孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ルーマニアのやり直し大統領選挙、中国地方政府のAI競争など

2025-03-11 00:44:11 | 人権 児童
(【3月10日 レコードチャイナ】 中国のロボット なんだかシュール こういう技術革新と強権支配政治は相性がいいみたい)

【ルーマニア 極右候補排除の中央選管決定にトランプ政権が激しく批判】
ベトナムを旅行中で、昨夜、北部の首都ハノイから中部の古都フエに移動しました。

気温は23度ぐらいに上がったものの、相変わらずの曇天で夕方からは霧雨。今日は何とかなったものの、明日が心配。

旅行中に加え、マウスも故障してPC操作もままならず。困った。

・・・・ということで、気になった記事をいくつかピックアップするだけ。

無名の極右候補がSNS駆使で一躍トップに踊り出たルーマニア大統領選挙は、以前のブログでも取り上げたように、同候補による偽情報の拡散、更には背後にロシアの影も・・・ということで、やり直し選挙になっていました。

ただ、依然として極右候補の人気は高かったのですが、中央選管は同候補の立候補を認めない決定を。
これにルーマニア国内の同候補およびその支持者だけでなく、アメリカのバンス副大統領やマスク氏が激しく反発しています。

****ルーマニア大統領選、極右の有力候補が出馬禁止へ 米国は反発か****
ルーマニア中央選管は9日、大統領選の最有力候補と目されていた極右政治家のカリン・ジョルジェスク氏の出馬を認めないと決めた。欧米メディアが一斉に報じた。ジョルジェスク氏は昨年11月に行われた大統領選の第1回投票で首位となり決選投票へ臨むはずだったが、SNS(ネット交流サービス)を通じた世論操作が行われていた疑いが浮上。選挙自体が無効とされ、5月にやり直す異例の展開となっていた。
 
一方、米トランプ政権は選挙の無効判断を批判してきた。ウクライナ情勢への対応で溝が広がる欧米関係が、ルーマニア大統領選を巡ってさらに混迷する可能性もある。
 
ジョルジェスク氏はルーマニアも加盟する北大西洋条約機構(NATO)に懐疑的で、ロシアのプーチン大統領を「愛国者」とたたえるなど、言動が物議を醸してきた。

ただ、トランプ政権は、大統領選を無効にしたことをバンス副大統領が「表現の自由」に違反すると批判するなど、ジョルジェスク氏を間接的に支持してきた。
 
ジョルジェスク氏は国内の世論調査でも4割と高い支持率を誇る。5月の大統領選への出馬を7日に届け出たが、中央選管は過去の言動などが過激思想を禁じた法律に違反しているとして認めなかった。
 
出馬禁止を受け、ジョルジェスク氏はX(ツイッター)に「欧州は今や独裁制となり、ルーマニアは圧制下にある」と投稿した。トランプ政権下で「政府効率化省(DOGE)」を率いる実業家イーロン・マスク氏もXで中央選管の決定は「クレージーだ(まともじゃない)」と批判した。
 
英紙フィナンシャル・タイムズによると、ジョルジェスク氏が中央選管に抗議した場合、憲法裁判所が12日までに出馬の可否を最終判断する。
 
昨年11月の大統領選では、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などで人為的にジョルジェスク氏に有利な投稿が拡散された疑いが浮上し、ロシアが関与した可能性も指摘された。決選投票直前の12月6日、憲法裁判所が選挙結果を取り消していた。【3月10日 毎日】
*********************

ルーマニア中央選管の決定もかなり強引。

一方、ここぞとばかりに「表現の自由に反する」「クレージー」と批判するトランプ政権の姿勢も、要するに西欧リベラリズムより極右的あるいはロシア的な権威主義にシンパシーを感じているということであり、今後の国際政治にとって極めて問題。

今回ルーマニア中央選管の決定を「表現の自由に反する」「クレージー」と批判するなら、どうしてプーチン政権を同じように、あるいはそれ以上に批判しないのか理解に苦しみます。

【イスラエル ガザ住民の命を人質に】
中東パレスチナでは、イスラエルは徹底的にガザを締め上げるつもりのようです。
ハマスはともかく、電気も水も止められたら、すでに支援物資の搬入も止められたガザ住民の生活と命はどうなるのか?

****イスラエル政府、ガザ地区への電力供給を停止 停戦合意めぐり交渉難航の中*****
イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意をめぐり、交渉が難航する中、イスラエル政府は、9日、パレスチナ自治区ガザ地区への電力の供給を停止すると発表しました。

イスラエルのコーヘン・エネルギー相は9日、ガザ地区への電力の供給を停止するよう指示したと明らかにしました。

イスラエルメディアによりますと、2023年10月のハマスの大規模攻撃以降、イスラエルはガザ地区への電力供給の大部分を止めていて、今回の決定では、ガザ地区にある海水を淡水化するための施設が影響を受けるとみられます。

イスラエル側は、「ハマスが停戦合意の第一段階の延長を拒否した」などとして、ガザ地区への物資の搬入を停止することを発表していて、今回の決定を含めて、ハマス側への圧力を強める構えです。

10日には、カタールのドーハで停戦をめぐる交渉が行われる予定ですが、進展は見通せない情勢です。【3月10日 日テレNEWS】
************************

【中国 地方政府のAI競争加速】
おそらくAIを支配するものが今後の世界を支配する・・・・ということでしょうが、DeepSeekで見せた中国の躍進ぶりが印象的。

*****AI競争が加速、中国各地が競争力を強化*****
人工知能(AI)産業は最近、大きな注目を集めている。大まかな統計によると、2025年に入ってから、複数の地域が科学技術イノベーションと産業高度化を奨励する政策を相次いで発表し、AIの競争力を強化し、発展に向けて他地域に先駆けてチャンスをつかもうとしている。

湖北省武漢市――単一プロジェクトに最大2000万元の資金提供
(中略)

江蘇省蘇州市――最大1億元のプロジェクト支援
(中略)

浙江省杭州市――既存の産業政策資金の15.72%を投入
(中略)

広東省深セン市――100億元規模の産業基金を設立
(中略)

広東省東莞市――規模50億元以上のサブファンドグループを統一的に設立
(中略)

四川省天府新区――単一プロジェクトに最大1000万元の補助金
(中略)(提供/人民網日本語版・編集/KS)【3月10日 レコードチャイナ】
*********************

地方政府で実績を挙げた者が、中央で登用されるという中国共産党のシステムを背景にした地方政府の競争です。

地方政府による不動産投資加熱・財政悪化といった問題もありますが、一方で社会のイノベーションに向けた原動力にも。

【アメリカ F35戦闘機にキルスイッチ??】
真偽のほどはわかりませんが、本当ならアメリカ依存の日本にとって怖い話

****「F35戦闘機にキルスイッチ」 導入予定のドイツで懸念「米側の判断で機能停止できる」****
ウクライナ問題を巡り米トランプ政権と欧州諸国が対立する中、ドイツが米から来年導入を予定しているF35戦闘機に、米側の判断で機能を停止できる「キルスイッチ」が仕掛けられるのではないかとの懸念がドイツ国内で出ている。欧州メディアが報じた。

ウクライナでは、米が軍事情報提供を停止したため、供与されている一部の兵器の機能が制限されているとされる。独紙ビルトは8日、「キルスイッチは単なる噂ではない。しかし、それを使わなくても、ミッションシステムで簡単に飛行機を地上にとどめさせられる」「米がウクライナに対して行ったのと同じことをF35に行う可能性があるなら、契約のキャンセルを検討すべきだ」とする専門家のコメントを伝えた。

一方、英紙テレグラフは9日、「F35はいつでも自律的かつ独立して使用できる」「F35は遠隔操縦の航空機ではない」とするスイスやベルギーの国防担当者の見解も報じた。

航空自衛隊は平成29年からF35の配備を進めている。【3月10日 産経】
************************

もしアメリカに逆らったら、主力戦闘機が一瞬に無効化される・・・多分フェイクだとは思いますが・・・

【中国 トランプ関税に対抗】
トランプ関税に対し中国も報復

*****中国、対米追加関税「第2弾」はトランプ氏支持層の農家揺さぶり 農産物など740品目****
中国政府は10日、米国に対する第2弾の追加関税を発動したもようだ。トランプ米政権が中国への追加関税を20%に引き上げたことへの報復措置で、米国から輸入する小麦や大豆など計740品目に最大15%の追加関税を課す。

今回は農産物に照準を絞っており、トランプ大統領の支持基盤である農家を揺さぶる狙いがうかがわれる。

中国政府の発表によると、米国産の鶏肉や小麦、トウモロコシ、綿花など29品目に15%、大豆や豚肉など711品目に10%の追加関税をそれぞれ課す。米中貿易戦争のさらなる激化は避けられない見通しだ。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、今回の対象品目の年間貿易額は約223億ドル(約3兆3000億円)。米国からの輸入総額の13・6%を占める。中国国営中央テレビ系の交流サイト(SNS)アカウントは「中国は世界最大の農産物輸入国であり、米国は世界最大の農産物輸出国だ」と強調した。

中国政府が2月に発動した報復関税第1弾は、米国産の石炭や原油、液化天然ガス(LNG)などが対象で、今回と同様にトランプ氏の支持基盤である化石燃料産業への打撃を図った。対象を絞った報復関税は、トランプ政権に効果的に打撃を与えるとともに、報復カードを手元に残す狙いとみられる。

中国側は「報復」に踏み出す一方で、米側に「対話」も呼び掛けている。

中国の王毅共産党政治局員兼外相は今月7日に全国人民代表大会(全人代)に合わせて記者会見し、トランプ政権が中国に追加関税を課していることに対し「圧力をかけ続けるなら、中国は必ず断固として対抗する」と発言。同時に「平和共存は必須だ」と述べ、米側に歩み寄りを求めている。【3月10日 産経】
***********************



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウクライナ  ロシア西部クルスク州の占領地支配で迫られる苦渋の選択 アメリカ社会の動向など

2025-03-09 12:52:05 | 欧州情勢
(ホテル近くのハノイ大教会 3月5日ハノイ到着時)

【ウクライナ なけなしの「カード」でもあるロシア西部クルスク州の占領地支配が窮地】
5日から14日までベトナムを旅行中のため、ブログ更新ができません。

ベトナムは日本より暖かく、30℃近くになることも・・・・と思って薄着・夏服で着たのですが、ハノイは毎日重く雲が垂れこめ、気温は14~18℃。 夏服で寒さに震えながら観光、いささかモチベーションも下がり気味。(ブログ更新がまったくできないのもそのせい)

一応、帰国してからのためにニュースサイトのチェックだけはやっていますので、昨日・今日で気になったニュースだけピックアップ。

ウクライナ情勢はウクライナにとって厳しい状況。
ゼレンスキー大統領がトランプ大統領との会談で激しい口論になったのは周知のところ。ゼレンスキー大統領はもっと冷静に、戦略的に対応すべきだったとの批判もありますが、ロシアの侵略をまったく問題視せず、単に「取引」だけしか考えていないようなトランプ政権の対応に直面しては、やむを得ない対応だったように思います。

会談決裂を受けて国内の求心力は高まった様子。

****ゼレンスキー大統領、国内で求心力高まる…トランプ氏との会談決裂「主張すべきことを主張した」****
ロシアの侵略を受けるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が国内で求心力を高めている。2月末の米国のトランプ大統領との会談決裂を、国内世論は「主張すべきことを主張した」と評価した模様だ。米露首脳は大統領選の実施を求め、「ゼレンスキー氏は選挙に勝てない」と根拠なく訴えてきたが、思惑は外れつつあるようだ。

キーウ国際社会学研究所が7日公表した世論調査結果によると、2月14日〜3月4日に行った調査でゼレンスキー氏を「信頼する」と回答したのは、2月上旬の前回調査から10ポイント上昇して67%。「信頼しない」の29%を大きく上回った。

2月28日の米ウクライナ首脳会談では、トランプ氏がゼレンスキー氏に「あなたにカード(切り札)は一切ない。我々に感謝するべきだ」と声を荒らげた。調査結果では、会談決裂後のデータ(3月1〜4日)は「信頼する」が68%まで上昇したという。

2022年2月の侵略開始後に圧倒的支持を集めたゼレンスキー氏は、徐々に支持率を下げていたが、今回持ち直した。同研究所のアントン・フルシェツキー所長は、トランプ政権の言動を「ウクライナ人はウクライナ全体への攻撃と受け止めている」と分析。ウクライナ社会が団結する様子が見てとれるという。

プーチン露政権は、昨年5月の任期満了に伴う大統領選が戦時下で延期されたため、ゼレンスキー氏に正統性はないと主張してきた。トランプ氏は同調し、ゼレンスキー氏を「選挙なき独裁者」と非難し、支持率は「4%」と根拠なく主張。親露派政権樹立を目指すロシアに寄り添うように、大統領選実施を求めてきた。

米政権内には、ゼレンスキー氏が米国提案の和平案に同意しなければ「身を引くべきだ」との主張もあり、米側は、トランプ政権に協力姿勢を示すウクライナ野党幹部らとの接触を図っている模様だ。

米メディア「ポリティコ」は6日、トランプ政権高官が、ウクライナのポロシェンコ前大統領率いる野党幹部やティモシェンコ元首相らとそれぞれ秘密裏に会談したと報じた。両氏は前ウクライナ軍総司令官のザルジニー駐英大使らとともに次期大統領選候補に挙がる。【3月8日 読売】
************************

