孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

麻生総理 温室効果ガス削減の中期目標を発表 「05年比15%減」

2009-06-12 22:00:22 | 環境

(パキスタン北西部 フンザから望むヒマラヤ氷河 “flickr”より By GothPhil
http://www.flickr.com/photos/phil_p/2079086251/)

【「今を生きるわれわれ世代の責任」】
麻生太郎首相は10日、「地球温暖化の防止は、今を生きるわれわれ世代の責任なのです。」と述べたうえで、2020年までの日本の温室効果ガス削減目標(中期目標)について「05年比15%減」(90年比8%減)とする方針を表明しました。
以前から“14%”という数字が取り沙汰されていましたが、高めの目標を主張する公明党への配慮で1%の“政治加算”が上積みされたとのことです。

****温室効果ガス:中期目標「05年比15%減」 90年比では8%--首相会見****
麻生太郎首相は10日、首相官邸で記者会見し、2020年までの日本の温室効果ガス削減目標(中期目標)について「05年比15%減」(90年比8%減)とする方針を表明した。日本はすでに「2050年までに現状比60~80%減」との長期目標を打ち出しているが、首相は中期目標達成により、「30年には約4分の1の減(25%減)、50年には約7割減(70%減)につながる」との見通しも示した。
政府は、比較する基準年は直近の「05年比」とした。日本の場合、同じ削減努力でも、「90年比」より削減率が大きく見える効果がある。
中期目標を決めるに当たっては、六つの選択肢(05年比4%減~30%減)を設定。このうち世論調査で最も支持が多かった「05年比14%減」(90年比7%減)を軸に検討したが、政府内の調整の結果、最終的に1%分を加算した。
「05年比15%減」の目標について、麻生首相は「低炭素革命で世界をリードしたい。太陽光発電の大胆な上乗せなどにより、さらに削減幅を大きくする」と説明した。(中略)

 ■中期目標達成に必要な主な政策
・太陽光発電を、現状(05年)の142万キロワットから、20倍に引き上げ
・ハイブリッド車など次世代自動車の新車販売に占める割合を、現状1%から50%に高め、保有台数の20%に
・新築住宅に占める省エネ住宅の割合を、現状の約40%から約80%に高める
・風力発電を、現状の168万キロワットから500万キロワットに拡大(10万キロワット×34基を新設)
・高効率給湯器を2800万台に
・原子力発電所を9基新設。現状6割の設備利用率を8割に
 (日本エネルギー経済研究所などが政府に提出した資料などを元に作成)【6月11日 毎日】
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「05年比15%減」は後述するように、国際的には期待した水準からは程遠いと批判されていますが、その15%にしても、上記記事最後の必要政策を見ると、その達成のためには相当の努力・画期的な政策転換が必要です。
今回の目標策定は、産業界への影響配慮に軸足を置いているとも言われますが、そうした対応では15%達成すら危ぶまれます。

なお、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、最近の温暖化は人間活動が原因とほぼ断定し、温暖化被害を最小限に抑えるには、先進国全体で温室効果ガス排出量を20年までに「90年比25~40%減」と試算しています。
今後は、12月にコペンハーゲンで開かれる「気候変動枠組み条約第15回締約国会議」(COP15)で各国の対応が協議され、合意形成がはかられます。

【「今日の化石賞・特別賞」受賞】
さて、今回の麻生総理の中期目標発表について、環境団体などからは厳しい批判が出ています。

****「化石賞」日本は2位=中期目標「見劣り」と批判-NGO****
ドイツ・ボンで開かれている国連気候変動枠組み条約特別作業部会の会場で10日、環境非政府組織(NGO)が交渉への取り組みに消極的な国に贈る「きょうの化石賞」の2位に日本を選出した。(中略)
1位には、中期目標をまだ定めていないロシアを選んだ。【6月11日 時事】
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****「ジョージ・W・アソウ」に「化石賞」、環境団体が日本の削減目標を非難*****
2009年06月11日 11:02 発信地:ボン/ドイツ
国連の気候変動枠組み条約の特別作業部会が開かれているドイツ・ボンで10日、環境保護団体らが、日本の「05年比15%削減」という2020年の温室効果ガス削減目標は「悲惨なほど小さい」として厳しく批判した。
活動家らは、削減目標を発表した麻生太郎首相の顔写真を、温暖化対策に前向きではなかったジョージ・W・ブッシュ前米大統領の顔写真と合成した、「ジョージ・W・アソウ」の巨大写真を披露。温暖化対策に後ろ向きな国に贈る「今日の化石賞・特別賞」に日本を選んだ。
国際環境団体グリーンピースは、麻生首相が設定した低い目標値は重工業界にへつらったものだと非難。日本の削減目標は、結果的に地球の平均気温を3度上げることに繋がるとの試算を発表した。【6月11日 AFP】
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こちろん、環境団体と国民生活全般に責任を持つ政府とでは立場が違いますので、彼等の主張を全て受け入れる必要もないですが・・・。

【中国も批判】
COP15での合意形成には、中国など新興国への規制適応が問題となりますが、その中国も今回の「05年比15%減」(90年比8%減)を批判しています。

****日本の温室ガス削減目標、必要水準を大幅に下回る=中国の気候変動大使****
麻生太郎首相が2020年に国内の温室効果ガスを2005年比で15%削減することを目指す中期目標を表明したことについて、中国の気候変動交渉担当の于慶泰特別代表は、気候変動に責任を負うよう求められる水準を「かなり下回っている」と述べた。
気候変動に関する会議に参加するため当地を訪れた代表は、ロイターに対し「(同数値目標は)日本が負うべきかつ必要とされる水準に近いとは考えていない。国際的な気候変動への取り組みに相応の貢献をするには何をすべきかを日本は真剣に検討すべきだ」と語った。【6月11日 ロイター】
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日本からすれば、最大のCO2排出国となりつつある中国など新興国が規制を受け入れようとしないことこそけしからん・・・ということになるのですが、現在のCO2増加は先進国がもたらした結果であり、そのために新興国・途上国の経済活動が制約されるのはおかしいではないか・・・という議論もわからなくはありません。

【気候移民】
先進国がこれまでの結果に責任を持ち、新興国・途上国もこれからの活動については規制を受け入れるという常識的な合意形成が望まれます。
互いに相手を非難しあうなかで、状況は次第に悪化していきます。

****気候変動による「水ストレス」で移民急増も、研究報告****
ドイツ・ボンで開催中の気候変動交渉で10日、気候変動により数千万人が移住を余儀なくされ、社会・政治・治安面にこれまで予期されなかった問題が生じる可能性があるとする報告書が発表された。(中略)
温暖化はヒマラヤ山脈の氷河の溶解を加速し、洪水が頻発することが予想される。また、ヒマラヤを水源とする主要な川の水量にも影響し、農業が甚大な被害を受ける可能性があるという。(中略)

報告書は、移住は、貧困国から裕福な国へというよりは、貧困国内部、つまり田舎から都市部への移動が多く行われており、都市部のインフラに益々負担がかかるようになると予想。各国政府に、気候変動による移住の危機に直面しそうな地域とその人口を特定するためのツールを開発するよう要請している。
また、将来的に世界各国が参加する条約のもとで集められる気候変動対策の資金は、貧しい気候移民に向けられるべきだと指摘している。【6月12日 AFP】
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冬の降雪で氷河が大きくなる欧州アルプスなどと違って、ヒマラヤは夏のモンスーン期に0度より少し高い気温の中で、雪が降ります。
そのため温暖化でわずかでも気温が上がれば、雪が雨に変わり、氷河を拡大するどころか、逆に解かしてしまいます。実際、ヒマラヤ氷河は急速にやせ細っていることが報告されています。
その影響は、最初には氷河湖決壊という形で現れます。

また、氷河が溶けると、はじめは河川の流量が増えて広範囲で洪水が起こります。その後、数十年で状況は変化し、今度は河川の水位が下がります。
ヒマラヤの氷河は、アジアの7つの大河(ガンジス川、インダス川、ブラフマプトラ川、サルウィン川、メコン川、長江、黄河)に注いでおり、インド亜大陸と中国に暮らす数百万人の水需要を満たしています。
氷河から流れ出す川の流量が減少すれば、水力発電の可能性が下がって工業に影響がでると考えられ、また、灌漑が滞って、穀物生産が低下する可能性もあります。
ヒマラヤ氷河の水源に依存する人口は13億人とも言われています。

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ポスト京都議定書に向けてCOP14開催 止まらぬ“地球の肺”アマゾンの破壊

2008-12-05 15:36:44 | 環境

(傷つき血を流す大アマゾン “flickr”より By bbcworldservice
http://www.flickr.com/photos/bbcworldservice/2848947364/)

【「今何もしなければ悪化する一方だ」】
地球温暖化対策の次期枠組み(ポスト京都議定書)について話し合う国連気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)が、ポーランド・ポズナニで12月1日から開かれています。会期は今月12日までで、最後の2日間に閣僚級会合が予定されています。

開会式で議長のノウィツキ・ポーランド環境相は「われわれはすべての国の望ましい未来のために、統一見解を見いだすことができるはずだ。この2週間(お互いに)歩み寄ろう」と協議の進展に期待しています。
また、来年のCOP15議長国デンマークのラスムセン首相も「金融危機はいずれ回復するが、温暖化は今何もしなければ悪化する一方だ」と述べています。【12月1日 毎日】

京都議定書は先進国に温室効果ガスの削減を義務付けており、2012年までの5年間平均で、日本は1990年比6%、欧州連合は8%の減などとなっています。
会議に先立ち、ドイツの環境省は、07年の温室効果ガスの排出量が90年比で22.4%減となり、京都議定書の削減目標の21%減を達成したことを明らかにしています。【11月30日 朝日】
また、欧州環境庁は10月16日、京都議定書を批准したEUの15か国が、共同で温室効果ガスの排出量削減目標を達成することができる見通しであると発表しています。

