(7日、パレスチナ自治区ガザからイスラエルに向け発射されたロケット弾(ロイター=共同)【10月7日 共同】)
【ハマス、イスラエル侵入の異例事態 住民拉致の報道も ネタニヤフ首相「戦争状態」】
各メディアが一斉に報じているいるように、中東パレスチナで激震が。
ガザ地区を実効支配するハマスがイスラエルに対し大規模ロケット弾攻撃(イスラエル軍発表で2500発 ハマス側情報で5000発)を仕掛けました。
(7日、パレスチナ自治区ガザからのロケット弾攻撃を受けたイスラエル中部アシュケロンの街並み(ロイター=共同)【10月7日 共同】)
ロケット弾攻撃は今までも度々行われていますが、今回はハマス戦闘員がイスラエル領内に侵入してイスラエル人を殺害・拉致しているとの異例の展開になっています。
イスラエル・ネタニヤフ首相は「戦争状態にある」として、報復のガザ空爆、予備役招集を行っています。
****ハマスが大規模攻撃、イスラエル人20人超死亡 首相「戦争状態」****
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが7日、イスラエルに対する大規模攻撃を行い、ガザから発射されたロケット弾のほか、イスラエル領内に侵入した武装集団の襲撃で20人以上が死亡した。
イスラエル軍はガザに近いイスラエルの町や軍基地で武装勢力との戦闘が行われていることを確認。ネタニヤフ首相は「われわれは戦争状態にあり、必ず勝利する」とし、「敵はこれまでにないような代償を払うことになる」として報復を表明した。
イスラエルの救急当局によると、この攻撃で少なくともイスラエル人22人が死亡、負傷者も250人以上に上ると明かしたが、犠牲者はさらに増える見込みだという。
一方、イスラエル軍はガザへの空爆を開始し、同地区で少なくとも2人が死亡。目撃者によると、激しい爆発音が聞こえたという。
ハマスがイスラエル領内に侵入して攻撃を行うのは異例で、紛争がここ数年で最も深刻な状態にエスカレートしたと言える。
イスラエルのテレビ局は、ハマスの戦闘員がガザ東方の町オファキムでイスラエル人を人質にしていると伝えた。また、スデロットではパレスチナ人武装勢力5人が殺害されたほか、家屋が放火されたという。
ハマスの司令官は自軍のメディアで作戦開始を表明し、ロケット弾5000発を発射したと説明。「地球上における最後の占領を終わらせるための最大の戦いの日だ」と述べ、パレスチナ人に戦闘を呼びかけた。
イスラエルのガラント国防相は「軍部隊はあらゆる場所で敵と戦っている」とし、予備役の招集も認めた。イスラエル軍はガザ内で活動していると明かしたが、詳細は明らかにしなかった。【10月7日 ロイター】
イスラエル軍はガザに近いイスラエルの町や軍基地で武装勢力との戦闘が行われていることを確認。ネタニヤフ首相は「われわれは戦争状態にあり、必ず勝利する」とし、「敵はこれまでにないような代償を払うことになる」として報復を表明した。
イスラエルの救急当局によると、この攻撃で少なくともイスラエル人22人が死亡、負傷者も250人以上に上ると明かしたが、犠牲者はさらに増える見込みだという。
一方、イスラエル軍はガザへの空爆を開始し、同地区で少なくとも2人が死亡。目撃者によると、激しい爆発音が聞こえたという。
ハマスがイスラエル領内に侵入して攻撃を行うのは異例で、紛争がここ数年で最も深刻な状態にエスカレートしたと言える。
イスラエルのテレビ局は、ハマスの戦闘員がガザ東方の町オファキムでイスラエル人を人質にしていると伝えた。また、スデロットではパレスチナ人武装勢力5人が殺害されたほか、家屋が放火されたという。
ハマスの司令官は自軍のメディアで作戦開始を表明し、ロケット弾5000発を発射したと説明。「地球上における最後の占領を終わらせるための最大の戦いの日だ」と述べ、パレスチナ人に戦闘を呼びかけた。
イスラエルのガラント国防相は「軍部隊はあらゆる場所で敵と戦っている」とし、予備役の招集も認めた。イスラエル軍はガザ内で活動していると明かしたが、詳細は明らかにしなかった。【10月7日 ロイター】
