしで、ソーシャル・ディスタンシングも守らずに歌ったり、踊ったりしていた。(後略)【1月29日 AFP】

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****仏ニースの料理店、コロナ規制に抵抗し100人招いて昼食会 一時拘束****

地中海に面した南仏ニースのレストラン経営者が、新型コロナウイルス対策で政府がカフェや料理店に出している閉鎖命令に背き、約100人の客を招いてランチ営業をしたとして28日、警察に拘束された。

 

フランスでは新規感染者数の急増を受けて、10月30日から飲食店に閉鎖命令が出ている。だが、クリストフ・ウィルソン氏は27日、経営するレストラン「ポピーズ」を開店。集まった約100人はマスクを取り、テラスに陣取ったバンドの演奏を聞きながらプロバンスシチューなどの料理を楽しんだ。

 

ウィルソン氏は集まった報道陣に対し、大手スーパーチェーンがほぼ通常通りに営業している点に触れ、「カルフールやプリマなどの多国籍企業(の店舗)に多くの人が集まっているのを見たら、もう(営業禁止は)受け入れられない」と訴えた。「私は従業員に給与を支払い、家族を養い、客を歓迎しなければならない」(中略)

 

政府は、集会による感染拡大を阻止するため、少なくとも2月中旬までは飲食店の営業禁止を継続する方針を示している。だが、仏東部で活動するシェフのステファン・チュリヨン氏は、2月1日に一斉に店を開くよう全国のレストランに呼び掛けており、すでにシェフ数人や一般の数千人が賛同を表明している。【1月29日 AFP】

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まあ、こういう話の方が「フランスらしい」とも思えますが・・・

 

【ワクチン接種に懐疑的 ただ、ここにきて接種希望者が増加】

そのフランスでも、他の欧州諸国同様にワクチン接種は始まっていますが、そのペースは遅いことが報じられています。

 

****欧州で接種ペースに格差 進む英、遅れる仏 コロナワクチン****

(中略)一方、EUでは今月6日、米バイオ企業モデルナのワクチン販売が許可された。ファイザーのワクチンに続き2件目となるが、フランスではドイツなどに比べ「接種ペースが遅すぎる」との批判が出ている。

 

フランスは昨年12月27日、他のEU諸国とともに、ワクチン接種を開始した。第1段階は、対象を高齢者施設の入所者と職員に限定した。

 

ベラン保健相は7日、「これまでの5日間で4万5千人に接種した」と述べたが、接種を受けた人はドイツで37万人、イタリアは30万人を超え、大きな差がある。施設ごとのワクチン配分で混乱があったうえ、接種対象者への説明に時間がかかったためとみられている。

 

フランス政府は新たな接種計画を発表し、今月末までに100万人の接種を目指すため、接種対象を50歳以上の医療関係者や訪問介護員に拡大する方針を示した。【1月8日 産経】

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フランスで他国よりワクチン接種が遅れている背景には、運用上の問題のほか、ワクチン接種を不安視して抵抗感を持つ国民が少なくないことも指摘されています。

 

****仏、ワクチン接種進まず 政府の慎重姿勢に批判****

新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっているフランスで、そのペースが遅いとして、研究者らや野党から政府を批判する声が上がっている。ワクチン接種に懐疑的な国民が多いことも、遅れの一因となっている。(中略)

 

世論調査会社イプソスが世界経済フォーラムと共に行った世論調査では、ワクチン接種を希望するフランス国民の割合はわずか40%で、英国(77%)や米国(69%)などの他の先進国に比べて著しく低いことが明らかになっている。(後略)【12月31日 AFP】

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そういう事情もあって、フランスのワクチン接種の遅れはますますひどくなっています。

 

****各国のワクチン接種率 最高はイスラエルの30% フランスは1.8%にとどまる****

いよいよ日本でも新型コロナウイルスのワクチン接種が2月下旬にも始まる予定。 世界各国のワクチン接種回数を見てみると、ファイザー社やモデルナ社のお膝元、アメリカでは2,169万回。 また、世界で最初に接種が始まったイギリスでも700万回を超えている。 

 

これが「接種率」となると、世界で最も高いのはイスラエルで30%。 これに対してアメリカはおよそ6%、イギリスも11.1%と低く、当初の想定より接種のペースが遅れている。 

 

そして、今回FNNが取材したフランスは接種回数が124万回余り、接種率は1.8%にとどまっている。【1月29日 FNNプライムオンライン】

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もっとも、ワクチンに懐疑的だったフランスでも、ここのところワクチン接種に肯定的な声が増えているとか。

 

“ワクチン嫌い”だったフランス人 ワクチン「希望」なぜ増えた?”【1月29日 1月29日 FNNプライムオンライン】

 

TV放映内容を要約すると、ワクチン接種開始前は、「接種を希望する42%、希望しない58%」だったのが、接種開始2週間後には「接種を希望する56%、希望しない43%」と逆転したとか。

 

身近で実際に始まって不安感が薄れたのと、変異ウイルスという新たな脅威の前で不安がってはいられないという事情もあってのことのようです。

 

現在は接種者は100万人を越え、フランス政府は8月末までには7000万人を目指すとか。(フランスの人口は6900万人。2回目接種もカウントして・・・ということでしょうか)

 

【ワクチン接種懐疑論が世界的に後退するなかで、日本は依然として・・・】

ワクチンへの懐疑的な見方が減少して、より積極的になっているのはフランスだけではなく世界的傾向のようですが、そうした中で、日本だけが懐疑論が根強く、政府・専門家は「出口」を示すことなく、ひたすら自粛を国民に強要し、国民もこれを受け入れる不思議な状況が続いています。

 

****ワクチン懐疑論、世界で後退=接種希望急増、日本は停滞―国際調査・新型コロナ***

新型コロナウイルスワクチンに対する懐疑論が、世界的に大きく後退している。英調査会社イプソス・モリが主要15カ国で実施した国際比較調査によると、すべての国で昨年12月から今年1月にかけて接種希望者が増加した。ただ、日本は調査対象の中では強く希望する人の割合が最も低かった。

 

コロナワクチンをめぐっては、各地で接種が始まる中、争奪戦の様相を呈している。同社は「人々の当初のためらいは、すぐに接種したいという姿勢に急速に変化している」と指摘した。

 

調査は日米中など15カ国で16〜74歳の約1万3000人を対象に、1月14〜17日に実施。「もしワクチンを接種できるなら、接種しますか」との質問に対する回答を昨年12月時点と比較した。

 

それによると、「ぜひしたい」と回答した人の割合はすべての国で増加。特に接種が始まったイタリア、スペイン、英国などでは20ポイント以上の大幅な伸びを記録した。

 

「ぜひしたい」の割合はブラジル(68%)、英国(66%)などが高かった。感染者、死者が世界最多の米国は42%。日本は17%と調査対象の中で最低で、「ややしたい」の人を合わせると64%だった。

 

ワクチンの副反応については、日本で62%から懸念の声が上がり、米英中独もほぼ同じ水準だった。同社は「日本人が接種を最もためらっている。これは過去の調査でも見られた傾向だ」と述べた。【1月30日 時事】 

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ワクチン供給に問題が生じ、EUと製薬会社が揉めているのは周知のところ。

世界中で接種が進み、日本が「じゃ、そろそろ日本も・・・オリンピックもあるし・・・」と重い腰を上げる頃に、十分なワクチンが入手できるのか?

 

****日本へのワクチン供給不透明 新型コロナ、承認申請はファイザーのみ****

新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、政府は2月下旬から医療従事者に接種を始め、重症化リスクを考慮して高齢者や基礎疾患のある人らに対象を拡大していく方針だ。だが、承認手続きが先行している米製薬大手ファイザー社からの供給量や日本に届く時期の詳細は不明で、国民に円滑に行き渡らせることができるのかは見通せない。

 

政府は医療従事者に続き、3月下旬に高齢者、4月以降に基礎疾患のある人や高齢者施設の従事者らに接種することを想定している。「今年前半までに全国民に提供できる数量の確保を目指す」のが政府方針だが、一般の人への接種スケジュールは未定だ。

 

ファイザー、英アストラゼネカ、米モデルナの3社から計3億1400万回分(1億5700万人分)の供給を受ける契約をしているが、厚生労働省に承認申請したのは現段階ではファイザー社だけだ。

 

そのファイザー社とは、6月末までに1億2千万回分(6千万人分)の供給を受けることで基本合意していたが、契約では年内に1億4400万回分(7200万人分)に変わった。同社の増産に向けた製造工程の変更が伝えられる中、先行きは不透明といえる。【1月28日 SankeiBiz】

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「6月末まで」が「年内」に先延ばしされたというところが重要です。

1~3月に3000万回分を供給するとされているアストラゼネカは、今欧州で供給の遅れから炎上しています。日本国内生産することで安定供給を目指す方針とのことですが、供給には時間を要するのでは?

 

“河野太郎行政改革担当相は27日、新型コロナウイルスワクチンについて、65歳以上の高齢者への接種は早くても4月1日以降になると全国知事会などに伝達したことを明らかにした。政府は3月下旬の開始を想定していたが、ずれ込んだ格好だ。”【1月27日 共同】

 

大丈夫なのでしょうか?

 

【国民のワクチン理解に重要なメディアの報道姿勢】

国民のワクチン接種への懐疑論はメディア報道の姿勢が大きく影響します。

 

****ワクチン不安を煽る報道の問題****

米ファイザーと独ビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が世界各地で開始されてからひと月以上経った。そのなか多くの国でワクチンへの不安を煽る報道が止まない。

 

もちろん、副反応の事実については透明性のある報道としっかりとした検証が必要だが、因果関係を示さず、ただ不安を煽るだけの記事には注意が必要だ。(中略)

 

◆メディアの役割、読者の役割
日本ではオリコンニュースが20日、新型コロナワクチンについて、女子高生100名を対象に行ったアンケート結果を発表。6割超が「受けたくない」と返答したという内容を、毎日新聞や朝日新聞、中日新聞などの全国紙や大手地方紙がこぞって転載したことに批判が集まった。

 

これに関しては、産婦人科医の宋美玄さんのツイート「コロナワクチンについて充分な情報提供もなしに取ったアンケートをニュースにすることに何の意味があるのか。 目先のページビューは稼げるかも知れないが、世界中で日本だけコロナを克服できない未来にしたいのだろうか」が代表するように、メディアがまず果たすべき役割はワクチンに関する正しい情報をわかりやすく伝えることではないのか、と感じた人も多かったはずだ。

 

メディアはセンセーショナルなタイトルで人の目を集め、早合点し拡散する読者を作り出しているのではないか。

 

一方でセンセーショナルなタイトルに頼るだけのメディアを作り出しているのはそういう読者でもある。良質な記事よりもデマのほうが拡散しやすいネット時代において、賢く情報を取捨選択することは、メディアを育てることにもつながることを覚えておきたい。【1月29日 NewSphere】

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接種が始まれば、必ず副反応事例は生じます。副作用のない薬など存在しません。すべてはリスクとベネフィットの比較です。

 

そのときセンセーショナルに煽るのか、冷静・客観的に報じるのか・・・そこらが非常に重要になります。

 

 

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新型コロナワクチン 欧州で白熱する「ワクチン戦争」 早期実施の声が出ない日本の不思議

2021-01-28 23:25:33 | 疾病・保健衛生

(英国で4日、英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大が開発した新型コロナワクチンの接種を受ける高齢者【1月28日 朝日】)

 

【白熱する「欧州ワクチン戦争」】

各国が新型コロナワクチンの接種をコロナ禍からの「出口」として急ぐなかで、感染状況が厳しいEUでは予定していたワクチンの供給が行われていないと、製薬会社との間で法的手段も辞さないとの激しい議論になっています。

 

なお、EUのワクチンは欧州委員会が一括購入し、人口比に基づき加盟国に配分しています。

 

****【新型コロナ】ワクチン足りない! EU、供給削減に怒る**** 

欧州で新型コロナウイルスのワクチン供給が逼迫(ひっぱく)してきた。大手製薬会社ファイザー、英製薬大手アストラゼネカが相次いで、欧州連合(EU)への供給削減を発表した。

 

接種計画の見直しを迫られる国もあり、ミシェルEU大統領は24日、仏ラジオで製造元に契約順守を求め、「法的措置も辞さない」構えを示した。

 

ファイザーは15日、欧州での供給の一時削減を発表。ワクチン増産に向けて、ベルギー工場の生産ラインを見直すための措置だとしており、供給正常化は25日以降になるとした。

 

アストラゼネカについては23日、欧州委員会が通告を受けたと発表し、「不満」を表明した。

 

同社のワクチンは今月末、EUで販売が認可される予定で、欧州委が各国に配分計画を示していた。3月までのEUへの納入分は計画の4割程度になる見込みという。

 

イタリアのコンテ首相は「アストラゼネカのワクチンは国内に800万回分が納入されるはずだったのに、340万回分になる」とフェイスブックに見通しを示し、接種計画に影響が出ると懸念を表明。「重大な契約違反。国民の生命がかかっている」として、同社に法的措置をとる構えを示した。

 

イタリアは、ファイザーについても提訴する方針を示している。ポーランド政府報道官も地元ラジオで、来月にも製造元への提訴を検討すると述べた。

 

一方、ハンガリー政府はEUを通じたワクチン購入では遅すぎるとして、国内に限ってロシア製ワクチン使用を暫定認可することを決めた。ペーテル外務貿易相がこのほど訪ロし、購入をめぐる合意を交わした。

 

ドイツではシュパーン保健相が、「受動的ワクチンとしての効果が確認された」として、モノクローナル抗体を使った治療薬を20万回分購入すると表明した。

 

この治療薬は昨年、トランプ米前大統領が新型コロナに感染した際に使われた。症状悪化を食い止める効果があるとされ、ドイツでは当面、大学病院での使用を想定しているという。

 

EUでは昨年末、ファイザーのワクチンが承認の「第1号」となり、域内各国で接種が始まった。現在は米バイオ企業モデルナのワクチンとあわせて2種が承認され、各国で接種キャンペーンが展開されている。

 

欧州委は「夏までに成人人口の7割」を目標に掲げ、製造元の各社と計23回分のワクチン購入に合意していた。

 このうち、ファイザーは6億回分、モデルナは1億5千万回分、アストラゼネカは4億回分を占める。EUのワクチンは欧州委が一括購入し、加盟国に配分している。【1月25日 産経】

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EUにとって“苛立たしい”のは、先行する(EUを離脱した)イギリスへのワクチン供給が比較的順調に進んでいるのに対し、EUが劣後しているという点です。

 

EUでワクチン接種が始まったのは12月末で、イギリスの3週間近く後だったこともあり、本来ならこの遅れを取り戻したいところなのに、先に契約したイギリスへの供給が優先されている・・・という“焦り”も。

 

“英オックスフォード大などの集計では、英国では100人あたり11回超の接種がなされたのに対し、EUでは2・5回にも届いておらず、ワクチン接種への焦燥感が高まっている。”【1月28日 朝日】

