孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トランプ関税に苦慮する世界各国 ベトナムと日本の場合

2025-03-04 21:39:14 | 東南アジア

(相互関税の検討を指示する大統領令に署名したトランプ大統領【2月26日 JBpress】)

【ベトナム 米中とバランスをとり、欧州とも】
明日から14日までベトナムに行ってきます。もちろん単なるお遊び・観光です。
そのためブログは「更新できるときは更新する」といった感じで、ゆるゆると。

2月12日ブログ「ベトナム  米中対立の“漁夫の利” 巨額の対米貿易黒字は関税“標的”に 今後も米中間でバランス」で取り上げたように、ベトナムはこれまでの米中対立ではチャイナリスクを警戒する企業がベトナムに拠点を移すなどで“漁夫の利”を得て、経済は急成長してきました。

しかし、対米貿易黒字で第4位という巨額の黒字はトランプ関税の絶好の標的になる・・・ということで、これまでのようにいくかどうかはわからない状況になっています。(トランプ大統領の施策で先が見えないのはベトナムだけでなく、日本を含めた世界全体が同じように困っていますが)

いずれにしても経済的に大きな比重を占めるアメリカ、南シナ海で対立があるとは言え、同じ社会主義国として政治体制維持のためにはやはり緊密な関係が重要な中国・・・その間でバランスをとる必要があります。

トランプ関税については、予防策を。

****ベトナム、米国からの農産物輸入拡大の用意 米関税のリスク拡大****
ベトナムのグエン・ホン・ジエン商工相は米国からの農産物輸入を拡大する用意があると述べた。政府が14日明らかにした。

トランプ米大統領は13日、米国の輸入品に関税を課している全ての国に「相互関税」を課すと発表している。

ベトナムはアップルやサムスンなど多国籍企業の製造・輸出拠点となっており、米国の関税で大きな打撃を受ける可能性がある。昨年の対米貿易黒字は過去最高の1235億ドルで、中国、欧州連合(EU)、メキシコに次いで多かった。

同相は今週の会合でマーク・ナッパー駐ベトナム米国大使に「市場を開放し、米国からの農産物輸入を増やす用意がある」と伝えた。

米政府のデータによると、昨年の米国の対ベトナム輸出の4分の1以上は農産物。大半が綿花、大豆、ナッツ類だった。

ベトナムは米国の主要貿易相手国の中で特に関税差が大きく、米国よりも高い輸入関税を課している。世界貿易機関(WTO)によると、ベトナムは輸入関税率は平均9.4%。【2月14日 ロイター】
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中国とも緊密な関係を維持。

****ベトナム国会が中国へ通じる鉄道建設を承認、総額80億ドル超―独メディア****
2025年2月19日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、ベトナム国会が中国につながる鉄道路線の建設計画を承認したと報じた。

記事は、ベトナム国会が19日、同国最大の北部港湾都市ハイフォンから西へ向かい、首都ハノイを経由して中国雲南省と接するラオカイまで延びる鉄道計画を承認したと紹介。幹線は全長約390.9キロメートル、3本の支線の長さは計約27.9キロメートル、総建設費は現在のところ83億ドル(約1兆2500億円)と見積もられており、今年着工して2030年の完工を目指すと伝えた。

ベトナム北部にはサムスンやフォックスコン、ペガトロンなどの大手国際電子企業の生産拠点が多数存在し、特に中国からの原材料供給に依存している一方で、フランス植民地時代に建設された1世紀以上前の鉄道など、老朽化した交通インフラが同国のさらなる経済成長の大きな障害になっていると指摘。

現在、中国への輸送の多くが低速な上に国境での遅延が発生しやすいトラックに依存している状況であり、運行時速が在来鉄道の50キロから3倍以上の160キロへと引き上げられる新鉄道は、貨物輸送と旅客輸送の両方で大きな役割を担うことが期待されていると伝えた。

また、新鉄道は中国の「一帯一路」構想、2004年にベトナムが中国に提唱して合意した「両廊一圏(中越間の2本の経済回廊と、トンキン湾経済圏)」構想における両国のパートナーシップを強化すると考えられており、中国が一部の資金を融資する予定だと紹介。

現時点でどの企業が建設を担当するかは決まっていないものの、昨年末にベトナムのファム・ミン・チン首相が雲南省を訪問した際、中国鉄建(CRCC)がプロジェクト参加を希望したという中国メディアの情報を伝えた。

