
(ホルムズ海峡での演習でミサイルを試射するイラン海軍艦艇 “flickr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/6615597763/in/photostream )
【「原油1滴たりともホルムズ海峡を通過させない」】
12月28日ブログ「イラン アメリカの経済制裁強化に対し、“ホルムズ海峡封鎖”に言及」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20111228)でも取り上げた、イラン核開発をめぐるアメリカの制裁強化、イラン側の“ホルムズ海峡封鎖”に言及した反発は、それぞれが強気の姿勢を崩しておらず、年が明けても収まる様子がありません。
イラン側は、昨年末から、沿岸と艦艇から長距離ミサイルの試射を含むイラン海軍の演習をホルムズ海峡で実施し、欧米側を牽制しています。
****イラン、ホルムズ海峡でミサイル試射 欧米をけん制*****
イラン海軍は31日、ホルムズ海峡で実施している演習の中で、各種ミサイルの試射を行うことを明らかにした。
イラン海軍幹部は国営テレビのインタビューで、数日中に地対艦、艦対艦、地対空、携行型など各種ミサイルの試射を行うと語った。今回の海軍演習は24日から来月1日までの10日間の日程で行われている。これに先立ちイランのファルス(通信は、すでに沿岸と艦艇から長距離ミサイルの試射が実施されたと報じていた。
イランは先に、同国の核開発計画を批判する欧米諸国が追加制裁を発動するならば、「原油1滴たりともホルムズ海峡を通過させない」と警告していた。ミサイルの試射によってイランがホルムズ海峡封鎖に踏み切る可能性を強調し、欧米をけん制する狙いがあるとみられる。
世界の原油の20%はペルシャ湾の入り口にあるホルムズ海峡を航行するタンカーで運ばれている。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は30日に発表した情報のなかで、ホルムズ海峡を世界で「最重要の要衝」だと表現した。
ホルムズ海峡では1日あたり約14隻のタンカーが1700万バレルの原油を運んでいる。2011年に海上輸送された原油の35%がホルムズ海峡を通って運ばれた。【11年12月31日 AFP】
************************
なお、軍事的にどれほどの意味を持つことかはわかりませんが、イラン側のミサイル試射は、ステルス性のある標的を想定したものだった発表されています。
****中距離ミサイルを発射=「ステルス対応の新型」―イラン****
イラン国営メディアによると、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡周辺で演習中のイラン軍は1日、レーダーに探知されにくいステルス性のある標的を想定した中距離地対空ミサイルの発射訓練を行った。
海軍のムサビ副司令官は「レーダー回避性能を持った標的や、ミサイル飛行の妨害を目的としたシステムに対処する最新技術がミサイルには導入されている」と語った。ミサイルは純国産で、試射したのは初めてという。【1月1日 時事】
**********************
また、国産核燃料生産の進展もアピールしていますが、欧米は“軍事用濃縮ウラン生産を加速する口実”ではないかとの疑念を持っています。
****イラン、国産核燃料棒を研究炉に装填****
イラン原子力庁は1日、濃縮度を約20%まで高めたウランから作った国産核燃料棒をテヘランの研究炉に装填したと発表した。AFP通信などが伝えた。
国産のウラン鉱石を使って製造した最初の燃料棒が研究炉に入れられ、炉内での挙動について検査を行っているという。
通常の軽水炉などより高濃縮度のウラン燃料を必要とするテヘランの研究炉は、医療用アイソトープの生産に使われている。イランは、過去に輸入した核燃料の在庫が間もなく枯渇するため、自力での核燃料確保が不可欠になったと主張し、核兵器への転用がより容易な濃縮度20%のウラン生産を正当化している。
欧米では、高度な技術を要する燃料加工をイランが本当に独自に実現できるか疑問視する見方も強い。イランは燃料生産が軌道に乗ったと主張し、濃縮度20%のウラン生産を加速する口実にする恐れがある。【1月2日 読売】
*********************
【オバマ大統領の“弱腰”が、共和党の大統領候補指名争いで、格好の「攻撃材料」に浮上】
一方、アメリカ側では、オバマ大統領がイラン制裁強化法案に署名して、イラン原油封じ込め体制が動き出しています。
****米国:イラン原油制裁法が成立****
オバマ米大統領は12月31日、休暇滞在先のホノルルで、イランから原油を輸入する国の金融機関に米国独自の制裁を科す法案に署名、同法は成立した。核開発を続けるイランへの圧力強化策として、同国経済を支える原油部門の封じ込めを狙う。
日本や欧州などイラン原油の輸入国は大きな影響を受ける可能性があるが、米議会筋によると日本などへの発動は当面猶予される見通し。【1月1日 時事】