********************
*****************
地元紙ハアレツなどによると、ガザに近いイスラエル南部スデロットなど複数の町では、上空や陸上から境界を越えて侵入したハマスの戦闘員が銃撃を行い、市民らが多数死傷した。死傷者はさらに増える見込みだ。
インターネット上では、炎上するイスラエル軍の戦車や、ハマスが人質に取ったとみられる兵士や市民の映像が拡散している。イスラエル側ではロケット弾攻撃を受け、南部や中部だけでなく、エルサレムでも警報が鳴る緊張状態となっている。【10月7日 読売】
**********************
イスラエルとハマスは2021年、エルサレムにあるユダヤ教とイスラム教の聖地「神殿の丘」での対立を契機に、大規模な戦闘を実施。双方合わせて270人以上が死亡しています。
イスラエルにとっては市民一人でも殺害されたり、拉致されたりするのは“おおごと”ですが、今回はすでに死者40名とも報じられており、“数十人のイスラエル人を人質としてガザに連行した模様”【同上】ということで大きな衝撃となっています。
****ハマスが対イスラエル大規模作戦=40人死亡、住民拉致か―「戦争状態」ロケット弾2000発****
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは7日、イスラエルに対する大規模攻撃を実施し、同国のメディアによると、40人が死亡、740人が負傷した。イスラエル領内に2000発以上のロケット弾が撃ち込まれた。同時にガザの戦闘員が越境してイスラエルの住宅地に侵入し、銃撃戦が発生。住民がガザに連れ去られたとの情報もある。
今回の攻撃は、ハマスによる対イスラエル軍事作戦としては過去最大規模。武装勢力との衝突でイスラエル側にこれほどの被害が出るのは、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラと交戦した2006年以来とみられる。
イスラエルのネタニヤフ首相は緊急のビデオ演説で「われわれは戦争状態にある。この戦争に勝つ」と語った。ハマス側の攻撃を受け、イスラエル軍はガザで空爆を実施。AFP通信によると、ガザでは少なくとも9人が死亡した。【10月7日 時事】
*******************
【緊張を高めた「史上最も右寄り」政権の対パレスチナ強硬姿勢】
パレスチナをめぐる情勢は緊張状態にありましたので、いつ衝突が起きても不思議ではない状況ではありましたが、このタイミングでハマスが攻撃を仕掛けた理由としては以下のようにも報じられています。
“今月6日まで約1週間続いたユダヤ教の祭り期間中、5千人超のユダヤ人がエルサレムにあるイスラム教とユダヤ教双方の聖地「神殿の丘」(イスラム名ハラム・アッシャリーフ)を訪れた。ユダヤ人の訪問を「イスラム教聖地への攻撃」と捉えるハマスが反発した可能性がある。”【10月7日 共同】
“ハマスとイスラエルの大規模な戦闘は2021年以来で5度目となる。7日はユダヤ教の休日「シャバット」(安息日)で、ハマスが隙を突いて攻撃した模様だ。6日は、イスラエルがエジプトとシリアから奇襲攻撃を受けた第4次中東戦争から50年の節目だった。”【10月7日 読売】
ハマスは今回攻撃を「神殿の丘」に建つアルアクサモスクにちなんで「アルアクサの洪水」と名付けているようです。
より大きな流れとしては、上記の聖地「神殿の丘」に関する行動や西岸地区への入植活動強化など、イスラエルの「史上最も右寄り」政権の対パレスチナ強硬姿勢にパレスチナ側が反発を強めていたことがあるでしょう。
****イスラエル閣僚、入植者の権利主張し物議 首相は擁護****
イスラエルのイタマル・ベングビール公共治安相が占領地ヨルダン川西岸におけるユダヤ人入植者の権利を声高に主張し、物議を醸している。そうした中、25日にはベンヤミン・ネタニヤフ首相がベングビール氏に支持を表明し、火に油を注いだ格好となっている。
人種差別主義者のベングビール氏は23日、国営テレビで、「ユダヤ・サマリア地区(ヨルダン川西岸の意)の通りを私や妻子が行き来できる権利は、アラブ人の移動の自由よりも重要だ」と述べ、パレスチナ人を対象とした移動制限措置を正当化する立場を示した。