記事はさらに、19日のベトナム国会では今年の経済成長目標を従来の6.5〜7%から8%に引き上げること、31年の完成を目指す同国初の原子力発電所の建設、イーロン・マスク氏率いるスペースXが国内でスターリンクの衛星インターネットサービスを提供することも承認されたと伝えている。【2月20日 レコードチャイナ】
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更に、ベトナム同様にトランプ関税の標的となる欧州も、ベトナムとの関係強化・販路拡大を目指しているようです。

****欧州首脳、ベトナム訪問を計画 米関税リスク受け****
複数の関係筋によると、欧州の首脳がベトナムとの関係強化のため、同国を訪問することを計画している。米国のトランプ政権が欧州とベトナムに関税を発動する可能性があり、緊張が高まっていることが背景だ。

米国がベトナムに関税を課せば、両国関係が悪化する可能性がある。

欧州の当局者や外交筋によると、フランスのマクロン大統領はベトナムとの関係強化のため、5月下旬に同国を訪問する可能性がある。欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長もベトナムとの関係を正式に格上げするため、マクロン氏よりも先にベトナムを訪れる可能性がある。訪問はともに以前から計画されていたもので、まだ最終決定には至っていないという。

また、欧州委のシェフチョビチ委員(通商担当)も4月にベトナムを訪問する可能性がある。

フォンデアライエン委員長は先週、ベトナムで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の会合にビデオメッセージを送り「関税と輸出規制の流れが強まりつつある。われわれは信頼できるパートナーと貿易・投資の新しい機会を作りたい」と述べた

EUは昨年、ベトナムから520億ドル相当の財を輸入。輸入額は米国の半分以下だが、EUはベトナムにとって第3の輸出市場となっている。

ベトナムに進出している米国のメーカーは、欧州よりも米国に対する輸出依存度が高いが、トランプ政権がベトナムに関税を発動した場合、ベトナムからEUへの輸出が増え、欧州企業による対ベトナム投資が進む可能性もある。【3月4日 ロイター】
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【日本への影響は? トランプ大統領、円安批判からの関税への言及も】
日本がこれまでのベトナムのように米中対立から“漁夫の利”を得られるかどうかは・・・

****トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?****
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和

サマリー
◆米トランプ政権は10%の対中追加関税に続き、メキシコとカナダに対する25%の関税などを課す可能性がある。厳しい関税措置は、米国を含む各国経済の減速などを通じて日本経済に悪影響を及ぼし得る。

半面、関税を課された国の価格競争力が低下して日本が代替需要を取り込む(いわゆる「漁夫の利」を得る)可能性もある。そこで本稿では、第2次トランプ政権下で日本が「漁夫の利」を得る条件を検討する。

◆第1次トランプ政権下では、対中追加関税の影響で中国の対米輸出シェアが低下し、ベトナムなどのシェアが上昇した。

同時期に日本のシェアは低下しており、「漁夫の利」は得られなかった。対中追加関税の対象品目では日本の国際競争力が低かったことに加え、日本と中国の輸出財の代替性が低かったことも影響したとみられる。

◆第2次トランプ政権下では、より広範な関税措置による日本経済への悪影響が懸念される。関税措置の対象はほぼ全品目に及ぶほか、中国以外の国も対象となる可能性がある。

もっとも、全品目ベースで見た日本の輸出財の競争力は他国に見劣りせず、韓国やドイツなどとの輸出財の代替性が高い。関税措置の対象が幅広い品目やこれらの国に及んで日本の輸出競争力が相対的に向上した場合、日本経済への悪影響は「漁夫の利」で一定程度緩和されるだろう。【3月3日 大和総研】
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ただ、現実にはなかなか大変。

****トランプ関税で日本株はどうなる?自動車25%関税表明で輸出株は総崩れになったが…最も厄介なシナリオとは****
トランプ政権が関税をディールの武器にして諸外国に揺さぶりをかけています。輸入車に25%の関税をかけると表明すると、日本でも自動車など輸出関連株が大きく下落しました。トランプ関税は今後、マーケットにどんな影響を及ぼしていくのでしょうか。三井住友DSアセットマネジメント・市川雅浩チーフマーケットストラテジストに話を聞きました。 

(中略)
■ 日本には厳しい要求はしてこない?   
(中略)結局のところ、トランプ関税の真の狙いは、米国内への生産回帰と雇用増、海外からの投資増、海外への輸出増と思われます。ここに関してはすでに石破総理が「対米投資の1兆ドルまでの引き上げ」「液化天然ガス(LNG)の輸入拡大」を日米首脳会談の手土産にしました。  

日本はトランプ氏の狙いに応えているほか、中国や北朝鮮を見据えた時に安全保障面でも重要な位置にあることから、日本に対しては厳しい要求はしてこないだろうと見ています。  

現状日本は、米国に対して相互関税や鉄鋼・アルミニウム、自動車への関税適用除外を申し入れています。今後は日本政府の交渉力が試されるところです。

■ 関税による米国のインフレ再燃リスクは大きくない 
 ——日本株にとって一番厄介なシナリオは。  市川氏:トランプ氏が選挙期間中に発言していた、すべての国の製品に一律10〜20%の追加関税を課すということを実際にされると、日本だけでなく世界経済にも大きな影響が出てきます。これが日本株のトランプ関税リスクとしては最も大きなものと考えます。  

ただこれは米国への影響も大きいので、発動のハードルはかなり高いとみています。仮に一律10%の追加関税が発動された場合、米国の物価上昇率を1%ポイント程度、押し上げるインパクトがあると考えています。  

現状、トランプ政権は「一律関税」ではなく「相互関税」の導入を検討しており、個別の国と個別の商品について話し合う形となる公算が大きくなっています。

日本は米国からの自動車輸入に対する関税はゼロとしていますが、トランプ政権は日本の車検制度や安全基準、補助金などを「非関税障壁」とし、関税以外に米国車の販売に妨げになっていると指摘することも想定されます。  

非関税障壁を口実に、日本車に追加関税が課せられるリスクはあり、警戒感が残ります。関税政策については具体的な内容がほとんど固まっていないので、投資家は詳細が明らかになるのを待っている状況です。  

一方、トランプ氏は「インフレ非難」で選挙に勝った経緯があります。米国では2026年に中間選挙もあるので、インフレを招くような無茶な関税引き上げ政策は難しいと考えています。 

関税の引き上げは、中国を除いた各国との、あくまで交渉材料であり、個別に交渉が行われる限り、関税による米国のインフレ再燃リスクは大きくないと思います。【2月26日 JBpress】
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上記記事は“日本に対しては厳しい要求はしてこないだろう”と楽観的ですが、すでに円安批判ができています。

****トランプ氏、円安で日本批判 関税引き上げちらつかせ是正要求へ****
トランプ米大統領は3日、円安・ドル高で米製造業が不利な立場に置かれたとして日本を名指しで批判した。今後は日本に円安是正を求める代わりに、関税引き上げを通告するという。中国通貨の人民元安も同様に批判した。ホワイトハウスで記者団に述べた。

トランプ氏は「日本であれ中国であれ、ドルに対する通貨安で私たちは極めて不利な立場に置かれる」と主張。「日本や中国が自国通貨を切り下げている時に(米メーカーの)キャタピラーがトラクターを作るのは困難だ」とも述べ、日本や中国の製造業がドルに対する通貨安で不当に競争力を高めていたと不満を示した。

トランプ氏は「以前は日中の首脳に電話をかけ、『不公平な通貨切り下げを続けることはできない』と伝えてきた。だが、私がすべきなのは『関税を少し上げる必要がある』と伝えることだけだ」と述べた。今後は関税引き上げを交渉材料に通貨安の是正を促していく考えを示した。

トランプ政権は、米国に高率の関税を課す相手国に同程度の関税を発動する「相互関税」の導入を計画する。政府高官は、新たな関税率を算定する際にドルに対する不当な通貨安も考慮するとしている。

一方、加藤勝信財務相は4日の閣議後記者会見でトランプ氏の発言について「通貨安政策は取っていない。先般の為替介入を見てもらえば理解してもらえる」と反論した。林芳正官房長官も同様の見解を示し、「(日米間で)引き続き緊密に議論していく」と語った。

政府・日銀は昨年、過度な円安の是正に向け、円買い・ドル売りの為替介入を複数回実施している。

トランプ氏は2017~21年の1次政権時代に日中の通貨安を問題視。安倍晋三首相(当時)や中国の習近平国家主席に通貨安の是正を直接求めたと語っていた。【3月4日 毎日】
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ベトナムも欧州も日本も、トランプ関税対策には苦慮。
もちろん、すでに標的となっているカナダや中国は激しく反発、報復関税をかける姿勢です。 経済へのアメリカの影響が死活的に大きいメキシコは日本と同じように、なるべく事を荒立てず穏便に・・・といった姿勢ですが、穏便ですむかどうかはわかりません。
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