一方、日本は6%の減少ではなく、06年度では逆に6.2%増加と全く進展していません。
特に、2006 年度の家庭部門のCO2排出量は基準年と比べると30.0%も増加しています。
従って、政府や企業だけの問題ではなく、国民一人ひとりが地球温暖化防止アクションを実践することをせまられています。

各国の取組みにはこうした差がありますが、問題は京都議定書で削減義務を負っている国の排出量は世界の約3割程度に過ぎないことです。
次期枠組みでは、京都議定書を離脱した米国や、排出量が増大しているものの「途上国」に区分されるため削減義務を負っていない中国などの新興国をどのように巻き込んでいくかが課題となっています。

今回COP14ではこの点が討議されますが、現実問題としては肝心のアメリカが政権交代期にあたるため、国際交渉のヤマ場は来年1月20日のオバマ次期大統領の就任以降となると見られています。
EUは今回COP14での議論を踏まえ、来年夏に特別閣僚会合を開催して、来年末にコペンハーゲンで開かれる第15回締約国会議(COP15)での国際合意作りに向けて弾みを付けたい意向とのことです。【11月30日 毎日】

【傷つく“地球の肺”】
COP14で討議される主要テーマのひとつに森林保護の問題があります。
森林大国ブラジルとインドネシアは、途上国の森林保護の取り組みを世界が資金援助するとした「森林破壊と劣化防止(REDD)」を提唱しており、この仕組みの現実化が協議されるとみられています。

****ブラジル、アマゾンの森林伐採を今後10年で70%削減へ*****
ブラジル政府は1日、アマゾン地域での森林伐採を今後10年で70%削減する計画(朝日報道では72%)を明らかにした。地球上で最大の熱帯雨林面積をもつブラジルが、不法伐採者や農園主による森林被害に対し削減目標を掲げるのは、今回が初めて。
ダシルバ大統領とともに計画について明らかにした、ミンキ環境相によると、この森林伐採削減計画は、同日からポーランドのポズナニで開催される国連気候変動枠組条約第14回締約国会議で正式に発表されるという。【12月2日 AFP】
***************

これまで政府は削減数値の設定を避けてきたブラジルが政策を転換したもので、監視強化のため「森林警察」の創設を検討するとも報じられています。
結構なことですが、残念ながらアマゾンの森林破壊の実態はあまりよくないようです。

****アマゾン地域の森林伐採率、約4%上昇******
ブラジル国立宇宙研究所(INPE)が11月28日発表した統計によると、「地球の肺」として知られるアマゾン地域のジャングルが、2007年8月から7月の12か月で1万2000平方キロメートル近くも失われていることが明らかになった。
INPEによると、農地開拓の侵食による森林伐採率は、前年と比べて3.8%上昇した。
被害が最も大きいのは北部パラ州と大豆の生産地である中部マトグロソ州だった。

ブラジル当局は過去3年、アマゾンの森林伐採を大きく減少させることに成功していた。
また、ブラジル政府はこの熱帯雨林保護のための戦いを、地球温暖化対策への貢献と位置付け、資金援助という形で海外から評価を受けるべきだと主張している。援助金は、同地域に住む貧困層が森林を伐採しないための支援に使われる。
しかし、今回の統計によると、前年と比べてスロベニアやイスラエルに匹敵する面積の森林が失われたことになる。ブラジル政府は、森林破壊は今後も広がる可能性が高いと警告しており、罰金制度を含めた新たな対策を導入している。【11月29日 AFP】
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アマゾン熱帯雨林は、世界の酸素の3分の1を供すると言われ、「地球の肺」とも呼ばれています。
しかし、違法な開墾や伐採が後を絶たず、このままでは2030年までに森林の55%が消滅するとの指摘もあります。
“世界の酸素”云々の数字の真偽はともかく、こうした記事を読んでいると、酸欠状態の金魚鉢の金魚みたいな気がして息苦しくなってきます。
この時期にこうした発表をブラジル政府がするのは、“もっと援助金を出せ、出さないと・・・・”という脅しでもあるのでしょうが。

【資金的裏づけ】
何にせよ、対策には資金が必要となります。
しかし、世界的金融危機で大不況に脅えるような状態では、温暖化対策といった長期目標に対する資金供給・変革努力は鈍るのではないかと危惧されています。

****温室ガス25%削減 実現に年3500億ドル必要の試算*****
温室効果ガスを00年比で25%削減するためには、30年には年間3400億~3570億ドルの追加投資が必要になるという試算を、国連気候変動枠組み条約事務局がまとめた。開催中の条約締約国会議(COP14)では、金融危機で先進国からの資金供給が細るとの懸念が広がっており、景気に左右されない資金源を確保する仕組みづくりに関する議論の土台となる。
排出量削減のためには、低燃費車やバイオ燃料の普及、二酸化炭素(CO2)の地下貯留などの導入を進めるが、特に発電所の効率化が重要だと指摘。こうした新技術を使った設備に更新する需要が、20年ごろに途上国で急速に高まると予測している。
これとは別に、途上国で起きる海面上昇や干ばつなど、温暖化による被害を和らげる対策費が年間100億~1千億ドルにのぼるという。

この巨額な資金を得るためには、政府の途上国援助や民間投資だけでは限界があるとして、枠組み条約の中で運用する基金の拡充などが必要だと指摘している。
条約事務局のブア事務局長は「各国の気候変動担当者が毎年度、財務担当者に予算を頼みに行かなくて済むように、条約の枠組みの中で資金調達できる仕組みづくりが重要だ」と理解を求めている。 【12月4日 朝日】
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****11月の中国発電量、祝日期以外で10年ぶり大幅減****
主要送電網に接続する中国発電所の11月発電量は、前年比7%減の2530億キロワット時となった。業界筋が4日、ロイターに対し明らかにした。祝日期以外の月では、少なくとも10年ぶりの落ち込み幅となった。
また主要送電網に接続する石炭火力発電所による発電量は、前年比14%減の2010億キロワット時だった。【12月4日 トムソンロイター】
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世界的不況による経済活動の収縮は温室効果ガス排出のペースも鈍らす影響もありそうですが、話の本筋としては、やはり、新技術導入の余力を奪って進展を妨げるということでしょう。

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砂漠化防止対策  “数百年後”のセネガルの「緑の壁」完成を待つだけではなく・・・

2008-11-04 19:30:04 | 環境

(ニジェールでの砂漠化防止事業 8万本の植林を行う計画だそうですが、セネガルで進められている「緑の壁」プロジェクトとの関連はわかりません。
“flickr”より By vodkamax
http://www.flickr.com/photos/ooyooy/360598025/)

【壮大にして単純、かつ野心的】
アフリカの砂漠化についての記事を見ましたが、“今後とも頑張ってほしい”と言うべきか、“それでどうなるの?”と言うべきか、“国際支援はないの?”と言うべきか・・・なんとも言いようのない感想です。

****アフリカの砂漠化を防ぐ「緑の壁」プロジェクト、効果が表れるのは数百年後?*****
アフリカの砂漠化を食い止めるべく、西はセネガルから東はジブチまで、7000キロに渡って樹を植えようという「緑の壁」プロジェクト。砂漠化で脅かされる数千万人の命を救おうというこの壮大にして単純、かつ野心的なプロジェクトが、セネガルでも2005年から始動している。

セネガルは、長さにして543キロ、面積にして76万ヘクタールを担当するが、目標にはほど遠いのが現状だ。雨期の終わりを迎え、薄緑色の茂みで覆われた北部のサヘル地域。AFP記者を案内したダカール出身のドライバーは、「これが、アブドゥラエ・ワッド大統領が世界中に宣伝していた、あの緑の壁なんですか?」と失望を隠さない。 実際、この国における「緑の壁」は、緑色の茂みがところどころに生えているといった程度に過ぎない。ここWidoy Thiengolyに2005年に植えられたゴムの木とナツメヤシは、まだ膝の高さにもならない。

■まだまだ小さな緑の壁
プロジェクトに携わるアルマミー・ディアラさんは、「年に3か月程度しか雨が降らない地域では、打てば響くといった結果は望めない。ゴムの木は最初に根をしっかり張ってから、丈を非常にゆっくりと伸ばし始めるという性質がある」と説明する。
ゴムの木には、水をほとんど必要とせず、干ばつに強いという利点がある。なかでも、しっかりと張った根が土層を固定して水分を浸透しやすくし、ほかの植物との共生を可能にする「微気候」を生み出すという点が、砂漠化の抑制に最適だという。また、こうした植林プロジェクトは村の若者の雇用を創出している。
関係当局によると、2005年には300ヘクタール、06年には400ヘクタール、07年には675ヘクタールが植林された。今年の目標は5000ヘクタールだったが、既に5230ヘクタールを植林した。
当面は資金面での課題が残るが、今後少なくとも25年間、毎年2万5000ヘクタールを植林していく必要があるという。
ゴムの木が成長すると、新たな収入源が生まれるとの期待もあるが、関係当局者は「辛抱が肝心だ」と言う。「543キロにもおよぶ植林は、数世代後にようやく完了するという息の長い仕事なのです」【11月3日 AFP】
**********************

まさに“壮大にして単純、かつ野心的”であり、“緑の長城”といったところですが、“辛抱が肝心だ”と言っても、その取組みはあまりにもゆったりとしています。
“今後少なくとも25年間、毎年2万5000ヘクタールを植林していく必要がある”とありますが、ここまでの実績から見ると殆ど不可能のようにも見えます。
実績のペースで進むと、計算上は“完成は何百年後”ともなります。
その頃には、最初に植えた木々はすでに枯れているかも。
地球の気候自体が大幅に変動しているでしょう。

“「緑の壁」プロジェクト”についても少し情報を集めようとしたのですが、ざっと検索しても殆ど情報が得られませんでした。
そのことが、このプロジェクトの現状を表しているのでしょう。
セネガルのワッド大統領は熱心なようですが、隣国の取組みは?
国際支援体制は?

