(米国で難民申請をするためメキシコ・シウダフアレスからリオグランデ川を渡る中米の移民(2019年6月12日撮影、資料写真) 水死した親子とは別の親子です。【6月27日 AFP】)
【「米国には国境警備と正義、人道を合わせた移民政策が必要だ」】
メキシコとの国境を越えて流入する中南米移民を国境で止めようとしているトランプ米政権ですが、今1枚の写真がアメリカ社会・政治に大きな衝撃を与えています。
国境を流れるリオグランデ川で、アメリカ入りを試み水死したエルサルバドル人男性とそのほぼ2歳になる娘の写真で、二人ともうつぶせになって川に浮かんでいます。
娘は右手を父親の首に回し、最後まで父親にしがみついていたように見えます。
(写真はhttps://courrier.jp/news/archives/166155/ http://parstoday.com/ja/news/world-i53999 などに公開されています。)
“地元メディアによりますと、この川を渡ろうとして死亡した不法移民は去年1年間で283人に上る”【6月27日 NHK】ということで、「今更」の話でもありますが、こうした写真、特に幼い子供がかかわる写真は世論に強くアピールすることにもなります。
水死したシリア難民の男児の写真が一番顕著な事例ですが、メキシコ国境についても、母親と引き離されて泣き叫ぶように見えた(実際はそうではなかったことが後日判明)女児の写真がトランプ大統領のゼロ・トレランス(不寛容)政策を揺さぶったこともあります。
****移民親子の水死体写真に怒り 民主党、トランプ氏批判強める****
米国とメキシコの国境を流れるリオグランデ川で、米国入りを試み水死したエルサルバドル人男性とそのほぼ2歳になる娘の遺体を写した痛ましい写真が公開されたことを受けて、米国の野党・民主党は憤りを表明し、ドナルド・トランプ政権の移民政策に対する批判を強めている。
民主党から2020年大統領選への出馬を表明しているベト・オルーク元下院議員は、「トランプはこの死に責任がある」と主張。ツイッターで「トランプ政権がわれわれの法律に従うことを拒否し、難民が通関手続地で亡命を申請することを阻止しているため、家族が通関手続地の合間から入国することになり、多大な苦難や死を生んでいる」と指摘した。
一方のトランプ氏は、「民主党が成立を阻んでいる適切な法律さえあれば、こうした人々は(米国に)来ないだろう」と述べ、責任は民主党議員らにあると反論した。
メキシコの日刊紙ホルナダによると、写真の親子は亡命希望者のオスカル・アルベルト・マルティネス・ラミレスさんと娘のバレリアちゃん(1歳11か月)で、23日にメキシコからリオグランデ川を渡って米テキサス州に入ろうと試み水死した。
この写真は多くの人にとって、ギリシャに向かう途中にトルコ沖合で水死したシリア人男児を写した2015年の写真を想起させた。米紙ニューヨーク・タイムズはこの写真を一面に掲載し、社説で「米国には国境警備と正義、人道を合わせた移民政策が必要だ」と訴えた。 【6月27日 AFP】AFPBB News
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*****国境の川、息絶えた移民の父と娘 1枚の写真が米に衝撃****
(中略)AP通信によると、死亡したのはエルサルバドル人の父親とまもなく2歳になるはずだった娘。2人は母親とともに23日、メキシコ湾近くの地点で川を渡って米国に入ろうとした。
父親はいったん娘を米側に運び、母親の手助けに引き返そうとした。だが、娘が追いかけて水に入ったため捕まえたところ、流されたという。
一家は4月にエルサルバドルを出発。23日に国境のマタモロスにある米総領事館をたずねたが、その日のうちに国境を越えようとした。
トランプ政権は在外公館での亡命申請受け付けを制限。同通信が援助関係者の話として伝えたところでは、亡命のための面談は800~1700人が順番待ちしているという。待機時間の長さを嫌い、密入国を図った可能性がある。(後略)【6月27日 朝日】
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国境での移民の子供の管理をめぐっては、その施設の劣悪さも問題視されています。
****移民の子ども100人超を「ひどい」施設に送還 米国境****
アメリカの国境管理当局は26日、テキサス州クリントの移民収容施設から移送が決まった100人以上の子どもが、1日で元の施設に送還されていたと発表した。
この施設は元々定員を超えて移民を収容しており、先に裁判所によって立ち入りを許可された弁護士が、子どもたちが「ひどい状態で放置されていた」と報告していた。
これを受け、250人の子どもたちが別の施設へ移送されるはずだった。
こうした中、米税関国境警備局(CBP)のジョン・サンダース局長代理が7月5日付で退任すると発表している。
アメリカでは不法入国した移民の逮捕が相次いでおり、今年5月には逮捕者数が2006年以降で最高となった。
ドナルド・トランプ大統領が移民税関捜査局(ICE)のマーク・モーガン局長代理をサンダース氏の後任に考えているとの報道も出ている。
CBSニュースが25日に行った取材でモーガン氏は、移民収容施設に「システム的な問題」があるとは思っていないと話した。
「システム的な問題のような、劣悪な環境だとは思っていない。改善点があるかといえば、それはもちろんだ」
収容施設の状況は?