ティモシェンコ元首相・・・・かつては美しい女性宰相でしたが、まだ政治的影響力があるのでしょうか? かなりしたたかな女性でもあります。

支持率は高まったものの、戦況は厳しい。

****越境のウクライナ軍1万人包囲か 米の情報提供停止で窮地に****
英紙デーリー・テレグラフは7日、ウクライナ軍兵士約1万人が越境攻撃するロシア西部クルスク州でロシア軍による包囲の危機にあると報じた。トランプ米政権がウクライナへの機密情報の提供を一時停止して以降、同州でロシア軍が攻勢を強めており、ウクライナ軍は窮地に立たされいる。
 
テレグラフによると、機密情報の提供が停止された以降の数日間で、ロシア軍はクルスク州スジャ近郊の防衛線を突破し、ウクライナ軍の重要補給路の遮断を狙い攻撃している。ロシア国防省は8日、スジャ近郊で3集落を奪還したと発表。ウクライナ軍が近く、同州からの撤退を余儀なくされるとの観測も出ている。

ウクライナ軍は昨年8月にクルスク州への越境攻撃を開始。約2週間で約1300平方キロを制圧したが、ロシア側の奪還が続き、今年1月下旬時点での占領面積は約400平方キロとされる。【3月9日 共同】
******************

アメリカは武器支援停止だけでなく、情報提供も停止してウクライナに圧力をかけています。
アメリカからの情報がなければ、ハイマースのような武器使用も困難とか。

トランプ大統領は徹底的にウクライナを締め上げるつもり。

ロシア西部クルスク州に侵攻して今後の交渉・取引のためのなけなしのカードを確保してきたウクライナ軍ですが、今や退路を絶たれつつあり、撤退か全滅・降伏かの選択を迫られています。


****ロシアがクルスク州で防衛線突破、ウクライナ軍の退路狭まる 報道****
ウクライナが昨年8月に越境攻撃を仕掛け今も一部を占領しているロシア西部クルスク州で、ウクライナ軍は防衛線を突破され、退路も狭まりつつある。軍事ブロガーらが7日、伝えた。

ウクライナは1年以上にわたって前線の全域でじりじりと領土を奪われ続けているが、将来の和平交渉での交渉材料にできることを期待してクルスク州の一部を死守している。

ウクライナ軍と連携して戦局を追跡しているサイト「ディープステート」によると、ウクライナは今も占領している町スジャの南方で6日、ロシア軍に防衛線を突破された。

ウクライナは少なくともスジャにつながる道路1本の一部の支配権を喪失。ここ数日間にスベルドリコボ村の西側から部隊を撤退させた。

ウクライナ紙ウクライナ・プラウダは7日、同国軍内部の情報筋の話として、ロシア軍は補給路の遮断を試みており、ウクライナ側は「状況の安定化」に努めていると報じた。

防衛アナリストのヤン・マトベエフ氏は6日、ウクライナ軍は東西からロシア軍に圧迫され、いざという時の退路は狭い回廊1本しか残されていないとの見方を示した。

マトベエフ氏はテレグラムで、「回廊は幅12〜13キロに狭まっている。残りのエリアでは、ウクライナ軍の占領地が狭過ぎて安全な場所を見つけることができない」と指摘。

「ウクライナ軍司令部は決断を下さなければならない。(越境攻撃)作戦を完了し、部隊を温存してクルスク州から撤退するか、(クルスク州で)踏ん張り、すべてを失うリスクを取るかだ」と続けた。

著名なウクライナ人活動家、セルヒー・ステルネンコ氏は6日、現地部隊からの情報だとして、「クルスク州の兵たん事情は急速に悪化しており、既に危機的状況にある」「スジャへの補給ルートは敵の完全な射撃統制下にある」とX(旧ツイッター)に投稿した。

ロシアの従軍記者アレクサンドル・コッツ氏は7日、「ウクライナはもはや痛みを伴わずに軍を退くことができない。遅過ぎた。彼ら(クルスク州駐留部隊)に補給さえできない」と述べた。 【3月8日 AFP】
*************************

ロシア軍の方は攻勢を強めています。

****ロシア兵100人 直径1.4mのパイプラインを通りクルスク州に進軍か ウクライナ紙報道****
ロシア軍は、直径1.4メートルの天然ガス・パイプラインの中を通って、ウクライナ軍が占拠する西部クルスク州の奪還を図っていると報じられました。

ウクライナ・プラウダは8日、100人ほどのロシア軍兵士が停止中の天然ガスパイプラインの中を通って、ウクライナ軍が占領するクルスク州の要衝、スジャ近くに進軍したと報じました。

パイプラインは、直径1.4メートルほどで、ロシア軍は数日かけて周囲を空爆し、この作戦を準備していたと伝えています。

ウクライナ軍関係者は、察知していたものの兵たんの能力が限られていて、パイプラインを爆破できなかったと話しているということです。

パイプラインは、ロシアからヨーロッパに向けて天然ガスを送るのに使われていましたが、今年1月1日で契約が切れ、使用が停止されていました。

ロシア領のクルスクを占領していることはウクライナにとって停戦交渉の大きな切り札ですが、欧米の複数のメディアがウクライナが近くクルスクからの撤退を余儀なくされる可能性があると指摘しています。【3月9日 テレ朝news】
************************

欧州諸国がいくら「ウクライナは一人ではない」と支援を口にしても、現実は厳しいようです。

ゼレンスキー大統領としては何とかトランプ大統領との関係を修復し、支援をつなぎ留めたいところ。

*****ウクライナと米高官「11日にサウジアラビアで会談」ゼレンスキー大統領表明、鉱物資源めぐる協定などについて協議か*****
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナとアメリカの高官が11日にサウジアラビアで会談を行うと明らかにしました。

ゼレンスキー大統領は8日、SNSで、サウジアラビアで10日にムハンマド皇太子と会談し、11日にはウクライナとアメリカの高官会談を行うと明らかにしました。

高官会談は、ウクライナ側からイエルマーク大統領府長官、シビハ外相、ウメロフ国防相らが出席するとしていて、ゼレンスキー氏は参加しない見通しです。アメリカ側は、ルビオ国務長官とウォルツ大統領補佐官、ウィットコフ中東担当特使が出席する見込みです。

先月の首脳会談の後に署名する予定だったウクライナの鉱物資源をめぐる協定などについて話し合うとみられ、ゼレンスキー氏は「我々は建設的な対話に全力で取り組んでいて、必要な決定について協議、合意することを望んでいる」としています。(後略)【3月9日 TBS NEWS DIG】
*********************

ゼレンスキー大統領の心中いかばかりかと思う次第。

【アメリカ社会はどこに向かうのか?】
そのほかきになった記事は多数。

****アメリカが留学生向け奨学金を停止 日本人も影響*****
トランプ政権が留学生向けの奨学金への助成を停止しています。

国際教育交流団体「NAFSA」によりますと、アメリカ国務省は先月13日、助成金の支払いを15日間限定で停止すると通知しましたが、現在も解除されていないということです。

NAFSAファンタ事務局長兼CEO
「助成金の凍結は、アメリカの経済や安全保障に不可欠な留学や国際交流プログラムの存続を脅かします」

助成停止の対象となっているのは、国務省が予算を拠出するフルブライト奨学金やギルマン奨学金などで、奨学金を利用している日本人留学生も今後、休学や退学を迫られる可能性があります。

フルブライト奨学金は第2次世界大戦後、世界平和を実現するために、アメリカと諸外国との相互理解を目的として設立されました。 卒業生の62人がノーベル賞を受賞していて、44人の国家元首や政府首脳を輩出しています。(「グッド!モーニング」2025年3月9日放送分より)【3月9日 テレ朝news】
*************************

*****「女の子がそばかすを受け入れる物語」が図書館から撤去…アメリカで続く「禁書」何が起こっているのか?*****
今年1月に発足したアメリカのトランプ政権は立て続けに反移民政策、トランスジェンダーの権利剥奪、反DEI(多様性、公平性、包括性)を打ち出し、有色人種やLGBTQなどマイノリティを激しく攻撃している。

そんな中で2月、多様性に関する図書が国防総省が運営する米軍基地内の学校図書館から撤去され、審議対象になったと報じられた。その中には俳優ジュリアン・ムーアが20年前に出した自伝的児童書『フレックルフェイス・ストロベリー』も含まれていた。自分のそばかすが大嫌いだった女の子が人はそれぞれ違うのだと気づき、そばかすも受け入れていくという物語だ。これの何が撤去に値するのかと疑問が浮かぶ。

ニューヨーク在住のライター堂本かおる氏による『絵本戦争 禁書されるアメリカの未来』は、アメリカで2021年から続く「禁書」の動きを追い、実態を解き明かすものだ。ここでの禁書とは学区レベルでの決定や州法の制定に基づき、学校の図書館や教室から特定の本が排除されることを指す。先述の例は、この動きが最近、政権レベルにまで波及したことを表している。

私は昨年夏まで保守的なモンタナ州に住んでいた。田舎で住民の9割は白人と、堂本氏が暮らすニューヨークとは対照的な環境だった。しかしそうした違いに関わらず全米各地で人種や歴史、ジェンダーや性的指向に関する図書の禁書運動が起きている。

堂本氏が詳述するように強硬派の共和党州知事を持つフロリダ州やテキサス州では特に盛んだ。黒人史を描く「1619プロジェクト」への批判を契機として、「親の権利」を掲げるマムズ・フォー・リバティーなどの極右団体がコロナ禍以降、マスク着用への反対運動などを通して影響力を強めた結果、禁書運動は全米に急速に広がった。
 
本書ではアメリカで禁書とされた本を中心とした約100冊の子ども向け絵本が紹介されている。黒人、LGBTQ、ラティーノ、イスラム教徒、アジア系など、今まさにアメリカで攻撃対象となっているマイノリティの豊かな歴史や経験、文化を描き出した絵本だ。黒人に関してはブラックカルチャーに精通する堂本氏の知見が存分に発揮され特に充実。これらの絵本は子どもたちが多様な人たちとともに社会で生きていく上で大きな助けとなるものだ。

また、多様性こそがアメリカ社会の強みであることを如実に示しており、だからこそ多様性攻撃の文脈で敵視されるのだろう。実に豊かでクリエイティブな絵本文化に感嘆しつつ、子どもたちがそれらに簡単にアクセスできなくなる現状の理不尽さに怒りが募る。
 
トランプ政権の下、今後もアメリカでマイノリティ排斥や極右化が広がる可能性は高い。最終コラムにある禁書対抗運動の紹介も合わせ、世界的に広がる多様性排除の動きに対抗するためにも欠かせない一冊。(後略)(山口 智美/週刊文春 2025年3月13日号)【3月9日 文春オンライン】
*************************

アメリカ社会はどこに向かうのか? 日米安保条約のあり方も問題になるのか、単に「ディール」で簡単に切り捨てられるという戦略上の問題だけではなく、アメリカは日本人が思い描くようなアメリカではなくなりつつあるということも念頭に置くべきという感が。

【シリアでもパレスチナでもあめりにも軽い住民の命】
シリア情勢も不穏

*****シリア衝突、死者千人規模か 暫定政府への批判、高まる可能性****
シリア北西部ラタキア周辺などで起きた暫定政府の治安部隊とアサド旧政権支持者らの武装集団による衝突を巡り、シリア人権監視団(英国)は8日、死者が市民を含めて千人規模に上ると伝えた。暫定政府は融和を訴えているが、内戦で深まった宗教・宗派間の対立解消は困難で、暫定政府への批判が高まる可能性がある。
 
監視団によると、700人以上の市民が犠牲になったほか、治安部隊と武装集団の双方で計250人以上が死亡した。監視団は、銃器を持った人々が暫定政府側に加勢したことで犠牲者数が拡大した可能性があると指摘した。
 
衝突は6日に始まった。監視団によると、ラタキアや西部タルトス、中部ハマなどで市民が殺害されたという。ラタキアなど地中海沿いはアサド前大統領と同じ少数派のイスラム教アラウィ派が多く暮らす地域で、旧政権の支持基盤だった。
 
中部ハマのアラウィ派の女性(37)は共同通信の取材に対し「友人の家族全員が殺害された」と訴えた。アラウィ派を狙った「虐殺」だと主張し「外出するのが怖い」と話した。【3月9日 共同】
********************

パレスチナ情勢も。

*****イスラエル、圧力を一層強化か ガザ停戦交渉、空爆の再開も*****
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版は8日、イスラエルがイスラム組織ハマスに対し、パレスチナ自治区ガザの停戦合意交渉を巡り、圧力をさらに強める計画を策定したと報じた。空爆や襲撃を再開する可能性がある。ガザではイスラエル軍の散発的な攻撃で死傷者が出ており、被害が拡大する恐れがある。
 
イスラエル首相府は8日、ガザ停戦合意の交渉のため、代表団を仲介国カタールの首都ドーハへ10日に派遣すると発表した。これに先立ちハマスは、恒久停戦につながる第2段階への移行に関する仲介国との協議は「前向きに進んでいる」との声明を出していた。
 
恒久停戦に否定的なイスラエルは暫定的な停戦の延長を主張。ガザへの人道支援物資の搬入を全面停止し、ハマスに受け入れを迫っている。
 
WSJによると、戦闘再開を求めるイスラエルのスモトリッチ財務相は、ハマスが暫定的な停戦の延長に応じなかった場合は「(ガザへの)電気と水の供給停止を含めた措置を取ることを検討している」と述べた。【3月9日共同】
***********************

シリアにしてもパレスチナにしても、住民の命が全く重視されず、戦争の具として利用されている現実に心が寒くなります。

このあたりはまた帰国してから、モチベーションが回復したら。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプ関税に苦慮する世界各国 ベトナムと日本の場合

2025-03-04 21:39:14 | 東南アジア

(相互関税の検討を指示する大統領令に署名したトランプ大統領【2月26日 JBpress】)

【ベトナム 米中とバランスをとり、欧州とも】
明日から14日までベトナムに行ってきます。もちろん単なるお遊び・観光です。
そのためブログは「更新できるときは更新する」といった感じで、ゆるゆると。