【国連砂漠化対処条約】
砂漠化防止に関しては、“国連砂漠化対処条約”というものがあります。
深刻な干ばつや砂漠化に直面する国や地域で砂漠化対策や国際協力を進め、持続可能な開発の実現を目指すための国際条約で、94年6月に採択され、96年12月に発効。
日本は98年に批准しており、締約国は193カ国にのぼっています。

******砂漠化 Desertification**********
砂漠化が急激に進んでいるのは主にアフリカ、アジア、オーストラリア、南アメリカなどで、国連環境計画(UNEP)の2006年の発表によると、砂漠化の影響を受けているのは、600万~1200万km2である。これは、世界の全陸地面積に対して7%前後にあたり、カナダや中国の面積に匹敵する。また、農地や放牧用地などでは、毎年35万km2以上の面積が生産性を失っているという。砂漠化によって耕作面積が減少すると、食料不足が起き、民族間の争いが生じる。また、砂漠に生きていた動植物が生息できなくなり、砂漠の生態系にも影響が出る。
(中略)
砂漠化対処条約では、砂漠化の影響を受ける国が負う義務として、砂漠化への対処を優先して十分な資源を配分することや、住民の意識を向上などが示された。
また、先進国が負う義務として、途上国による砂漠化対処の努力を支援することや、資金などの支援を提供することが示されている。この条約の発効によって、先進国、発展途上国の別なく砂漠化防止への取り組みが始まった。
日本もこの条約に批准しており、米国に次いで第2位の義務的拠出金の拠出国として、毎年140万ドル以上を条約事務局に拠出している。
また、政府開発援助(ODA)の各種スキーム(開発調査、技術協力プロジェクト、一般無償資金協力、草の根無償資金協力、及び有償資金協力等)を通じた支援を行っている。(後略)【環境goo】
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今年5月に横浜市で開かれたアフリカ開発会議(TICAD4)出席のため来日した国連砂漠化対処条約のルック・ニャカジャ事務局長は「土地の劣化を食い止めなければ、食糧危機など諸問題は解決しない」「土地の劣化は食糧やエネルギーの安全保障に深くかかわる。世界中で8億人が食糧危機に直面し、1日に2万5000人以上が飢餓で亡くなっている。FAO(国連食糧農業機関)によると、2030年までに世界で食糧生産を50%引き上げなければならない。しかし、気候変動や土地の劣化の影響で耕地が減っており、早急な対策が必要だ。」と語っています。
【6月10日 毎日】

砂漠化はまた、上記のように、食糧不足から民族間の争いを生みます。
砂漠化による貧困から人々は“薪”などのような再生産不可能な資源利用に依存し、結果的に砂漠化を更に深刻化させます。

【資金拠出国への批判】
ところで、日本はアメリカに次ぐ資金拠出国ですが、出す側と利用する側で意見の対立があるのは砂漠化防止に限った話でもありません。
昨年9月の会議は揉めたようで、2008,2009年の計画・予算については、最終的に期間中に合意に達せず先送りされました。

****砂漠化対処の国連会議不調に終わる、NGO報告****
マドリッドで3日から開催されていた砂漠化対策に関する国連の会議は15日、今後10年間にわたるアクションプランの予算について合意に至らなかった。会議にオブザーバーとして参加していたNGO、「Ecologists in Action」が伝えた。
同NGOは、会議が失敗に終わった原因は日本や米国にあるとして両国を非難。もっともこの報告について、主催者側の確認は取れていない。【07年9月16日  AFP】
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まあ、日本としても“金のなる木”も“打ち出の小槌”もある訳ではないですから、“何故もっと出さない”と言われても困るところではあります。
もっとも、2兆円も買収資金としてばら撒くなら、もっとメリハリの効いた使用法も・・・と思わないでもありません。
もちろん、この2兆円で日本経済が立ち直り、今後も継続して、今まで以上に国際支援に邁進できる・・・と言うことであれば、それはそれでいいのかも。

【やる気があれば・・・】
政府間のODAだけでなく、環境・エコが人々に意識されるようになると、企業の社会責任、あるいは企業イメージの問題として、環境対策に取り組む企業も増えますので、このような民間企業の取組みをうまくリード・支援する施策も有効でしょう。

砂漠化防止プロジェクトで検索すると、なぜかトヨタの中国での活動「中国河北省豊寧満族自治県での砂漠化防止緑化プロジェクト、日中「21世紀中国首都圏環境緑化モデル拠点」共同事業の第3期活動の調印式が、5月25日、北京にて行われた。」という情報がたくさんヒットします。
さすが“世界のトヨタ”です。

最近はやりの、商品の購入代金の一部が環境対策に寄付されるといった、取組みもいいのでは。
政府に金がなくても、やる気次第、情報提供のあり方次第では人々の関心を集めていくことも可能に思われます。
吸水ポリマーなどの技術面でのノウハウ提供もあるでしょう。
途はいろいろあるのかも。本気になれば。




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今年もCOP14の季節になりました 求められる国際協調

2008-10-15 16:15:29 | 環境

(COP14が12月に開催されるポーランドの古都ポズナニの街角 “flickr”より By soylentgreen23
http://www.flickr.com/photos/soylentgreen23/2895970804/)

【温暖化対策と金融危機】
最近、12月の国連気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)に関する記事を目にするようになりました。
COP13での議論が注目されていた時期から1年近くになる訳で、月日のたつのは早いものだと感じます。
COP13から環境サミットと位置づけられた洞爺湖サミットにかけては、環境問題や温暖化の議論を見聞きすることも多かったのですが、サミット直前に問題化した食糧・燃料価格高騰、更に最近では金融不安の問題によって、温暖化の議論はひところほどではないようにも感じられます。
それでも、メディアで報じられる新たに発売される商品のコンセプトやいろんな社会活動などを見ていると、“エコ”ということが時代のキーワードであることには違いはないようです。

*****「温暖化対策は、金融危機に役立つ」COP14準備会合*****
12月にポーランド・ポズナニで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP14)に向けた閣僚級準備会合が13日、ワルシャワで始まった。世界的な金融危機に関連し、各国はそれぞれの温暖化対策を緩めないことを確認。「温暖化対策を進めることは金融危機への取り組みにも役立つ」とする緊急声明の採択に向けて調整に入った。

約40カ国が参加する準備会合は14日までの日程で開かれ、COP14で話し合う論点の整理が主な議題。ただ、金融危機で、温暖化対策に必要な途上国などへの資金供給が細る懸念が強まったことから、温暖化問題の重要性を訴える声明が発案された。
声明案では「金融危機は、差し迫った気候変動危機に対する努力を弱める理由にはならない」として、温暖化対策が遅れれば、より大きな損失を招くと指摘。むしろ低炭素型の持続可能な経済に転換することが必要で、このことは金融危機への対処と方向性は同じだとしている。
また、今回の金融危機で「世界的な危機に対処するために国際社会は協調できることを示した」として、温暖化問題でも同じような国際連携を求める。

準備会合の初日は、京都議定書に続く13年以降の温室効果ガス排出削減の枠組みについて意見を交わした。焦点の一つとなる2050年までの長期的な削減目標については、議長国のポーランドが、COP14の際に非公式な閣僚級円卓会合を設けて話し合うことを提案した。
会合では、先進国と途上国との間の溝が改めて浮かび上がっている。日本政府代表団によると、先進国からは、京都議定書で削減義務が課されていない途上国にも応分の責任を求める意見が目立ったのに対し、途上国からは温暖化対策に必要な資金を先進国が提供する仕組みづくりの提案が相次いだという。 【10月14日 朝日】
*********************

“温暖化対策は、金融危機に役立つ”かどうかはともかく、食糧・燃料価格高騰、金融危機という一連の危機はこれまでの自由放任的・市場経済主義的なグローバリズムを基本にした世界のほころびであり、今後に向けては、これまでとは違う新たな世界観の提示が求められていると思われます。
その新しい世界観においては、環境問題・温暖化という概念が機軸のひとつになりうるものであり、そういう意味で、環境を重視した世界観の確立は現在の危機的な状況を超えて新たなステージに進む標ともなろうかと思われます。

“今回の金融危機で「世界的な危機に対処するために国際社会は協調できることを示した」”というのはいささか皮肉っぽいところもありますが、また、今回の各国の対策で危機が終息した訳でもありませんが、確かにここ数日の各国政府の協調的対応は「なんだ・・・やればできるじゃん・・・」といった感もありました。

【国の復権】
また、各国政府はせっぱつまった状況に追い込まれていた訳ではありますが、はたから眺めていると、どこか“生き生きとしている”ように見えなくもありませんでした。
市場を席巻してきたマネーに翻弄されてきた“国家”が、久しぶりのその役割を期待されて表舞台に登場した・・・そんな感じもありました。
あるいはヨーロッパにおいては、EUという枠組みに対し、“やっぱり最後は国家なんだよ!”と言う“国の復権”的な思惑もありました。

各国が同じ方向に向かって真剣な対応をとれば、そこそこのことは出来るようです。
問題は、方向と真剣さです。
“先進国と途上国との間の溝”というのは、聞き飽きたフレーズです。

まだその渦中にある金融危機ですが、世界がひとつの舟(ドロ舟だかタイタニック号だかはともかく)に乗っており、自分の国だけは安泰ということはもはやありえないということを示唆しています。
また、中国がアメリカの国債を引き受けるかたちで“最後の貸し手”としての役割を果たすことになっているように、新興国を除外した仕組みもありえないことがわかります。