(中略)この施設を訪問した弁護士はBBCの取材に対し、子どもたちは「部屋の真ん中にトイレがあるひどい部屋に閉じ込められている」と語った。子どもたちはこの部屋で食事や睡眠をとっているという。
ウィラメット大学のウォーレン・ビンフォード教授は、「誰もこの子どもたちの世話をしていないし(中略)定期的にシャワーも浴びていない」と説明した。
「数百人の子どもたちが、工場用地に最近建てられた倉庫に足止めされている。部屋は定員オーバーで(中略)しらみが湧き、インフルエンザも流行している。子どもたちは大人の監視のない場所に隔離して閉じ込められ、とても、とても不健康で、地面に敷かれたマットに寝ているだけだ」
同じくこの施設を訪問したエローラ・ムカジ−弁護士はCBSニュースの取材で、子どもたちは「国境を越えたときに着ていた汚い服をそのまま着ている」と話した。「侮辱的で非人道的で、アメリカで起こってはならないことだ」(後略)【6月26日 BBC】
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水死した親子の写真に涙し、劣悪な施設に収容された子供たちの処遇に怒る・・・これらは確かにアメリカ社会の一面です。
【米国人の3分の1は、民間人100万人が死亡する北朝鮮への先制核攻撃を支持】
ただ、人々の心の内は、そのように慈愛に満ちたものばかりでもないようです。
****米国民の3人に1人が「北朝鮮に対する先制核攻撃を支持」の衝撃****
<米国民の中に、核兵器使用に抵抗がなく、敵なら一般市民の多大な犠牲もいとわない強硬な主戦論者が潜んでいることが明らかになった>
最近実施された世論調査で、米国人の3分の1は、たとえそれが民間人100万人が死亡する核攻撃のケースであっても、北朝鮮に対する先制攻撃を支持するという結果が出た。
米学術誌「原子力科学者会報」は6月24日、英調査会社ユーガブと共同で実施した米世論についての調査の詳細を発表した。米朝間の歴史的な和平プロセスが行き詰って見えるなかで、北朝鮮との軍事衝突について米国民の意見を調査したもの。
それによって明らかになった最も「懸念すべき」結果のひとつが、「米世論の中に、少数派とはいえ大勢の主戦派が潜んでいる」ことだった。
「回答者の3分の1以上が、通常兵器であると核兵器であるとを問わずあらゆるケースの先制攻撃を支持しており、大規模な軍事衝突は回避すべきだと考える安全保障の専門家の慎重論など、まったく意に介していないことがわかった」という。
米国による先制攻撃を、通常兵器から核兵器による攻撃へ引き上げても、「33%が支持か、やや支持」という数字にほとんど変化はない。「核攻撃にすると、北朝鮮の民間人の犠牲者は、1万5000人から110万人にハネ上がるが、それを知った後でも核攻撃を支持する人の割合に大きな変化はなかった」
米軍の能力を過大評価
報告書は、これらの結果は米国民の「核兵器使用に無神経で、敵国が相手なら無実の一般市民を殺すことも厭わない衝撃的な傾向」を表している、と指摘した。
回答には政治的信条も影響を及ぼした。回答者の大半は北朝鮮に対する軍事行動に反対を表明したものの、「トランプ支持者の過半数は米国による攻撃を『やや支持』と回答した。トランプ支持者以外では、攻撃を支持したのは8%だけだった。
また、死刑を支持すると回答した人の方が、北朝鮮の一般市民に多くの犠牲者を出してもかまわないとする傾向があった。
調査は、「米軍の攻撃力と防御力について、米国民の認識がいかに誤っているか」も露呈している。報告書は、トランプの極端な主張がそうした誤解の一因だと指摘する。回答者の3分の1以上が、米国による攻撃の「第一弾」で北朝鮮の核兵器を排除できると考えていた。また回答者の47%は、北朝鮮から複数の核ミサイルが向かってきても、一度に3つは迎撃できると考えていた。
最後に報告書は、核戦争について「一般市民に改めて教員を行う必要がある」と締めくくった。【6月27日 Newsweek】
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唯一の被爆国であり、いろいろな意見はあるものの「平和憲法」を維持している日本と、原爆投下を戦争終結のたmと評価し、普段に世界各地の戦争に関与し、「銃社会」にあって自分の身は自分で守ることを是とするアメリカ社会では、戦争・武力行使、そして核使用に関して全く異なる考えがあるのは当然のこととも言えます。
水死した親子の写真に涙し、劣悪な施設に収容された子供たちの処遇に怒る人々も、民間人100万人が死亡する核攻撃をも厭わない人々も、ともにアメリカ社会の側面であり、場合によっては同じ人物の心のにある二つの思いでもあります。
そうした社会に存在する様々な考えのなかから、どのような考えをすくい取って政治に反映させていくかが政治家の役割になりますが、トランプ大統領の場合は・・・という話は今日は止めておきます。
言わずもがなの話でもありますので。