2月12日ブログ「ベトナム  米中対立の“漁夫の利” 巨額の対米貿易黒字は関税“標的”に 今後も米中間でバランス」で取り上げたように、ベトナムはこれまでの米中対立ではチャイナリスクを警戒する企業がベトナムに拠点を移すなどで“漁夫の利”を得て、経済は急成長してきました。

しかし、対米貿易黒字で第4位という巨額の黒字はトランプ関税の絶好の標的になる・・・ということで、これまでのようにいくかどうかはわからない状況になっています。(トランプ大統領の施策で先が見えないのはベトナムだけでなく、日本を含めた世界全体が同じように困っていますが)

いずれにしても経済的に大きな比重を占めるアメリカ、南シナ海で対立があるとは言え、同じ社会主義国として政治体制維持のためにはやはり緊密な関係が重要な中国・・・その間でバランスをとる必要があります。

トランプ関税については、予防策を。

****ベトナム、米国からの農産物輸入拡大の用意 米関税のリスク拡大****
ベトナムのグエン・ホン・ジエン商工相は米国からの農産物輸入を拡大する用意があると述べた。政府が14日明らかにした。

トランプ米大統領は13日、米国の輸入品に関税を課している全ての国に「相互関税」を課すと発表している。

ベトナムはアップルやサムスンなど多国籍企業の製造・輸出拠点となっており、米国の関税で大きな打撃を受ける可能性がある。昨年の対米貿易黒字は過去最高の1235億ドルで、中国、欧州連合(EU)、メキシコに次いで多かった。

同相は今週の会合でマーク・ナッパー駐ベトナム米国大使に「市場を開放し、米国からの農産物輸入を増やす用意がある」と伝えた。

米政府のデータによると、昨年の米国の対ベトナム輸出の4分の1以上は農産物。大半が綿花、大豆、ナッツ類だった。

ベトナムは米国の主要貿易相手国の中で特に関税差が大きく、米国よりも高い輸入関税を課している。世界貿易機関(WTO)によると、ベトナムは輸入関税率は平均9.4%。【2月14日 ロイター】
********************

中国とも緊密な関係を維持。

****ベトナム国会が中国へ通じる鉄道建設を承認、総額80億ドル超―独メディア****
2025年2月19日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、ベトナム国会が中国につながる鉄道路線の建設計画を承認したと報じた。

記事は、ベトナム国会が19日、同国最大の北部港湾都市ハイフォンから西へ向かい、首都ハノイを経由して中国雲南省と接するラオカイまで延びる鉄道計画を承認したと紹介。幹線は全長約390.9キロメートル、3本の支線の長さは計約27.9キロメートル、総建設費は現在のところ83億ドル(約1兆2500億円)と見積もられており、今年着工して2030年の完工を目指すと伝えた。

ベトナム北部にはサムスンやフォックスコン、ペガトロンなどの大手国際電子企業の生産拠点が多数存在し、特に中国からの原材料供給に依存している一方で、フランス植民地時代に建設された1世紀以上前の鉄道など、老朽化した交通インフラが同国のさらなる経済成長の大きな障害になっていると指摘。

現在、中国への輸送の多くが低速な上に国境での遅延が発生しやすいトラックに依存している状況であり、運行時速が在来鉄道の50キロから3倍以上の160キロへと引き上げられる新鉄道は、貨物輸送と旅客輸送の両方で大きな役割を担うことが期待されていると伝えた。

また、新鉄道は中国の「一帯一路」構想、2004年にベトナムが中国に提唱して合意した「両廊一圏(中越間の2本の経済回廊と、トンキン湾経済圏)」構想における両国のパートナーシップを強化すると考えられており、中国が一部の資金を融資する予定だと紹介。

現時点でどの企業が建設を担当するかは決まっていないものの、昨年末にベトナムのファム・ミン・チン首相が雲南省を訪問した際、中国鉄建(CRCC)がプロジェクト参加を希望したという中国メディアの情報を伝えた。

記事はさらに、19日のベトナム国会では今年の経済成長目標を従来の6.5〜7%から8%に引き上げること、31年の完成を目指す同国初の原子力発電所の建設、イーロン・マスク氏率いるスペースXが国内でスターリンクの衛星インターネットサービスを提供することも承認されたと伝えている。【2月20日 レコードチャイナ】
*******************

更に、ベトナム同様にトランプ関税の標的となる欧州も、ベトナムとの関係強化・販路拡大を目指しているようです。

****欧州首脳、ベトナム訪問を計画 米関税リスク受け****
複数の関係筋によると、欧州の首脳がベトナムとの関係強化のため、同国を訪問することを計画している。米国のトランプ政権が欧州とベトナムに関税を発動する可能性があり、緊張が高まっていることが背景だ。

米国がベトナムに関税を課せば、両国関係が悪化する可能性がある。

欧州の当局者や外交筋によると、フランスのマクロン大統領はベトナムとの関係強化のため、5月下旬に同国を訪問する可能性がある。欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長もベトナムとの関係を正式に格上げするため、マクロン氏よりも先にベトナムを訪れる可能性がある。訪問はともに以前から計画されていたもので、まだ最終決定には至っていないという。

また、欧州委のシェフチョビチ委員(通商担当)も4月にベトナムを訪問する可能性がある。

フォンデアライエン委員長は先週、ベトナムで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の会合にビデオメッセージを送り「関税と輸出規制の流れが強まりつつある。われわれは信頼できるパートナーと貿易・投資の新しい機会を作りたい」と述べた

EUは昨年、ベトナムから520億ドル相当の財を輸入。輸入額は米国の半分以下だが、EUはベトナムにとって第3の輸出市場となっている。

ベトナムに進出している米国のメーカーは、欧州よりも米国に対する輸出依存度が高いが、トランプ政権がベトナムに関税を発動した場合、ベトナムからEUへの輸出が増え、欧州企業による対ベトナム投資が進む可能性もある。【3月4日 ロイター】
**********************

【日本への影響は? トランプ大統領、円安批判からの関税への言及も】
日本がこれまでのベトナムのように米中対立から“漁夫の利”を得られるかどうかは・・・

****トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?****
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和

サマリー
◆米トランプ政権は10%の対中追加関税に続き、メキシコとカナダに対する25%の関税などを課す可能性がある。厳しい関税措置は、米国を含む各国経済の減速などを通じて日本経済に悪影響を及ぼし得る。

半面、関税を課された国の価格競争力が低下して日本が代替需要を取り込む(いわゆる「漁夫の利」を得る)可能性もある。そこで本稿では、第2次トランプ政権下で日本が「漁夫の利」を得る条件を検討する。

◆第1次トランプ政権下では、対中追加関税の影響で中国の対米輸出シェアが低下し、ベトナムなどのシェアが上昇した。

同時期に日本のシェアは低下しており、「漁夫の利」は得られなかった。対中追加関税の対象品目では日本の国際競争力が低かったことに加え、日本と中国の輸出財の代替性が低かったことも影響したとみられる。

◆第2次トランプ政権下では、より広範な関税措置による日本経済への悪影響が懸念される。関税措置の対象はほぼ全品目に及ぶほか、中国以外の国も対象となる可能性がある。

もっとも、全品目ベースで見た日本の輸出財の競争力は他国に見劣りせず、韓国やドイツなどとの輸出財の代替性が高い。関税措置の対象が幅広い品目やこれらの国に及んで日本の輸出競争力が相対的に向上した場合、日本経済への悪影響は「漁夫の利」で一定程度緩和されるだろう。【3月3日 大和総研】
*******************

ただ、現実にはなかなか大変。

****トランプ関税で日本株はどうなる?自動車25%関税表明で輸出株は総崩れになったが…最も厄介なシナリオとは****
トランプ政権が関税をディールの武器にして諸外国に揺さぶりをかけています。輸入車に25%の関税をかけると表明すると、日本でも自動車など輸出関連株が大きく下落しました。トランプ関税は今後、マーケットにどんな影響を及ぼしていくのでしょうか。三井住友DSアセットマネジメント・市川雅浩チーフマーケットストラテジストに話を聞きました。 

(中略)
■ 日本には厳しい要求はしてこない?   
(中略)結局のところ、トランプ関税の真の狙いは、米国内への生産回帰と雇用増、海外からの投資増、海外への輸出増と思われます。ここに関してはすでに石破総理が「対米投資の1兆ドルまでの引き上げ」「液化天然ガス(LNG)の輸入拡大」を日米首脳会談の手土産にしました。  

日本はトランプ氏の狙いに応えているほか、中国や北朝鮮を見据えた時に安全保障面でも重要な位置にあることから、日本に対しては厳しい要求はしてこないだろうと見ています。  

現状日本は、米国に対して相互関税や鉄鋼・アルミニウム、自動車への関税適用除外を申し入れています。今後は日本政府の交渉力が試されるところです。

■ 関税による米国のインフレ再燃リスクは大きくない 
 ——日本株にとって一番厄介なシナリオは。  市川氏:トランプ氏が選挙期間中に発言していた、すべての国の製品に一律10〜20%の追加関税を課すということを実際にされると、日本だけでなく世界経済にも大きな影響が出てきます。これが日本株のトランプ関税リスクとしては最も大きなものと考えます。  

ただこれは米国への影響も大きいので、発動のハードルはかなり高いとみています。仮に一律10%の追加関税が発動された場合、米国の物価上昇率を1%ポイント程度、押し上げるインパクトがあると考えています。  

現状、トランプ政権は「一律関税」ではなく「相互関税」の導入を検討しており、個別の国と個別の商品について話し合う形となる公算が大きくなっています。

日本は米国からの自動車輸入に対する関税はゼロとしていますが、トランプ政権は日本の車検制度や安全基準、補助金などを「非関税障壁」とし、関税以外に米国車の販売に妨げになっていると指摘することも想定されます。  

非関税障壁を口実に、日本車に追加関税が課せられるリスクはあり、警戒感が残ります。関税政策については具体的な内容がほとんど固まっていないので、投資家は詳細が明らかになるのを待っている状況です。  

一方、トランプ氏は「インフレ非難」で選挙に勝った経緯があります。米国では2026年に中間選挙もあるので、インフレを招くような無茶な関税引き上げ政策は難しいと考えています。 

関税の引き上げは、中国を除いた各国との、あくまで交渉材料であり、個別に交渉が行われる限り、関税による米国のインフレ再燃リスクは大きくないと思います。【2月26日 JBpress】
*********************

上記記事は“日本に対しては厳しい要求はしてこないだろう”と楽観的ですが、すでに円安批判ができています。

****トランプ氏、円安で日本批判 関税引き上げちらつかせ是正要求へ****
トランプ米大統領は3日、円安・ドル高で米製造業が不利な立場に置かれたとして日本を名指しで批判した。今後は日本に円安是正を求める代わりに、関税引き上げを通告するという。中国通貨の人民元安も同様に批判した。ホワイトハウスで記者団に述べた。

トランプ氏は「日本であれ中国であれ、ドルに対する通貨安で私たちは極めて不利な立場に置かれる」と主張。「日本や中国が自国通貨を切り下げている時に(米メーカーの)キャタピラーがトラクターを作るのは困難だ」とも述べ、日本や中国の製造業がドルに対する通貨安で不当に競争力を高めていたと不満を示した。

トランプ氏は「以前は日中の首脳に電話をかけ、『不公平な通貨切り下げを続けることはできない』と伝えてきた。だが、私がすべきなのは『関税を少し上げる必要がある』と伝えることだけだ」と述べた。今後は関税引き上げを交渉材料に通貨安の是正を促していく考えを示した。

トランプ政権は、米国に高率の関税を課す相手国に同程度の関税を発動する「相互関税」の導入を計画する。政府高官は、新たな関税率を算定する際にドルに対する不当な通貨安も考慮するとしている。

一方、加藤勝信財務相は4日の閣議後記者会見でトランプ氏の発言について「通貨安政策は取っていない。先般の為替介入を見てもらえば理解してもらえる」と反論した。林芳正官房長官も同様の見解を示し、「(日米間で)引き続き緊密に議論していく」と語った。

政府・日銀は昨年、過度な円安の是正に向け、円買い・ドル売りの為替介入を複数回実施している。

トランプ氏は2017~21年の1次政権時代に日中の通貨安を問題視。安倍晋三首相(当時)や中国の習近平国家主席に通貨安の是正を直接求めたと語っていた。【3月4日 毎日】
********************

ベトナムも欧州も日本も、トランプ関税対策には苦慮。
もちろん、すでに標的となっているカナダや中国は激しく反発、報復関税をかける姿勢です。 経済へのアメリカの影響が死活的に大きいメキシコは日本と同じように、なるべく事を荒立てず穏便に・・・といった姿勢ですが、穏便ですむかどうかはわかりません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パレスチナ・ガザ地区の停戦合意第1段階が終了するも、見えないその先 戦闘再開の可能性も

2025-03-03 23:49:21 | パレスチナ
(ガザの「将来」とされる「中東のリビエラ」でくつろぐトランプ大統領とネタニヤフ首相【2月26日 毎日】)

【第1段階の期間が終了 これからどうする? 見えない第2段階】
ウクライナはトランプ・セレンスキー両大統領の公開バトルで近日中の停戦は難しくなり、アメリカの武器支援停止も現実味を帯びる中で欧州がどこまでウクライナを支えられるのか、ウクライナとアメリカの関係修復は実現するのか・・・といった混迷が深まっています。

パレスチナ・ガザ地区の戦闘も、ハマスの人質33人解放、イスラエルはパレスチナ人週百人を解放、その他、駐留イスラエル軍は東に移動、ガザ住民の帰還、救援物資輸送トランクの通行許可を内容とす1月19日に始まった6週間の第一段階が3月1日に終了しました。