 

****EUが「英国優先?」に怒り 白熱「欧州ワクチン戦争」 スペインでは接種停止も**** 

欧州連合(EU)のキリアキデス欧州委員(保健衛生担当)は27日、新型コロナウイルスのワクチンで、英製薬大手アストラゼネカがEUへの供給削減を通告したことを批判し、「約束を守るべき」と迫った。同社が英国への供給を優先したとの見方も浮上し、欧州で「ワクチン戦争」が白熱している。

 

キリアキデス氏は27日の記者会見で、昨年8月に欧州委が同社と事前合意を交わしたことを強調し、「生産能力に達しなかった、というのは文書に反する」と述べた。さらに、「先に決めたところに先に供給するという理屈は拒否する」として、EUより早く合意を交わした国に供給を優先するのは不当だと主張した。

 

キリアキデス氏の発言は、アストラゼネカ幹部が今週、欧州メディアで行った発言を受けたもの。この幹部は「英国は、EUより3カ月早くワクチンを契約した。このため(英国向けは)供給ラインを改善する余裕があった」と述べ、供給体制は英国とEUで格差があると認めた。

 

さらに、EUとの事前合意について、「われわれは最善を尽くすと言ったが、将来の成功を約束したわけではない」と欧州委に反論した。同社は英国やオランダ、ベルギーに生産拠点を持つ。

 

EUでワクチンが逼迫(ひっぱく)する中、英国のジョンソン首相は27日、下院で「すでに680万人にワクチンを接種した。欧州で、どの国よりも多い」と述べ、国内の接種計画が順調に進んでいると強調した。

 

EU域内では今月、米製薬大手ファイザーも、ベルギー工場の改変のために一時供給を削減すると発表。スペインのマドリード州政府は27日、2度目の接種ができなくなる恐れがあるとして、ワクチン接種を2週間、停止することを決めた。

 

欧州委はワクチンの域外流出の歯止めとして、輸出を規制する方針を表明している。フランス製薬大手サノフィは27日、自社ワクチンの開発が遅れる中、ドイツ工場でファイザーのワクチン生産を支援すると発表した。

 

EUでは現在、ファイザー、米バイオ企業モデルナの2種のワクチンが接種されている。アストラゼネカのワクチンは今月末に域内での販売が認可される予定で、欧州委は最大4億回分を調達する事前合意を交わしている。【1月28日 産経】

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「われわれは最善を尽くすと言ったが、将来の成功を約束したわけではない」・・・・そのあたりが契約書でどのように記されているのか・・・契約におけるもっとも基本的な事項のはずですが、どうしてそこで「見解の相違」が生じるのでしょうか?

 

EUも製薬会社も前のめりで契約を急ぎ、そうした重要な部分が互いに都合よく解釈できる“玉虫色”ななっていたのでしょうか。

 

EU側は域内での製造品の流出に歯止めをかける「輸出規制」を行う方針も示しています。

一方、こうした措置により供給が制限される可能性があるイギリスは、EUの動きをけん制しています。

 

****EUがワクチン囲い込みへ 欧州委員長、「輸出規制」で供給削減に対抗****

欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は26日、世界経済フォーラム(WEF)のオンライン会議で、新型コロナウイルスのワクチンでEUが輸出を規制する方針を示した。ワクチン供給がひっ迫する中、域内での製造品の流出に歯止めをかける構えだ。

 

フォンデアライエン氏は「EUは最初のワクチン製造のために、巨額の投資をした。企業は責務を果たさねばならない」として、ワクチン輸出を透明化するシステムを設けると述べた。

 

米製薬大手ファイザー、英製薬大手アストラゼネカはベルギーにワクチン生産拠点を持っており、輸出を届け出制とすることで、EUが契約分のワクチンを確保する狙いがある。

 

アストラゼネカが先週、3月までのEUへの供給量を当初予定の4割程度にすると通告したのを受け、対抗措置に出たものだ。

 

ドイツのシュパーン保健相も「輸出を認可制にするのはよいこと。EU内での製造後、どのワクチンが輸出されるのかを監視できる」とフォンデアライエン氏の提案を支持した。

 

これに対し、英国のジョンソン首相は記者会見で「疫病禍では、国際的協力が必要。国境に制限を設けるべきではない」と述べ、EUの動きをけん制した。英国は、ファイザーのベルギー工場からワクチンを輸入しており、EUが輸出管理を発動すれば、影響を受ける恐れがあるためだ。(後略)【1月27日 産経】

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****英、ワクチン供給混乱回避へEUと協力へ 保護主義をけん制****

英国のハンコック保健相は26日、新型コロナウイルスワクチンの供給に混乱が生じないよう欧州連合(EU)と協力できるとの見方を示し、パンデミック(世界的大流行)の最中で保護主義は正しい姿勢ではないと強調した。(後略)【1月27日 ロイター】

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EU側の怒りはおさまりません。「輸出規制」にとどまらず、EU内の工場の生産が遅れるなら、イギリスの工場で生産したワクチンをEUに供給するようにアストラゼネカに要求しています。

 

****EU、アストラゼネカに英工場製のワクチン供給を要求 域内での不足うけ****

欧州連合(EU)は27日、英製薬大手アストラゼネカに対し、イギリスの工場で生産している新型コロナウイルスワクチンをEU加盟国に供給するよう強く求めた。

 

アストラゼネカは先に、EUには今年第1四半期(1〜3月)に約束した供給分のごく一部しか提供できないと発表。欧州工場における生産問題が原因としている。

 

これに対してEUは激しく反発。EU域外の工場で生産した分で不足を補うべきだと主張している。

 

両者は27日に問題解決に向けて協議した。欧州委員会のステラ・キリアキデス保健担当委員はツイッターで、「配達スケジュールが不透明な状態が続いている」ことを残念に思うと述べた。

また、「解決策を見いだし、EU市民に迅速にワクチンを届けるため、今後もアストラゼネカと協議していく」とした。【1月28日 BBC】

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【ワクチンを急げとの声が出ない日本の不思議】

ワクチン供給の遅れは、自国民の生命に多大な影響を及ぼしますし、そのことは各国政権への信頼にも関わってきますので、EUが怒るのは当然とも言えます。

 

むしろ不思議なのは、まだワクチン接種が始まってもおらず、開始が1か月ほど先になりそうな日本で「早くしろ!」「どうして遅いのか!」という議論が全く表面化しないことです。

 

昨日取り上げた、大統領がワクチン・コロナを軽視していた“あの”ブラジルでさえ、ワクチン接種が始まっています。 アジアでは・・・

 

タイのプラユット首相は、2月14日に開始する新型コロナウイルスワクチン接種の第1段階では1900万人への接種を目指すと表明したていますが、同国では政府のワクチン配布ペースが遅いとの批判が出ている【1月28日 ロイターより】とのこと。 2月14日で“遅い”なら、日本はどうなるのか?

 

日本よりワクチン確保が遅れていると国内批判も出ていた韓国でも“ワクチン接種 2月に首都圏の医療従事者から=韓国政府が計画発表”【1月28日 聯合ニュース

 

インドネシアで1月13日、ワクチンの接種キャンペーンが始まり、ジョコ大統領が最初に接種を受けています。

インドも1月16日、ワクチンの世界最大級の接種計画を開始しています。

中国、インドの「ワクチン外交」がぶつかるミャンマーでは、1月27日からインド製のワクチンの接種が始まりました。

東南アジア・南アジア各国は、中国とインドの「ワクチン外交」競争の結果、多くの国がどちらかから、あるいは両方からワクチン供給を受ける計画になっています。

 

そんななか、日本は2月下旬から医療従事者への接種がスタートするようですが、早くも“遅れ”が。

 

****高齢者ワクチン接種は4月以降に 3月下旬がずれ込み、河野氏表明****

河野太郎行政改革担当相は27日、新型コロナウイルスワクチンについて、65歳以上の高齢者への接種は早くても4月1日以降になると全国知事会などに伝達したことを明らかにした。

 

政府は3月下旬の開始を想定していたが、ずれ込んだ格好だ。最も早い想定では6月第3週までに2回目の接種を終える日程を描いている。都内で記者団に語った。

 

河野氏は「自治体には、この日程で準備してもらいたい。3月中に高齢者接種が始まることはない」と説明。理由を「医療従事者の数やファイザー社とのやりとりをしている状況に鑑みた」と語った。

 

実際の接種日程が確定するのは供給日程次第だとも強調した。【1月27日 共同】

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実際の接種日程が確定するのは供給日程次第・・・・冒頭のEU「ワクチン戦争」に見られるように、供給は非常にタイトになっています。

 

そうしたことから、供給予定外国製薬会社の日本国内での生産を進める動きも。

 

****ワクチン、アストラゼネカが9000万回分以上を国内生産へ=官房長官****

加藤勝信官房長官は28日午前の記者会見で、アストラゼネカからのコロナワクチンの供給について、「厚生労働省における生産設備の強化のための補助金を活用しながら国内生産の準備をしていると承知している」と述べ、「昨日、厚労省に国内で9000万回以上の生産を目指すとの報告があった」と明らかにした。その上で、「ワクチンを国内で生産できる態勢を整えることは極めて重要だ」との認識を示した。

日米首脳会談において、新型コロナウイルスの治療薬やワクチン開発について日米で緊密に連携していくことで一致したと明らかにした。

 

ワクチン供給に関しては、全世界共通の課題であり、日本が調達を予定しているファイザーやモデルナといった企業が米企業であることも踏まえ、供給全体の問題について日米での連携・協力を確認したところだとした。(後略)【1月28日 ロイター】

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アメリカも他国以上にワクチンを必要としており、日本への供給がスムーズに行くのか?

 

個人的印象としては、世界中でワクチン接種が急がれるなかで、日本の対応は極めて「悠長」に思えてしまいます。

 

もちろん、安全性・有効性の確認など、必要とされる検証を急いで行っているのでしょうが、他国より1周遅れ・2週遅れで遅いというのは、他国は「必要な確認」を行わずに接種を行っている、日本の対応が本来のやり方で他国のやり方が間違っているということでしょうか?

日本はワクチン接種を急ぐ必要がない、他国感染が軽視できる状況にあるのでしょうか?

 

ワクチン接種開始が遅れれば、それだけ犠牲者も増えますし、自粛を強要される状況で事業に行き詰まったり、仕事を失い、生活できなくなる者も増加します。

 

他国より1周遅れ・2週遅れになるのであれば、その理由をきちんと説明してほしいものです。

 

政府が、あまり急がないのは、わかります。急いだ結果、副作用やトラブルが多発すれば、批判の矛先は政府に向かいますので、国民の生命がどうなろうが、生活がどうなろうが、とにかく時間をかけてしっかりとやりたい・・・という発想は、わからないではありません。

 

政府の対応以上に不思議なのは、メディアや国民世論からも「ワクチンを急いで!」という声がほとんど出ないことです。

 

メディアが取り上げる“街の声”は「ワクチンは本当に大丈夫なのかしら・・・怖い」といった類がほとんど。

私には、これまでの薬害に過剰反応しているように思えるのですが・・・。

 

結局のところ、多くの国民は、なんだかんだ言いつつ、今の“リスクをとることなく、タコつぼのなかで嵐が過ぎるのを待つような”「自粛」社会で満足しているようにも。

 

そのあたりは、下記のような指摘にも共通する国民性のようにも思えます。

 

****「失われた20年」で、日本が本当に失ったのは「勇気」だ!****

中国のポータルサイト・百度に22日、「失われた20年で日本が失ったものは、いったい何だったのか」とする記事が掲載された。

記事は、1985年のプラザ合意、そして、90年代初めのバブル崩壊により日本は「失われた20年」を経験することになったと紹介。経済での世界一を目指した当時の日本としては「一時的な退避」のつもりだったかもしれないが、結果的に「退避」が常態化することになり、反転攻勢に出る機会が生まれることはなかったと伝えた。

その上で、日本が「失われた20年」の中で本当に失ったものについて「それは勇気だ。日本企業は二度と世界一になろうとする勇気を持つことはなかったのだ」としている。

記事は、かつてソニーやパナソニック、東芝といった日本の大手メーカーは綺羅星のような存在であり、到底追いつけるような存在ではなかったとする一方で、今やこれらの「綺羅星」は商品を選ぶうえでの単なる選択肢の一つとなり、もはや「到底手の届かない神聖さ」も失われてしまったとの考えを示した。

また、多くのハイエンド技術分野において日本はなおも大きな強みを持っており、ほぼライバルがいない分野も少なくないと指摘する一方で、「日本のイノベーション環境を見てみると、まるで時間が止まってしまったようであり、若い人たちの活躍も、新たなブランドも見えてこない」と評した。

そして、保守的な高齢者が増え、若い世代に「闘志」が不足する中で、将来の日本に残された立ち位置は頑固な「職人」しかないと主張。「失われた20年の中で失った勇気を取り戻そうとする人はいないのだろうか」としている。

記事は最後に、「向上する勇気を失った日本は、もはや世界で競い合う資格を放棄してしまったのである」と結んだ。【1月23日 Searchina】

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新型コロナワクチンなどをめぐる日本の事情、世界の事情

2021-01-12 22:46:45 | 疾病・保健衛生

(中国・石家荘市1000万人のPCR検査のため、河北体育館テニス館に設置された「火眼実験室」 設置に10時間、その11時間後には稼働【1月11日 AFP】)

 

【ワクチンには慎重、「健康より世間の目」という日本社会】

1月8日ブログ“新型コロナワクチン 急く様子がない日本の世論と政府 欧米では効率的接種の方法が議論”でも書きましたが、自粛大嫌いの私個人の新型コロナ対策への不満は、一人暮らしの気楽さもあって、乱暴に言えば「自粛・三密回避ばかり言うじゃなくて、出口戦略としてのワクチン接種を急げよ! 副作用? そんなものどんな薬にだってあるだろうが!」というもの。

 

ただ、こうした声は少数派のようで、「ワクチン不安 自粛を続けたい」という自粛大好きの慎重派が多数です。

 

****コロナワクチン、「接種したくない」約3割 民間調査****

調査会社のクロス・マーケティングのネット調査によると、新型コロナウイルスのワクチン接種について「したくない」と答えた人が29%だった。副作用を理由に挙げる人が目立った。行政による副作用の説明が重要になる。

 

同社は18日に全国の20~69歳の1100人に調査した。「接種したい」の回答は「すぐにでも」が8%、「様子を見てから」が50%だった。

 

「接種したくない」は「あまり」が22%、「絶対に」が7%だった。すぐに接種したい人を除いて、接種に慎重な理由を尋ねたところ「副作用が怖いから」が56%に達した。【12月28日 日経】

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先ほどNHKのニュースでもワクチンに関する調査結果を報じていました。数字は忘れましたが、やはり慎重な姿勢の方が多いみたい。

 

世論調査ついでに、もうひとつ興味深い調査結果を。

 