これを受け、パレスチナ系米国人のスーパーモデル、ベラ・ハディッドさんはインスタグラムに非難するコメントを投稿。ベングビール氏もXで、ハディッドさんは「イスラエル嫌い」だと反論した。
一方、ネタニヤフ首相は声明で「ユダヤ・サマリア地区における移動の自由についてはイスラエル人にもパレスチナ人にも最大限認めている」と指摘。「不幸なことにパレスチナ人テロリストがこうした移動の自由に付け込んでイスラエルの女性や子ども、その家族を殺害している」とし、ベングビール氏を擁護した。【8月27日 AFP】
*******************
【イスラエルのサウジ・トルコなどとの関係正常化交渉へのハマスの反発も】
また、イスラエルがバーレーン、スーダン、モロッコのアラブ諸国との関係正常化に加え、サウジアラビアやトルコなどとも交渉を進めており、このままではパレスチナが埋没しかねないとの危機感がハマス側にあったことも想像できます。
****関係改善進むイスラエル・トルコ首脳が直接会談****
イスラエルのネタニヤフ首相とトルコのエルドアン大統領が初めて会談し、関係改善の進む両国を象徴する場となりました。
ネタニヤフ首相は国連総会へ出席するため訪れているニューヨークで19日、エルドアン大統領との会談を持ちました。双方とも長期間にわたって政権の座にありますが、イスラエルメディアによりますと、直接の会談は初めてだということです。
両国はパレスチナ問題などで長年、対立関係にありましたが、去年3月から要人が相互訪問するなど関係が改善していました。
会談では、アメリカが後押しするイスラエルとサウジアラビアの国交正常化に加えてエネルギー、IT技術などでの協力が話し合われました。また、近い将来、両首脳が相互訪問することを調整することでも合意したということです。
エルドアン大統領はエルサレムにあるイスラム教の聖地、アルアクサ・モスクへできるだけ早く訪問することを希望しているというということです。【9月20日 テレ朝news】
ネタニヤフ首相は国連総会へ出席するため訪れているニューヨークで19日、エルドアン大統領との会談を持ちました。双方とも長期間にわたって政権の座にありますが、イスラエルメディアによりますと、直接の会談は初めてだということです。
両国はパレスチナ問題などで長年、対立関係にありましたが、去年3月から要人が相互訪問するなど関係が改善していました。
会談では、アメリカが後押しするイスラエルとサウジアラビアの国交正常化に加えてエネルギー、IT技術などでの協力が話し合われました。また、近い将来、両首脳が相互訪問することを調整することでも合意したということです。
エルドアン大統領はエルサレムにあるイスラム教の聖地、アルアクサ・モスクへできるだけ早く訪問することを希望しているというということです。【9月20日 テレ朝news】
*********************
****ネタニヤフ首相がバイデン米大統領と会談、サウジアラビアとの和平合意に向け協議****
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9月20日、国連総会が開催されている米国ニューヨークでジョー・バイデン米大統領と会談した。(中略)
会談では主に、イスラエルとサウジアラビアの間で歴史的な和平合意を結ぶ方法について話し合われたとしている。
ネタニヤフ首相は、中東全体や米国を脅かすことになるイランの核兵器開発を阻止できるのは確かな軍事的脅威だけとし、イランの核兵器開発阻止に向けたバイデン大統領の確固とした姿勢に謝意を表明した。
また「ともに協力することで、歴史を作り、この地域とその先のより良い未来を作ることができると信じている。また、ともに協力することで、その未来を脅かす勢力、とりわけイランに立ち向かうことができる」と述べた。
ホワイトハウスによると、ヨルダン川西岸地区で続いている緊張と暴力について、バイデン大統領は、イスラエル人とパレスチナ人の間の公正で永続的な和平を促進するための緊急措置を取る必要性を強調した。
また、ネタニヤフ政権が進める司法改革について、バイデン大統領は、できるだけ広範なコンセンサスがない限り、イスラエルの民主主義体制を根本的に変更することへの懸念をあらためて表明した。【9月22日 JETRO】