予定では、ハマスは残りの人質全員を解放、イスラエル軍は完全撤退し、恒久的戦闘停止を宣言するという第2段階に入ることとされていましたが、その高いハードルを超える交渉はほとんど進まず、先行きはまったく不透明、戦闘再開も視野に・・・といった状況になっています。

なお、第3段階はガザの復興です。

イスラエルは第2段階へ進む道筋が見えないなか、とりあえず第1段階の一時停戦を延長するとしているのに対し、ハマスは第1段階延長を拒否し、イスラエル軍完全撤退・恒久的戦闘停止の第2段階にすみやかに以降することを求めています。

****ハマス、停戦第1段階延長を拒否=1日期限、イスラエル案に反発****
イスラム組織ハマス幹部は1日、パレスチナ自治区ガザでの停戦について、イスラエル側が「第1段階延長を提案した」と述べた上で、これを拒否する考えを示した。中東のテレビ局アルアラビーヤのインタビューで語った。

イスラエルは残る人質の奪還に関し、軍完全撤退を含む第2段階移行ではなく、第1段階延長を模索している。

第1段階は1日が期限で、これまで停戦はおおむね維持されてきた。双方とも期限切れによる戦闘再開は望んでいないとみられるが、ハマス側は予定通り2日に恒久停戦を見据えた第2段階に入るよう求めており、協議は難航。ガザで4万8000人以上が死亡した戦闘が再燃する恐れもあり、先行きは不透明だ。【3月1日 時事】
***********************

これに対しイスラエルは第1段階延長としての人質解放をハマスに求め、ガザへの援助物資の搬入を停止してハマスへの圧力を強めています。 第1段階延長はアメリカ・トランプ政権の提案とのことで、イスラエルはこのアメリカ提案を受け入れるとしています。

****イスラエル、ガザへの物資搬入停止 ハマスは「停戦合意違反」と反発****
パレスチナ自治区ガザ地区の停戦を巡り、イスラエル首相府は2日、米国が提案した停戦の「第1段階」の延長案を受け入れたと発表した。

イスラム教の断食月「ラマダン」とユダヤ教の祝祭「過越祭」の期間中は停戦を維持するという案。ただ、イスラム組織ハマスは恒久的停戦につながる「第2段階」への移行を求めており、第1段階の延長案を拒否しているという。

1月19日に発効した第1段階は42日間で、3月1日に期限を迎えた。この期間中にイスラエルとハマスは第2段階に向けた協議を始めるとされていたが、第1段階の継続に力点が置かれ、停戦を維持しながらの交渉が続いている。

ラマダンは2月28日ごろに始まっており、3月29日ごろまで。過越祭は4月12日ごろから20日ごろ。第1段階の延長案はトランプ米政権の中東担当特使、ウィットコフ氏が提案したという。

イスラエル首相府によると、延長案の期間は42日間で、初日にハマスが拘束している人質の半数を解放する。その後、恒久的停戦で合意すれば、ハマスは残りの人質も解放する。イスラエルは42日間の延長後、交渉が効果的ではないとの印象を受けた場合は戦闘を再開できるという。

イスラエル首相府は、ハマスがこの延長案を拒否しているとして、ハマスが態度を変えるなら直ちに交渉に入ると主張している。

また、イスラエルのネタニヤフ首相は2日、ガザ地区への人道支援物資を含むすべての物資の搬入の停止を決定したと発表した。停戦の第1段階が終了したことに加え、ハマスが米国の提案を拒否したためだと主張している。イスラエル軍はガザ地区のすべての検問所を閉鎖した。

これに対してハマスは、ネタニヤフ氏の人道支援物資の搬入停止の決定を、停戦合意違反だと反発。イスラエルが米国の停戦延長案を受け入れたことについては「停戦の第2段階の交渉に入ることから逃れようとする露骨な試みだ」と非難。人質の解放の唯一の方法は、合意を守り、第2段階に向けた交渉に入ることだと主張した。【3月2日 毎日】
******************

イスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルは人質の解放なくして停戦を認めない」とし、「もしもハマスが拒否を続ければ、さらに重大な結果を招くだろう」とけん制しています。

これに対してハマスは「脅迫だ」と反発し、「合意に対するあからさまなクーデターだ」と非難。エジプトとカタールによる仲介を求めています。【3月3日 ロイターより】

【イスラエルはガザへの人道支援物資の搬入をすべて遮断してハマスに圧力 高まる戦闘再開の懸念】
イスラエルがガザへの援助物資の搬入を停止していることで、結果的にガザ住民全員を人質にとったような形にもなっていますが、アメリカは「理解している」とのこと。

****「食料を武器に使うな」アラブ諸国がイスラエル非難 ガザ停戦、対立先鋭化で継続見通せず****
イスラエルが2日、パレスチナ自治区ガザへの人道支援物資の搬入をすべて遮断したことを受け、アラブ諸国から非難が相次いだ。

イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスのガザの停戦合意は第1段階が1日に期限を迎え、停戦維持に向けた交渉は続く可能性があるが対立は先鋭化しており、波乱含みの情勢だ。

物資搬入の停止を受け、両者の協議を仲介するカタールの外務省は「食料を武器として使っている」とし、停戦合意や国際人道法に違反していると非難した。地域大国サウジアラビアの外務省も、住民が人道危機に直面するなかでの搬入停止は「集団的懲罰」だと批判する声明を出した。

イスラエル首相府は2日、トランプ米政権のウィットコフ中東担当特使が提示したとされる一時停戦案に同意すると表明した。しかし、ハマスは合意に従い第2段階に移行すべきだとしてこの案の受け入れを拒否し、イスラエルが物資搬入を止めた。ネタニヤフ首相は「ハマスが物資を盗む」のを防ぐためだと理由を述べた。

第2段階では双方が停戦恒久化に向けた措置を行う見通し。ただ、ハマス壊滅を目標とするネタニヤフ氏は「停戦は一時的だ」と述べ、戦闘再開に含みを残してきた。サール外相は物資搬入を停止したイスラエルの決定について、米国は「理解している」とした。

ハマスは物資の搬入停止は「脅迫」だとし、第2段階に向けた協議を始めない限り、拘束する人質は解放しないと表明している。【3月3日 産経】
*************************

そもそも、イスラエルはハマス壊滅を目指しており、ハマスが残存する形での完全撤退・恒久的停戦はあり得ないでしょう。 その点で、もともとこの停戦合意は実効性をもたない、とりあえずの一時停戦・人質解放のための「方便」にすぎないものだったと考えられます。

ハマスが圧力に屈して第1段階がアメリカ案に沿って延長されても、その延長期限が切れたらまた同じ問題が起きるでしょう。

イスラエル極右勢力は早期の戦闘再開を求めており、いずれ何らかの理由をつけて戦闘が再開される可能性が高いと思っています。

【ガザの将来は「中東のリビエラ」か、さもなくば・・・?】
上述のように停戦すら危うい状況で、ガザの復興云々を語る状況でもないように思われますが、例のトランプ大統領のガザ再開発プラン動画・・・・もうガザ住民のことなどまったく視野になく、振り切れています。

****ガザを金ぴかリゾートに? トランプ氏がAI生成動画を投稿 「ガザ所有」構想を拡散****
トランプ米大統領は26日、自身の交流サイト(SNS)アカウントに、パレスチナ自治区ガザが豪華なビーチリゾートに変貌した様子を描いたイメージ動画を投稿した。

ガザを米国が「所有」するとの自身の主張を広げる狙いとみられるが、パレスチナや国際社会の反発は必至だ。
人工知能(AI)で生成された約30秒の動画では、廃虚となったガザからトンネルを抜けると近代的な高層ビルやマンションが立ち並ぶリゾート地が出現。

アップテンポのダンス音楽とともに、金色の巨大トランプ像や、空から降り注ぐ紙幣に大喜びする子供、「トランプ・ガザ」の看板を掲げたカジノ風の建物などが次々と映し出される。

ほかにも、プールサイドで日光浴する海水パンツ姿のトランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相や、満面の笑みで食べ物をほおばる大富豪のイーロン・マスク氏が登場。

イスラム原理主義組織ハマスのメンバーに擬したとみられるひげの男性がベリーダンサーの格好で踊ったり、トランプ氏が酒場で女性と踊ったりする戯画的な表現が盛り込まれている。

トランプ氏は今月4日、イスラエルとハマスの停戦に関連し、すべてのガザ住民をエジプトやヨルダンなどの第三国へ移住させた上で、ガザを米国が「所有」し不動産開発を行う構想を発表。ガザを「中東のリビエラ」にすると語った。

トランプ氏は今回の動画を投稿することで自身が思い描くガザの「未来予想図」の一端を表明した格好だ。【2月27日 産経】
*******************

もちろん批判は多々ありますが、トランプ大統領はこの動画、気に入ってるとか。

では、住民を排除しての中東のリビエラで出なければ、ガザの未来はどうなるのか?

****米ガザ構想代替案「用意できた」=停戦第2段階の協議訴え―エジプト****
トランプ米大統領が公表した米国によるパレスチナ自治区ガザの所有や住民移住の構想に対し、アラブ諸国が検討している代替案について、エジプトのアブデルアティ外相は2日の記者会見で、用意ができたと語った。ロイター通信が報じた。

代替案は住民がガザ域外に出ないことを前提にしており、4日にカイロで開かれるアラブ連盟の首脳会議で提示される見通し。アブデルアティ氏は代替案が首脳会議で採択されれば、国際的な支援や資金提供を求めていく考えを強調した。

また、別の報道によれば、アブデルアティ氏はガザ停戦交渉に関し、恒久停戦を目指す第2段階の協議を開始する必要性も指摘。「困難だが、始めるための政治的な意志が必要だ」と述べた。【3月3日 時事】
**********************

サウジアラビアは砂漠の中に全長170km(mではなくkm!!)、高さ500m、幅200mの壁状の超高層ビル群からなる新都市をつくる計画に着手していますが、その費用は1千億から2千億米ドルと推定されていおり、1兆ドルに達するという試算もあるようです。

そのほんの一部でもガザに投資されれば・・・という勝手な思いも。

いずれにしても、現在の停戦がどうなるのか? 第2段階に移行できるのか?、それとも戦闘が再開し、ハマスが壊滅するまで、ガザに人が住めなくなるまで続くのか? それによってガザの「将来」も変わります。

戦闘再開で更にガザが破壊され、住民の隠れ場もないような状態になれば、案外「中東のリビエラ」も現実味を増してくるのかも。

しかし、その“リビエラ”は旧ガザ住民の「第2のナクバ」への怨嗟で呪われた存在となり、常にテロの恐怖に怯えるリゾートになりそう。ビーチで水着姿のトランプ大統領とネタニヤフ首相がくつろぐ・・・ようなものにはならないかも。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカ 不法移民対策強化 富裕層向け「ゴールドカード」構想 25%関税へのメキシコの対応

2025-03-02 22:45:20 | 難民・移民

(【2月28日 FCI NY】2月12日 経由地パナマに送還された不法移民 送還開始当初、手錠・足かせ付きで受入国の反発を招きましたが、そのあたりは変わったようにも見えます。)

【強化される不法移民対策 強制送還者数は低水準にトランプ大統領は不満】
トランプ政権の目玉政策の一つである移民の流入阻止については、厳しい取締りが奏功して国境で拘束された不法移民の数は過去最低レベルになるようです。

*****米・メキシコ国境の移民拘束、2月は過去最低水準 取り締まり強化で****
米国とメキシコの国境で拘束された不法移民の数が、2月は月間として過去最低かそれに近い水準になると、国土安全保障省の報道官と情報筋2人がロイターに明らかにした。

報道官は、国境警備隊が拘束した移民が約8500人に上る見込みだと述べた。別の情報筋2人は、月間の数字が過去最低か最低に近い水準になるとの見通しを示した。

トランプ大統領は1月20日の就任後、バイデン前大統領の政権下で急増した移民の取り締まりが必要として、一連の措置を実施。また、米国から強制送還される他国出身者を受け入れる新たな協定をメキシコや中米諸国と結び、一部の移民をキューバ・グアンタナモ湾の収容所に移送した。

移民拘束数に関する国境警備隊の月間統計は2000年に始まったが、これまでの最低記録は第1次トランプ政権下だった17年4月の1万1127人。

米政府によると、24年2月は14万1000人、1月は2万9000人だった。【2月28日 ロイター】
***********************

トランプ政権は更に取締りを強化すべく、追加派兵に加え、装甲車なども投入するとのこと。

****米、移民対策に装甲車投入 南部国境、3千人追加派遣****
米国防総省は1日、トランプ大統領が主要課題に位置付ける不法移民対策を強化するため、南部のメキシコとの国境に米軍装甲車ストライカーや運用する旅団を投入すると発表した。数週間内に到着するとしている。ワシントン・ポスト紙電子版によると、最大3千人の米兵を追加派遣する。

国境を越えて入国する不法移民と麻薬密輸業者を阻止する税関・国境警備局(CBP)を支援し、取り締まり態勢を拡大する。同紙によると、ヘグセス国防長官が2月28日に承認した。既に数千人の米兵が不法入国者の捜索や摘発に従事している。

ストライカーは、イラクやアフガニスタンの戦闘で使ったほか、最近ではバイデン前政権がウクライナ軍に供与した。乗員2人と兵員9人を輸送可能で機関銃やグレネードランチャー(てき弾発射器)を備えるが、今回どの程度の装備を搭載するかは分かっていない。

トランプ氏の就任以降、不法移民の流入は大幅に減少している。【3月2日 共同】
**********************

新規流入は減少していますが、すでにアメリカ国内に暮らす不法移民の強制送還については、「史上最大の国外追放」を掲げた大統領が期待したほどの数字になっておらず、トランプ大統領はおかんむりのようです。