世の中「コロナ、コロナ」と大騒ぎですが、その実態は病気による健康への不安そのものより「世間の目」が怖いというもののようです。

 

****「健康より世間の目」67% コロナ感染で心配なのは―― 朝日新聞社世論調査****

朝日新聞社は、新型コロナウイルスをテーマに郵送方式の世論調査を行った。

 

「感染したら、健康不安より近所や職場など世間の目の方が心配」。この気持ちに「とても」26%と、「やや」41%を合わせて67%が「あてはまる」と答えた。「あまり」23%と「全く」9%を合わせた「あてはまらない」は32%だった。

 

「世間の目の方が心配」な人は現役層に多く、50代以下では74%。一方、60代以上では60%だった。世帯構成でも温度差があり、18歳未満の子どもがいる人だと75%に達した。

 

新型コロナに感染して重症化する不安は「大いに」42%と「ある程度」45%を合わせて87%が「感じる」と答えた。ただ、重症化の不安を「大いに感じる」人でも、66%が「世間の目の方が心配」で、全体との差は見られなかった。

 

背景には、感染者への厳しい視線があるようだ。「自粛要請された外出をして感染したら責められるのは当然」との気持ちがあてはまるのは「とても」27%と、「やや」50%を合わせて77%に上った。

 

マスク着用についても、自分の意識と、他人への視線に分けて尋ねた。自分がマスクをする理由は「感染対策より人の目が気になる気持ちの方が大きい」は、「とても」11%と、「やや」24%を合わせて35%が「あてはまる」と答えた。30代以下の若年層で高めで4割を超え、30代の男性に限ると47%だった。(後略)【1月10日 朝日】

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これはよくわかりますね。

私も、コロナ自体は「まあ、感染したら仕方ないね・・・重症化しても死ぬかも? それは運が悪かったって諦めるしかないね。病気なんてそんなものでしょ。」ぐらいにしか感じませんが、周囲が大騒ぎになるであろうこと、職場などにかける迷惑などの方がはるかに危惧されます。

 

マスクの「感染予防より人目対策」という意識を含め、日本社会が気にしているのはコロナそのもより、「世間」のほう・・・という「いびつ」で息苦しくなるような構造・本音が見えます。

 

こんな「いびつ」な状況を抜け出すために、一日も早くワクチンを・・・と思うのですが、国民の過剰な不安と、万一の場合の責任を回避したい政府の姿勢が絡んで、まったく急ぐ気配がないのは冒頭のとおり。

 

「早ければ2月下旬開始? やれやれ・・・」といった感じ。

ワクチン怖いから自粛していたいと言う人の邪魔はしませんが、接種したい人は早くできるようにしてもらいたいな・・・。

 

【今後課題となる「ワクチンパスポート」】

ワクチンの接種が始まると、接種した人と、まだの人をどう区別するのか、あるいは区別しないのか・・・そのあたりも問題になります。

 

端的に言えば「接種した人だけ飛行機に乗れます、入店できます・・・」ということになるのか、ならないのか。

接種したことを証明するのは「ワクチンパスポート」

 

****「ワクチンパスポート」が航空業界で進行中だが、一筋縄でいかなそうなワケ****

アメリカやイギリスなどで新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まり、日本でも2月下旬からワクチンの接種を開始する目標を掲げています。

 

これに関連して議論されているのが、もしワクチン接種を証明する必要があるとしたら、どうやってすればいいのか? そこで注目されているのが「ワクチンパスポート」という構想です。

 

新型コロナのワクチンが普及すれば、映画館、イベント会場、レストランなどの公共の場所への入場には、もしかしたらワクチン接種が必要条件になると考えることができます。

 

そうだとしたら、ワクチンの接種を証明したり、接種状況を管理したりするものが役に立つでしょう。それがワクチンパスポートです。

 

新型コロナによって多大な影響を受けた航空業界・旅行業界では、ワクチンパスポート構想に早く着手しました。世界の約290の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は、「IATAトラベルパス」のアプリの開発しています。(中略)

 

すでにオーストラリアのカンタス航空やマレーシアのエアアジアなど、国際線の搭乗客にワクチン接種を義務付ける意向を示している航空会社が出始めており、このような航空会社がこのアプリを利用していく可能性もあります。

 

個人情報管理への懸念

しかしワクチンパスポートでは、ワクチン接種のような健康情報を取り扱うものだけに、個人情報の管理に懸念を抱く人もいるでしょう。ワクチン接種に懐疑的な人も少なくありません。

 

またワクチンパスポートによって、「ワクチンを接種した=コロナ前のように自由に生活できる」といった安易な考えが人々の間で生まれると、社会の不公平を浮き彫りにする可能性があるという指摘もあります。

 

このような反論があるため、ワクチンパスポート構想は一筋縄ではいかないでしょう。【1月12日 GetNavl web】

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「ワクチンを接種した=コロナ前のように自由に生活できる」といった安易な考え・・・別にワクチン接種したからと言って予防をなおざりにする気もありませんが、さりとて、「自分の意思で接種しない人」と一緒にされて、いつまでも活動の自由が制約されるのは御免だね・・・という気も。

 

【危機的感染状況、政治的思惑もあってワクチン接種が進むイスラエル】

海外に目を転じると、ワクチン接種が一番進んでいるのはイスラエル。

イスラエルなどで接種が進んでいるのは、それだけ危機的状況が深刻だ、日本のように悠長に構えていられないという現実もあります。

 

****イスラエルのワクチン接種、世界最速ペース 3週間で国民の2割に****

中東のイスラエルが、世界最速のペースで、新型コロナウイルスワクチンの接種に突き進んでいる。

 

昨年12月20日に3週間の間隔で2回必要とされる米製薬大手ファイザー製のワクチン接種を開始。約3週間で国民の約2割が1回目の接種を終え、今月10日には2回目の接種が始まった。

 

旗振り役は「パンデミック(世界的大流行)を克服する最初の国になる」と強調するネタニヤフ首相。その理由とは――。

 

人口約900万人のイスラエルは、医療従事者や介護従事者、高齢者、感染すると重症化するリスクのある基礎疾患を持つ人たちへのワクチン接種を積極的に展開。すでに約200万人が1回目の接種を終えた。

 

英オックスフォード大が運営する統計サイト「Our World in Data」によると、100人当たりの摂取数は19・55で、先にワクチン接種を始めた英国1・94、米国2・02の約10倍だ。

 

背景にはいくつかの理由がある。ロイター通信はその一つとして、早期にワクチンを入手するため、製薬会社と高値で契約を結んだことを挙げた。

 

政府は支払額を明らかにしていないが、当局筋は1本当たり約30ドルとし、他国の2倍に当たる額で購入しているという。さらにハイテク化された流通網があるイスラエルは、他国のモデルケースになると製薬会社に申し出て、情報の迅速な提供も約束したとされている。

 

また、汚職疑惑の裁判が進行中のネタニヤフ氏にとって、パンデミックからの早期脱出は自身の政治的な生き残りと直結する問題でもある。

 

ネタニヤフ氏は3月23日投開票の総選挙をにらみ、ワクチン接種の開始を2度も前倒しし、さらに当初計画の1日6万人の接種を2・5倍増の15万人へと大幅に拡大した。

 

これに伴い、ワクチンの在庫不足問題が生じると、自ら製薬会社に掛け合うトップセールスを仕掛けるなど、ワクチンの早期納入に躍起となっている。(中略)

 

ワクチン接種が順調に進む一方で、新型コロナ流行の第3波は深刻だ。1日の新規感染者数が8000人(日本の人口で換算すると11万人に相当)を超える日が続き、感染者数は50万人に迫る。英国由来に続き、南アフリカ由来の変異株も見つかった。

 

こうした状況を踏まえ、政府は12月下旬からの都市封鎖(ロックダウン)をさらに強化して延長。この余波で13日に予定されていたネタニヤフ氏の汚職事件の公判は無期限延期された。【1月11日 毎日】

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イスラエルでワクチン接種が早く進んでいる理由としては、上記の他“危機意識の強い国民性に加え、個人情報を把握する国民皆保険制度が奏功している。”【1月12日 共同】とも指摘されています。

 

ネタニヤフ首相は、ファイザー社CEOとの個人的パイプを使って供給を急がせている「政治力」を、汚職疑惑みそぎの総選挙に向けてしきりアピールしているとか。

 

汚職疑惑云々はともかく、個人的には、菅首相にもそういう政治力を期待したいのですが・・・。

 

【接種を急ぐイギリス なかなか進まないアメリカ】

欧州で比較的早いのがイギリス。変異型ウイルスの蔓延で状況が切迫している事情があってのことです。

 

****英国で200万人がワクチン接種 「秋までに全成人に」****

英国でこれまでに新型コロナウイルスワクチンの接種を済ませた人は、約200万人に上っていることが分かった。ハンコック保健相が10日、英スカイ・ニュースとのインタビューで語った。

 

ハンコック氏によると、1月に入って直近7日間に接種を受けた人数は12月全体の合計を上回った。1日当たりの接種人数は20万人に達する勢いだという。

 

同氏は「すでに81歳以上の高齢者のうち約3分の1に接種した」と述べ、最もリスクの高いグループへの接種は「2月半ば」までに完了するとの見通しを示した。

 

また英BBC放送とのインタビューでは、19歳以上の全国民に接種できるだけのワクチンをすでに発注していると説明。「秋までに全員が接種を受けることを切に願っている」と述べた。

 

一方で英政府の医療責任者、ウィッティ主席医務官は10日付の英紙サンデー・タイムズへの寄稿で、感染力の強い変異種による感染が全国で拡大し、「悲劇的な結果」を招いていると指摘。感染者と死者、入院患者が急増し、一部地域では医療体制が未曾有の危機に直面していると訴えた。

 

ハンコック氏とウィッティ氏はそれぞれ、政府によるロックダウン(都市封鎖)措置のルールを守ることが重要だと強調した。ハンコック氏はさらに、「あらゆる違反行為は死を招く恐れがある」「これらのルールは必要最小限のラインだ」と語った。

 

米ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、英国は西欧で初めて感染者が300万人を突破し、死者は8万1000人に達している。【1月11日 CNN】

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“感染拡大が深刻な英イングランドで、ワクチン接種のための大型センターが今週中に7カ所開設され、多くの人々への接種が加速される予定となった。”【1月11日 BBC】とも。

 

深刻な感染状況にもかかわらず、なかなかワクチン接種が進まないアメリカでは、NY州クオモ知事が怒っています。

“「ワクチン打ったらボーナス」「打たなかったら罰金」接種進まぬアメリカで対応に「アメ」と「ムチ」”【1月11日 FNNプライムオンライン】

 

罰金は、NY州のワクチンを使いきれなかった病院に対するものです。

ボーナスは、テキサス州の病院で、ワクチン接種した職員向けのもの。

 

アメリカでもワクチンの安全性を不安視する人は多く、年末、バイデン次期大統領やハリス次期副大統領が、カメラの前でワクチンを接種してアピールするパフォーマンスも。

 

【ワクチン大国インドでは】

欧米先進国だけでなく、“あの”インドでも。

“感染者2位のインド、16日から接種開始 ワクチン大国も国内普及に「壁」”【1月12日 産経】

 

“インドの感染者は1千万人を超えて増え続けており、政府はワクチンを感染対策の「切り札」(政府関係者)と期待する。国内では昨年11月以降、農政改革に反発する農業従事者による抗議活動が拡大し、政権には逆風が吹いている。モディ政権としては、新型コロナの押さえ込み抑えこみを成功させ、政権浮揚につなげたい局面でもある。”【同上】という事情も。

 

なお、“あの”インドという失礼な言い方をしましたが、ワクチンに関して言えば、インドは世界で流通する感染症ワクチンの6割を製造した実績を持つワクチン大国で、今回使用している2種のワクチンも、ひとつは国産、もうひとつのアストラゼネカとオックスフォード大が共同開発したワクチンも、国内でライセンス契約を結んでいる地元企業が生産しています。

 

【「やる」と決めるとトコトンやる中国】

接種者の人数で言えば、やはり中国。

 

****国内で900万人が接種完了=国家衛生健康委****

中国国家衛生健康委員会の曽益新副主任は9日の記者会見で、去年12月15日から、国内でコロナワクチンの大規模な接種作業が正式に始まり、これまで合わせて900万人近くがコロナの予防接種が完了したことを明らかにしました。

また、大規模な接種作業を行うため、全国で2万5392カ所の接種ステーションが設置されたということです。【1月11日 レコードチャイナ】

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中国という国は、政治体制の違いもあって、「やる」と決めるとトコトンやります。

 

****河北省石家荘市で全住民を対象とした2回目のPCR検査実施へ、2日で完了目指す―中国****

河北省石家荘市が10日に開いた新型コロナウイルス対策をめぐる6回目の記者会見によると、今回の感染拡大が判明して以来、同市で確認された感染者と無症状感染者は合わせて369人で、間もなく全住民を対象とした2回目のPCR検査が始まるという。中国新聞社が伝えた。(後略)【1月11日 レコードチャイナ】

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石家荘市ので1回目の検査人数は1025万1875人です。

 

対応には最新技術も駆使されています。

 

****石家荘の防疫の正念場、PCR検査の「火眼」がわずか21時間で稼動****

(中略)8日、PCR検査プラットフォームの「火眼」実験室(エアドーム型)が、わずか10時間で河北体育館テニス館に建設され、完成から11時間後に運用を開始しました。この「火眼」は、1日最高100万人分のサンプルを測定できるということです。

「火眼」実験室は、幅4〜5メートル、高さ3〜4メートル、長さ約10メートルの半円筒状で、12の実験室(エアドーム版)と3つの負圧硬質エアドームで構成されています。エアドームを膨らませるのに約50分しかかからず、内部はモジュール化されています。【1月11日 レコードチャイナ】

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【「時間が止まった世界」「デジタル時代の生きた化石」】

一方、日本では・・・

 

****日本の外出自粛呼び掛け方法、中国で驚きの声****

中国SNSの微博(ウェイボー)で、(中略)投稿者が取り上げたのは、東京都や新宿区の職員らが9日夜、新宿の繁華街に出て、「緊急事態宣言発令中」「不要不急の外出自粛」などと書かれたプラカードを掲げて道行く人に夜間の外出自粛などを呼び掛けるというもの。

投稿者はその様子を伝えた動画を添えて、「日本式だ」と感想をつづった。

ウェイボー上では、埼玉県の大野知事らが「おうちに帰ろう」などと書かれた横断幕を持って駅前の商店街で呼び掛けを行う様子も伝えられている。

これについて、ウェイボーユーザーからは「形式主義」「まるで中国のどこかの村。でもこれほどじゃない」「宣伝カーを何台か走らせれば済む話」「時間が止まった世界」「デジタル時代の生きた化石」などの声が上がっていた。

また、「緊急事態宣言下なのに人出が多いな」との感想も寄せられていた。【1月11日 レコードチャイナ】

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もちろん、「強制はしない」という日本の事情(政治的に誇るべき点)によるもので、中国の政治体制を賛美する気はさらさらありませんが、自粛を訴えるだけでない検査態勢などについては参考にすべき点は多いようにも。

 

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新型コロナワクチン  急く様子がない日本の世論と政府 欧米では効率的接種の方法が議論

2021-01-08 23:29:16 | 疾病・保健衛生

(中国製とされるワクチンを接種した際の同意書と接種を受けた人のリスト【1月1日 毎日】)

 

【「ワクチンを急げ!」との声が上がらない日本の不思議 副作用恐怖症と責任回避?】

日本では新型コロナ感染の急拡大を受けて緊急事態宣言が出され、市民生活・経済活動の自粛・制約が再び強く求められています。

 

一方、感染拡大からの出口と期待されるワクチン接種については、「当初2月中に製薬企業の治験データがまとまるということだったが、日本政府から米国本社に対し、強く要請し、今月中にまとまる予定だ。そのうえで安全性、有効性の審査を進め、承認されたワクチンをできる限り2月下旬に接種を開始できるよう、政府一丸となって準備を進めている」(1月4日 菅首相)とのこと。

 

自粛に対する社会的同調圧力・自粛警察的な風潮が大嫌いな私としては、個人的な思いを言えば、「国民に多大な犠牲を強いる自粛・制約を求めるのなら、もっと出口戦略のワクチンを急げよ! 何とかの一つ覚えみたいに自粛・三密回避ばかり繰り返すんじゃなくてさ!」といったところ。

 

世界各地ではすでに欧米・中国・ロシアなどでワクチン接種が始まっており、関心は「いかに効率よく接種するか」に移っているのに、なんとも慎重というのか、おおらかというのか、のんびりした対応にも思えます。

 

英調査会社によれば、ワクチンが普及し社会が日常に戻る時期について、日本は先進国の中で最も遅い22年4月となることが見込まれています。これじゃ、オリンピックなんて到底無理ですね。オリンピックにあれだけこだわってきた政府・東京都は、そこをどうかんがえているのだろう?

 

当然ながら、政府としても訳もなく遅らせているのではなく、2月末になるのは、それ以上は早められないのは理由あってことでしょう。

 

たとえそうであっても、「製薬会社の首締めてでも、土下座してでも、札束で横っ面はたいてでも、1日も早くワクチン接種を実現するのが政治の責任だろうが」と言いたくもなるのですが・・・。

 

ただ、私には非常に不思議に思えるのですが、そうした「ワクチンを急げ!」といった声は、TVでも、新聞でもまったくというぐらい目にしません。私一人のたわごとのようです。

 

国民はみな、「早くて2月末・・・そうか」と、文句も言わず納得しているみたい。不思議だな・・・

 

基本的に、過去の薬害の経験もあって、日本は他国に比べてワクチンに警戒感が強いようです。

国民も急ぐことを無理強いしないし、政府も急いだ結果何らかのトラブルが出た際の責任をとりたくない・・・ということで、政府・国民ともに「無理に急がない」という姿勢なのでしょうか。

 

****ワクチンに警戒感根強い日本、普及後れの可能性-過去の薬害が影か****

日本の新型コロナワクチン接種意向は69%-平均を下回る水準

ワイドショーの扇動的な報道による高齢者への影響を懸念する声も

 

英国や米国などで新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まる中、日本国内では過去の薬害や副反応に対する扇情的な報道などの影響でワクチンに対する懐疑的な感情が根強いことから、普及が他の先進国に大きく後れを取るとの見方が広がっている。

  

「潜在的に国民の頭の中にワクチンは副反応があるということがこびりついている」。北里大学の中山哲夫特任教授(ウイルス感染制御学)はそう指摘する。9月に英医学誌ランセットに掲載されたワクチンへの信頼度に関する意識調査では、調査を実施した149カ国のうち、日本が最も低い国の一つであることが明らかになった。

  

新型コロナのワクチンでも日本人の忌避の傾向は顕著だ。世界経済フォーラムと調査会社イプソスが共同で15カ国を対象に実施した意識調査では、日本の新型コロナワクチンの接種意向は69%にとどまり、インドの87%や英国の79%よりも低く全体の平均の73%も下回った。

  

現在、政府は米ファイザーとは来年6月末までに1億2000万回分、米モデルナとは来年の第3四半期までに5000万回分、英アストラゼネカとは1億2000万回分(来年3月までに3000万回分)の供給を受けることで基本合意している。

  

ファイザーは18日に日本で製造販売の承認を申請しており、国内での臨床試験の結果を2月までに取りまとめることを計画している。モデルナのワクチンの国内流通を担う武田薬品工業も、来年1月にも国内で臨床試験を開始する予定。中山氏は、現在国内で進行中の臨床試験で良好な結果が出れば、3、4月にも承認されることを想定していると話した。

  

英調査会社エアフィニティーは、新型コロナのワクチンが各国・地域で普及し社会が日常に戻る時期を予測。来年に東京五輪・パラリンピック大会の開催を目指す日本では、先進国の中で最も遅い22年4月となることが見込まれている。

  

日本政府は通常の経済活動や日常生活を取り戻すために早期にワクチンを承認する必要がある一方で、国民の信頼を損なわないよう慎重に審議を進める事も求められている。

 

過去の薬害が影

ワクチンを避ける国民感情には過去に何度か起きた薬害が影響している。1948年から翌年にかけてはジフテリアの予防接種で製造企業のミスが原因で924人に健康被害が及び83人が死亡した。89年から93年にかけてはしか・おたふくかぜ・風しん(MMR)ワクチンの接種により多くの子供が無菌性髄膜炎に感染し、約1800人の被害者が出た。

  

これらを背景に94年の改正予防接種法では定期接種に課せられた「義務接種」が「努力義務」へと変更された。近年では子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)感染予防のためのワクチン接種を巡る副反応が大きな話題となった。

  

早稲田大学政治経済学術院の田中幹人准教授(科学技術社会論)は、センセーショナルに報道する傾向があるワイドショーの影響を懸念していると話す。ワクチンの恩恵を最も大きく受けるのが高齢者である一方で、高齢者にとっては「ワイドショーが重要な情報源」となっているためだという。

  

東京大学大学院の坂元晴香特任研究員(公衆衛生学)は、新型コロナワクチンの接種を普及させるためには政府やメディアが積極的に広報の役割を果たすことが求められると指摘する。

 

HPVワクチンではメディアが副反応を大きく取り上げた結果、最終的には政府が積極的勧奨を差し控える事態となったことを例に挙げ、それぞれが果たす役割は重要との認識を明らかにした。

  

その上で、ワクチン忌避はどこの国でも存在するものの「違うのはマスコミ報道の在り方とそれに対する政府のスタンス」と述べた。(後略)【12月23日 Bloomberg】

***********************

 

副作用について言えば、副作用のない薬なんて世の中に存在しません。新型コロナワクチンだって当然に副作用はあります。なかには重篤な事態に陥る場合もあるでしょう。(また、ワイドショーが騒ぐんだろうな・・・)

 

でもそれは、どんな薬剤でも同じです。要は、その薬剤がもたらすベネフィットとリスクの比較です。

 

大勢が感染し、重傷者・死者も増加する、自粛・制約を強いられるなかで多くの事業者・雇用者が廃業・失業に追い込まれ、なかには自殺等に追い込まれる者もでる・・・そういう状況で慎重に安全性の確認を続ける・・・そのリスクとベネフィットの比較です。

 

私的には、こうした危機的状況での慎重さは、不合理な副作用に対する警戒・不安、誰も責任を負いたくない無責任体制の結果のように思われるのですが。

 

その結果、自粛を強要される期間が長引く・・・苛立つ思いです。

 

【“抜け道”を探す者も】

さきほど、“「ワクチンを急げ!」といった声は、TVでも、新聞でもまったくというぐらい目にしません。私一人のたわごとのようです。”と書きましたが、「早くワクチンを接種したい。たとえ非正規なルートでも」と考える者が日本でもいないわけでもないようです。当然でしょう。

 

****国内富裕層が未承認コロナワクチンを先行接種 中国人ブローカー持ち込み****

中国で製造したとされる新型コロナウイルス感染症の未承認のワクチンが日本国内に持ち込まれ、日本を代表する企業の経営者など一部の富裕層が接種を受けていることが明らかになった。

 

2020年11月以降、既に企業トップとその家族ら18人が接種を受けたという。ワクチンは、中国共産党幹部に近いコンサルタントの中国人が持ち込んでいる。

 

個人が自分で使う以外の目的で海外からワクチンを持ち込むのは違法の可能性があるが、中国側がワクチンをテコに影響力拡大を狙っている姿が浮かんだ。(後略)【1月1日 毎日】

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“中国側がワクチンをテコに影響力拡大を狙っている姿が浮かんだ”・・・それは筋違いでしょう。

中国側の意図はともかく、話の大前提にあるのは「海外では接種が進むのに、日本ではワクチンを接種したくても当分できない」という事実、それに対する一部の者の焦りでしょう。

 

どうしてそこを問題にせず、「中国側が・・・」といった陰謀論みたいな話になるのかな???

 

利用者はいくら払ったんだろう?そこに記事が触れていないのは、「その額だったら私も・・・」という者が続出するのを警戒してのことでしょうか。

 

でも、個人が自分で使う目的なら海外からワクチンを持ち込むのは合法か・・・(そう言えば、私も普段、ある種の薬を個人輸入しています)

そのうち、ネット上で中国産ワクチンの個人輸入という形での販売が始まるかも。

 

ただ、内服薬ではなく特殊な扱いを要する注射なので、個人だけでは利用できませんね。医療関係者をまきこまないと。たとえ個人輸入でも、そのあたりで違法性が出てくるのではないでしょうか。

 

当然ながら、中国政府は関与を否定しています。

 

****「未承認ワクチン国内接種」本紙報道に中国大使館「日本で広める権限与えていない」****

未承認の新型コロナウイルスワクチンが中国から日本に持ち込まれ一部の富裕層が接種を受けていると毎日新聞が報じたことについて、在日本中国大使館は7日、「中国政府は今まで、いかなる企業や個人に対しても日本でワクチンを広める権限を与えていない」とコメントした。

 

コメントによると、報道を受けて暫定的な調査を行ったが、ワクチンを開発した中国の国有製薬会社は「日本と関係するいかなる個人とも接触したことがない」といい、「生産したワクチンが日本に流入したという状況は今のところ見つかっていない」という。

 

そのうえで、「中国は各国と共同でワクチンの偽造販売や不法な国外流出など犯罪行為を取り締まる」と強調。「出所不明のワクチンの接種を受けるのは重大なリスクがあり、だまされないよう希望する」と注意を呼びかけた。【1月7日 毎日】

*********************

 

利用が制約されていると、なんとか抜け道を探して・・・、あるいは特権を利用して・・・という話になりがちなのは日本でも、他国でも同じ。フィリピンでは・・・

 

****ワクチンどう密輸? 比大統領の警護隊が極秘接種****

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領の警護隊員が昨年秋、新型コロナウイルス予防ワクチンを接種していたことが明らかになった。だが、当時も今も、フィリピンではどのワクチンも承認されていない。

  

野党議員は、警護隊員らがいかにして新型コロナウイルス予防ワクチンを接種したのか、その経緯を追及している。

 

ワクチンを巡るスキャンダルは先月、ドゥテルテ氏が大統領の警護を担当するフィリピン軍の複数の隊員が自身への報告なくワクチンの接種を受けていたと述べたことで発覚した。

 

その後、警護隊の司令官はドゥテルテ氏を感染リスクから守るために、「一握り」の警護隊が9月と10月にワクチン接種を受けたと明らかにした。

 

その司令官は、ドゥテルテ氏は警護隊員が必要な2回の接種を受けた後にその件について知ったと説明。警護隊は他の当局による承認、もしくは支援を受けずに単独で行動したとしており、テレビインタビューで「自分たちでワクチンを接種した。とても簡単なことだ」と述べた。

 

今回のスキャンダルは政界を揺るがす問題に発展。フィリピン国家捜査局(NBI)が捜査に乗り出したほか、上院での公聴会開催を求める声が強まった。これまでフィリピン食品医薬品局(FDA)に承認されたコロナワクチンはまだない。NBIとFDAはコメントの要請に応じていない。

 

フィリピンは国内でワクチンを製造しておらず、ワクチンがどこからいつ持ち込まれたのかなどの疑問がくすぶっている。

 

ドゥテルテ氏は先月、国内には中国国営医薬品の中国医薬集団(シノファーム)傘下の国薬控股(シノファーム・グループ)が開発したコロナワクチンを接種した人が複数いると明らかにしていたが、4日のスピーチでは、警護隊が接種したワクチンの製造元は知らないと述べた。(中略)

 

シノファームのワクチンは7月に緊急使用許可が認められた後、第3相試験(フェーズ 3)で79%の予防効果が確認されたことで、昨年12月下旬に中国で暫定承認を受けている。シノファームは11月、中国では100万人以上が接種を受けたと明らかにしていた。

 

在マニラの中国大使館によると、シノファームはフィリピンで今週、緊急使用許可を申請する予定。

 

ドゥテルテ氏は4日、議員らに対し、警護隊は自身を守るという任務を遂行しているだけだと述べ、追及しないようけん制。議会が調査に乗り出しても証言に応じないよう、警護隊の責任者に指示した。

 

フィリピン(人口1億0600万人)は東南アジア諸国の中ではコロナ感染が極めて深刻で、感染者数は約50万人、死者は9300人以上に達している。フィリピン当局は2~5年に6000万~7000万人のワクチン接種を目指している。同国はこれまで唯一、英製薬大手アストラゼネカから260万回分のワクチンを調達することで合意している。【1月7日 WSJ】

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超法規的殺人が横行する国ですから、こんな話、あって当然でしょう。

 

【欧米では効率的ワクチン接種の方法が議論】

ワクチン接種が始まっている欧米で問題となっているのは、変異型ウイルスへの有効性と、効率的ワクチン接種の方法の問題。後者については・・・

 

“英国でワクチン接種方法めぐり論争”【1月4日 日テレNEWS24】

“米政府、モデルナ製ワクチンの半量投与を検討 接種スピードの加速狙い”【1月4日 ロイター】

“米FDA、コロナワクチンの接種回数や間隔の変更は「時期尚早」”【1月5日 ロイター】

“NY・フロリダ州、病院にワクチン接種加速要請 応じなければ配布停止も”【1月5日 ロイター】

 

****ワクチン接種間隔めぐり英政府とファイザーが対立 新型コロナ****

米製薬大手ファイザーと独バイオ企業ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種方法をめぐり、英政府とメーカー側の意見が分かれている。

 

同ワクチンは1人につき2回の接種が必要だが、英政府は多くの国民に1回目の接種を行き渡らせるため2回目の時期を遅らせる方針なのに対し、ファイザーは英政府が掲げる方法は「安全性が検証されていない」と懸念を示している。

 

英国で昨年12月8日に接種が始まったファイザーのワクチンは、1回目の接種から21日後に2回目を行うことで発症を防ぐ95%の有効性を発揮するとされる。

 

しかし、新型コロナの変異種の感染が拡大したことを受け、英政府は12月末、少数の国民に2回投与するよりも、1回目の接種をより多くの国民に早く実施することで感染者数を減らす考えを主張。1回目から2回目の間隔を最長3カ月にする方針を決めた。

 

米メディアがファイザーの臨床研究の担当者に取材したところ、同社ワクチンは1回目の接種で有効性は約52%確保できるとみられている。

 

ジョンソン英首相は初回の投与だけでも「(新型コロナの)影響から国民を守れる」と判断。英政府は今月4日に接種が始まった英製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンに関しても、2回目を遅らせる考えを示している。

 

だが、ファイザーとビオンテックはこの方針に不安を隠せない。ロイター通信によると、両社は今月4日、ワクチンの臨床試験(治験)と異なる間隔での投与は「安全性や有効性が検証されていない」と警告した。

 

このワクチンの接種間隔をめぐっては、各国や機関で対応が分かれている。米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は1日、米メディアに「私たちは治験で21日間の間隔をあけることが最適と知っている」と英政府の方針を支持しない見解を示した。

 

一方、欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)は42日以内に2回目を行うべきだとの認識だ。世界保健機関(WHO)も42日間以内に行えば効果が得られるとしている。

 

両機関はワクチン不足を想定し、1回目の接種を十分に確保するためにファイザーなどが主張する間隔を延ばしたとみられている。ただ、英国が示す接種間隔はEMAやWHOよりもさらに長く、ワクチンの有効性を大きく下げる恐れも指摘される。【1月8日 産経】

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製造会社が嫌がっているのに強行するというのは、ジョンソン首相はずいぶん強引ですね・・・“初回の投与だけでも「(新型コロナの)影響から国民を守れる」と判断”って、どういう根拠でしょうか。

 

まあ、それだけイギリスの状況が切羽詰まっているということであり、そこを考慮すると合理的判断なのかも・・・逆に言えば、そうした危機的状況で漫然とルールどおりに行動するのは「不作為の過失」を犯すことになるとの政治判断でなのでしょう。

 

****英国、ワクチン130万人が接種 新規感染者は初の6万人****

ジョンソン英首相は5日、昨年12月から国内で始まった新型コロナウイルスのワクチンを約130万人が接種したと明らかにした。5日発表の新規感染者は6万916人で、初めて6万人を超えた。8日連続で5万人以上となり、ウイルス変異種の拡大が続いている。

 

ジョンソン氏は記者会見で、首都ロンドンを含むイングランドでは80歳以上の23%がワクチンを接種したと説明。介護施設や病院の職員、高齢者ら優先度の高い全ての対象者が2月15日までに接種できるよう計画を進めているとした。【1月6日 共同】

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スウェーデンの新型コロナ対策評価 「失敗」から「成功」、そして再び「失敗」

2021-01-03 22:55:20 | 疾病・保健衛生

(スウェーデンの感染対策を率いていた疫学者のアンデシュ・テグネル氏(11月)【12月8日 WSJ】)

 

【事態の変化とともに変わる評価】

物事の評価というのは、最後になってみないとなかなかわからないもの。各国の手探りの新型コロナ対策もそのひとつにすぎません。

 

一時は他国に誇っていた韓国の「K防疫」も第3波の前では怪しくなっていますし、日本の「高い民度による対応」といったものも同様。

 

ロックダウンなどの厳しい制限措置をとらずに、集団免疫獲得を目指しているようにも見えたという点で(政策当局は集団免疫を目指しているとは言っていませんが)、各国の中でも最もユニークな対応をとっていた北欧・スウェーデンの評価は、事態の変化に伴って二転・三転しています。

 

近隣国に比べて多い死者数、高まらない抗体保有率、ロックダウンなしでも落ち込む経済・・・などで、6月頃の評価は「失敗」という散々なものでした。

 

風向きが変わったのが8月・9月。

 

“フランス、オランダ、ドイツ、ベルギー、スペイン、イタリアなど欧州の多数の国で感染の再増加しているのと対照的に、スウェーデンの感染者数は望ましい減少方向に向かっているように見える。

 

1日当たりの死者数は4月にピークとなった後、現在は2、3人となり、新規感染者数は6月初めから着実に減少している。患者1人から感染が広がる人数を示す実効再生産数は、7月初めから1未満に抑えられている。”【9月9日 AFP】

 

10月18日ブログ“スウェーデンの緩い新型コロナ対策 「失敗」評価から、現時点では「成功」評価に変わる”でも、そうした評価の変化を取り上げました。

 

【放任主義的な緩やかな対応を断念、規制強化へ】

しかし、これで終わらず、事態は更に変化。

 

****フィンランドとノルウェーの死者数は約10分の1****

・・・一方で対策を再評価されているのが同じ北欧のフィンランドとノルウェーだ。両国はスウェーデンと地理的・社会的特徴が似ているが、100万人あたりの死者数は約10分の1に留まる。

 

「両国の共通点は、初動が早かったこと。3月にロックダウンや国境管理を厳格化し、移動する人々にPCR検査や自主隔離を強制した」(国際部デスク)【12月2日 文春オンライン】

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こうした「現実」に直面し、11月に規制強化への方針転換がとられました。

 

****スウェーデンでも規制強化 「厳しすぎない」路線揺らぐ****

新型コロナウイルスの感染拡大の第2波が欧州で広がるなか、商店の閉鎖や外出制限を伴う「ロックダウン(都市封鎖)」をしない北欧スウェーデンの独自路線が揺らいでいる。ロベーン首相は16日、人の集まりは8人までとする新たな規制を発表、感染抑止策の強化に乗り出した。(中略)

 

スウェーデンでは、社会的距離の確保などを国民が自発的に実行することに期待する、比較的緩い対応をとってきた。春の第1波の際も50人までの集会は認めていた。しかし、9月上旬には100人台だった1日の新規感染者は加速度的に増え、直近の1週間平均は4千人を超えている。

 

医療機関の負担も増しており、ロベーン氏は先週、感染抑止策として、今月20日から飲食店でのアルコール飲料の提供を午後10時以降は禁止する方針を打ち出していた。

 

スウェーデンでは累積の死者が6千人を超える。人口100万人あたりで比べると、英仏などよりは少ないが、近隣の北欧諸国よりはるかに多い。春のピークで亡くなった、介護施設の高齢者がその大半を占めている。【11月17日 朝日】

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ここにきて、カール16世グスタフ国王が、新型コロナウイルスの対応について「私たちは失敗したと思う」と述べる事態ともなって、政府も一層の規制強化を余儀なくされています。

 

****コロナ対応「失敗」 スウェーデン国王、異例の政策批判****

スウェーデンのカール16世グスタフ国王(74)が、新型コロナウイルスの対応について「私たちは失敗したと思う」と述べた。同国の公共放送SVTが17日、伝えた。多くの死者が出ていることを受けたもので、政治とは距離を置く国王が政策の批判に踏み切るのは異例だ。(中略)

 

欧州各国が外出制限や店舗閉鎖を伴うロックダウン(都市封鎖)に踏み切る中、スウェーデンは強制的な措置を極力避ける「緩め」の戦略をとってきた。マスクの着用は求めておらず、飲食店も社会的距離を取るなど一定の制限はありつつも営業を続けている。

 

こうした戦略は、国民から一定の支持を得る一方で、死者は北欧では突出して多い約7900人にのぼる。人口100万人あたりの死者は772人(16日時点、英オックスフォード大調べ)で、1千人を超えるイタリアやスペインなどよりは少ないが、74人のノルウェー、168人のデンマークなど近隣諸国よりはるかに多い。

 

科学者らからは、より厳しい対応を求める声が強まっている。

 

スウェーデン王室は先月末、国王の長男カール・フィリップ王子(41)とソフィア妃(36)が新型コロナウイルスに感染したと発表していた。症状は軽いという。【12月18日 朝日】

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*****スウェーデン、規制再強化 感染拡大、方針転換鮮明に****

新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なスウェーデンの公衆衛生庁は18日、公共施設の閉鎖や、飲食店での人数制限など新たな規制強化策を発表した。

 

公共交通機関でのマスク着用も推奨。春以降、厳しい規制を避ける独自対策を取っていたが、11月に転換した規制強化の方針が鮮明となった。

 

ロイター通信によると、ロベーン首相は記者会見で「適切な時に適切な方策を取っている」と強調。だが、カール16世グスタフ国王がこれまでの政策を「失敗」と批判しており、政府への風当たりがさらに強まる可能性もある。【12月19日 共同】

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更に流れは加速。

 

****スウェーデン、店舗の強制閉鎖も 法案を提案、1月にも施行****

スウェーデン政府は28日、新型コロナウイルス対策として、店舗閉鎖などの強制措置をとる権限を政府に与える法案を提案した。地元メディアなどが伝えた。

 

事実上のロックダウン(都市封鎖)措置を進める多くの欧州諸国とは一線を画し、強制的な規制の回避を基本政策としてきたが、最近の感染再拡大を受けて規制の強化を迫られた形だ。

 

来年9月までの時限立法で、3月に予定された当初の提案時期を前倒しした。議会が可決すれば1月10日に施行される見通し。政府は感染拡大リスクの高い大型商業施設の閉鎖や公共交通機関の運行制限など、拘束力のある措置をとる権限を持つ。【12月29日 共同】

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新型コロナ対策を主導してきた疫学者アンデシュ・テグネル氏は降格し、政府が今後の対策を主導するようです。

 

****スウェーデン「コロナ集団免疫」作戦、失敗の深層****

方針一転、制限強化もマスク推奨せず

 

晩秋の新規感染者の急増で入院者や死者が増加し、国民の自主的な措置でコロナ流行に対抗するという、欧米では特異な取り組みをスウェーデン政府は断念した。

 

他の欧州諸国同様、スウェーデンは今、冬本番を向かえるにあたり大規模集会の禁止からアルコール販売の制限、学校閉鎖に至るまで幅広い制限措置に直面している。いずれも同国の医療システムの崩壊を防ぎ、既に世界最高水準にある人口当たり死者数を抑制することが狙いだ。

 

スウェーデン国民は先月まで大勢が集まるスポーツや文化イベントを楽しみ、医療当局者は欧州を席巻していた感染第2波について、スウェーデンでは自主的な措置で十分避けられると主張していた。

 

数週間後、コロナによる累計死者数は人口100万人当たり約700人に到達。感染者が指数関数的に増加し、病床が満杯になる中、政府は方針転換を決定した。

 

ステファン・ロベーン首相は11月22日、テレビで国民に対して全ての不要不急の集まりを取りやめるよう熱心に訴え、9人以上の集会の禁止を発表した。その結果、映画館などの娯楽施設が閉鎖されたほか、12月7日から高校も閉鎖される。

 

「当局は他の欧州諸国と完全に異なる戦略を選択した。そのせいで国は(感染)第1波で大いに苦しんだ」。首都ストックホルムにあるカロリンスカ大学病院でコロナ感染患者を担当するピオトル・ノバク医師はこう話す。「彼らがなぜ第2波を予測できなかったのか全く理解できない」

 

スウェーデンのコロナによる累計死者数は先週、7000人を突破した。同規模の隣国であるデンマーク、フィンランド、ノルウェーの累計死者数はそれぞれ878人、415人、354人だ。隣国は第2次世界大戦以来で初めてスウェーデンとの国境閉鎖に踏み切った。

 

スウェーデンの公衆衛生当局は、国民を徐々にウイルスにさらすことで人口全体が病原体への抵抗力を獲得できるようにする「集団免疫」作戦に楽観的だったが、医療従事者の見解は決して同じではなく、自主的な措置だけではコロナウイルスは制御できないと繰り返し警告していたとノバク氏は述べた。

 

スウェーデンがそうした警告にもかかわらず長い間やり方を変えなかった理由の1つは、公衆衛生局やその他同様の国家機関がスウェーデンの法律下で高い独立性と権限を享受しているためだ。

 

スウェーデンの感染対策の対外的な顔となっていたのは、公衆衛生局のコロナ対策責任者を務めていた疫学者のアンデシュ・テグネル氏だ。

 

先週テグネル氏に取材を申し入れたが断られた。しかし同氏は以前、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)をはじめとするメディアに対し、ロックダウン(都市封鎖)は持続不可能であり、不要だと語っていた。

 

また、欧州疾病予防管理センター(ECDC)がマスクの着用を推奨する中、公衆衛生局は引き続きマスクの着用は勧めないとしている。

 

テグネル氏はここ数カ月、国民は制御した環境でウイルスにさらされることで免疫を徐々に獲得する、ワクチンは予想よりも開発に時間がかかる、欧米諸国の死亡率はいずれ収束するとの予想を示してきた。

 

しかし、欧米で最初のコロナワクチンの使用が先週、英国で許可され、スウェーデンの死亡率は隣国よりも依然として高いままであり、テグネル氏は11月下旬に感染の再拡大は同国で集団免疫獲得の「兆しが見えない」ことを示していると認めた。

 

一方、スウェーデンの放任主義的なコロナ戦略は、提唱者が予測したほどの経済的メリットをもたらさなかった。中央銀行と複数の経済機関によると、スウェーデンの上半期の国内総生産(GDP)は8.5%減少しており、失業率は2021年初めに10%近くに上昇する見通しだ。

 

レストランやホテル、小売店などのビジネスは閉鎖の波に直面している。政府が制限措置と寛大な刺激策を併用した他の欧州諸国と異なり、スウェーデン当局はそうしたビジネスに閉鎖措置を課さなかったため、比較的限られた支援しか提供していない。

 

沿岸の都市スンツバルでレストランを経営するヨナス・ハムルンドさんは「ロックダウンよりも悪い。このビジネスに従事する全ての人にとって悲惨な年だった。彼ら(政府)はわれわれを閉鎖しなかったため、大した支援は提供していない。それでも人々に『レストランには行くな』と言っている」と話す。ハムルンドさんは運営するレストラン2軒のうち1軒の閉鎖とスタッフ30人のレイオフを余儀なくされた。

 

経済学者でスウェーデン王立科学アカデミー会員のラース・カルムフォルス氏は、コロナへの警戒感と社会的な交流を避けるようにとの政府の助言が国内需要を下押しし、企業や投資家の信頼感を損なっていると指摘。「強制的な制限措置を導入した国はわれわれよりも首尾良くやっている」と述べた。(中略)

 

ロベーン首相の介入でテグネル氏は降格し、事実上、政府のコロナ対策に関する主導権を譲り渡すことになった。しかし、一部科学者は実験の失敗によって、伝統的に尊敬されてきた国内の当局者や専門家への信認が揺らいでいると話す。

 

調査会社イプソスの11月の調査によると、82%の人が感染流行が病院に与える負担を懸念していると答えた。また、当局が十分な措置を取っていないと回答した人の割合は44%と10月の31%から上昇した。しかし、過半数の人が依然、テグネル氏を支持している。

 

国内で最も人口の多いストックホルム地域の医療・病院担当責任者を務めるビョルン・エリクソン氏は「ストックホルムでは感染が拡大しており、われわれは現在、非常に深刻な状態にある」と述べた。

 

エリクソン氏は、首都の医療従事者は患者に対応しきれておらず、感染流行によるシステムの圧迫は一段と厳しい措置でしか緩和できない可能性があると述べた。

 

経済学者のカルムフォルス氏は「われわれは自分たちを非常に合理的で実際的だと考えたがっている」と指摘。しかし、当局は自らのアプローチが失敗している証拠が山積みになっているにもかかわらず変えようとしなかったとし、「私は自分の国がもう分からない」と述べた。【12月8日 WSJ】

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【「成果」を謳歌する中国・武漢】

一方、昨年春の悪夢と対照的な現在を謳歌しているのが中国・武漢。

 

****コロナ初確認の武漢の年越し、大群衆が歓声 中国***

2019年12月に新型コロナウイルスが世界で初めて検出された中国・湖北省武漢で12月31日夜、大勢が中心部に集まり、光のショーが繰り広げられるなか歓声を上げたり、空に風船を放ったりして年を越した。

 

時計塔のあるかつて税関だった建物の周辺には、密集を防ぐために警察がフェンスを設置していたが、若者を中心とする群衆が大挙して押し寄せたため、あまり効果を発揮できなかった。群衆の大半はマスクを着用していた。

 

武漢では昨年1月末から2か月以上にわたって厳しいロックダウン(都市封鎖)が実施されたが、夏以降はほぼ通常の生活に戻った。9月には学校も完全に再開した。

 

群衆の一人は、「中国は今やこの流行病をとてもよく抑え込んでいる」と語った。「しかし、まだこのウイルスに苦しんでいる国もある。他の国もなるべく早くこの困難を乗り越えてほしい」

 

中国は当初、武漢での新型ウイルス流行を隠蔽(いんぺい)し、世界的な感染拡大を引き起こしたとして各所から批判されている。中国政府は最近、新型コロナウイルス感染症の武漢起源説に疑問を呈する動きを見せている。 【1月1日 AFP】

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果敢な施策による「成果」を誇る中国ですが、あの悪夢の実態・責任について封殺し、「失敗」を認めない姿勢であることは、これまた周知のところです。

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ワクチンに関する様々な問題  「ハラル」 売り込み競争 優先順位 「普通の生活」 

2020-12-29 22:58:40 | 疾病・保健衛生

(【12月29日 日テレNEWS24】 個人的には「1日最大で500人」というのは、「随分少ないね・・・」という印象も。今後更に拡充されるのでしょう)

 

【ハラル問題 「ワクチンは生命や生活を守る助けになり、こうした目的は明らかにイスラムの教えの一部だ」】

新型コロナ禍からの出口として期待されているワクチンですが、有効性・安全性、あるいは国力によるワクチン確保の格差といったメインの問題以外にも、いろいろな問題・波紋も。

 

そのひとつが、アルコールや豚肉などの禁忌があるイスラム教徒にとっての「ハラル」の問題。

製造過程や成分が戒律に沿うかどうかが議論になっています。

 

****イスラム教徒が多い国 コロナワクチン「問題なし」、政府や法学者の見解相次ぐ****

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、イスラム教徒が多い国ではワクチン接種について政府やイスラム法学者が「問題ない」との見解を相次いで出している。一方で、インドでは一部法学者が「中国製ワクチンは認めない」との見解を示した。

 

「材料に関係なく、イスラム教徒が接種しても構わない。ワクチンは生命や生活を守る助けになり、こうした目的は明らかにイスラムの教えの一部だ」。

 

シンガポール紙ストレーツ・タイムズ(電子版)によると、シンガポールではムフティ(イスラム法学の権威)のナジルディン師が13日、ワクチン接種を奨励する見解を示した。人口の約1割を占めるマレー系のイスラム教徒の間で不安が広がっていたため、ナジルディン師が混乱を防ぐために対応した。

 

中東のエジプトでも、イスラム教の解釈を示す政府機関ファトワ(宗教令)庁の幹部が21日、地元メディアに対し、仮に豚由来の成分が含まれていたとしても「(製造過程で)性質が転換されるため、不浄だとの前提での判断は成り立たなくなる」として、接種を認める見解を示した。

 

アラブ首長国連邦の国営通信も22日、イスラム教の権威機関であるファトワ評議会が「他に方法がないならば、人体を守る必要性が優先され、ワクチンは豚に関するイスラムの規制対象にはならない」とのファトワを出したと伝えた。

 

だが、インド誌インディア・トゥデイ(電子版)によると、南部ムンバイで23日に地元のイスラム法学者の会議が開かれ「中国製ワクチンは豚由来のゼラチンを含んでいるとの情報があるため、イスラム教徒の使用は許されない」と結論づけた。【12月27日 毎日】

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“インドネシアの新型コロナ感染者は65万人を超え、東南アジアで最多。ジョコ大統領は16日、「ワクチンは自分が率先して接種する」と話し、国民の懸念払拭を目指している。

 同様の懸念はイスラム教を国教とするマレーシアでも起きており、イスラム教団体が対応を協議している。”【12月19日 産経】

 

全般的に「容認」の方向のようです。

まあ、「人命」を考えれば妥当な判断ではありますが、「普段、女性や性的マイノリティーの権利に頑ななイスラム法学者にしては柔軟だね・・・自分の命がかかわっていると・・・」って、皮肉のひとつも言いたくなります。

 

インドの反応は、中国との領有権問題などの政治的要素を反映したものでは・・・とも勝手に憶測しています。

 

【ワクチン売り込みでフェイク情報も】

ワクチン争奪戦はよく話題になりますが、売り込み側の競争もあるようです。

 

****ロシア、ワクチン売り込みで欧米産の偽情報拡散=EU外交トップ****

欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は28日、ロシアの公共メディアは国産の新型コロナウイルスワクチンを売り込みたい国々に対し、欧米のワクチンについて偽情報を拡散していると批判した。

ボレル氏はブログへの投稿で「ロシア政府の支配下にある多言語メディアで欧米のワクチン開発業者は公然とこき下ろされ、ワクチンの投与を受けた人がサルに変身するというばかげた主張につながったケースもある」と指摘。

このような偽情報は明らかに、ロシアの国産ワクチン「スプートニクV」を売り込みたい国々に向けられたものだとし、新型コロナ感染拡大が続く状況下で公衆衛生を脅かしていると批判した。具体例は挙げなかった。

ロシアはこのような疑惑を繰り返し否定し、スプートニクVが外国政府を後ろ盾とする偽情報拡散活動のターゲットになっているとしてきた。

ロシアは先週、アルゼンチンに1000万回分のワクチンを届ける契約の1回目を供給。中南米の他の国々やアジアの一部の国々とも供給契約を結んでいる。ロシア産ワクチンは必要とされる2回の投与の価格が20ドル未満に抑えられている。【12月29日 ロイター】

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「ワクチンの投与を受けた人がサルに変身する」・・・怖いですね。

サルはともかく、これまでもワクチン・予防接種で、「不妊になる」などの風評が政治的プロパガンダから流され、大きな健康リスクにつがっているケーズもありますので、この種のフェイク情報には厳しく対処する必要があります。

 

【悩ましい人種と優先順位の問題】

実際接種する際に問題になるのが、対象者・優先順位

 

****NYでワクチン優先順位違反か 州当局が医療法人捜査****

米東部ニューヨーク州当局は28日、新型コロナウイルスのワクチンを不正に入手し、州の優先順位に反して医療従事者ら以外に提供した疑いがあるとして、ニューヨーク市ブルックリンに拠点を置く医療法人パーケアに対する捜査に乗り出したことを明らかにした。

 

ニューヨーク・タイムズ紙によると、パーケアは2300回分のワクチンを確保し、既に850回以上を接種。州当局の指摘を受け、残りのワクチンは返却した。パーケアの患者の多くは正統派ユダヤ教徒だという。【12月29日 共同】

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何事につけ「不正」はつきものですが、上記記事で引っかかるのは、「パーケアの患者の多くは正統派ユダヤ教徒だ」ということ。

 

超正統派ユダヤ教徒は、集会禁止やマスク着用などの政府等からの要請・指示を無視して行動することが多く、ニューヨークでも七千人規模の結婚式を秘密裏に行ったとして罰金を課された事例も。

 

その正統派ユダヤ教徒(記事だけでは「超正統派」と「正統派」の区分は定かではありませんが)が、自分たちのワクチンは「不正に・・・」ということがあったとしたら、「それはないんじゃない」という感も。

 

優先順位に関して、アメリカではもっと悩ましい問題もあります。

 

****人種でワクチン優先度を決めるべきか、各州に難題****

米国の黒人やラテン系の住民は、白人の2倍以上の割合で新型コロナウイルスによって死亡している。各州は今、最も打撃を受けたこれらのマイノリティーが平等に――場合によっては優先的に――ワクチンを受けられるようにすると約束している。

 

だが、ファイザーとモデルナのワクチンが全国で投与され始める中、これらのコミュニティーにいつどのようにワクチンを利用できるようにするのかを巡り、各州は依然頭を悩ましている。

 

ワクチンがより広く配布されるようになったときに有色人種の市民が取り残されないようにするため、積極的な支援活動に力を入れている州もある。

 

ノースカロライナ州は、黒人とラテン系のコミュニティーに支援の手を差し伸べるために広告会社を雇った。ニューヨーク州は聖職者や保健当局者、公民権擁護活動家で構成されるタスクフォースをつくった。その狙いは、効果的なワクチン配布に必要な洗浄用品や注射器が低所得者層の住む地区に確実に届くようにするなどして、支援することだ。

 

他の州はさらに一歩進んで、コロナの被害を最も大きく受けたグループがより早くワクチンを接種できるようにすべきだとしている。

 

コロラド州はワクチン接種計画の中に制度的な人種差別を巡る認識を書き込んでいるが、どのような対応を取るかについて当局者はまだ明言していない。カリフォルニア州の計画には、他のグループに先駆けてワクチンを接種できる可能性のある「重要な住民」に人種的・民族的少数派のグループが含まれている。

 

米国公衆衛生協会のエグゼクティブ・ディレクター、ジョルジュ・ベンジャミン氏は、各州は最もリスクの高い人々にワクチンの初期接種を集中させるべきだと述べる。これにはマイノリティーのグループも含まれるが、人種だけを理由にワクチンを早期に接種することは避けるべきだという。

 

むしろ持病を持っている人や多世代世帯に住む人のような最もリスクの高い人たちが、より早くワクチンを受けるべきだとベンジャミン氏は主張。そうすれば実際には、高リスクグループの中に比較的多い人種的マイノリティーが恩恵を受けるとしている。

 

「人種に敏感になる必要はあるが、よりリスクが高い人を排除しないようにしなければならない」

 

複数の州の当局者によると、最初の課題は、英語を話せない人を含むマイノリティーグループにワクチンに関する情報を提供することだ。

 

米疾病対策センター(CDC)の報告書によると、黒人やラテン系、先住民系の住民は白人やアジア人よりインフルエンザワクチンの接種率が低い。無保険の人が多いことも一因だという。【12月28日 WSJ】

***********************

 

感染者・死者に人種的格差がある現実のなかで、ワクチン接種の順位に人種をどのように反映させるか・・・悩ましいところです。

 

少なくとも、情報面や手続き面でこぼれ落ちてしまいがちな人種的・民族的少数派のグループに対する積極的アプローチは必要でしょう。

 

【日本が集団免疫の状態になるのは22年の4月】

ワクチン接種が広範に行き渡れば、やがては「普通の生活」はもどってくる・・・・のか?

 

****通常の生活に戻るのはいつ?*****
イギリス以外でもアメリカのほか、EUなどでファイザーのワクチンの接種が始まった。このワクチンについては日本政府も6000万人分の供給を受けることでファイザーと合意している。

こうした中、イギリスの調査機関「Airfinity」はワクチンの供給予定を基に各国がいつ「通常の生活」に戻れるのか予測を示している。

最も早いのがアメリカで2021年4月下旬にコミュニティーの中で感染が広がらなくなる「集団免疫」の状態に達するとしている。

 

以下、数か月遅れてカナダは6月上旬、イギリスは7月上旬、EUは9月初め、それぞれ集団免疫の状態に至るとの予測だ。

一方まだワクチンが承認されていない日本が集団免疫の状態になるのは2022年の4月とされている。【12月29日 日テレNEWS24】

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もっとも、現在騒がれている変異種の問題も。

ウイルスは普段に変異しますので、将来的にこれまでのワクチンが有効に防御できないウイルスが出てくることは十分にあり得ます。ウイルス変異と新たなワクチン開発の競争になるのかも。

 

まあ、それでもワクチンがあるということで社会的パニックにならずにすめば、「普通の生活」とまではいかなくても「普通に近い生活」は戻ってくる・・・・のかな? どうでしょうか?

 

【新型コロナは「警鐘にすぎない」】

なんだかんだ言っても、新型コロナの脅威は、例えばエボラ出血熱などと比べれば極めてマイルドです。

今後、より危険なウイルスが発生することもあるのでしょう。

 

****コロナは「必ずしも大惨事ではない」 将来のパンデミックに警鐘 WHO****

世界保健機関は28日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は深刻だが「必ずしも大惨事ではない」との見解を示した上で、将来さらに悲惨なパンデミックが起こり得るとして世界各国に「真剣に」備えるよう呼び掛けた。

 

WHOで緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏は、新型コロナウイルス対策に明け暮れた1年を振り返る会見で、「これは警鐘にすぎない」と述べた。

 

世界で8000万人以上が感染し、180万人近くが死亡した新型コロナウイルスのパンデミックは「非常に深刻」で、「あっという間に世界中に広がり、地球のあらゆる場所に影響を及ぼしてきた」とライアン氏は認めた。

 

一方で「しかし、これは必ずしも大惨事ではない」と発言。新型コロナは非常に感染しやすく、人を死に至らしめることもあるが、「現時点での致死率は他の新興感染症と比べてかなり低い」と強調し、「将来起こり得るもっと悲惨なものに備えなければならない」と訴えた。

 

WHO上級顧問のブルース・エイルワード氏も、世界は新型コロナ危機に対応する中で、記録的な速さでのワクチン開発など大きな科学的進歩を果たしたが、将来のさまざまなパンデミックを防ぐには程遠いと指摘。

 

新型コロナは「第2波、第3波に入っているが、われわれはそれらに対処する準備がまだできていない」と述べ、「改善されてはいるが…今回の備えが完全でない以上、次については言うまでもない」と語った。 【12月29日 AFP】

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先進国のワクチン争奪戦や自国第一のなかでワクチン格差 中国のワクチン外交

2020-12-19 22:46:54 | 疾病・保健衛生

(【9月2日 NHK】)

 

【途上国では21年中に10人に1人しかワクチンが行き渡らない恐れ】

新型コロナワクチンの接種がイギリスなど欧州やアメリカで始まっていますが、それにともなって顕在化している問題が「ワクチン格差」。

 

****ワクチン格差「貧困国は10人に1人だけ」 国際団体が警鐘****

新型コロナウイルスのワクチン実用化が進む中、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルなどで構成する普及団体「民衆のワクチン連盟」は、先進国のワクチン買い占めのため貧困国では来年、10人のうち9人が接種を受けられないとの見通しを示した。

 

貧困国にもワクチンが行き渡らなければパンデミック(世界的大流行)の収束や世界経済の回復は見通せず、同団体は警鐘を鳴らしている。

 

同団体によると、欧米やカナダ、日本やオーストラリアなど世界人口の14%にすぎない国々が有望なワクチンの53%を確保。中でもカナダは人口の5倍のワクチンを注文した。

 

一方、67の貧困国や途上国では来年中にワクチンが届くのは10人中1人にとどまる。エチオピアやナイジェリアなどアフリカのほか、ミャンマー、パキスタン、ハイチなどアジアや中米の国々が該当する。

 

カタールの衛星テレビ局アルジャジーラ(電子版)によると、韓国が人口の88%をまかなう量のワクチンを確保したが、人口1億人超のフィリピンは130万人分にとどまるなど、アジア諸国でも開きがある。

 

ワクチンの共同購入で途上国などへの供給に道を開く世界保健機関(WHO)主導の枠組み「COVAX(コバックス)」には180以上の国・地域が参加。ただ、ロイター通信によると米バイオ企業モデルナのワクチンや、米製薬大手ファイザーと独バイオ企業ビオンテックが共同開発するワクチンは、先進国が大半を押さえたもようだ。

 

英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大は、共同開発中のワクチンの6割以上を途上国に割り当てる方針だが、来年供給できるのは世界人口の2割弱にとどまるという。

 

英BBC放送によると、アフリカでは南アフリカやモロッコ、エジプトなどで感染が拡大しており、9日現在の累計感染者数は約230万人で5万人以上が死亡した。検査件数は一部の国に偏っており、実態はより深刻だとの見方が強い。

 

WHOはワクチン供給に向けた実態調査や施設整備などを求めているが、アフリカでは定められた基準の30%程度しか済んでおらず、WHOは目標に「ほど遠い」と指摘した。

 

アフリカ連合(AU)は今後2〜3年で人口の6割にワクチンを接種する目標を掲げているが、ワクチン保存のための冷蔵施設の増強などが課題になっている。【12月11日 産経】

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各国とも自国民向けのワクチンを確保するのに必死で、激しい争奪戦が繰り広げられています。

 

正直なところ、個人的にも「欧米でワクチン接種が始まっているのに、日本は何やってんだよ。桜の咲くころ?もっと後? 早くしてよ。」って感じで、自国第一、自分第一の考えが抑えられません。

 

トランプ大統領は「アメリカ人の需要を満たすことができるようにし、それからワクチンを国際的に利用できるよう支援する」という自国優先の供給を製薬会社に求める大統領令に署名し、「ワクチン・ナショナリズム」を明確にしていますが、そのことをとやかく言う資格もないようにも。

 

ただ、記事にもあるように、「貧困国にもワクチンが行き渡らなければパンデミック(世界的大流行)の収束や世界経済の回復は見通せない」というのも事実で、冷静な対応も必要となります。

 

自力でワクチン確保が難しい国を対象にしたWHO主導の枠組み「COVAX(コバックス)」がどこまで機能するか・・・・。

 

****ワクチン共同購入枠組み「COVAX」、21年に20億回分供給の見通し****

新型コロナウイルスのワクチン開発に各国が共同出資・購入する枠組みの「COVAX(コバックス)」は18日、2021年中に20億回分のワクチンを確保し、低・中所得に当たる92カ国に少なくとも計13億回分を供給する見通しを発表した。

 

COVAXは各国の所得格差によらず公平なワクチン配分を目指す枠組み。新型コロナのワクチンを開発中の英アストラゼネカなどの医薬品大手と契約を交わし、英米両国で接種が始まった米ファイザーや、米国が承認した米モデルナとは交渉中だという。

 

枠組みに参加する190カ国・地域に、21年1〜3月ごろにワクチンを届ける目標だが、各国での接種開始には、それぞれの規制当局による承認が必要だとしている。

 

ワクチン供給を巡っては、高所得の国などが国民1人に複数回の接種を想定して、人口の倍やそれ以上のワクチンを確保する一方、途上国では21年中に10人に1人しかワクチンが行き渡らない恐れが指摘されている。

 

国際NGO「オックスファム」などは今月9日、COVAXを主導する世界保健機関(WHO)を通じ、製薬技術を共有しワクチンを量産できるようにすべきだとの提言を発表した。【12月19日 毎日】

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建前・きれいごと・理想は嗤われ、本音と称するものが重視される昨今の風潮のなかで、「COVAX(コバックス)」などを機能させて、貧困国を含めた全人類的な取り組みを進めるのは困難な道のりではありますが、やはりどうしても守らねばならない理想・建前もあります。

 

それを捨ててしまえば、弱肉強食のけだものの世界と同じレベルに堕ちてしまいます。

本来は、そのあたりを国民に訴えるのが政治家の役割ですが、大衆の「本音」を煽り、利用するポピュリズムが幅を効かす昨今では、ほとんど期待できません。

 

【東南アジア諸国のワクチン事情】

アフリカ諸国よりはかなり国力があると思われる東南アジア諸国の取り組みも国力・国情に応じて様々なようです。

 

****コロナワクチン確保へ動き活発 東南・南アジア 「国産」開発着手 輸送「ハブ化」も視野****

新型コロナウイルスワクチン確保の動きが、東南アジアや南アジアでも活発になり始めた。欧米などからの購入に加え、国産ワクチンの開発、さらには輸出や輸送の「ハブ」を目指す動きもある。一方で、国際的な分配の枠組みに頼らざるを得ない国もあり、格差が生じているのが実情だ。

 

ベトナムで17日、製薬会社ナノゲン社が国防省傘下の軍医学院と共同で国産ワクチンの治験を始めた。同国では徹底した隔離などで市中感染を抑えてきたが、本格的な経済回復にはワクチンが欠かせない。米デューク大によると、人口約9600万人のベトナムが外国から購入予定のワクチンは1億5千万回分。複数回の接種が必要になる場合もあり、外国からの購入に頼るだけでは心もとない。

 

そのため、政府は英米中ロからの輸入の交渉を進める一方で、来年末までの国産ワクチンの完成を目指してきた。ナノゲン社以外にも保健省傘下の3組織が開発を進めており、事実上の国家プロジェクトだ。

 

ナノゲン社が来年8月に計画する1万人規模の最終段階の治験では、市中感染が多いバングラデシュ、インド、インドネシアとの協力も予定され、成功すれば輸出も視野に入る。

 

タイも観光産業など経済の立て直しに向けて、ワクチンの確保を急ぐ。英製薬大手と11月に購入契約を結んだほか、大学などで国産ワクチンの開発に着手しており、早ければ年明けにも治験を始める。

 

シンガポールでも地元の大学が米企業との連携でワクチン開発を進め、8月から治験を開始。順調なら来年1~3月の初出荷を見込む。また、米ファイザー製のワクチンが12月中に到着し、米モデルナや中国シノバックとも契約。来年9月末までに全住民分を確保して無料で接種する方針だ。

 

さらに、世界各地から航空路線が乗り入れている優位性を生かし、ワクチン輸送の国際的な「ハブ化」も目指している。空港が持つ低温での貨物輸送のノウハウを使い、欧米の製薬会社から東南アジア、豪州方面への輸送の経由地となることをねらう。

 

 ■まずは緊急使用許可

感染者数が世界で2番目に多いインドでは、ワクチンの緊急使用許可の申請が製造企業から政府に相次ぐ。欧米企業の現地法人のほか、インド企業も治験を進めている。まずは医療従事者や50歳以上の人、基礎疾患のある人らに優先して接種する方針だ。保健担当相は「来年7月までに2・5億~3億人がワクチンを接種できる」と述べた。

 

インドネシアには6日、中国からワクチンの第1便を積んだチャーター機が到着。ジョコ大統領は「朗報を伝えたい。120万回分のワクチンを受け取った」と胸を張った。複数のワクチンの確保を目指すが、まずは「ワクチン外交」を繰り広げる中国が頼みの綱。中国から原料を仕入れて国産化を図りたい考えだが、十分な量をいつ確保できるか見通せず、中国頼みが続く可能性がある。

 

ワクチン途上国にも行き渡るよう、世界保健機関(WHO)などが主導して共同購入する「COVAX(コバックス)ファシリティー」に頼らざるを得ない国もある。

 

感染拡大が続くミャンマーはコバックスで来年中に人口の2割にあたる約1100万人分を、23年までに約3300万人分を確保する計画だ。

 

カンボジアのフン・セン首相も15日、コバックスを通じて人口の2割分のワクチンを入手する考えを明らかにした。ただ、コバックスを通じた確保には限界があり、さらに必要となれば外国からの購入資金などが課題になる。【12月18日 朝日】

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技術的問題としては、先進国でも手を焼いている「低温保存」の問題を、十分なインフラもない貧困国がどのゆにクリアできるか・・・という問題もあります。

 

【したたかな中国のワクチン外交】

上述のような情勢にあって、てをyアメリカが「自国第一」に走るのと対照的に、中国はこの機をとらえてワクチン供給、さらにはインフラ建設で各国への影響力を高めようとする「ワクチン外交」に力を入れているのは周知のところ。

 

****中国が仕掛けるワクチン外交 「健康のシルクロード」建設着々****

世界の富裕国が供給量に限りのある大手製薬会社の新型コロナウイルスワクチン確保に奔走する中で、中国は積極的に、資金力の弱い国々に中国製ワクチンの提供を申し出ている。

 

だが、その気前の良さは100%利他的なものとはいえない。中国政府が求めているのは外交上の長期的な見返りだ。

 

この戦略には、新型コロナ流行初期の中国政府の対応への怒りや批判をかわし、中国のバイオテクノロジー企業の知名度を上げ、アジア内外での中国の影響力を強化・拡大するなど、複数のメリットがある。

 

「中国が、悪化したイメージの回復を図ってワクチン外交を展開しているのは間違いない」と、米外交問題評議会上級フェローの黄延中氏はAFPに指摘した。ワクチン外交は「中国の世界的影響力を増大し、地政学的な諸問題を(中略)解消するツールとなりつつある」という。

 

■米国不在の保健分野をリード

中国政府はパンデミック(世界的な大流行)の初期には、マスクや防護服などの大量輸出を急ぎ、医療が逼迫(ひっぱく)していた欧州・アフリカ各地に医療チームを派遣した。

 

そして今、欧米の製薬会社がワクチンの供給を始める中で、自国製ワクチンの大量供給を開始し、次々と合意を結んでいる。相手国には、中国との関係がぎくしゃくしている国も含まれている。

 

中国の外交官がワクチン供給合意を取り付けたマレーシアとフィリピンは、いずれも南シナ海への中国進出に苦言を呈してきた。8月に李克強首相がワクチン優先供給を約束したメコン川流域の国々は、中国が上流に建設したダムの影響でひどい渇水に見舞われ、干ばつが悪化している。

 

「公益」を掲げて世界中に中国製ワクチンを提供する習近平国家主席の動きは、中国こそが世界の保健分野を主導する国だとアピールする機会になっていると黄氏は言う。

 

米国がドナルド・トランプ大統領の「米国第一主義」の下でなおざりにしてきた役割を、中国がここぞと肩代わりした格好だ。

 

■「健康のシルクロード」

中国は、低・中所得国のワクチン市場のわずか15%を獲得しただけで約28億ドル(約2900億円)の純利益を見込めると、香港の安信証券は試算する。

 

全世界でワクチン接種を推進するためには、超低温での輸送を可能にする低温物流網(コールドチェーン)や保管施設の整備も必要だが、CFRのカーク・ランカスター氏はこれらの事業について、習氏が1兆ドル(約103兆円)を投じて推進する巨大経済圏構想「一帯一路」にうまく調和すると指摘する。

 

すでに電子商取引大手アリババ(阿里巴巴)は、アフリカ・中東へのワクチン供給拠点となる倉庫をエチオピアとドバイに建設した。

 

また、中国政府はブラジル、モロッコ、インドネシアなどにワクチン製造施設を建設しているほか、中南米諸国に10億ドル(約1030億円)規模の資金提供を約束している。これらのインフラを、中国企業はコロナ後に利用できる。

 

「『健康のシルクロード』と銘打たれた一連の取り組みは全て、中国の国際的な評判を回復しつつ、中国企業向けの新たな市場を開拓することにつながっている」とランカスター氏は語った。 【12月17日 AFP】

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まったく抜け目のない国ですが、そうした戦略を実行できる国力があるというのは、たいしたものです。

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新型コロナ  広範なワクチン不信感 「免疫パスポート」の倫理的問題は? インフルとの「ウイルス干渉」

2020-12-15 23:24:32 | 疾病・保健衛生

(防護服姿でマレーシア議会に出席した(感染者との接触があった)閣僚2人。(2020年12月14日撮影)【12月15日 AFP】)

 

【ワクチン接種開始から1週間】

新型コロナへのワクチン接種は、イギリスを皮切りにアメリカ、カナダでもスタートしており、「終わりの始まり」として大きな期待を集めています。

 

****米国で接種開始「終わりの始まりに…期待」****

アメリカで14日、製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まりました。

ニューヨークでは14日、クオモ州知事が見守る中、最前線で働く女性看護師が、ファイザーなどが開発したワクチンの接種を初めて受けました。

接種受けた看護師「他のワクチンとの違いは感じなかった。これがこの非常につらい時期の終わりの始まりになることを期待する」

クオモ州知事は「トンネルの先に光が見えているが、これは長いトンネルだ」と警戒を続けるよう訴えました。

アメリカではまず、約300万回分のワクチンが、14日以降、全米の病院など636の施設に順次、届けられる予定です。【12月15日 日テレNEWS24】

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スタートから1週間が経過したイギリスでは、従来からアレルギーを有していた者二人がアレルギー反応を起こしたという問題がありましたが、素人考えで言えば、(一定の範囲内であれば)そういう出来事はこの種のことには「つきもの」の話でしょう。今回ワクチンに限らず、世の中に存在するすべての薬剤にアレルギーの副作用は不可避です。

 

有効性の確認は今後の問題となりますが、安全性・有効性以外の問題としては、かねてより指摘されている低温輸送の問題がやはり現実的困難となっているようです。

 

****超低温輸送で苦戦、「証明書」発行に議論 英のワクチン接種1週間****

英国で米製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチン接種が始まってから15日で1週間がたった。数万人に投与されたが、接種を受けた2人がアレルギー反応を起こしたことからワクチンを望まない国民も増えている。

 

英政府はワクチン普及のため、接種の有無を示す「証明書」の発行をほのめかしており、接種を受けない人が不利益を被るのではないかとの懸念が出ている。

 

「久しぶりに、家族を抱きしめられる」

ワクチン投与が始まった今月8日に接種を受けた40代の介護職員の女性は英メディアなどに喜びを語った。新型コロナが欧州で拡大した3月以降、接触による感染を恐れ「母親をハグできなかった」という。

 

欧米メーカーのワクチンを初めて実用化した英国は8日から約70の病院で接種を開始。80歳以上の高齢者や高齢者介護施設の職員らが優先的に接種を受けた。ハンコック保健相は重症化リスクが高い人への接種が来春までに終了するとの見通しを示している。

 

ただ、首都ロンドンを含むイングランド地方で、新型コロナによる死者数が多い高齢者介護施設の入居者への接種は進んでいない。ファイザーのワクチンは輸送時にマイナス70度前後に保つ必要があり、病院から高齢者施設への運搬方法が課題となっているためだ。英政府は保冷用の特殊なケースで輸送する計画をクリスマスまでに実行する方針だが、成否は予断を許さない。

 

ワクチンの安全性に疑念を呼ぶ出来事もあった。8日に接種を受けた2人の医療従事者に投与後、すぐ激しいアレルギー反応が出た。2人は回復したものの、ファイザーの臨床試験(治験)で頭痛などの副作用が報告されていたこともあり、国内ではワクチンを恐れる人も出ている。

 

英国の介護施設運営を支援する団体「ナショナルケア・アソシエーション」のアーメッド会長は英メディアに、介護職員の半分近くが「接種を拒否するかもしれない」と話した。

 

こうした中で広がっているのが、英政府はワクチン推奨のため、接種の有無を示す証明書を発行するのではないかとの観測だ。発端となったのは、接種を担当するザハウィ保健担当閣外相が11月末、英メディアに、接種を受けたことを記録するスマートフォン用アプリの開発を検討していると明かしたことだ。

 

ザハウィ氏は、アプリの記録がレストランなどに入る際に、ワクチンを投与されたことの「証明書」になりうると発言。同氏の説明は、レストランなどが証明書のない客の入店を拒否できるかの印象を与えた。

 

ゴーブ内閣府担当相はその後、「(証明書の)計画はない」と否定。だが、ジョンソン政権に近い与党・保守党議員は今月7日の英スカイニューズ・テレビの番組で、証明書の構想を明確に否定しなかった。

 

英人権擁護団体リバティは英紙デーリー・メールに「(証明書がなければ)公共サービスや住宅の利用のほか、就職まで妨げられる恐れがある」と指摘。「一部の国民は自由を得て、接種しない国民は社会から締め出される二重構造を生み出す」と懸念を示した。【12月15日 産経】

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【広範なワクチン不信感】

アレルギー反応事例以前から、開発が“超特急”でなされたワクチンに対する「不信感」はかなり根強い・広範なものがあるようです。

 

****米、42%が「ワクチン接種しない」 安全性への懸念払拭課題****

(中略)接種は、医療従事者、高齢者施設など長期療養施設の入所者が最優先される。集団免疫を獲得するためには約7割の接種率が必要とされるが、安全性への懸念からか米国でのワクチンへの理解は大きく広がっていない。

 

調査会社ギャラップの調査(10月19日〜11月1日)によると、接種を受けるとした人が58%だったのに対し、接種をしないと答えた人は42%にも上り、賛否が分かれている。

 

こうした中で、米次期大統領に就任する見通しとなったバイデン前副大統領は3日、米CNNテレビのインタビューで、国民の信頼が厚い国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長を引き合いに出し、「ファウチ氏が安全だといえば、公開の場で接種を受ける」と明言。国民の懸念払拭に努める姿勢をアピールした。【12月6日 産経】

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単に医療情報に疎いからワクチンを不安に思う・・・というだけでもないようです。

“10月に米国看護師財団(ANF)が約1万3000人を対象に実施した調査では、米国の看護師の36%が自主的にコロナワクチンを受けるつもりはないことがわかった。”【12月15日 WSJ】

 

“ワクチン接種に懐疑的な人々の中には、あらゆるワクチンへの反対を声高に唱える少数派グループがいる。またマイノリティーの間に深く根づいた保健当局への不信感もある。黒人などのマイノリティーが非倫理的な医療実験に利用された暗い歴史があるためだ。”【同上】よいった問題も。

 

アメリカ以外でも

“「接種希望」半数のみ=広がるワクチン不信―仏調査”【12月6日 時事】

“スペイン、国民の半数以上が直ちにワクチン接種望まず=調査”【12月5日 ロイター】

 

“11月5日に調査会社イプソスが公表した世論調査では、(フランスの)ワクチンを「接種する」との回答は54%。日本(69%)や米国(64%)、英国(79%)など他の14対象国と比べ、突出して低かった。”【12月6日 時事】ということで、日本は比較的許容度が高い方のようです。

 

おそらく“「ワクチンが次第に入手しやすくなり、人々が慣れてくれば、ちゅうちょする比率も低下するだろう」。ジョンズ・ホプキンス大学保健安全センターの医療人類学者モニカ・ショクスパナ博士はこう述べた。「大勢の人々がまだ様子見モードだ。ワクチン接種に関心はあるが、安全性の証拠をもっと確かめたいと思っている」”【12月15日 WSJ】ということで、ワクチンへの不安感は次第に薄れてはいくのでしょう。

 

【いわゆる「免疫パスポート」の問題】

ワクチンが実用化されるにつれて問題になるのが、すでにワクチンを接種した人について、その旨を証明するいわゆる「免疫パスポート」

 

このパスポートを有する者だけが、あるいは有する者が優先して、いろんな入店・観劇できるなどの各種サービスを受けられるとか、ひいては雇用などにおいても・・・という状況も想定されます。

 

技術的問題としては、そこまでワクチンに「有効性」があるのか?・・・という問題が。

それより微妙なのは、そういう形で、国民を「分けて扱う」ことの倫理的問題でしょう。

 

****「免疫パスポート」は有効か、倫理問題巡る疑問も****

英国が西側諸国で先陣を切って新型コロナウイルス予防ワクチンの接種を開始したことで、公衆衛生に関してかねて存在する倫理的問題が再び焦点に浮かび上がってきた。

 

ワクチン接種者に対して免疫の証明を発行することは正当かどうかという問いだ。  

 

構想では、ワクチンの接種を受け、他人への感染リスクがないと証明できれば、その人物はマスク着用やソーシャルディスタンス(対人距離の確保)といった規定に従わなくてもよくなると考えられている。

 

レストランや劇場、オフィスなどは、ワクチン接種の証明を持った人々を迎え入れることで安心して稼働を再開することが可能になり、国境をまたぐ移動も復活するだろう。そして、ワクチン接種者が増えれば、暮らしも段階的に正常化する見通しだ。  

 

だが、科学者や公衆衛生の専門家は、急ピッチで開発されたワクチンが果たして本当に予防効果を生み、持続的な免疫を提供できるのか、判断するのは時期尚早だと警鐘を鳴らしている。

 

治験で疾患の深刻度を低減したのと同じくらい、他人への感染防止効果があるのかも明確になっていない。

 

また、ワクチン接種の有無で市民を分別することが賢明なやり方なのか、倫理的かつ政治的な疑問も持ち上がっている。  

 

西側諸国で初めてワクチン承認に踏み切った英国では先週、この「免疫パスポート」構想の是非を巡る議論に火がついた。  

 

英政府のワクチン担当相を務めるナディム・ザハウィ氏は、規制当局が米ファイザーと独ビオンテックが手掛けるコロナワクチンを承認する2日前、バーやレストラン、娯楽施設はいずれ、サービスを利用する条件として、顧客にワクチン接種の有無を確認し始めるかもしれないと述べた。  

 

その上で、ワクチン接種の有無を示す機能を接触追跡アプリに組み込むなどして接種状況を簡単に提示できるよう、政府としてテクノロジー面での改良を検討する考えを示した。  

 

一方で、ザハウィ氏は、英政府はワクチン接種者に対して、免疫パスポートを正式に発行したり、接種を義務づけたりする計画はないとも指摘。テレビとのインタビューでは「人々はワクチン接種を望むかどうか、自分で決定することが認められるべきだ」と述べている。  

 

免疫パスポートという構想自体は新しいものではない。海外旅行に関しては特にそうで、例えば、ガーナやナイジェリアなどを訪れる旅行者は、黄熱病のワクチン接種がビザ発給の条件となっている。とりわけ血液に関わる仕事に従事している医療関係者に対しては、B型肝炎の予防ワクチン接種を義務づけている国もある。  

 

豪カンタス航空のアラン・ジョイス最高経営責任者(CEO)は、国際線の搭乗客に対して、ワクチン接種の証拠を提示するよう義務づけることになるだろうと述べている。豪政府はこれまで、外国からの訪問者や帰国者に対し、入国の条件として、ワクチン接種の証拠提示を求める可能性があるとし、他にも追随する国が出てくるとの見方を示している。  

 

似たような証明書の発行構想は今年に入り、すでに浮上していた。英国やドイツ、イタリアは、職場復帰を認める従業員を選定する方法を巡り、過去の感染の有無を示す抗体検査の可能性を探った経緯がある。

 

だが、世界保健機関(WHO)は、過去の感染でどの程度の免疫をもたらすのか不透明だとして、構想に反対する立場を表明。この案が普及することはなかった。  

 

英医学誌ランセットは10月、免疫パスポートを支持する論文を掲載。具体的には、ワクチンを接種した証拠として、政府が特別なリストバンドやアプリ、証明書などを提供することを提案した。  

 

論文執筆者の1人であるジュリアン・サバレスキュ氏(オックスフォード大学上廣応用倫理センター所長)は、「国家による強制の行使、自由の制限が唯一正当化されるのは、他人に危害を及ぼすリスクがある場合に限る」と述べる。「他人に危害を加えるリスクのない場合には、自由は制限されるべきではない」  

 

だが、慎重論はなおくすぶる。一部の科学者は、ワクチンが他人への感染リスクを低減する上でどの程度有効なのか、予防策が不要になるほど免疫が十分に持続するのか、まだはっきりと解明されていないと主張する。潜在的な副作用リスクに関する情報も、広範な配給ではなく、治験に基づく内容しかこれまで把握できていない。  

 

また法律の専門家からは、ワクチン接種の有無で個人を分別することには隠れた危険が存在するとの意見が出ており、個人情報の保護やプライバシー、偽造などを巡っても問題が生じる恐れがあると懸念されている。しかも、若者層など、自由を最もおう歌するとみられる人々までワクチンが行き届くのはさらに数カ月先だ。  

 

ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のニコール・ハッソン教授(哲学)は「免疫パスポートが名案であることを裏付ける証拠は不十分だ」と指摘する。【12月9日 WSJ】

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ワクチン接種の機会が回ってこない段階で、接種していないことを理由に各種サービスが制約されるというのは不愉快ですが、一部の国では感染症の拡大を防ぐため入国時にはポリオや黄熱病などの予防接種証明書が求めらいる現状も考え合わせると、誰でも摂取できる状況になった時点で「免疫パスポート」的なものが求められるというのは、それ自体にはあまり無理はないようにも思えます。

 

もっとも、「健康であることを各種検査で証明する必要がある」ということがコロナを超えて一般化するという話になると、最終的には「遺伝子検査で雇用・結婚・保険加入などを判定する」という近未来ディストピア的な話にもつながっていくものもあるのかも。

 

更に現実的問題としては、“誰でも摂取できる状況”とは言いつつ、常にノーマルケースからはみ出す人々が存在します。例えばホームレスの人は接種を受けられるのか?パスポートが発行されるのか?あるいは「思想・信条」の観点から接種を拒否する人の扱いは?

 

****コロナ予防接種カードは「免疫パスポート」として使えるか 集団接種が始まった英で論争****

(中略)

予防接種カードは社会をさらに分断する

英人権擁護団体リバティは英大衆紙デーリー・メールに「予防接種カードを持っていない人は、必要不可欠な公共サービス、仕事、住宅へのアクセスを妨げられる恐れがある。こうした人たちはもともと社会的弱者で、今回のコロナ危機でさらに困窮している」と警鐘を鳴らしています。

 

カードは「国民総背番号制の道を開く」上、自由なイギリス人と締め出されるイギリス人の二層化を進めかねないとの指摘も浮上しています。(後略)【12月8日 木村正人氏 YAHOO!ニュース】

***********************

 

「ワクチン接種の有無で個人を分別することには隠れた危険が存在する」という点に関して、慎重な議論・対策が必要かも。

 

【“消滅”したインフルエンザ 「ウイルス干渉」?】

最後に、コロナ関連の話題で興味深い記事を。

かねてより、インフルエンザが流行する冬場はインフルエンザとコロナで大混乱するのでは・・・と懸念されていましたが、いまのところインフルエンザがパッタリと影を潜めており、そうした混乱は起きていません。

 

****飛沫防止や渡航制限が奏功か インフルエンザ「消滅」状態に*****

(中略)あの厄介なウイルスの気配も今年はパッタリと消えた。おなじみの「インフルエンザ」の話である。

 

昨年2019年の11月第4週の患者数は、全国で約3万人だった。2018年は約5000人、2017年、2016年はおおよそ1万人。年によって流行に多少の差はあるものの、冬には毎週1万人ほどの人が高熱や腹痛、咳や悪寒に悩まされてきた。

 

ところが2020年、同じく11月第4週の患者数は、日本全国でたったの46人。例年のざっと100分の1以下だ。もはや「インフルエンザは消滅した」といってもいいほどだ。

 

(中略)目下、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスとは関係があるのか。

 

「新型コロナもインフルエンザも『飛沫感染』します。今年ほど、マスク着用やうがい・手洗い、『3密』回避などの感染対策が徹底的にとられたことはかつてない。新型コロナ対策が、インフルエンザの流行防止に奏功したのでしょう」(廣津医院院長で、日本感染症学会のインフルエンザ委員会メンバーでもある廣津伸夫さん)

 

内科医で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは、「海外からの渡航制限のため、国内にインフルエンザウイルスが持ち込まれていないことが大きい」と分析する。(中略)

 

もう1つ考えられる理由は「ウイルス干渉」だ。

「ウイルス干渉とは、“1人の人間に対して感染できるウイルスは1種類”という現象です。椅子取りゲームにたとえると、1つの椅子(=1人の人間)に座れるのは、1つのウイルスなのです」(廣津さん)

 

ウイルス干渉が起きるメカニズムは現代医学でもまだ解明されていない。ただ、冬場の早い段階でインフルエンザが流行った地域では、コロナウイルスが引き起こすウイルス性の風邪が減ったという研究結果がある。

逆もまたしかりだと廣津さんが指摘する。(後略)

女性セブン2020年12月24号【12月15日 NEWSポストセブン】

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表題は「飛沫防止や渡航制限」ですが、話としては「ウイルス干渉」が面白いですね。

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