先月26日には、中国が米国を抜いて世界最大のCO2排出国になったことが明らかにされました。

****CO2排出量、中国が米国抜いて第1位*****
地球温暖化対策に関する国際研究計画「グローバル・カーボン・プロジェクトが26日発表した二酸化炭素(CO2)排出に関する報告書で、中国が米国を抜いて世界最大のCO2排出国になったことが明らかになり、また世界の温室効果ガスのレベルが過去最高となっていると警鐘が鳴らされた。

報告書「カーボン・バジェット2007」によると、2005年までは、世界の人為的なCO2の大半は先進国から排出されていたが、現在は総排出量の半分以上となる53%が開発途上国から排出されている。
特に中国とインドで排出量が大きく増加しており、中国は2006年に米国を抜いて世界第1位となり、インドも間もなくロシアを抜き第3位となる。一方、先進国の増加量は緩やかになっている。

2007年のCO2排出量は炭素約100億トン相当。うち85億トンを化石燃料が、残りは土地利用法の変化、主に森林破壊によるという。
また、以下の点についても指摘されている。
-- CO2排出量は2000年以降、際立って増加している。2000-07年の平均年間上昇率は2.0ppm。これに対し、70年代は1.3ppm、80年代は1.6ppm、90年代は1.5ppmだった。
-- この10年の化石燃料からのCO2排出量は90年代の4倍に上る見通し。
-- 熱帯雨林の森林破壊による07年のCO2排出量は15億トン。【9月27日 AFP】
************************

環境問題は、その原因においても、その影響においても、新興国や途上国自身の問題であり、各国が危機意識を共有してのぞむべきところなのですが・・・。



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太陽がいっぱい  アフリカでの太陽光利用

2008-10-09 17:03:08 | 環境

(スペイン・アンダルシア地方のセビリア郊外にあるタワー式太陽熱発電所「PS10」。地上に配置された624枚の鏡が反射光をタワー上部に集め、その熱で蒸気をつくり発電する仕組みです。“flickr”より By afloresm
http://www.flickr.com/photos/afloresm/2115197141/in/photostream/

【太陽熱発電と太陽光発電】
太陽光の活用の場合、化石燃料のように資源枯渇の問題もなく、今日的課題であるCO2排出の面でも優れていることは素人でも容易に想像できます。
一方で、導入コストや効率の問題がありそうなことも想像できます。
立地条件は?

太陽光発電と太陽熱発電の違いもよく知らなかったのですが、太陽光発電の場合は太陽電池を利用して直接電力に変える、いわゆるソーラー発電であり、一方、太陽熱発電というのは太陽の光を熱エネルギーとして活用する、つまり光を集めて熱を高め、その熱で水蒸気を発生させ発電タービンを回す・・・簡単に言うとそういった仕組みのようです。

太陽光発電の太陽電池は小さなものなら腕時計から、住宅・建物の屋根や壁など、大きさ・場所の制約はあまりないようですが、太陽熱発電の場合はかなり広い場所と大掛かりな設備が必要になります。
その立地も、乾燥・砂漠地帯など、日照時間が長い場所が適地となります。
その点で、日本の場合、太陽熱発電はあまり可能性は高くないようです。
ただ、太陽熱発電の場合、熱としてエネルギーを蓄えることができるので、夜間を含めた24時間発電が可能になります。

太陽熱発電で、多くの鏡で一点に光を集中させるのがタワー式、これに対し、分散配置された鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内を流れる液体(オイルなど)を加熱し、その熱で発電するのがトラフだそうです。

【欧州のフライパン、アンダルシア】
写真の施設があるスペイン南部・アンダルシア地方は、「欧州のフライパン」と称されるほど日差しが強く、太陽熱発電には都合がいい土地柄です。
この施設では、タワー式だけでなく、トラフ式などいろんなタイプも建設し、12年には8平方キロの敷地に計30万キロワットの総合発電所をつくる計画です。
これは、黒部第四発電所級の大型水力発電所の出力に相当し、太陽電池のパネルを10万軒の住宅につけた量にあたるそうです。

****太陽光、次代照らす〈環境元年 太陽ウオーズ1〉****
太陽熱発電は太陽利用の幅を広げる先端技術だ。スペインは、光を電気に換える太陽電池による発電でも急伸し、世界を驚かせている。
太陽電池の累積導入量は、05年には6万キロワットだったのが07年には68万キロワットと増え、今年末には180万キロワット、全発電量の0.5%ほどになる見通し。05年にドイツに抜かれて導入量世界2位となった日本では今年、20万キロワットほどの増加にとどまるとみられ、スペインでの増え方は日本の約5倍に達する。
もともとスペインは風力発電が約10%を占める風力大国だった。
欧州では、風力が拡大して一般的な電源の一つとなる一方、立地の制約も出てきたため、支援の力点は太陽光に移りつつある。日差しに恵まれたスペインは、その流れの最前線にある。

発電での二酸化炭素(CO2)排出量は、太陽電池の場合、製造過程で出る分を含めても石炭火力の18分の1ほどでしかない。地球温暖化対策として有効なのに加え、原油の高騰もあり、最近の世界の太陽電池市場は年40%の伸びを示している。07年の生産量は370万キロワットで、03年の5倍に膨らんだ。
「石油が枯渇する時代に、欧州の人は太陽光発電を『現代の油田』と考えている」。日本のトップメーカーであるシャープの浜野稔重(とししげ)副社長は、そう話す。
 
欧州には、日差しの強い北アフリカ諸国で発電して南欧に電気を送る「スーパー送電網」計画もある。次に狙うのは「サハラ砂漠の太陽」だ。
石油にどっぷりつかってきた米国でさえ、エネルギー省が太陽電池の技術開発支援などに乗り出した。エネルギー資源の中東依存からの脱却という意味もある。州レベルでも「100万戸ソーラー・ルーフ計画」(カリフォルニア州)といった強力な支援策を設ける動きが続く。
欧州の業界団体などの推計では、世界の発電量のうち太陽光は30年には最大14%を占め、関連産業の市場規模は、デジタルカメラや携帯電話などデジタル家電全体に匹敵する約70兆円にのぼる。 【10月6日】
**************

記事にも「サハラ砂漠の太陽」とありますが、サハラ砂漠地帯が太陽光の活用にうってつけなのは、これまた素人にも想像できます。
しかし、電力が不足しているアフリカでは、太陽光は殆ど活用されていません。

【太陽エネルギーが手つかずのアフリカ】
******太陽光にあふれたアフリカ、ソーラー発電にはほど遠く****
家庭のソーラーパネルから大規模な発電機に至るまで、太陽光発電は世界中で爆発的な成長を遂げている。だが太陽光の宝庫であるはずのアフリカは、こうしたブームから取り残されている。
1平方メートルあたり平均して1時間5-7キロワットの太陽光を受けているアフリカ大陸は、オーストラリア北部とアラビア半島に並ぶ世界最大の太陽エネルギー生産地となる可能性を秘めている。しかしアフリカ大陸における生産量は微々たるもので、しかも太陽光発電が行われているのは南アフリカ1国のみというのが現状だ。

国連環境計画の専門家は、「アフリカでは従来の送電システムが不安定なこともあり、太陽光発電の潜在的な利点に注目が集まりつつある」と指摘する。
実際、エネルギーの整備は急を要する問題だ。現在、電気を利用できる人は、サハラ以南では4人に1人、サハラ以南の農村部に限ると10人に1人という割合だ。

アフリカで太陽エネルギーが手つかずとなっている原因は、「コスト」だ。太陽電池を使用するソーラーパネルも太陽熱発電システムも、裕福な国々の産物であり、関税優遇や値下げをもってしても最貧国には手が届かない。
また、アフリカでは、太陽光発電には「小規模、限定的」というイメージがあるほか、「太陽光発電を導入すると村に電気を引いてもらえなくなるのでは」との懸念から、導入に反対する村落もある。
だが、電話線を引くよりも費用効率が高い「携帯電話」が、爆発的に普及したという先例がある。

一部の国は、村落レベルでの太陽エネルギーの活用を推進するための政策を打ち出している。
たとえば西アフリカのブルキナファソは、ソーラーパネルを購入するためのマイクロクレジットを政府が提供している。返済は2-3年以内に行えばいいというシステムだ。ガーナも、太陽エネルギーに関する奨励金制度の導入を検討している。
また、大陸レベルでは、地中海周辺諸国とEUが参加する地中海連合が、サハラ砂漠に巨大太陽光発電機を設置する計画を発表している。2050年までに100ギガワットを生産する予定で、北アフリカ一帯と欧州の一部に供給されるという。
一方、サハラ以南の地域は、インフラの不備や一部の国々における慢性的な政情不安により、こうした投資を呼び込むことは難しいだろうと、専門家は口をそろえる。【9月29日 AFP】
******************

【こんなときこそビジョンを】
記事にある携帯電話の例は非常に参考になります。
個人的に観光旅行で訪れる多くの国々で携帯電話は驚くほどの普及を見せています。
設備投資が必要な固定電話を飛び越えて、一気に携帯電話の時代へ突入しています。

電気が普及していない多くの地域で、分散的・小規模な太陽電池の活用はメリットも大きく、実現可能性において現実的でもあります。
問題はメンテナンスの仕組みをどのように構築するか・・・ということでしょうか。

サハラから南欧への「スーパー送電網」もいいですが、電力消費国のヨーロッパだけでなく、現地住民にとってどのようなメリットがあり、どのような問題が生じるのかという点をきちんと整理して進めてもらいたいところです。

日本も金融不安の波に呑み込まれ、景気の先行きに暗雲が垂れ込めています。
こうした従来型のシステムが揺らいでいるときこそ、将来に向けた明確なビジョンが政治に求められます。
太陽光発電などの分野は、技術的にも実績があり、今後日本が力を入れていくことが期待されるところでしょう。
日本国内における自然エネルギー活用という観点だけでなく、上記のような電力不足地域への利用可能な安価で堅固な技術の提供が出来れば、大きな国際貢献になります。