**********************
更に、アメリカは、イランに敵対するサウジアラビアへの戦闘機売却、アラブ首長国連邦(UAE)への迎撃ミサイル売却で、イラン包囲網を強化しています。
****米政府、サウジへの武器売却は「強いメッセージ」****
米政府は29日、サウジアラビアにF15SA戦闘機84機を含む294億ドル(約2兆2600億円)相当の武器を売却すると発表した。湾岸地域に「強いメッセージ」を送るものだとしている。
イラン政府は自国の核開発計画について米国が新たな制裁を加えるなら、世界の石油タンカーの多くが通過するホルムズ海峡(Strait of Hormuz)を封鎖すると警告し、このところ米国とイランの緊張は高まっている。
合意文書は24日、サウジアラビアの首都リヤドで締結された。米政府によると、米ボーイング製のF15SA戦闘機84機のほか、旧型のF15戦闘機70機の近代化改修や弾薬・部品の売却、訓練、整備契約も盛り込まれているという。
アンドリュー・シャピロ米国務次官補は、米ワシントンD.C.で記者団に対し、今回の売却は「この地域の国々に、米国がペルシャ湾を含む中東地域の安定に関与しているという強いメッセージを送るだろう」と語り、「サウジアラビアの、国外からの脅威に対する防御力を高めるものだ」と説明した。
■米経済にもプラス
2010年10月にサウジアラビアへの600億ドル(約4兆6200億円)規模の武器売却の一部として明らかにされていた今回の武器売却は、バラク・オバマ大統領が休暇を過ごすハワイで発表された。
ジョシュ・アーネスト(米大統領副報道官はホノルルで、依然として失業率が高い中、今回の武器売却は5万人以上の雇用を支え、米国経済にとって年間35億ドル(約2700億円)のプラスになると述べた。
国防筋によると、売却した武器などの引き渡しには15年から20年かかる見込みで、売却する航空機には攻撃ヘリコプター「ブラックホーク」や同「アパッチ」も含まれているという。【11年12月31日 AFP】
*************************
危機感を背景にした武器輸出で、自国の軍需産業が潤う・・・という側面も、アメリカの政策決定において大きな影響力を持つ要因でしょう。
****UAEに迎撃ミサイル売却=対イラン包囲網強化―米国防総省****
米国防総省は30日、アラブ首長国連邦(UAE)との間で25日に、迎撃ミサイル96発やミサイル追尾レーダーなど総額34億8000万ドル(約2679億円)相当の弾道ミサイル防衛システムを売却する合意書に署名したと発表した。
米国はこれまで、クウェートに209発の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を売却。サウジアラビアには地対空誘導弾をPAC3に向上させる契約も締結しており、核と弾道ミサイル開発を進めるイランに対する防衛網を強化している。【11年12月31日 時事】
************************
しかし、それでもオバマ大統領のイラン対応を“弱腰”として批判する声が、アメリカ国内では大統領選挙絡みで高まっているそうです。
****イラン対応焦点に=テロ戦実績、効果は限定的―米大統領*****
11月の米大統領選挙で再選を目指す民主党のオバマ大統領は、主要争点の経済・内政問題に加え、外交・安全保障面でも試練にさらされる。テロ対策やイラク戦争終結の実績が支持率浮揚にもたらす効果は限定的。一方で、緊張が高まるイラン情勢の行方が再選戦略に影を落としている。
オバマ政権は2011年、米同時テロの首謀者で国際テロ組織アルカイダのトップ、ウサマ・ビンラディン容疑者の殺害に成功。イラク戦争を公約通り同年末に終結させたほか、アフガニスタンからの米軍撤退を開始するなど、安全保障政策で大きな成果を上げた。
しかし、ピュー・リサーチ・センターの最新世論調査で、米国の最重要課題に国家安全保障を挙げた人はわずか1%、外交問題全般でも6%だった。外交評議会のジェームズ・リンゼー研究員は「大統領が外交上の成功から得る見返りは非常に小さい」と指摘。失策のみがやり玉に挙げられると解説する。
共和党の大統領候補指名争いで、格好の「攻撃材料」に浮上したのがイラン情勢だ。イスラエルでイランの核開発阻止のための単独攻撃論がくすぶっていることを背景に、ロムニー前マサチューセッツ州知事はオバマ大統領を「臆病で弱腰」と批判。ギングリッチ元下院議長は、イスラエルの攻撃を支持すべきだと怪気炎を上げた。【1月2日 時事】
*************************
強気の極論が世論に支持されやすい・・・という政治状況は、対立をエスカレートさせ、破滅的な結果をも招くことになりかねません。
アメリカは自らを民主主義の守護神と任じていますが、民主主義が衆愚政治に堕す不安を強く感じます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます