(南アフリカ大統領に再任されて笑顔を見せるシリル・ラマポーザ氏(14日、ケープタウン)【6月15日 BBC】
【グローバルサウス 大国による紛争を批判 したたかな天秤外交も】
****したたかなグローバルサウスの外交 覇権争い続ける米・中・露に落胆 対立を逆手にとった天秤外交も****
今日、ウクライナや中東では戦争が続き、台湾では依然として軍事的な潜在的脅威が漂っている。しかし、それらをよく見ると、どれでも大国が絡んでいる。
ウクライナではロシアが戦争の当事者となり、米国などがウクライナを背後で支援している。中東ではイスラエルによるガザ地区への容赦のない攻撃が続き、米国はネタニヤフ政権に不満を募らせながらもイスラエル支持に立場を維持している。台湾では米中が紛争の当事者となる可能性が非常に高い。
こういった状況に、ASEANやインド、アフリカや中南米などグローバルサウスの国々はどう感じているのだろうか。
グローバサウスは、本来世界のあらゆる問題でリーダーシップを発揮すべき大国が争い合い、むしろ途上国の経済成長の阻害要因になっていることに強い不満を抱いている。
そういった声は相次いで聞かれる。たとえば、最近シンガポールで開催されたアジア安全保障会議、通称シャングリラ・ダイアローグの席で、インドネシア次期大統領であるプラボウォ国防相は、米中対立など地政学的な緊張の高まりにグローバルサウスは幻滅しており、大国は人類の共通の利益のために責任を持って行動するべきだとの認識を示した。
プラボウォ国防相は昨年の同会議でも、米中対立を皮肉交じりに新冷戦と呼び、大国間対立の激化に強い警戒感を滲ませ、フィリピンのガルベス国防相も昨年のシャングリラ・ダイアローグで同様の見解を示した。
東南アジアの国々だけではない。グローバルサウスの盟主を自認するインドのモディ首相は2022年9月、ウズベキスタンで開催された上海協力機構の会議に合わせてプーチン大統領と会談し、今は戦争する時代ではないとウクライナ侵攻を明確に否定した。
インドは伝統的に全方位外交を展開し、どの陣営とも癒着しない非同盟主義を貫くが、モディ政権もクアッドで日米豪との関係を重視する一方、エネルギー分野などではロシアとの関係を維持している。これも大国間競争とは一線を画す、それに不満を覚えるインドの現状と言えるだろう・
また、ウクライナのゼレンスキー大統領は昨年9月、国連総会の一般教書演説で講演し、諸外国が対ロシアで一致団結する重要性を示したが、グローバルサウスの国々の外交官たちの欠席、空席が目立った。
一昨年、ゼレンスキー大統領はビデオ演説だったが、その時は外交官たちの間でスタンディングオベーションが起きたことから、この1年で“ウクライナ熱”が大きく冷え込んだことが考えられる。
グローバルサウスが大国の争いに強い不満を抱いていることは確かだが、反対にそれを巧みに利用し、実利を得ようとする思惑も見え隠れする。
今日、米中は如何にグローバルサウスを自らの陣営に引き込むかで競争を展開しているが、グローバルサウスからするとそれを天秤にかけることができる。
要は、中国に接近する姿勢を米国に示すことで米国から譲歩や支援を獲得し、反対に米国に接近する姿勢を中国に見せることで見返りを得ようという行動が可能だ。今後、こういった天秤外交を強化するケースがグローバルサウスの中から増えてくる可能性がある。【6月16日 治安太郎氏 まいどなニュース】
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【南ア アパルトヘイト廃止以来国政を担ってきた与党が過半数を失い白人政党と連立】
インドなどとともにグローバルサウスのリーダー国を自認してきた国の一つが南アフリカですが、大きな帰路に立っています。
故マンデラ元大統領の指導でアパルトヘイトを克服し、以来、国民の圧倒的信頼を受けて南アフリカ政治を牽引してきた与党「アフリカ民族会議」(ANC)は、汚職・腐敗、失業、電力不足、治安悪化といった問題を解決できず、その偉大な政治遺産を次第に食いつぶし、5月29日に行われた総選挙ではついに過半数を失いました。
****南ア大統領、主要政党に協力呼びかけ 与党過半数割れで連立協議念頭*****
南アフリカのラマポーザ大統領は、下院総選挙で与党「アフリカ民族会議」(ANC)の過半数議席割れが2日に確定したことを受け、連立協議を念頭に主要政党へ向けて積極的な協力を呼びかけた。
最終的な開票結果によると、ANCの得票率は前回2019年選挙時の57.5%から40.2%に低下し、それに伴って議席数は下院定数400のうち159と、従来の230を大きく減らして過半数に届かなくなる。かつて故マンデラ元大統領に率いられて30年にわたって政権を担ってきた同党としては、最悪の結果となった。
背景には高い失業率や大きな格差、頻発する停電などを巡る国民の怒りや不満があるとみられている。
ANCは第1党の座を維持したものの、政権継続のためには連立相手を探す必要がある。こうした中でラマポーザ氏は「南ア国民は彼らが投票した各政党に対して共通項を見つけ出し、意見の違いを克服して、国民全員のためになるよう協調することを期待している。それが国民の声だ。今こそ政治家全てが国家を第一に考える時だ」と発言した。
選挙結果を踏まえてANCの指導部は4日に会合を開き、今後の基本方針を決める見通し。
外部でラマポーザ氏退任の観測も出ているが、ANC幹部や支持母体の労組は同氏の続投を支持する姿勢を示している。
一方、第2党で白人主体の「民主同盟」(DA)のジョン・スティーンハイセン党首は、他党と政権協議を行うための専門チームを発足させたと明らかにした。
企業や海外投資家らは、ANCとDAの連立政権がより好ましいとの見方をしている。ANCを離脱したズマ前大統領が率いる「民族の槍」(MK)や、急進的な「経済開放の闘士」(EEF)が連立に加われば、政治や経済の混乱が懸念されるためだ。【6月3日 ロイター】
最終的な開票結果によると、ANCの得票率は前回2019年選挙時の57.5%から40.2%に低下し、それに伴って議席数は下院定数400のうち159と、従来の230を大きく減らして過半数に届かなくなる。かつて故マンデラ元大統領に率いられて30年にわたって政権を担ってきた同党としては、最悪の結果となった。
背景には高い失業率や大きな格差、頻発する停電などを巡る国民の怒りや不満があるとみられている。
ANCは第1党の座を維持したものの、政権継続のためには連立相手を探す必要がある。こうした中でラマポーザ氏は「南ア国民は彼らが投票した各政党に対して共通項を見つけ出し、意見の違いを克服して、国民全員のためになるよう協調することを期待している。それが国民の声だ。今こそ政治家全てが国家を第一に考える時だ」と発言した。
選挙結果を踏まえてANCの指導部は4日に会合を開き、今後の基本方針を決める見通し。
外部でラマポーザ氏退任の観測も出ているが、ANC幹部や支持母体の労組は同氏の続投を支持する姿勢を示している。
一方、第2党で白人主体の「民主同盟」(DA)のジョン・スティーンハイセン党首は、他党と政権協議を行うための専門チームを発足させたと明らかにした。
企業や海外投資家らは、ANCとDAの連立政権がより好ましいとの見方をしている。ANCを離脱したズマ前大統領が率いる「民族の槍」(MK)や、急進的な「経済開放の闘士」(EEF)が連立に加われば、政治や経済の混乱が懸念されるためだ。【6月3日 ロイター】
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結局、第2党で白人主体の「民主同盟」(DA)との連立によるラマポーザ大統領続投が決まりました。
*****ラマポーザ大統領が続投、連立政権樹立で合意 南アフリカ*****
南アフリカで5月29日に行われた総選挙で、30年前のアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃以来初めて過半数議席を失った与党「アフリカ民族会議(ANC)」が、野党との連立で合意した。それに伴い、14日の議会投票で、ANCを率いる現職のシリル・ラマポーザ大統領の再任が決まった。
ANCは、第2党となった中道右派「民主同盟(DA)」や複数の小規模政党と連立を組む。
ラマポーザ大統領は勝利演説で、新しい連立政権の誕生を称え、有権者は各指導者が「我が国のすべての人々のために行動し、連携する」ことを期待していると述べた。
先月末の総選挙で、ANCは30年ぶりに議会の過半数を失った。得票率はANCが40%、続いてDAが22%だった。この数週間、ANCがどこと連立を組むのか憶測を呼んでいた。
ANCのフィキレ・ムバルラ幹事長は、連立合意は「注目すべき一歩」だと述べた。
連立政権の樹立によって、2018年の激しい権力闘争の末にジェイコブ・ズマ氏に代わり大統領とANCトップに就任したラマポーザ氏は、権力を維持できることとなった。
ラマポーザ氏は今後、DAのメンバーを含め、閣僚ポストの割り当てを決定する。
複数政党の連立合意には、ANCを離党したメンバーが立ち上げた2政党は参加していない。有権者が求める経済改革を連立政権が実現できなかった場合は、こうした政党への支持が増える見通し。ただ、多くの国民は今回の前例のない大連立が成功することを望んでいると、世論調査は示している。(中略)
前例のない連立
数十年にわたりライバル関係にある、中道右派のDAとANCの連立は前例がない。
マンデラ元大統領のもと、ANCは人種差別的な政策、アパルトヘイトに反対する運動を主導し、南アフリカ初の民主的な選挙で勝利を収めた。
DAに批判的な人々は、DAがアパルトヘイト時代に築き上げた、少数派の白人による経済的特権を守ろうとしていると非難している。DA側はこれを否定している。
DAのジョン・スティーンハイセン党首は、14日遅くにケープタウンで議員を前に演説し、「今日は我が国にとって歴史的な日だ。新たな章の始まりだと、私は思う」と述べた。
国民議会(下院)はANCから議長を任命し、DAは副議長ポストを得た。
連立合意後に演説した党首の中には、2013年にANCを離党して「経済的解放の闘士」(EFF)を立ち上げたジュリアス・マレマ党首も含まれる。
マレマ氏はEFFは「南アフリカ国民の結果と声」を受け入れるとしつつ、「我々は、南アフリカの経済と生産手段に対する白人の独占力を強化するための、この政略的な連立には同意しない」と述べた。【6月15日 BBC】
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「理念」としては、黒人の地位向上を求めてきた黒人政党ANCと、白人の利益を代表するDAが連立して国勢を行うというのは“あるべき姿”と見ることも可能ですが、現実問題としては、依然として大きく残存する人種的な経済格差を前にして、黒人政党と白人政党が一体となって政策を遂行できるのかは、非常に難しいところです。
ただ、その取り組みに失敗すれば、急進的な黒人の地位向上を求めるズマ前大統領の政党「民族の槍」(MK)やマレマ氏の「経済的解放の闘士」(EFF)が更に台頭し、南ア政治・経済は不安定化することが予想されます。
【欧米寄りのDAとの連立で、グローバルサウス外交にも変化が】
連立を組む以上、外交面でもANCはDAに妥協することが必要で、これまで南アがとってきたグローバルサウスのリーダー国という役回りも難しくなるでしょう。
****ロシア包囲網に加わらず中立の南アフリカ、連立政権でグローバル・サウス外交に岐路****
南アフリカ国民議会は14日、シリル・ラマポーザ大統領の続投を決めた。アパルトヘイト(人種隔離政策)と闘った与党アフリカ民族会議(ANC)と、白人らが支持基盤の民主同盟(DA)との初の連立政権が誕生する。
(中略)最大野党DAは、ポピュリズムや過激な黒人優遇策を掲げる野党との連立を拒否。ANCは、ビジネス界に支持基盤があり、現実路線のDAとの連立を選んだ。少数政党も加わる見込みだ。
連立によって外交政策は転換を余儀なくされそうだ。ロシアのウクライナ侵略を巡っては中立路線を維持し、米欧主導の対露包囲網に加わっていない。
侵略後も中露と軍事演習を行うなど盟友関係を絶たず、新興5か国(BRICS)首脳会議では、中露が米欧への対抗軸として掲げる多国間主義に同調している。
DAはロシアに批判的で、ビジネス環境の向上を重視するため欧米寄りだ。中立路線の維持は難しくなる。
アパルトヘイト闘争を経て民主主義を勝ち取った南アに信頼を寄せる国は多く、南アはグローバル・サウス外交で主導的な役割を果たしてきたが外交の表舞台から遠のきそうだ。
「白人の任命、リーダーシップに対する反発は根強く、党内の対立は深い」(ノースウェスト大のアンドレ・ドゥベンヘイガー教授)として連立の行方を危惧する声がある。
特にANC内で横行する汚職にDAがメスを入れようとすれば政権内の対立は不可避となる。経済を巡ってもリベラル重視のDAと社会主義的な左派路線が根底にあるANCには隔たりがある。
ラマポーザ氏は「我が国の命運にとって歴史的な分岐点だ。我々は団結せねばならない」と強調した。【6月16日 読売】
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ラマポーザ大統領にとっては極めて難しい連立ですが、前述のように失敗すると南アは一気に不安定化する危険があります。