****トランプ政権、不法移民対策の担当トップを解任 不満の表れか****
米主要メディアは21日、トランプ政権が不法移民対策を担当する移民・税関捜査局(ICE)トップのビテロ局長代行を解任したと報じた。

トランプ氏は不法移民の「史上最大の国外追放」を実行するとしていたが、ロイター通信は政権発足から1カ月間の追放者数が「バイデン前政権の平均数を下回った」と報道。担当部局のトップ交代はトランプ大統領の不満の表れだとみられる。(中略)

ロイターによると、政権発足後1カ月間に国外追放された不法移民は約3万7660人で、前政権最後の1年間の月平均約5万7000人を下回った。国土安保省は「前政権時は不法越境自体が多かったため、追放数も見かけ上は多くなっていた」と説明している。

トランプ氏は2024年大統領選で、不法移民対策を最大の争点に掲げ、返り咲きを果たした。メキシコとの国境地帯の警備を強化しており、ホワイトハウスは「2年前には毎日約1500人の不法移民が国境付近で拘束されていたが、新政権発足後は毎日80人程度だ」と成果をアピールしている。ただ、国内にいる不法移民の拘束・追放は思惑通りに進んでおらず、トランプ氏も不満を漏らしていると報じられている。【2月22日 毎日】
*******************

国内不法移民への圧力を強めるべく、移民登録を強化する対策も。

****トランプ政権、未登録の不法移民に罰金・禁錮刑****
米国土安全保障省は25日、連邦政府に登録していない不法移民に多額の罰金や禁錮刑を科す指令を出した。

同省報道官は「トランプ政権は全ての移民法を執行する。どの法律を執行するか選り好みすることはない」とし「国土と全ての米国人の安全と安心のために誰がこの国にいるのかを知る必要がある」と述べた。

市民権・移民局のウェブサイトによると、米国のビザ(査証)の申請時に指紋採取や登録を行わなかった14歳以上の全ての移民は、米国に30日以上滞在する場合、登録と指紋採取を行うことが義務付けられる。

移民が登録と指紋採取を終えると、国土安全保障省が登録証明書を発行する。18歳以上の移民は証明書の携帯を常に義務付けられる。

トランプ大統領は先月、不法移民対策の一環で南部国境の非常事態を宣言。国土安全保障省に対し移民の登録を進めるよう指示していた。【2月26日 ロイター】
******************

制度のしくみはよくわかりませんが、登録時に不法入国が発覚すれば強制送還、登録していないことが発覚すればそれも強制送還、更に不携帯でも強制送還・・・ということでしょうか。

更に、親と離れて南部国境から入国した子供への法的支援も停止。

****移民の子、法的支援停止 米政権命令、団体反発****
米メディアは19日、トランプ政権が同伴者のいない不法移民の子どもに法的支援を提供する団体に業務停止を命じたと報じた。連邦政府の補助金を打ち切るとしている。

各地の団体は親と離れて南部国境から入国した子が法的支援を受けられなければ、児童労働や人身売買の被害に遭う可能性があると反発している。

CNNテレビによると、内務省は18日、厚生省難民定住局が保護した移民の子約2万6千人に法的支援を提供する団体「アケーシャ・センター・フォー・ジャスティス」に業務停止を命じる電子メールを送った。【2月20日 共同】
********************

また、トランプ氏は英語を唯一の公用語に指定する大統領令に署名しましたが、これによりスペイン語話者の移民がアメリカ国内で暮らすのがこれまでより難しくなる効果も期待しているようです。

****トランプ米政権、英語が「唯一の公用語」初指定 スペイン語排除が加速****
トランプ米政権は1日、英語を米国の唯一の公用語に指定する大統領令に署名した。米メディアによると、30以上の州が英語を公用語にしているが、連邦レベルで指定されるのは初めて。

これに伴い、英語を使用しない住民に対する言語上の支援などを政府機関に義務付けた従来の大統領令は撤回される。

トランプ政権は公用語指定に先立ち、ホワイトハウスの公式サイトやX(旧ツイッター)でのスペイン語の使用を停止していた。スペイン語を排除し、中南米からの不法移民に圧力を強める動きがいっそう加速しそうだ。【3月2日 産経】
**********************

【富裕層流入は大歓迎 500万ドル(約7億5千万円)で永住権を獲得できるようにする新制度「トランプ・ゴールドカード」】
あの手この手で中南米からの不法移民に圧力を強めるトランプ大統領ですが、お金持ちの流入は大歓迎のようです。たとて悪評高いロシアのオリガルヒ(新興寡占資本家)でも。

、500万ドル(約7億5千万円)で永住権を獲得できるようにする新制度「トランプ・ゴールドカード」について、1千万枚の販売も可能だ・・・とも。どこから1千万枚といった途方もない数字が湧いて出てくるのかは知りませんが。

****米永住権「爆発的に売れる」 「ゴールドカード」人材確保期待*****
トランプ米大統領は26日、500万ドル(約7億5千万円)で永住権を獲得できるようにする新制度「トランプ・ゴールドカード」について「爆発的に売れるだろう」と述べた。優秀な人材を採用するために企業がこの制度を利用できると説明したほか、財政赤字を埋める手段にもなると強調した。

ホワイトハウスで記者団の質問に答えた。トランプ氏は2週間程度で販売を始めると明かし、1千万枚の販売も可能だと語った。大統領選に勝利したことで「誰もがこの国に来たがっているからだ」と主張した。

トランプ氏は、インドや中国、日本の国名を挙げて、これらの国からの優秀な留学生を企業が採用しようとしても、在留が可能かどうかが分からず採用を見送る例があると説明。こうした人材を引き留めれば米経済にプラスになるとの考えを示した。25日には「富裕層や優れた才能を持つ人々が市民権を得るための道になる」と述べていた。【2月27日 共同】
********************

500万ドル(約7億5千万円)のカードを留学生が負担するのか? よくわかりません。

****トランプ氏の「ゴールドカード」構想、富裕層の大規模流入は見込み薄か****
 移民・資産アドバイザーらによると、トランプ米大統領が打ち出した500万ドルで米国の永住権が手に入る「ゴールドカード」制度が米国籍取得を目指す世界中の富裕層の大規模な流入を引き起こす可能性は低い。課税への懸念があるためという。

トランプ米大統領は25日、米国内で最低80万ドルの投資をした外国人に米国の永住権(グリーンカード)を与える「EB─5」と呼ばれるビザ(査証)プログラムを廃止し、代わりに500万ドルで米国の永住権が手に入る「ゴールドカード」制度を導入するとの構想を発表した。

これに対し移住経験のある富豪は「一定の基準を満たせば米国でグリーンカードを取得するのは難しくないため、トランプ大統領の提案が大きな影響を与えるとは思わない。むしろゴールドカードに500万ドルを支払い、全世界の収入に課税されるのは目的に反する」と指摘した。

また、この制度は脱税や汚職のリスクを高める可能性もある。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスとハーバード大学の研究者らが2021年に欧州連合(EU)のゴールデンビザ制度について行った調査では、これらの制度によって生み出された資金は外国投資の「ごくわずかな」割合に過ぎず、経済への影響は「無視できるほど」小さいことが判明した。

香港に拠点を置く移民コンサルタント、ジョン・フー氏は、EB─5ビザは主に米国で事業を営んでいるか、子供を米国で勉強させたいと考えている香港や中国の住民によって利用されていると指摘。投資額の基準を500万ドルに引き上げることは、現在この制度を利用している多くの中国人にとって抑止力となるとした。また、富裕層にとって世界的な税負担は常に懸念事項であるとも述べた。(中略)

しかし、タン氏は、米国永住権は常に、アジアからの移住を目指す多くの人々にとって「アメリカンドリーム」であり、EB─5ビザに詳しい多くの中国人が新しい制度に応募する可能性は高いと述べた。【2月27日 ロイター】
*************************

「アメリカンドリーム」・・・500万ドル(約7億5千万円)払える人はすでにドリームを達成していると思うのですが、貧乏人にはわかりません。

****「ロシアのオリガルヒはとてもいい人」トランプ氏、7億円の米永住権ゴールドカード販売も****
トランプ米大統領は外国の富裕層向けに500万ドル(約7億5千万円)で永住権を獲得できる「トランプ・ゴールドカード」の販売を始めると明らかにした。トランプ氏は「1枚500万ドルで、100万枚売れば5兆ドルを集められる」と述べた。25日、米ホワイトハウスで記者団の取材に答えた。

トランプ氏は「富裕層はこのカードを買って入国する。大金を使い、多くの税金を払い、多くの人々を雇用することになる」と語った。販売は2週間後にも始める。

トランプ氏はロシアのオリガルヒ(新興寡占資本家)に販売するか問われ「可能性はある。私はロシアのオリガルヒを何人か知っているが、とてもいい人たちだ」と語った。

ラトニック米商務長官は同カードについて、雇用創出のため米国の特定地域に一定額の投資を行う移民に対し、永住権が付与される既存の投資家向けビザ「EB−5」に代わるものだと説明した。

米CBSテレビは国土安全保障省の統計として、2022年9月末までの1年間でEB−5の取得者が約8千人だったと指摘。毎年約8千人がゴールドカードを取得した場合、米国が調達できるのは年間約400億ドルだとして、「トランプ氏が予想するよりはるかに低額だ」と伝えた。【2月27日 産経】
*********************

1000万枚の十分の一の100万枚で5兆ドル・・・それでも400億ドルとは大きく桁違い。この人は「真実」といったものは無視します。世間ではそういう人を一般に「嘘つき」とか「詐欺師」と呼びます。

「私はロシアのオリガルヒを何人か知っているが、とてもいい人たちだ」・・・・・プーチン大統領と結びつくことで独占的な利益を得て、プーチン強権支配を支えているオリガルヒに対する問題意識はまったくないようです。

【25%関税を避けるべく、トランプ大統領を刺激しないように気をつかうメキシコ】
話をメキシコ国境からの不法移民にもどすと、トランプ大統領はカナダ・メキシコからの不法移民・フェンタニルなど薬物の流入を理由に25%の関税を課すとしています。(カナダにそうした理由が該当するようには思えませんが)

反発するカナダ国民がバーボンなど米国背品の不買運動を展開し、トルドー首相も報復関税で対抗するとしているカナダに対し、メキシコは従順と言ってもいいぐらいにトランプ大統領の機嫌を損ねないように対応しています。

メキシコはアメリカと歩調を合わせて対中関税を発動する考えを明らかにしており、アメリカはカナダにも「お前もやれ」と迫っています。

****米、カナダに対中関税を提案 交渉大詰め、メキシコは発動意向****
ベセント米財務長官は2月28日、ブルームバーグテレビのインタビューに応じ、カナダに対し米国と歩調を合わせて中国に関税を課すことを提案した。メキシコからは対中関税を発動する考えを伝えられたことも明かした。

米国はメキシコ、カナダへの25%の関税措置を3月4日に発動する方針で、回避に向けた大詰めの交渉が続いている。 

米国によるメキシコとカナダへの関税措置は不法移民と合成麻薬の流入を理由としているが、対中関税が回避に向けた交渉材料になっているとみられる。(後略)【3月1日 共同】
***********************

“メキシコ、麻薬組織幹部ら米に引き渡し トランプ関税控え”【2月28日 ロイター】といったアメリカへの配慮も。

メキシコが最大限にアメリカに配慮しているのは、メキシコの輸出の8割をアメリカが占めており、25%の関税はメキシコ経済にとって死活的に影響が大きいため。

これまでメキシコのシェインバウム大統領は、カナダのトルドー首相やウクライナのゼレンスキー大統領等と違って、トランプ大統領を怒らせないようにうまく対応していると、一部からは高い評価を得てきました。

ただ、いまのところトランプ大統領はカナダ・メキシコとのこれまでの交渉の成果は「全く何もない」として、高関税措置を3月4日に発動するとしています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカ  トランプ・ゼレンスキー公開バトル USAID(国際開発庁)解体 はしかワクチン

2025-03-01 22:57:15 | アメリカ
(ウクライナのゼレンスキー大統領(左から)、トランプ米大統領、バンス米副大統領=28日(ロイター=共同)【3月1日 東京】)

【トランプ・ゼレンスキー公開バトル】
今日の一番のニュースとしては、トランプ・ゼレンスキー両大統領の前代未聞の公開バトルになりますが、この件については多くの情報に接していることと思われますので簡単に。

****米ウクライナ首脳の発言要旨****
トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領らが交わした口論は次の通り。

 トランプ氏 私はロシアのプーチン大統領に肩入れはしていない。(双方と連携しなければ)取引は成立しない。
 バンス米副大統領 平和と繁栄への道は外交に取り組むことだ。

 ゼレンスキー氏 われわれはプーチン氏と多くの対話を行い停戦協定にも署名したが、プーチン氏は破った。あなたが言う外交とはどういうものか。
 バンス氏 あなたの国の破壊を終わらせるような外交だ。大統領執務室に来て、米メディアの前で論争しようとするのは無礼だ。

 ゼレンスキー氏 戦争時には、すべての国が問題を抱えている。あなたは海を隔てているので今は感じていないだろうが、将来感じることになるだろう。
 トランプ氏 われわれが何を感じることになるか、あなたが言うな。あなたは良い立場にはいない。あなたは今、カードを持っていない。
 ゼレンスキー氏 私はカードゲームをしていない。

 トランプ氏 あなたは第3次世界大戦を対象に賭けをしている。あなたがしていることはこの国(米国)に対して非常に無礼だ。
 バンス氏 一度でも(米国に)「ありがとう」と言ったことはあるか。
 トランプ氏 あなたの国は大きな問題を抱えている。あなたは勝てない。もしわれわれの武器がなければ、戦争は2週間で終わっていた。あなたは感謝すべきだ。
 ゼレンスキー氏 感謝している。

 トランプ氏 人々は死に、兵士は不足している。それなのにあなたは「停戦は望まない」と言っている。
 ゼレンスキー氏 戦争を終わらせたいが、(求めているのは)安全の保証付きの停戦だ。
 トランプ氏 あなたが取引をするか、われわれが手を引くかだ。われわれが手を引けば、あなたは戦い抜くことになる。【3月1日 時事】
********************

要するに「これまでやってこられたはアメリカのおかげだろうが。感謝が足りない。アメリカなしでは戦えないくせに、文句を言うな。恩人のアメリカ大統領にグダグダ言うのは失礼千万。 頭が高い! 国王トランプ陛下の御前なるぞ!」ということのよう。

確かにアメリカの支援なしにウクライナがここまで戦えなかった、今後もアメリカ抜きでは長くは持たないだろう・・・というのは事実ですが、こういう「感謝が足りない」という形で言われてもね・・・

トランプ大統領は二言目には「ディール」「カード」と口にしますが、侵略に対して国を守るというのは決して「ゲーム」ではなく、カードがあろうがなかろうが出来る限りのことをやらねばならないというゼレンスキー大統領の気持ちはわかります。

ロシアの侵略を止めるということは、単に銭カネの問題ではないだろう・・・というウクライナ側と、どうしてそこにアメリカがカネを出さなきゃいけないんだ?という価値観を重視しない実利的なトランプ政権の間には深い溝が。

また、世界の流れはアメリカやロシアなど“力ある大国”が決めるもので、力のない小国は文句を言わずにその決定に従えばいいというアメリカの大国意識も。

両者の間にはこれまでも根深い不信感があり、そうしたこともあって不満が一気に噴き出した形。

****ウクライナ、根深い不信=トランプ氏は個人的恨みも****
トランプ米大統領のウクライナ停戦への取り組みに同国のゼレンスキー大統領が疑問を呈して激しい言い合いとなり、28日のホワイトハウスでの首脳会談は物別れに終わった。背景には、ウクライナ側が求める「安全の保証」を巡って、根深い欧米への不信がある。

ウクライナが独立を宣言したのは1991年8月。同国は94年、旧ソ連時代に配備された大量の核兵器の放棄に同意した。これを受けて米ロ英の核保有3カ国はウクライナの「安全の保証」を約束。その20年後の2014年、3カ国のうちのロシアのプーチン大統領がクリミア半島を一方的に併合した。

ゼレンスキー氏はこの日、トランプ氏の前で「誰も彼(プーチン氏)を阻止しなかった」と指摘。その後、ドイツとフランスを交えてロシア側と停戦合意(ミンスク合意)を結んだものの「(プーチン氏は)停戦を破り、仲間を殺し、捕虜交換も行わなかった」と糾弾した。

プーチン氏が今後も約束をほごにするとの疑念は、トランプ氏と今週会談した英仏首脳もあらわにしている。一方、トランプ氏はウクライナの鉱物資源の権益を巡り合意を迫り、「安全の保証について話す必要はない」と取り合わなかった。

トランプ氏の一方的な振る舞いは、19年にゼレンスキー氏に対して軍事支援などを行うことを条件として、ウクライナと関係のあったバイデン前大統領(当時は前副大統領)の醜聞を捜査するよう要求した事件をほうふつさせる。

ゼレンスキー氏はこの時、トランプ氏の求めに応じず、米下院はトランプ氏を弾劾訴追(上院で無罪判決)した。米外交関係者の多くは、トランプ氏がゼレンスキー氏を恨み、嫌っているのは明白だとみている。【3月1日 時事】 
******************

これまでも欧州の頭越しに行われる米ロ交渉に不快感を持っていた欧州各国はゼレンスキー大統領への連帯を示しています。

****ゼレンスキー氏に連帯表明=緊急首脳会合呼び掛け―欧州****
欧州各国首脳らは28日、トランプ米大統領との会談が口論で物別れに終わったウクライナのゼレンスキー大統領に対し、相次ぎ連帯を表明した。イタリアのメローニ首相は危機感を強め、米欧首脳による緊急会合の開催を提案。「懸案への対応を巡って率直に話し合う」必要があると呼び掛けた。

BBC放送によると、スターマー英首相は28日夜にトランプ、ゼレンスキー両氏と電話会談した。3月2日には欧州各国首脳やゼレンスキー氏をロンドンに招き、ウクライナの和平に向けた取り組みを協議する計画だ。

欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長はX(旧ツイッター)で「親愛なるゼレンスキー大統領、あなたは決して独りではない」とエールを送った。フランスのマクロン大統領は、ロシアは「侵略者」であり、ウクライナは被害を受けた側だと強調した。

ドイツのショルツ首相は「ウクライナ人以上に平和を望んでいる者はいない」と主張。スペインのサンチェス首相も「ウクライナを支持する」と投稿し、ゼレンスキー氏が「支援に感謝する」と応じた。【3月1日 時事】 
******************************

しかし、欧州がどこまで踏み込めるかは不透明ですし、現実問題としてはアメリカ抜きでは限界も。

****トランプ氏に期待したゼレンスキー氏の計算狂う、亀裂は決定的…支援停止なら戦闘継続「夏まで」との見方****
(中略)ゼレンスキー氏は会談の冒頭、トランプ氏らと口論になる前、「プーチン(露大統領)を止めるため、あなたの強力な立場を頼りにしている」と述べ、トランプ氏への期待を示した。

関係悪化の要因だった鉱物資源の協定で折り合いをつけて事態を打開し、米国から軍事支援の継続を引き出す狙いだったが、計算は完全に狂った。

ウクライナにとり米国の軍事支援は、ロシアの侵略に対抗する上で命綱だ。欧州は支援の拡大を図っており、ウクライナも無人機や砲弾の自国生産を加速させているが、米国の支援分を完全に補うのは困難だ。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、米国の軍事支援が停止した場合、現在のペースで兵器を使って戦闘を続けられるのは「今年夏まで」との専門家の見方を伝えた。

防空システムや長射程ロケット砲弾は欧州の製造能力が十分でなく、短期間で穴埋めすることは「事実上不可能だ」とし、戦況が著しく悪化する可能性を指摘する。

ゼレンスキー氏は会談後に出演した米FOXニュースの番組で、停戦後にロシアの再侵略を防ぐ「安全の保証」を確保した上で、ロシアとの交渉に臨む必要性を改めて訴えた。しかし、トランプ氏を説得する機会は当分見込めなくなった。【3月1日 読売】
*********************

アメリカ国内もトランプ忠臣とそれ以外では異なる反応が。

****「プーチン氏は大喜び」「恥ずべき行為」…ゼレンスキー氏批判のトランプ氏に称賛と非難****
米国のトランプ大統領がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を会談で批判したことについて、米閣僚らはトランプ氏の対応を称賛した。 一方、民主党議員らは「恥ずべき行為だ」などと非難した。

ルビオ国務長官はX(旧ツイッター)で、「米国第一主義を掲げてくれてありがとう」とトランプ氏をたたえた。ベッセント財務長官やダフィー運輸長官ら閣僚も一様に、「(トランプ氏は)米国のために立ち上がった」と投稿した。

会談の決裂で鉱物資源の権益を巡る米国とウクライナの合意が見送られたが、共和党のリンゼー・グラハム上院議員は記者団に、ゼレンスキー氏について「米国民が(合意に)納得することをほぼ不可能にした」と不快感を示し、ゼレンスキー氏の辞任を求めた。

ただ、共和党内にもウクライナ側を擁護する声は根強く、同党のブライアン・フィッツパトリック下院議員は声明で、「胸が張り裂ける。感情を脇に置き、交渉のテーブルに戻るべきだ」と述べ、双方に冷静な対応を呼びかけた。

ロシアの侵略に徹底抗戦を訴えてきたゼレンスキー氏を罵倒したトランプ氏に対し、民主党のナンシー・ペロシ元下院議長はXで、「プーチン露大統領が大喜びしているに違いない」と指摘。

第1次トランプ政権で大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏はXで、「トランプ氏はロシア側に立つことを宣言した。米国の安全保障にとって壊滅的な誤りだ」と批判した。【3月1日 読売】
*******************

問題はこれからで、ゼレンスキー大統領とトランプ大統領の関係修復ができるのか、トランプ大統領はウクライナ支援をどうするのか・・・・

【USAID(国際開発庁)解体 混乱・異論も】
ウクライナ関連以外のアメリカ国内の動きをいくつか。

****USAID職員の涙の別れ、荷物をまとめ職場を後に… トランプ政権の大幅な雇用削減で****
アメリカのトランプ政権が大幅な雇用の削減を発表したUSAID(=国際開発庁)の本部。支援者たちが見守る中、職員たちが職場を後にする姿をカメラが捉えていた。 荷物を運び出す人々。中には涙を流す者も…。(中略)

USAIDは、トランプ大統領と彼の顧問であるイーロン・マスク氏の「政府効率化省」による、連邦政府の規模縮小キャンペーンの標的の1つとなり、USAIDが世界中で行っている人道支援や開発活動の契約のうち90%以上を打ち切る通達も出されているという。(『ABEMAヒルズ』より)【3月1日 ABEMA Times】
*******************

現場では混乱も。政権が必要と認めた業務も実際には停止。

****マスク氏の支出削減策が迷走 「エボラ予防復活」虚偽か****
米実業家イーロン・マスク氏が進める連邦政府の予算削減策が迷走している。26日の閣議で、対外援助事業を担う国際開発局(USAID)のエボラ出血熱予防策を中止した後「復活させた」と述べたが、ワシントン・ポスト紙は予防策が停止したままだと現職職員が証言したと報じた。
 
マスク氏が事実上率いる組織「政府効率化省」は強引な手法で大幅な支出削減を進め、物議を醸している。連邦政府の縮小を図るトランプ大統領は擁護するが、政権が必要だとみなす業務も滞っていることが浮き彫りになった。
 
マスク氏は閣議で「私たちは間違いを犯す。完璧ではない」と認め、一例としてエボラ出血熱予防策をいったん中止してしまったが、すぐに再開させたとして「中断はなかった」と主張した。「出血熱の予防策は誰もが望んでいることだ」とも語った。
 
だがワシントン・ポストによると、USAIDの現職職員や元高官は出血熱対策は全面的に停止していると証言。流行対策で関連組織に支払いがされていない状況もあると指摘した。【2月28日 共同】
*******************

アメリカのソフトパワーを低下させ、中国につけいる隙を与える対外援助凍結や国際開発局(USAID)解体には、共和党内部からも適法性という観点からの異論も。

****USAID解体の適法性を疑問視 米共和議員らが国務長官に書簡****
米紙ワシントン・ポスト電子版は27日、上院歳出委員会に所属する共和党議員数人が今月、民主党議員と共にトランプ共和党政権による対外援助凍結や国際開発局(USAID)解体の適法性を疑問視する書簡をルビオ国務長官に送ったと報じた。

対外援助の打ち切りを強引に進める政権を、身内の共和党議員も危ぶみ始めた。実業家マスク氏が事実上率いる組織「政府効率化省」は議会が承認した連邦政府の支出を凍結、撤回し訴訟が相次いでいるが、これまで共和党から公に反発は出ていなかった。【2月28日 共同】
*****************

【はしか流行にワクチン懐疑派のケネディ厚生長官はどのように対応?】
テキサス州で麻疹(はしか)の死者が。はしかにはワクチンが絶対的ですが、ワクチン懐疑派のケネディ厚生長官はどのように対応するのか?

****米テキサス州はしかで死者、ワクチン懐疑派ケネディ長官に試練****
米テキサス州で麻疹(はしか)の感染が拡大し、ワクチン未接種の子ども1人が死亡、20人近くが重篤な合併症で入院している。ワクチンに長年懐疑的な見解を示してきたロバート・ケネディ・ジュニア米厚生長官にとって、初の大きな試練となる。

米国ではしかによる死亡者が出たのは2015年以来初めて。ケネディ氏はこのニュースに対して、こうした感染症の流行は日常茶飯事だと発言。さらに死者数は2人だと誤って述べ、患者が入院しているのは「主に隔離」が目的だと説明した。

公衆衛生の専門家らは、米国における過去10年間で最大規模のはしかの流行を抑制するため、トランプ政権は全国でワクチン接種を奨励すべきだと訴えている。

テキサス州および隣接するニューメキシコ州では計130件以上の症例が報告されている。州当局者らは、はしかは感染力が非常に強いため、症例は今後も増える可能性が高いという。

ケネディ氏は26日、「今年、この国でははしかの流行が4件発生している。昨年は16件だった。だから珍しいことではない」と語り、「はしかの流行は毎年発生している」と続けた。

しかしテキサス州の病院関係者らは、入院した子どもらは全員ワクチン未接種で、集中治療が必要な患者もいるなど、深刻な呼吸器疾患を抱えていると説明。隔離のみを目的とした入院ではないとしている。

病院関係者らは一般市民に対し、予防接種を確実に受けておくよう促しているが、2000年に米国で根絶が宣言されたはしかが再び出現したことに当惑している。はしかウイルスは特に幼い子どもに深刻な症状を引き起こす可能性があり、予防接種が広く普及したことが根絶宣言につながった。

厚生省の報道官はケネディ氏の発言を訂正し、死亡者は1人であることを確認した。はしかの予防接種を呼びかけるか否かについては回答しなかった。

テキサス州ラボックのコベナント小児病院の小児科医で最高経営責任者(CEO)のエイミー・トンプソン医師は26日、学齢期の子どもが死亡したことに関して記者会見を開き「このウイルスは深刻な結果をもたらし、死に至る可能性もある」と警告した。

同病院の最高医療責任者であるララ・ジョンソン医師は「はしかの流行を食い止める最善の方法は予防接種だ」と指摘。「はしかワクチンを2回接種することで、97%の終生免疫(その病気に対する免疫が一生続くこと)が得られる」と付け加えた。

ジョンソン氏は2002年に医学部を卒業した際、海外で働かない限りはしかの流行を目にすることはないだろうと考えていた。「当時、私たちは米国からはしかが根絶されたと確信していた。その状況が変わったのは明らかだ」と語る。

複数の専門家は、ケネディ氏が長年にわたって予防接種の安全性と有効性に疑問を投げかけ続けてきたこともあって、ワクチン懐疑論が広がったことが、ワクチン未接種者やワクチン接種不足者を生み出したと指摘している。

ケネディ氏が設立したワクチン反対派の団体「Children’s Health Defense(子どもの健康を守る)」は、はしかを含む一般的な予防接種を巡って州裁判所と連邦裁判所に提訴している。

先月開かれた厚生長官指名承認のための上院公聴会で、ケネディ氏はワクチンに反対しているわけではないと宣言。「私はワクチンが医療において重要な役割を果たしていると信じている。私の子どもたちは全員予防接種を受けている」と語り、物議を醸した。(後略)【3月1日 ロイター】
************************

AP通信をめぐる問題など政治と報道のあり方も揺らいでいますが、その件は長くなりそうなのでまた別機会に。

****「特権独占させず」トランプ政権、主流メディアを標的に 一部排除に権力監視弱まる懸念****
トランプ米大統領が、第1次政権時にも増して主流メディアへの対決色を強めている。

都合の悪い報道を「フェイクニュース」と断じてメディアへの信頼性をおとしめてきた従来の手法に加え、第2次政権では自身の応援団ともいえる右派インフルエンサーやネットテレビ、ポッドキャストなどの新興メディアをホワイトハウスに招き入れる動きを加速。政治と報道のあり方が揺さぶられている。

「今後は一握りのジャーナリストがホワイトハウスを取材する特権を独占することはできない」。レビット大統領報道官が2月25日の記者会見でこう述べたことが、米メディア界に大きな波紋を広げた。(後略)【3月1日 産経】
***************************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

PKK創始者、獄中から解散呼び掛け トルコでのクルド人迫害 シリア北部クルド人勢力への影響

2025-02-28 23:26:10 | 中東情勢

(警官に職質を受けた際に身分証明書を所持しておらず、警察に長時間殴打されたというクルド人のオメル・アルプさん=2022年4月 【2022年8月17日 毎日】)

【“国家を持たない最大民族”クルド人】
トルコがテロ組織に指定する武装組織クルド労働者党(PKK)指導者のアブドラ・オジャラン受刑者が2月27日、組織の武装解除と解散を呼びかけたとの報道がありました。

イラク、シリア、トルコ、イランなどに居住し、中東での様々な問題で触れられることも多い“国家を持たない最大民族”クルド人(約2500~3500万人)、最初に簡単にその概略を。

****クルド人とは何者か****
クルド人はイラク、シリア、トルコ、イラン、アルメニアなどに居住しています。その合計は約2500~3500万人にのぼり、中東一帯で4番目に人口の多い民族といわれます。

その多くはイスラームのスンニ派で、クルド語など独自の文化をもちます。しかし、国家をもたないクルド人は「国をもたない世界最大の少数民族」とも呼ばれます。

クルド人が暮らす地域はユーラシア大陸の要衝にあたり、古くから多くの帝国が勃興し、覇を競った土地でした。そのなかでクルド人は軍人として多くの帝国に召し抱えられる立場にあり、その居住地域の多くは16世紀以降オスマン帝国によって支配されました。

しかし、第一次世界大戦後、オスマン帝国は崩壊。その混乱のなか、中東進出を加速させていた英国の支援のもと、クルド人たちはイラクでクルディスタン王国(1922-24)、南トルコでアララート共和国(1927-30)の建国を相次いで宣言しました。

しかし、オスマン帝国の実質的な継承者であるトルコ共和国の軍事介入により、いずれも崩壊。それと並行して、近隣のイラクやシリアが独立するなかで、クルド人の居住地は分断されていったのです。

二級市民としてのクルド人
居住する各国において、程度の差はあれ、クルド人は差別的な扱いを受けてきました。

例えば、トルコ人中心のトルコで、人口(約8000万人)の15~20パーセントを占めるクルド人は「山岳トルコ人」と位置づけられ、独立以来トルコ政府はクルド語の使用やクルド名も禁じてきました。

アラブ人が多数派のシリアでは、クルド人は全人口(約2240万人)の10パーセント近くを占めます。しかし、1960年代からクルド人居住地域にアラブ人を移住させる「アラブ化」政策が進められるなど、シリアでもやはりクルド人は抑圧されてきました。

これに対して、イラクでは人口(約3720万人)の15~20パーセントを占めるクルド人が1958年に少数民族として公式に認定されました。この点だけみれば、イラクにおけるクルド人の扱いはやや「まし」だったといえます。ただし、その自治権は中央政府に一貫して拒絶され続け、さらにクルド人が多く、大油田を抱えるキルクーク一帯が「アラブ化」されるなど、主流派アラブ人の風下に立たされてきました。

このような背景のもと、各国でクルド人は抵抗運動を組織。なかでもトルコでは、冷戦期の1978年にソ連の支援で結成されたクルド労働者党(PKK)が、トルコ政府への攻撃を開始。PKKはトルコだけでなく、米国をはじめ西側先進国から「テロ組織」に指定されています。

その他、シリアやイラクでもそれぞれクルド人組織の武装闘争はみられましたが、いずれも政府から鎮圧の対象となり、イラクでは1988年にフセイン政権による毒ガス攻撃にさらされました。(後略)【2017年9月21日 六辻彰二氏 “なぜ今「クルド独立」か:対テロ戦争とIS台頭で加速した「国をもたない世界最大の少数民族」の挑戦”より YAHOO!ニュース】
***********************

トルコにおいては、クルド人の伝統的な居住地はトルコ南東部および東部でしたが、その他地域に強制移住させれた者や迫害を逃れて大都市や国外に移住した者も多く、現在最大のクルド人口を抱える都市はイスタンブールで、2007年の時点で約190万人のクルド系住民が居住しています。

【トルコにおけるクルド人迫害とPKKの抵抗運動】
オスマン帝国の主たる後継国家であるトルコでは、共和人民党政権が単一民族主義をとったため、最近までクルド語をはじめとする少数民族の放送・教育が許可されてこなかったこともあって、クルド人独立を掲げるクルド労働者党(クルディスタン労働者党)(PKK)の激しい抵抗運動を惹起しています。

エルドアン大統領率いる公正発展党は、クルド語使用などでそれまでに比べると寛容なクルド人政策をとっていますが、おそらくクルド人を選挙の際の“票田”にする狙いや、EU加盟交渉でEU側から人権問題を指摘されていることなどがあってのことと思われます。

ただし、選挙でクルド系の国民民主主義党(HDP)が世俗派のトルコ市民、リベラル派、左派からも支持を集めて大きく議席をのばすと、これを厳しく弾圧したりも。

また、“テロ組織”PKKに対しては容赦ない強硬な姿勢です。

トルコにおけるクルド人差別、“二級市民扱い”については、公式の話と裏の実態の差ということもありますし、時代によっても差がありますので、外部の者にはよくわからないところも。

“2023年、トルコ人権財団(TİHV)は、クルド人が受ける拷問被害の割合は全国平均の約2.6倍に上ることを明らかにした。また、Human Rights Watchは2023年4月の選挙前に数十人のクルド人ジャーナリスト、政党関係者が逮捕されたことを公表している”【ウィキペディア】

****コンサート中止命令、警察官の暴力 トルコで弾圧されるクルド人****
トルコのエルドアン政権は総選挙・大統領選を来年に控え、少数民族クルド人への「弾圧」を強めている。現地で一体何が起きているのか。

「明日のコンサートは認められません」
今年6月上旬。クルド人アーティスト、ケマル・カフラマンさん(56)の元に、トルコ東部ムシュ県当局から電話がかかってきた。「明日のコンサート開催は認められません」。理由の説明は一切なかった。

カフラマンさんは2カ月かけて準備したコンサートの中止を余儀なくされ、チケットを払い戻した。「もう慣れてはいるが、ここ最近は圧力が強まったと感じる」と振り返る。

トルコの人口の15%以上を占め、主に東部や南部に住むクルド人。トルコは1923年の共和国設立当初から、国家の一体性を保つため、クルド人の同化政策を進めた。クルド語の使用は厳しく制限され、クルド人は「山岳トルコ人」とみなされた。

一部の過激派が78年、反政府組織「クルド労働者党」(PKK)を結成して本格的な武装闘争を始めると、一般のクルド人への圧力はさらに強まった。現在もクルド語での公教育は一部を除いて認められず、クルド語の看板を設置するのも難しい。
カフラマンさんは90年代から兄のメティンさん(59)とともに、音楽活動を続けてきた。クルドの民族音楽を独自にアレンジし、クルド語などで歌う。国のコンサートホールの使用は認められないが、自治体のホールを使ってきた。

それでも、県知事の意向などで突然、キャンセルを命じられる。今年はクルド人の世界的アーティスト、アイヌル・ドアンさんのコンサートなど複数の公演が中止となった。「音楽を止めてはいけない」。トルコ人を含めた音楽家1300人が当局に抗議書を出したが、何の反応もない。

警察官に殴られ視力低下
一般市民への差別も続く。「私がクルド人だから暴力を受けたのだと思う」。最大都市イスタンブールに住むオメル・アルプさん(22)はそう考えている。

4月中旬、弟(15)と目抜き通りに買い物に行き、クルド語で話していると警察に呼び止められた。身分証明書と携帯電話の提出を求められたが、証明書は手元になく、携帯は充電が切れていた。弟が自分の携帯を出すと、警察官は「お前には言っていない」と弟を殴った。

オメルさんが抗議すると、警察官はオメルさんを裏通りに連行。オメルさんによると、手をひもで縛られ、多数に取り囲まれ3時間程度、殴られ続けた。見かねた外国人観光客が止めに入り、ようやく暴力は止まったという。

父のリドゥアンさん(43)が警察署に駆けつけると、オメルさんは体中、あざだらけだった。警察が指定した病院では「けがはない」と言われたが、自分たちで探した別の病院に行くと、腕の骨にひびが入っており、片目の視力が低下していたことが分かった。

リドゥアンさんは嘆く。「我々は法も犯さず、一生懸命働いて地域のためにも尽力してきた。なぜ、息子は何の理由もなくここまで殴られなくちゃいけないのか」。事件は波紋を呼び、クルド系の国会議員が警察を訴える事態に発展している。【2022年8月17日 毎日】
********************

【最近の状況は微妙 「差別はあるが命の危険感じず」との指摘も PKK支持者と見なされると暴力や逮捕も 受け止め方・認識で苦痛が異なることも】
一方で、表だった政策的な差別はないとの指摘も。
“2024年3月にトルコのクルド人地域を現地調査した元国連難民高等弁務官事務所財務局長でUNHCR駐日代表、東洋英和女学院大学の滝澤三郎名誉教授は「トルコ国内でクルド人に対する政策的な差別は全くない」とし、「条約難民の定義である『迫害を受ける恐れ』があるとまでは言えない」と述べているが、MIDDLE EAST EYEの2024年11月の報告では親クルド派の市長3人が解任されたことが報じられている。”【ウィキペディア】

****「差別はあるが命の危険感じず」 トルコのクルド人、元UNHCR駐日代表が調査****
トルコの少数民族クルド人を巡り、欧米への密航を高額な手数料で手引きする違法なネットワークが現地で確立され、渡航費用が安い日本がクルド人の流入先になっていることなどが、日本の専門家による現地調査で明らかになった。

調査では、トルコで過去に激しい迫害を受けていたクルド人の立場が、今世紀に入り激変していたことも判明した。

「クルド人への差別はあるが、ルールに従えば命の危険までは感じない」。トルコ国内の建設業の30代男性はいう。

トルコでは長らく、クルド人が迫害を受け、人権団体がたびたび警告を発してきた。男性の父親もクルド人というだけで軍の警察に逮捕され、親族は過去に殺害された。

だが、2003年に首相として政権を掌握したエルドアン現大統領はクルド人との融和政策を推進。その後、副大統領にもクルド系を据えた。

例外が、トルコからの分離独立を求める非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」だ。トルコはPKKをテロ組織と指定。トップは今も収監されている。

男性はPKK支持を公言。地元警察に逮捕され「テロ活動には従事するな」との警告を受けた。クルド人だというだけで警察に因縁をつけられたこともあり、根強い差別は実感しているが、家族と平穏に暮らしており「私は自分の土地で死にたい」と、移民を選択するつもりはないという。

海外の認識も変わりつつある。英国はトルコ情勢報告書で、PKK支持者は迫害対象というよりテロ行為に関する訴追対象だと指摘。訴追時の差別的な扱いなどの状況が示されなければ迫害を認定できないとしている。【2024年5月8日 産経】
******************

このあたりの認識は、日本における難民認定の少なさを正当化する根拠ともなっています。

****迫害か、差別か…クルド人それぞれの状況に差異 トルコで聞いた現状****
トルコやシリアなどに暮らし「国を持たない最大の民族」と呼ばれるクルド人。埼玉県川口市やその周辺に2000人以上が暮らしているとみられ、トルコ政府による迫害を理由に難民申請をする人が多い。

在留資格を持ち就労許可を得た人もいるが、一時的に収容を免除されている「仮放免」の立場で暮らしている人が少なくない。仮放免者は就労できず、国民健康保険にも加入できない。(中略)