*********************
パレスチナ情勢に決定的な影響を持つのは、特にアラブの盟主を自任するサウジラビアの動向ですが、サウジアラビアとしてもイスラエルとの関係正常化についてはパレスチナ問題でイスラエル側の譲歩を引き出し、パレスチナを置き去りにしたと言われないようにする必要があります。
こうした国際環境の変化を睨んで、ハマスとしてもサウジアラビアに圧力をかける姿勢を示していました。
****ハマスがイスラエルへの攻撃強化を発表 サウジの国交正常化に圧力か****
パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスと過激派組織「イスラム聖戦」などは24日、イスラエルに対する攻撃を強めることで一致したと発表した。米国が仲介するイスラエルとサウジアラビアの国交正常化交渉が進む中、パレスチナ側の主張を通すため、圧力をかける狙いなどがあるとみられる。
ガザではここ数日、ハマスを支持する若者らがイスラエルとガザの境界付近で抗議デモを実施。イスラエル側に向かって発火物付き風船を発射したり、即席爆破装置(IED)を投げ込んだりしており、イスラエル軍は対抗措置として若者らを銃撃、数十人の死傷者が出ている。また、イスラエル軍は22日以降、ガザにあるハマスの軍事拠点を無人機で空爆している。
ハマスなどは24日の声明で、イスラエルとアラブ諸国の「盟主」を自任するサウジの国交正常化は、イスラエルと戦い、殺害されたアラブ人への「明白な裏切り」と主張。両国の国交正常化交渉をけん制した。
また、ヨルダン川西岸を統治するパレスチナ自治政府のアッバス議長は21日、国連総会の一般討論演説で、パレスチナ問題を解決せず、中東に平和をもたらすことができると考えるのは間違いだと主張。国交正常化を巡り、パレスチナ人の権利を十分に考慮するよう求めた。
国交正常化を巡っては、サウジはイスラエルに対し、パレスチナ問題での譲歩を要求。イスラエルはパレスチナ問題についての態度を明確にしていない。【9月25日 毎日】
*******************
今回攻撃はサウジアラビアへの「圧力」と言うにはやや大規模すぎる感もありますが・・・・。
【イスラエルの報復攻撃で、パレスチナ側にまた多大の犠牲も】
まだ双方の軍事行動が始まったばかりで、今後の展開を云々するには早すぎますが、少なくとも、エジプトやシリアが参戦したかつての中東戦争のような国家間の戦争にはならないでしょう。
エジプトはイスラエルとすでに関係正常化しており、シリアは国内問題で手一杯です。
サウジアラビアは上記のようにイスラエルとの関係正常化を模索していますので、紛争の当事者になることはありません。仲介役を買って出ることはあるかも。
イスラエルに対し明確な敵意を有しているのがイランですが、イランとしても国家としてイスラエルと事を構えることはしないでしょう。ただ、イランが支援するレバノンのヒズボラの動きは注目されます。
軍事的に見れば、イスラエルと単独で「戦争」を行うハマスに勝機はなく、今後、イスラエル軍地上部隊のガザ侵攻などの可能性も。また大きな犠牲が出そうです。
2014年のイスラエル軍ガザ侵攻では、パレスチナ側の死者はガザ地区のみで2158人、イスラエル側の死者は73人(兵士66人、民間人7人)とされています。
2021年のイスラエル・ハマスの衝突では、イスラエル軍は空爆を1,500回以上実施し、パレスチナ側で256人、イスラエル側で13人が死亡しています。
ハマスがそうした今後の展開をどのように考えているのかは知りませんが、拉致したとされるイスラエル住民を交渉材料に使うのでしょうか。
イスラエルの「史上最も右寄り」政権は、国内の司法改革問題で大きな批判に曝されて揺らいでいましたが、こうした事態になれば対ハマスで求心力をとりもどすことが想像されます。
それにしても、今回のようなハマスの大規模攻撃については組織的な準備も必要だったと思いますが、そうした動きを世界に冠たるイスラエルの情報機関が気付かなかったのか・・・は不思議なところ。
国内の政治的求心力を取り戻すために、気付いていながら敢えて攻撃させた・・・と妄想するのは、陰謀説の誹りを受けることにもなるでしょう。