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温暖化  凍土からのCO2放出、海面上昇、氷河縮小など・・・いつもの話題

2008-08-27 16:53:35 | 環境

(グリーンランドのヤコブスハン氷河付近の氷山(多分) “flickr”より By Ludovic Hirlimann
http://www.flickr.com/photos/lhirlimann/2787609882/)

世の中、紛争対立・事件・政局など慌しい動きもありますが、今日は温暖化がらみで数十年後、百年後の“気の長い”話。

****北極圏:凍土に大量炭素 溶解で温暖化懸念…米大の分析****
 北米大陸の北極圏の凍土などの土壌に、全地球の大気中の6分の1に匹敵する膨大な量の炭素(約980億トン)が存在しているとの分析を米アラスカ大などがまとめた。地球温暖化により凍土が溶解すれば、炭素が二酸化炭素(CO2)やメタンになって放出される恐れがあり、温暖化を加速させることが懸念される。24日付の英科学誌ネイチャージオサイエンス電子版に発表した。
・・・・今回判明した存在量は、従来の見積もりより6割以上も多い。
 国連の「気候変動に関する政府間パネル」は、北極圏では今後100年間で気温が6度上昇すると予測している。研究チームは「北極圏は気候変動に深刻な影響を与える」と監視を呼びかけている。【8月25日 毎日】
**************

CO2はともかく、6度気温が上昇したら全く別世界でしょうね。
100年間なんて地球の歴史からすれば、ほんの瞬間的な時間にすぎませんが、そんなに大きな変動がおこるのでしょうか?

温暖化に関する海面上昇については、8月8日ブログ「バングラデシュ 海面上昇による陸地減少はないかもしれないけれど・・・」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080808)で、バングラデシュの陸地が水没するのか、しないのか?という問題をとりあげましたが、今日は同じような話を西アフリカについて目にしました。

****西アフリカの海岸も水没の危機、ドイツ専門家が指摘******
海洋地質学者でドイツの環境保護団体「Heinrich Boll Stiftung」に所属するステファン・クラマー(Stefan Cramer)氏によると、海面が年間2センチずつ上昇した場合、セネガルからカメルーンにかけての総延長4000キロの海岸線が浸食され、特に低地や人口が密集するデルタ地帯は甚大な被害を受けるという。

 クラマー氏はAFPに対し、ギニアの海岸が今世紀末までに消滅する可能性を語った。ガンビア、ナイジェリア、ブルキナファソ、ガーナも大きな被害を受けることが予想され、ガンビアの首都バンジュール(Banjul)と、1500万人が暮らすナイジェリアの経済都市ラゴス(Lagos)は水没する可能性があるという。
ラゴスは、一部が既に水没しており、頻繁に洪水に見舞われている。油田地帯のニジェールデルタも水没の危機に瀕しているという。
近年強大化している熱帯性低気圧の襲来も、海面上昇による被害を増幅している。農地への海水の侵入も深刻な問題だ。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は前年、今世紀末の海面上昇幅を当初18-59センチと見積もったが、海面のさらなる上昇を予想させる科学的根拠が次々に提示されたことから、最終的には上限の設定を控えた。 IPCCの見積もりには、温暖化によるグリーンランドの氷床の融解などが考慮されていない。グリーンランドの氷の面積は、ナイジェリアの面積の3倍にものぼる。最近の研究は、グリーンランドの氷床が予想をはるかに超えるスピードで溶ける可能性を示唆している。【8月27日 AFP】
********************

クラマー氏予測の“年間2センチ”ペースは50年で1mという“ハイペース”ですから、IPCCの当初見積もり“今世紀末に18-59センチ”とは格段の違いがあります。
グリーンランドの状況については、こんな記事もありました。

****グリーンランド最大の氷河で大規模な崩落*****
米オハイオ州立大学バード極地研究センターの氷河学チームは21日、地球温暖化の影響で、7月にグリーンランド最大の2つの氷河(ペテアマン氷河、ヤコブスハン氷河)からさらに氷が消失したと発表した。

さらに懸念されるのは、ペテアマン氷河の縁からかなり内陸に亀裂が観測されたことだ。間もなく大規模な崩落が起こり、氷河の3分の1に当たる160平方キロの氷が失われる可能性もあるという。
また、ヤコブスハン氷河でも、過去150年の観測史上最大規模で、縁が内陸に後退しているという。研究チームによると、少なくとも過去4000-6000年で、これほど後退したことはなかったはずだという。
【8月22日 AFP】
******************

“氷河消滅”については、以前もヒマラヤ氷河の縮小、それにともなうアジアの河川の水量減少の懸念をとりあげたことがありますが、同種の記事はよく目にします。
先日も、スウェーデンのストックホルムで開かれている「世界水週間」の会議で、気候変動によってヒマラヤ山脈の重要な水源が危機にあり、13億人の生活に影響が出る恐れがあると専門家らが発表した旨の記事がありました。
国際総合山岳開発センター研究者の話では、「氷河の後退は年間最大70メートルと非常に大きい」とか。
また、中国の山地生態系統研究センター長は、チベット高原の気温は10年で0.3度上昇していると指摘しています。
【8月22日 AFP】

温暖化、海面上昇など長い時間のスパンで見ないといけない問題は、なかなか本当のところはどうなのか?ということがわかりづらい問題です。
そんななかで、氷河の後退などは比較的客観的に把握しやすい現象のように思えます。

50年後は多分もう私は生きていないし、今世紀末はなんて関係ないと言えば関係ない・・・“本当だとしたら”非常に深刻な問題である温暖化も、そんな意味では個人的には“お気楽な”問題でもあります。
興味本位、あるいは怖いもの見たさで、今世紀末の世の中を見てみたい・・・・せいぜいそんなところです。
こんな風に考える人間が多いので事態は進展しないのでしょう。


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アマゾン  「地球の肺」を守る取組み

2008-08-03 12:43:30 | 環境

(アマゾンの熱帯雨林と開発地 “flickr”より By leoffreitas
http://www.flickr.com/photos/leoffreitas/447619461/)

【地球の肺】
自分自身のことでも、社会の出来事でも、まともに考えると大変な話だけども、とりあえず今はなんとかなっている、解決の方法がすぐには見つからない、考えると鬱陶しくなる・・・そんな事情であまり考えない、見て見ぬふりをする、そんな問題がたくさんあります。

ブラジル・アマゾンの熱帯雨林破壊の問題もそのひとつでしょう。
アマゾンの熱帯雨林は「地球の肺」ともよく言われます。
地球上の酸素の3分の1を供給しており、また、世界の二酸化炭素の4分の1を酸素に変えているそうですから、「地球の肺」という表現は例えでも誇張でもなんでもなく、文字通りの意味として受け取るべきでしょう。

そのアマゾンで森林破壊が進行していることも多くの者・機関が以前から指摘・警告しているところです。
昨年12月インドネシアのバリ島で開催された国連気候変動枠組み条約の第13回締約国会議(COP13)でも、国際自然保護NGO、世界自然保護基金(WWF)が、森林破壊と気候変動によって2030年までに、アマゾンの熱帯雨林の最大60%が消滅または破壊され、世界各地に連鎖的に影響を及ぼすと警告する報告書を発表しています。
(すでに原生林の約20%は違法伐採や開発などで失われたとも言われています。)

温暖化による気温上昇はアマゾンの干ばつを招く危険があるとされています。そうなると熱帯雨林が減少し、それがCO2吸収減少となって更に温暖化を加速させるという悪循環に陥ります。
この森林の減少を加速させているのが人為的な森林破壊です。
アマゾンの森林減少の主な原因として、森林を大規模なウシの放牧地に転換するための山焼きと、大豆栽培のための農地拡大をWWFは指摘しています。
ウシの放牧にしても、大豆生産にしても、私達自身の生活と無縁ではありません。

【私達の暮らしとアマゾン破壊】
*****
たとえば、牛肉。熱帯林の消失の8割が牧場の造成によるものといわれ、ここで造られた肉牛はハンバーガーやペットフードとして先進国へ輸出されてきました。欧米でBSE問題が発生して以降は、感染の危険のないブラジル産牛肉の需要が一層高まり、アマゾンでも肉牛を飼育する牧場の造成がさらに進んでいます。これらの多くも先進国へと輸出されます。

たとえば、大豆。ブラジルは米国に次ぐ世界第2位の大豆供給国です。みそ、醤油、納豆、豆腐など、大豆製品を口にしない日はないほど、日本人の暮らしに欠かせない大豆ですが、自給率はわずか4%。その多くを輸入に頼り、75%がアメリカから、13.5%がブラジルからやってきます。ブラジル産大豆はアメリカや中国にも輸出され、加工食品となって日本にも輸入されていると考えると、その割合は数字に表れているより高いでしょう。その畑を造るためにもアマゾンの森が切り開かれています。【07年6月19日 All About】
******

更に、最近懸念されているのが、ブラジルで加速しているサトウキビからのバイオエタノール生産の影響によるサトウウキビ栽培拡大目的の森林開発です。
ブラジルは世界一のバイオエタノール輸出国であり、先進国の“環境にやさしい生活”を実現するために、アマゾンが切り開かれていくという不安もあります。
もっとも、ブラジル政府は“サトウキビ栽培用地はきちんとコントロールされており、森林破壊にはつながらない”と主張していますが・・・。

【ブラジル政府:“自らの手で”】
こうした事態から、アマゾンの熱帯雨林保護が指摘されているのですが、ブラジル政府は“アマゾンはブラジルの資源であり、ブラジルの責任で処理する”という立場で、国際的な枠組みを課されることには強く抵抗しています。
まあ、ブラジルの立場に立てば当然とも言えます。
牛肉にしても、大豆にしても、エタノールにしても、自然保護を声高に叫ぶ国々は自分達はそのメリットを享受しておきながら、そのつけだけ生産国ブラジルに押し付けてくる、開発規制をかけることで現地住民の生活に負担が課される・・・ということであれば反発も当然です。

ブラジル政府もアマゾンの開発規制に取り組んでいることは間違いありません。

******ブラジル、アマゾン保護基金を設立*****
【8月2日 AFP】ブラジル政府は1日、アマゾンの森林破壊防止のための国際的な基金「アマゾンファンド」を設立した。
 今後13年間で最大210億ドル(約2兆2000億円)の資金を集める計画。ブラジル国立経済社会開発銀行が集まった資金の管理とこの資金によるプロジェクトの監視を行う。
 初年度の資金受け入れの上限は10億ドル(約1100億円)。カルロス・ミンキ環境相は、ノルウェーが最初の出資者として9月に1億ドル(約110億円)を拠出することを明らかにした。ノルウェー以外にも基金に関心を示している国や企業があるという。
 BNDESによれば出資は「自発的に行われ」、出資者は資金の使途について発言権はなく、また出資したことによる税の控除やカーボンクレジットなどの便益もないという。
 一部の環境保護団体は、ブラジルのアマゾン保護策は不十分で、外国の関与も検討すべきだと主張してきたが、この基金の設立は、アマゾンの保護はあくまで自らの手で行うというブラジル政府の姿勢を示すものとみられる。
***************

今年6月には、ブラジル政府はアマゾン流域での違法なウシの飼育を取り締まる方針を明らかにしました。
アマゾン流域では、人口の3倍に相当する推定7300万頭ものウシが飼育されており、総面積の約8%に当たる約410万平方キロが放牧地として開墾されています。
この多くが、熱帯雨林の破壊につながる違法な開墾とされていることもあって、ブラジル政府は発見次第、ウシを没収する強硬手段を取ると報じられています。【6月6日 産経】

なお、温暖化をめぐっては家畜の“げっぷ”に含まれるメタンガスが温室効果をもたらすとして問題視されており、削減に向けた研究も進んでいるとか。本当でしょうか?

昨年6月には、ブラジル・アマゾン州が、アマゾンの森林破壊や環境劣化を抑制する手法として、温室効果ガスの排出削減クレジット(カーボン・クレジット)を他国政府や企業などへ売却し、資金を温暖化対策に振り向ける姿勢を打ち出しています。(その後どのように機能しているのかは知りません。)

一昨年12月には、ブラジル北部に位置するパラ州で、州知事が世界最大面積となる熱帯雨林を保全地域に指定する法令に署名しました。
この熱帯雨林はアマゾン川北部に位置し、広さはバングラデシュの国土面積とほぼ同じで、約15万平方キロメートル。法令によると、この保全地域の3分の1は、熱帯雨林の再生活動のため完全に立ち入り禁止。残りの3分の2では、政府の厳しい規制・制限が設けられているものの、木材の伐採や他の産業活動を営むことができるそうです。

もっとも、ブラジルの有力紙グロボは先月6日、アマゾンの熱帯雨林の違法伐採について、昨年は全体の22%が先住民保護区など政府管轄地で起きたと警告する政府の内部文書を報じており、単なる法律上の規制だけでなく、実効ある措置・対応がブラジル政府には求められています。

【地元に配慮した持続可能な仕組みを】
それは、強権的に押さえつければいいというものでもないでしょう。
05年6月、ブラジル連邦警察と検事当局は違法伐採を取り締まるクルピーラ(ブラジル民話の森の守護者)作戦を実施しました。
警察は100人近くを拘束し、「犯罪に関わった」容疑で174人を告発した。主たる容疑は、環境保護当局から企業への(違法伐採された木材の搬出と売買を許可した)偽文書の偽造・販売でした。
しかし一連の取り締まり措置は、(本来の取り締まりの対象である犯罪者に留まらず)合法的に伐採事業に従事してきた業者をも追い込む結果となってしまいました。
また、ブラジル環境庁(IBAMA)は一切の木材搬出許可を「一時保留」としたため、収入手段を絶たれた木材産業は行き場を失い、多くの労働者が解雇され会社が相次いで閉鎖される事態に陥ったとも言われます。

やみくもに禁止するだけでは、“禁酒法”のように水面下の不正を増大させる結果にもなります。
何より、現地で生活している人々の暮らしと両立しうるものでないと長期的継続が見込めません。

ブラジル政府主導で施策を実行するということであれば、国際社会はこれを資金的にも後押しして、単なるパフォーマンスではなく、住民・地元企業の経済合理的行動の結果、森林資源も同時に保護されるような長期的に持続可能な仕組みを構築していく必要があります。
そうした取組みをサボっていると、そのうち私達は酸欠で口をパクパクさせている金魚鉢の金魚のようになってしまうのでは・・・と言えば言いすぎでしょうか。

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温暖化対策  日本提案「セクター別アプローチ」への評価・支持

2008-05-11 12:54:30 | 環境

(温暖化に抗議する雪だるま達 “flickr”より By wstera2
http://www.flickr.com/photos/sully_aka__wstera2/3256633723/)

最近、温暖化対策として日本の提案している「セクター別アプローチ」に関する報道をいくつか目にします。
そもそも「セクター別アプローチ」とは何か?
正直なところ、未だよく理解できていません。
いくつかこの方式を解説・批判しているサイトで検索すると・・・

この手法の基本的な考え方は,エネルギ利用効率(CO2排出原単位)の改善を目標とするものです。電力や鉄鋼,セメントといったCO2排出量が多い産業分野(セクター)別に,エネルギ利用効率などの改善を目指していきます。セクター別アプローチの考え方が取り入れられれば,世界トップレベルにある日本の省エネ技術の価値は飛躍的に高まります。そして何より,まじめに省エネに取り組んできた者が正当に評価されることになるので,道理が通ります。一方で,セクター別アプローチには排出量の削減を担保できない,という大きな弱みもあります。エネルギ効率が高まっても全体の生産が増えればCO2排出量が増えてしまうからです。・・・このため,セクター別アプローチが登場したとき,特に欧州や環境NGO(非政府組織)は冷ややかでした。
(http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20070628/135035/ )

つまり、次の温暖化対策条約を批准した加盟国は、個々の設備機器(発電所や生産設備)や自動車のエネルギー効率を高めれば、国全体としての化石燃料消費量を削減しなくても良い、という仕組みのようです。
でも会議が開始した途端に、中国やインド等の発展途上国から、この仕組みは、先進国が生産する高効率の機械(発電機や自動車)を強制的に購入させられるのではないかと疑われてしまったようです。
(http://www.asyura.com/07/nature2/msg/616.html )

この手法は先進国の新たな削減目標を決めるための手法として、また現在は削減義務を負っていない中国やインドなどに対策の強化を促すものとして提案されました。
セクター別アプローチでは、各国の産業を電力や鉄鋼、セメントなどの部門に分け、部門ごとに今後削減できる量を計算します。これを積み上げて先進国の新たな削減目標を設定するほか、経済発展を遂げた途上国に対しては、指標を元に技術の移転や資金協力を進め、世界全体の温室効果ガスの削減を目指しています。
(http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/post2012/13511.html )

ごく簡単に言えば、業種や分野(セクター)ごとに効率を向上させて達成しうる潜在的削減可能量を計算し、それを積み上げて国別の総量目標を決める方法論だ。日本政府は、発電や製鉄、セメント、運輸など8分野を「考えられる対象」として例示、製品1トンあたり、輸送量・距離あたりなどでCO2排出量の効率指標をセクターごとに設定し、これを基に削減可能量を算出して国別目標を決めるとしている。
で、考えればすぐに分かることだが、このアプローチでは温室効果ガス排出の総量はなんら規制されない。例えば、鉄鋼の1トンあたりのCO2換算生産効率を20%向上させても、鉄鋼生産の総量が20%以上増えれば排出される温室効果ガスは増える。
(http://plaza.rakuten.co.jp/ecopiecealpinism/diary/200803170000/)
**************************************************************************

技術的可能性をベースにして積み上げるこの方式では、EUが目指すような指導的な高いハードルが設定できない、総量規制にならない、途上国は先進国からの技術移転を強いられる不安がある・・・そういった面があるようですが、立場が相反する先進国・途上国双方をとにもかくにも取り込んで、一定の歯止めをかけていける方式・・・そのようにも思えます。

それで、この「セクター別アプローチ」に対する各国の反応ですが、

4月23日、首相官邸で開いたEUとの定期首脳協議で、「セクター別アプローチ」は有用との認識で一致した。協議後に発表した共同プレス声明に盛り込んだ。【4月24日 日経】

外務省は5日夜、福田康夫首相と胡錦濤国家主席の7日の日中首脳会談で「気候変動に関する日中共同声明」をまとめることで両政府が合意したと正式に発表するとともに、声明の骨子を公表した。
声明では、分野別に温室効果ガスの排出量を削減するとした日本の提案「セクター別アプローチ」を中国側が「排出削減を実施する重要な手段」と初めて評価。日中両政府が2013年以降の「ポスト京都議定書」の枠組み交渉に積極的に参加することも確認する。【5月5日 毎日】

地球温暖化防止を目指す国際的枠組みで、日本政府が提唱している「セクター別アプローチ」について、欧州連合(EU)や米国など17カ国の政府関係者と研究者らが8日、パリで意見交換を行った。会議後の会見で、環境省の谷津龍太郎、経済産業省の本部和彦両審議官は「セクター別の積み上げ方式が国別総量目標の設定に有効であると(出席者からの)手応えを感じた」と述べた。【5月9日 毎日】

28日から横浜市で開かれる第4回アフリカ開発会議(TICAD4)で採択される共同文書の全容が10日、明らかになった。日本が提唱する地球温暖化対策「クールアース推進構想」(「セクター別アプローチ」をベース)へのアフリカ側の支持を明記した。具体的には、途上国の温暖化対策に5年間で総額100億ドルを拠出する日本の構想をアフリカ側が「歓迎する」と記した。【5月11日】

一連の報道を眺めると、欧米・中国・アフリカといった、従来立場が異なっていた各国から、“一定の”評価は得つつあるようにも見えます。

なお、「クールアース推進構想」とは、福田康夫首相が1月、世界経済フォーラム(ダボス会議)で提案した地球温暖化対策の新計画だそうです。
その概要は・・・2050年までに世界の温室効果ガス排出量を半減させるため(1)全主要排出国が参加できる国際的枠組みの創設(2)削減数値を国ごとに定める「国別総量目標」の設定(3)産業・分野別に削減可能量を算定し、国ごとに積み上げる「セクター別アプローチ」実施(4)世界全体で20年までにエネルギー効率の30%アップを目指す・・・といったものです。

日本の存在感が薄れていることが言われる昨今ですが(個人的には、敢えて“目立つ”ことにこだわる必要もないとは思いますが)、もとより軍事面は考えておらず、経済力でも新興国の影に隠れがちですので、技術や“あるべき世界の姿に対する”ビジョン・提案・理念・・・そういった面で存在感を示していければと願います。
そうした意味で、いろいろ批判はあるものの、温暖化対策で「セクター別アプローチ」によって各国の利害を調整できるのであれば、珍しく喜ばしい話ではないかと思います。

*****温暖化ガス削減目標******
政府は7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)を前に、2050年までの温暖化ガスの国内排出量の削減目標を設定する方針を固めた。削減幅は6―8割を軸に調整している。温暖化ガス排出の過不足分を企業間で取引する国内排出量取引制度の導入に前向きな方針も打ち出す。地球温暖化問題が主要議題となるサミット議長国として、自国に高い目標を課すことで国際交渉を主導する狙いだが、達成に向けたハードルは高そうだ。【5月11日 日経】
* ********************

京都議定書によって,先進国(ただし米国は離脱)はCO2などの温暖化ガス排出量を削減しなければなりません。
日本は,2008~2012年の第1約束期間の排出量を,1990年と比べて6%削減することを約束しています。
ここ数年の実績は、削減どころか増加しているとも聞きます。
「セクター別アプローチ」、洞爺湖サミット、「クールアース推進構想」はともかく、足元は大丈夫なのでしょうか?

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インドネシア  消える森林、守る森林、増やす森林

2007-12-12 17:56:35 | 環境

(インドネシア チェーンソーの手入れをする二人 モザイクがかかっているところをみると違法伐採でしょうか? “flickr” By Films4Conservation )

10日ほど前に目にした記事です。

****地球にも愛を、結婚や離婚の記念に木を植えて温暖化対策、インドネシア******
インドネシアのジャワ島のスラゲンではこのたび、新しく結婚するカップルまたは離婚する夫婦を対象に、植樹が義務化されたという。
愛情をちょっと地球におすそ分けし、地球温暖化対策に貢献しようという試みだ。

報道によれば、結婚予定の人はチークやマホガニーといった広葉樹の苗木5本を植えなければならない。
苗木は自分たちで用意するか、2万5000ルピア(約300円)で買って、結婚式の立会人に提出する。
その後、苗木を受け取った当局が植樹するとしている。

一方、離婚する夫婦の場合は、苗木25本か4万ルピア(約470円)を寄付しなければならないという。
当局者は「寄付金は苗木の購入に充てられ、購入された苗木は夫婦の住む地域に植えられる。地球温暖化対策の一環と位置づけている」と説明している。【12月3日 AFP】
***************************

国連の気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)が開催されているインドネシアでの、話題づくりの一環でしょうか。
非常に面白い記事で記憶に残りました。
特に、離婚の場合も植樹が必要で、しかも結婚時より本数・金額が多いというところがなんとも。
実効性は・・・はなはだ心もとないところがありますが、当局がどれだけ本気(そんなものがあればの話ですが)になるかということ次第でしょう。

ただ、インドネシアの森林破壊はハイペースで進んでおり、世界の森林破壊の中でも相当なウェイトを占めています。
単にCOP13の開催国ということだけでなく、その森林破壊防止を考えると、このような国民ひとりひとりにその意義を周知していく試みが本来は非常に大切であることは間違いありません。

全世界の化石燃料の使用によるCO2排出量が年260億トン、これに対し、森林減少によるCO2排出量は年60億トンほどで、化石燃料の4~5分の1を占めています。
その森林が近年急速に減少しており、その保護・再生がCOP13での主要議題のひとつです。

例えばアマゾン。
******アマゾン熱帯雨林の60%、2030年までに減少の危機*******
世界自然保護基金(WWF)は6日、森林破壊と気候変動によって2030年までに、アマゾンの熱帯雨林の最大60%が消滅または破壊され、世界各地に連鎖的に影響を及ぼすと警告する報告書を発表した。
世界の主要な二酸化炭素吸収源のひとつであるアマゾンが、気温上昇によって干ばつの危機にさらされており、また森林破壊は「地球の肺」と呼ばれるアマゾン一帯に深刻な被害をもたらしかねないと警鐘を鳴らした。
**************

南米の森林破壊は年430万ヘクタールで、食肉確保のための牧畜転換や道路建設が主因。
年400万ヘクタールが失われるアフリカ北部の亜サハラでは、木炭製造のための森林破壊が要因と指摘されています。
一方、インドネシアの森林破壊は年間190万ヘクタールに達していると予想されています。
特にスマトラ島の熱帯雨林は、01年の世界銀行報告では“2010年には全滅する”と予測されていました。
特にその後事態が改善したという話もありませんので、全滅の方向で進行中ということなのでしょう。

インドネシアの森林破壊の主要な原因は、皮肉なことに、最近ヨーロッパでCO2対策として需要が急増しているバイオディーゼルのためです。
このあたりの話については、先日TV(NHK クローズアップ現代)で取り上げていました。
私の当ブログでも12月2日(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071202)であつかいました。

バイオディーゼル原料のアブラヤシ栽培のため森林が破壊されていくだけでなく、それまでCO2を吸収貯蔵していた泥炭層の乾燥で大量のCO2が逆に大気中に放出されます。
そのマイナス影響は、ヨーロッパでのバイオディーゼル変換によるプラス効果をはるかに上回るものになります。

森林の保全・再生のためには、伐採の防止・制限による森林減少防止があります。
再生のためには植林があります。
植林の場合、もともと森林がなかった砂漠周辺地域などでは、用地の確保が困難であるという問題があります。
また、樹木の生長に時間がかかるため、森林減少で排出された量に相当する炭素を再吸収するためには数十年の時間がかかります。

開発途上国の植林を援助促進する仕組みとしては、「クリーン開発メカニズム」(CDM:先進国援助で途上国の森を植林で増やせば、先進国のCO2削減に算入できる仕組み)があります。
しかし、先述のTVで取り上げていましたが、現実にはCO2の取引相場が非常に低いため、植林して炭素クレジットを得ても経済的には全く採算がとれない(1億出資して利益が1000万円程度といったレベル)そうで、実施している企業は“社会貢献・ボランティア”という位置づけでやるしかない・・・という状況で、取り組み例もごく僅かのようです。

なお、今回のCOP13で、増やす植林だけでなく、森が減らないようにする対策を支援しても算入対象とすることになり、パイロットプロジェクトが始まることになりました。
焼き畑農業を続ける農民に別の生計手段を確保するための援助や適切な森林経営の指導などの事業が見込まれています。

森林減少防止については、もっと手っ取り早く、法律で伐採を禁止してしまうこともあります。
アルゼンチンでは、グリーンピース・アルゼンチンなどの市民団体の150万人署名などの活動によって、11月29日に天然林の伐採を中止する国内法が成立しました。
この法令により各州の政府は1年間伐採許可が与えられないそうです。
今後は地方議会と国会の双方が承認しなければ伐採できず、さらに環境影響調査を当局に提出しなければ開発できなくなったそうです。
また伐採承認前の公聴会開催と伐採後の野外での廃材焼却禁止も定められました。
各州の減収は国の自然保護基金から補てんされるそうです。【12月9日 IPS】

しかし、強制的な伐採禁止は違法伐採という抜け穴を生むこともあります。
ジャングルが消えつつあるインドネシアで生産される木材の半分から4分の3近くが違法伐採で、背景には密輸業者の横行などがあるそうです。【12月7日 産経】

また、どのような取り組みも、森の資源を生活の糧にしている現地の人々の生活をどうするのかという視点をなおざりにすると、結局住民の生活を破壊するか、違法伐採が横行する事態になります。
先述のTV番組では現地の人に植林・森林保護へのインセンティブを与える取り組みが紹介されていました。

マイクロクレジットのような小額事業資金を地元住民にNGOが融資します。
融資を受けた住民は、一定本数の植林を行うと利息が免除されます。
更に、植林した樹木の一定割合が成長すると元金返済も免除されるとか。
資金は先進国から出ているみたいでした。
このような融資例として、2万円ほどの融資で魚の養殖を始めた男性とか、肥料・農薬などを販売する店舗を始めた住民などが紹介されていました。

現地で観光旅行をする際、車をチャーターしてガイドを雇うと1日で100ドルぐらいは普通にかかります。
そんな散財をしている身には“耳が痛い”話ではありました。

ただ、代表的なマイクロクレジットであるバングラデシュのグラミン銀行の場合、利率自体は事業資金では20%程度とかなり高くなっています。(それでも現地の金融事情からするとかなり有利な条件なのでしょうが。)
返済も数人の連帯責任で完済が求められます。
先日のサイクロン被害の際にも、大勢の利用者が被害にあいましたが、ノーベル平和賞も受賞したグラミン銀行創始者のユヌス氏は「支払いの免除はしない。返済条件はいくらでも相談に応じる。払えるまで待つ。今免除したら今後何かあるたびに免除を求めるようになってしまう。」という対応でした。

そういうグラミン銀行と比較すると、植林を絡めた先の融資事業は、詳細がわかりませんが、随分と利用者・住民に有利なシステムのようにも思えます。
その分、融資資金のかなりが戻って来ないので原資を常に出資国に頼らざるを得ないことになります。
また、借り手のモラルハザードなどはどうでしょうか?
大規模にうまくまわる仕組みであるなら、非常に結構な話かと思います。

本格的に市場メカニズムを駆使してCO2を減らしていこうとするなら、すべての生産財・消費財がその生産過程でCO2放出・削減にどれだけかかわっているかを何らかの形で明示して、そのスコアに応じた負担を環境税などで求める仕組みが必要でなないでしょうか。
それによってCO2が“コスト”として明確に意識され、生産者はできるだけCO2削減につながる方向に向かいますし、消費者も購入時にその商品がどれだけ環境に負荷をかけているかが確認でき、高負荷商品は割高になるということで需要も抑制される・・・そこまで行けばCO2削減は本格化するでしょう。

そうなると、恐らくCO2相場はいまよりはるかに高くなるでしょうから、炭素クレジットを媒介としたCDMやREDDなどの植林・森林防止援助事業もまた採算がとれるようにもなるでしょう。
言うだけならいとも簡単なことですが・・・。
しかし、もし温暖化に地球の、人類の将来がかかっているのなら誰か検討してもいいのでは?

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温暖化対策  世界の流れ、日本の対策

2007-12-06 17:23:04 | 環境

(カナディアン・ロッキーの氷河 写真右下の“1982”と言う標示は、当時そこまで氷河があったことを示すもののようです。 “flickr”より By le sara )

バリ島で国連気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)が開催されていることもあって、毎日温暖化関連のニュースが入ります。

(1)世界の流れ
異様なくらいに熱心なヨーロッパ各国ですが、ドイツ政府は5日、2020年までに同国の温室効果ガス排出を90年比で最大40%削減する目標を定め、その方策として計14の法案や通達をまとめたエネルギー・環境包括案を閣議決定、環境先進国として世界を主導していく方針だそうです。
包括案のなかには、風力・太陽光などによる発電割合を25~30%に引き上げること、09年以降に購入された新車は、排気量でなく二酸化炭素の排出量で課税することなどの施策が含まれています。【12月6日 朝日】

先月15日にはイギリス政府が温室効果ガス排出60%削減を明記した気候変動関連法案を策定しましたが、ブラウン首相は2050年までに1990年比で最大80%削減できそうだとの見通しを示しています。
首相は「イギリスは低二酸化炭素社会のリーダーを目指す」と宣言しています。【11月21日 産経】

これまで“後ろ向き”とされていたアメリカでも、州レベルでの取組みが進んでいますが、先日TVを見ていると、有力企業のグループのほうからCO2のキャップ・アンド・トレード実施を政府に要望する動きになっているとか。
いろいろ思惑はあるのでしょうが、先行するヨーロッパの同システムと連動させる考えのようです。

アメリカ連邦政府も、上院の環境公共事業委員会で5日、温室効果ガスの排出削減を義務付ける超党派の法案を可決しました。
今後、上下院本会議での可決、大統領署名は必要ですが、委員会レベルで削減義務を盛り込んだ法案を可決したのは初めてで、流れが変わりつつあることを示しています。【12月6日 読売】

なお、ヒラリー上院議員は、温室効果ガスの排出を2050年までに1990年レベルから80%削減することを柱とする包括的な環境・エネルギー政策を発表し、京都議定書後の国際的な温暖化対策の枠組みづくりでも米国がリーダーシップをとり、国際的な指導力を回復させるとしているそうです。 【11月6日 朝日】

(2)日本の評価
そんななかで“日本は・・・”と言うと、すこぶる評判が悪いようです。
****バリ会議:日本がワースト賞総なめ 環境NGOの批判集中*****
COP13で、京都議定書に定めのない2013年以降について、温室効果ガス削減目標を示さない日本に非政府組織(NGO)の批判が集中、NGOが4日選んだ「本日の化石賞」の1位から3位までを日本が総なめにした。
地球温暖化防止の交渉を妨げている国に批判を込めて贈る同賞は、世界の300以上のNGOが参加する気候行動ネットワーク(CAN)が投票で毎日選ぶ。
初日の討議で日本は「ポスト京都」の枠組みの要件を提案したが、先進国の削減目標を示さなかったことが1位の理由となった。
2位は、10周年を迎える京都議定書を「汚した」との理由。
3位は、発展途上国への技術移転に真剣さが見られないなどとして日本、米国、カナダの3カ国に贈られた。【12月5日 毎日】
*******

こんなものあります。
*****バリ会議、「日本とカナダが進展の障害」と環境団体が警告****
環境保護団体などは5日、先進国を対象とした拘束力のある温室効果ガス削減の数値目標から日本とカナダが離脱する恐れがあると警告した。
米国環境トラストのアンダーソン氏によると、日本は強制力のある統一した温室効果ガス削減目標を課すよりもむしろ、各国が自主的な削減目標を設定し、国際社会が進行度合いを検討するシステムにする案を復活させたという。同氏は「最も困るのは、そのほうが米国がより積極的になると日本が考えていることだ。現大統領の下ではそうかもしれないが、最終合意の交渉時には大統領は変わっているのに」と話している。【12月5日 AFP】
*******

(3)日本の対策
もとより自然界の、しかも長期にわたる複雑な現象の因果関係を科学的に明快に説明することは今の科学レベルでは非常に困難なことです。
温室効果ガスにしても、「本当だろうか?」という疑念は完全には払拭しきれませんし、異論を唱える研究者も多いかと思います。
しかし、100%明らかになるまでは行動しない・・・というのでは恐らく手遅れになる危険が非常に大きいと思われます。

11月に承認された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第四次評価報告書では、「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇の殆どは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い。」とされています。
ここで言う“可能性がかなり高い(very likely)”とは確率90-99%を意味するそうです。
また、同報告書は「温暖化を最小限にとどめるためには世界の二酸化炭素(CO2)排出量を2050年には半減させる必要があり、この20~30年の取り組みが極めて重要」との認識をしめしています。

現段階で得られる最高レベルの専門的知識を集めての世界的コンセンサスですから、日本政府が明確な異論を唱えるのでなければ、この方向で動くことが求められます。
10月に来日したIPCCパチャウリ議長が会議特別講演で「何かを変えたいならまず自ら行動を」と呼びかけたのに対し、福田首相は開会式で「温暖化は大量生産、大量消費を繰り返すこれまでの経済活動が行き詰まりつつあることを示す。大胆にかじを切らねばならない時だ」と述べたとか。【10月19日 毎日】

その認識にしては日本の現状はあまりに鷹揚な感じがします。
日本の温暖化対策については、「日経エコロミー」で橋本賢氏が、特に産業界側からの対応について詳しく解説されています。(http://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20070731cb000cb 
日本という国は温暖化対策にかぎらず、長期的ビジョンに欠けるきらいがあるようにも思えますが、橋本氏のサイトによると、日本政府も何もしていない訳でもないそうです。
以下、政府対策について抜粋します。

*******
05年に京都議定書が発効し、「6%削減」の目標を国際的にコミットしたのを受けて、政府はマスタープランにあたる京都議定書目標達成計画(主な内容は下記)を策定しました。

・日本経団連自主行動計画(産業界による自主目標の設定と取り組み)
・建築物の省エネ性能向上(大型ビルの建築・修繕時における取り組みを政府に届出)
・BEMS・HEMS普及(ビル・住宅のエネルギーを適切に制御するシステムの導入)
・電力会社による取り組み(原子力発電の稼動時間を増やす、石炭→天然ガスへの燃料転換など)
・新エネルギーの導入推進(バイオマス、風力、太陽光発電など)
・コージェネレーション、燃料電池の導入推進(熱電併給による総合効率向上)
・低燃費の自動車や省エネ家電の普及

しかし、現状は6%削減の目標に対し、2005年の排出量は逆に1990年比で7.8%増。
経済産業省と環境省が今年7月に「見直しに関する中間報告」を発表、「対策の進捗は極めて厳しい状況にある」と評価しています。
中間報告では「特に排出量の伸びが著しい業務部門・家庭部門の対策について、抜本的に強化することが必要」としています。
主な具体的施策は次のようなものです。
 
・自主行動計画の強化(業務部門の適用拡大、目標強化)
・国民運動(1人1日1kgCO2削減)
・機器対策(省エネ基準設定対象機器の拡大、目標強化)
・大企業の技術・資金を利用した中小企業の排出削減(削減効果を大企業が自主行動計画の目標達成に利用)
 ちなみに温暖化ガスの排出権取引制度や環境税については、引き続き「今後の検討課題」として従来どおりの位置づけに据え置かれています。【「日経エコロミー」 橋本賢氏】
***********

日本では自主行動が原則となっています。
これは公平な目標値・制限値を上からかぶせることが困難なことが背景にあります。
そんな事情で「日本版キャップ・アンド・トレード」もEUのように義務型の制度ではなく、省エネ設備への補助金をインセンティブに、企業の自主参加をベースとしたものだそうです。
(橋本賢氏 http://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20071029cb000cb )

しかし、“6%削減の目標に対し、逆に1990年比で7.8%増”という現状は“自主行動”の限界を示しているようにも思えます。
CO2の無対策の放出は、かつての公害問題における“有機水銀等の有害物質垂れ流し”と同様に、もはや社会的に容認されない行為であるという厳しい認識にたった施策が必要とされるように思えます。

同時に、消費者が“生産者がどれだけ温室効果ガス削減努力をしているのか”わかる仕組みを導入することで、削減努力の程度が製品販売に影響するかたちで、企業に“自主的な”削減努力に向かうようなインセティブを持たせられれば、事情は随分と変化するように思えます。

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