トルコ南東部出身のチョーラックさんは高校生だった約20年前、デモに参加し、クルド人のアイデンティティーを強調する行為と現地で見なされるVサインを掲げていたところ、警察署に一時連行されたという。徴兵令に従って軍隊に入った際は、同僚とクルド語で会話していたのを見つかり営倉に入れられたと話す。
そういった経験から国外脱出の意を強くしたチョーラックさんは2011年、妻と2歳の長男を連れ来日し、難民申請。仮放免状態で13年がたつ。

24年6月、3回目以降は難民申請中でも強制送還を可能にする改正入管法が施行され、チョーラックさんの一家は送還を恐れる日々だ。妻は「日本に受け入れてもらおうと10年以上ルールを守って生きてきた。私たち家族を追い出す必要があるのですか」と記者に問うた。

トルコでは「クルドの旗も危ない」
現地情勢が不安定を極めた1990~00年代初頭に来日した人の中には具体的な身の危険を訴える人が多い一方、近年は難民というよりは経済的な理由や労働目的で来日したとみられる人が目立つのも事実だ。現地では今もクルド人が大量に難民として国外脱出を強いられる現状があるのだろうか。

24年2月、記者はクルド人が多く暮らすトルコ南東部ガジアンテプ県を訪ねた。
街中で出会ったメフメットさん(22)に状況を尋ねると、「ガジアンテプなどでクルド語を話すのは問題ない」と言いながら、指でVサインを作って首を横に振り「こういうのはダメだ。クルドの旗も危ない」と述べた。

ただ、自身を含め知人の中にも逮捕された人はいないという。普通に暮らす分には問題ないがクルド民族主義を示す行動を取ると危ない――ということだろうか。

エネスさん(17)もクルド語を話すことについて「危険はない。西部トルコでどうかは知らないが東部では話せる」という。普通のクルド人が当局から迫害を受けるリスクについては否定し「憎しみは通常、言葉で表現されるだけ。クルド人に対してだけでなくトルコにやってくる難民や移民など多くの他の文化に対してね」と述べた。

クルド問題に詳しいアジア経済研究所の能勢美紀さんは「現在のトルコで、単にクルド人というだけで迫害を受けることはないでしょう。多くのクルド人が政財界で活躍し、街中でクルド語の路上ミュージシャンを目にすることもある」と話す。

一方、今なお弾圧を受けるケースもあり得ると指摘する。「国の根幹を揺るがす分離主義勢力への警戒感から、クルド民族主義やテロリスト(クルド労働者党=PKK=支援者)と見なされると、逮捕・訴追される場合がある。その際に根拠とされる法の運用が恣意(しい)的だとも指摘される」。

クルド人が感じる生きづらさや迫害の程度については「本人のアイデンティティーによるでしょう。トルコ語が公用語であり、自身の母語であるクルド語や文化・慣習のみでは、トルコ社会において生活することは難しい。こうした状況にどの程度の苦しみを感じるかは、人それぞれだと思います」。(後略)【1月12日 毎日】
************************

【PKK創始者 獄中からの解散指令 シリア北部のクルド人勢力へのトルコの軍事的圧力緩和の可能性も】
ここまではクルド人に関する“前置き”。前置きで尺をとってしまったので、本題は簡単に。

****クルド人組織指導者、トルコとの闘争終結訴え 「武器置くべき」****
トルコがテロ組織に指定する武装組織クルド労働者党(PKK)指導者のアブドラ・オジャラン受刑者は27日、組織の武装解除と解散を呼びかけた。40年にわたるトルコ政府との対立に終止符を打ち、地域の政治や安全保障に大きく影響する可能性がある。

PKKが武装解除すれば、エルドアン大統領にとって、これまで数千人が死亡し、地域経済が荒廃するトルコ南東部を発展させる歴史的な好機となる。

隣国シリアでは新政権が国家再建を目指す中、クルド人勢力の支配地域である北部で支配力を強める可能性があるが、和平が実現すれば、石油が豊富なイラク北部でも恒常的な火種を取り除くことができる。

オジャラン受刑者は、親クルド派トルコ野党の人民平等民主党(DEM)が公開した書簡で「私は武器を置くよう呼びかけており、この呼びかけの歴史的責任を引き受ける」と表明した。

イラク北部の山岳地帯にあるPKK本部はこれまで、オジャラン受刑者の呼びかけに反応していない。

一方、クルド人主体の組織「シリア民主軍(SDF)」部隊のマズロウム・アブディ司令官は、オジャラン受刑者の呼びかけはPKKのみに適用され、「シリアのわれわれとは関係ない」と述べた。【2月28日 ロイター】
********************

PKK創始者オジャラン受刑者は1999年ケニアでトルコ情報機関に逮捕され、トルコに連行・収監されています。
エルドアン政権とPKKはこれまでも停戦と破棄を繰り返してきました。エルドアン政権は2013年からPKKと正式に和平交渉を始めましたが、PKKは2015年7月に停戦破棄を宣言し,PKKによるトルコ当局を狙ったテロが再び 始まったという経緯も。

注目されるのはシリアのクルド人勢力への影響。
トルコ国内でのエルドアン政権とPKKの対立が緩和すれば、トルコがPKKと同等視して軍事的圧力をかけているシリア北部のクルド人勢力への圧力も緩和される可能性も。

****PKK解散 実現ならシリア情勢に影響も クルド人勢力は「歓迎」****
トルコで武装闘争を続けてきたクルド労働者党(PKK)の創設者、オジャラン氏が促したPKKの解散と武装解除が実現すれば、昨年12月にアサド政権が崩壊したシリア情勢にも影響が及ぶとみられる。

シリア北部ではトルコが支援する武装組織とクルド人主体の「シリア民主軍」(SDF)が衝突を続けているからだ。仮にPKKが解散すれば、こうした対立の緩和につながる可能性も出てくる。

ロイター通信によると、SDFの司令官は27日、オジャラン氏の声明は「シリアの我々とは無関係だ」としつつも、「トルコで平和的な政治が始まる」ことを歓迎する姿勢を示した。さらに「トルコで和平が実現すれば、(トルコが)シリアで我々を攻撃する口実がなくなる」とも語った。

SDFは内戦下のシリアで、米軍の支援を受けて過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討に当たってきた。一方、トルコはSDFをPKKとみなし、アサド政権崩壊後から攻勢を強めている。

トルコに近いシリアの暫定政権はSDFに対して「融和」を呼びかけているが、2月下旬に開催された各勢力の代表による「国民対話会議」には招待しなかった。トルコとSDFの対立が緩和されれば、暫定政権が目指す国内融和に向けて弾みがつく可能性がある。

また、PKKが武装解除すれば、イラク北部にあるクルド人自治区の治安情勢の改善にもつながるとみられる。自治区では長年、PKKが拠点を築いており、トルコ軍が空爆などを繰り返しているからだ。

地元メディアによると、自治区を統治する自治政府トップ、バルザニ議長も27日、「より良い結果は武器や暴力ではなく、平和で民主的な闘いから生まれる」と述べ、オジャラン氏の声明を歓迎した。【2月28日 毎日】
**********************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドイツ  難航が予想される連立交渉 極右政党が第1党のオーストリアはようやく反極右連立が成立

2025-02-27 23:31:49 | 欧州情勢

(23日、ドイツ総選挙の出口調査結果が公表され、笑顔を見せるCDUのメルツ党首=ベルリン【2月24日 産経】)

【予想どおり野党CDU・CSU勝利も、手放しでは喜べない結果】
2月23日に行われたドイツ連邦議会選挙は、インフレなどの経済状況、移民・難民問題を背景にフリードリヒ・メルツ氏が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が首位、移民排斥の極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が2位、一方連立与党の中核である社会民主党(SPD)は大敗・・・と、ほぼ選挙前に予想されていた結果となりました。

政権交代を実現した中道保守CDU・CSUは勝利したものの、昨年末段階の支持率からは大きく減少しており、首相就任が予想されているメルツ党首も手放しでは喜べない結果でした。

極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)躍進の背景などについては、2月22日ブログ“ドイツ総選挙 極右躍進で米に続いて独も「反動の時代」に入るのか”でも取り上げましたので、今回はパスします。

****「欧州の病人ドイツ」の治癒なるか?総選挙で保守中道が政権交代も連立交渉は難航、期待に沿えなければ次の選挙で“極右政権”の懸念も****
ドイツの有権者は政権交代を選んだ。2月23日の連邦議会選挙で、フリードリヒ・メルツ氏が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が首位に立った。メルツ氏は復活祭(4月下旬)までに新政権を発足させると約束した。

だが同党が議席の過半数を確保するには社会民主党(SPD)との連立、または緑の党も加えた三党連立が避けられない情勢だ。党の政策の隔たりは大きく、連立交渉の難航が予想される。

メルツ氏が次期首相の座に「王手」
今回の選挙では予想通り、保守と極右が躍進した。選挙管理委員会の2月24日の発表によると、CDU・CSUは前回の選挙(2021年)での24.2%に比べて得票率を4.4ポイント増やして28.5%を確保し、首位に立った。(中略)

もう一人の勝者は、極右政党ドイツのための選択肢(AfD)だった。同党の得票率の増加率は、今回の選挙で最も大きかった。同党は得票率を21年の10.3%から約2倍の20.8%に増やし第二党となった。13年の結党以来、最も高い得票率だ。

同党は欧州連合(EU)やユーロ圏からの脱退、ロシアからの天然ガスの輸入再開などを求めるなど、過激な政策変化を提唱している。AfDの一部の州支部は憲法擁護庁から「民主主義体制の転覆を目指す極右勢力」として監視されている。それにもかかわらず、有権者の5人に1人が同党に票を投じた。

旧東ドイツ地域では、AfDの得票率は首位だった。AfDのアリス・ヴァイデル共同党首は、「我々はもはや少数政党ではなく、国民政党になった」と述べて成果を強調。同氏は「次の連邦議会選挙では、CDU・CSUを追い抜く」と述べた。

これに対し与党は、有権者から厳しい判定を受けた。オラーフ・ショルツ首相が率いるSPDは得票率を前回の25.7%から9.3ポイント減らして16.4%と惨敗。結党以来最も低い得票率だ。

緑の党の得票率も3.2ポイント減って11.6%となった。昨年11月まで連立政権の一部だった自由民主党(FDP)の得票率は前回の総選挙に比べてほぼ半減し、4.3%となった。

ドイツでは小政党の乱立を防ぐために、得票率が5%未満の政党は会派として議会に議席を持てない。FDPは連邦議会を去って野に下ることになった。

「完全勝利」ではないCDU・CSU
(中略)ただしCDU・CSUにとっても今回の選挙結果は、手放しで喜べるものではない。同党への支持率は、昨年11月のアレンスバッハ人口動態研究所の世論調査では37%だった。わずか4カ月で同党への支持率は28.5%に減った。8.5ポイントの著しい減少だ。同党は30%を超える得票率を目指していたが、その目標は達成できなかった。

CDU・CSUの失速の理由は、メルツ氏が難民規制を強化する方針の中で「行き過ぎ」ともとれる措置を発表したからだ。彼は「ドイツでの亡命申請を拒否され、出国を義務付けられている外国人は逮捕して、直ちに収容施設に拘留する」という措置を提案した。メルツ氏は、AfDの票を奪うために、難民政策をAfDの路線に急激に近づけたのだ。

この提案はCDU・CSU支持者の中でリベラルな思想を持つ人々、たとえばメルケル氏の人道的な難民政策を支持していた人々を憤慨させた。昨年11月に比べてCDU・CSUの支持率が低下したことはその表れだ。

逆に極左の左翼党が前回に比べて得票率を3.9ポイント増やして連邦議会に復帰すること、緑の党の得票率の減少率がSPDほど酷くはなく、3.2ポイントに留まったことは、メルツ氏の「右旋回」に対するリベラルな市民の危機感を反映している。(後略)【2月26日 WEDGE】
*******************

主要政党以外では、旧東独の共産主義政党の流れをくむ「左派党」も大きく議席を増やしています。同党の躍進は最近の選挙の流れであるSNS活用が効果を発揮したようです。

極右AfDと左派の左派党が躍進するという“両極化”を示しています。

****ドイツ総選挙で「左派」も躍進、TikTokに注力し支持拡大か…18歳未満の模擬投票でも1位****
23日のドイツ総選挙で右派の躍進が目立つ一方、旧東独の共産主義政党の流れをくむ「左派党」も大きく得票を伸ばした。SNSを活用した選挙戦術が若年層の支持獲得につながった。

左派党の獲得議席数は、39議席から64議席に急増する見通しだ。得票率は、前回の4・9%から8・8%に跳ね上がった。

気候変動防止や反戦・平和、所得格差是正に焦点を絞った主張の分かりやすさに加え、若年層に利用者が多い動画共有アプリTikTok(ティックトック)での情報発信に力を入れたことが功を奏したとみられている。選挙戦終盤になって急速に支持を広げた。

独メディアによれば、投票権のない18歳未満の若者を対象にして今月行われた全国規模の模擬投票では、左派党が得票率20・8%で主要政党を押しのけて1位だった。米国など多くの民主主義国で社会の両極化が進んでいると指摘されており、ドイツでも同じ傾向が示された格好だ。【2月24日 読売】
***************

【首相就任が予想されているメルツ党首 対ロシア強硬派】
首相就任が予想されているメルツ党首は、メルケル元首相との権力争い敗れ、一時政界を離れていた経歴があります。ウクライナ問題に関してはショルツ現首相(SPD)よりは対ロシア強硬派とされています。

****ドイツの首相候補メルツ氏は対露強硬派、武器供与もショルツ氏より積極姿勢「ウクライナは勝たなければならない」****
ドイツの次期首相として有力視される中道右派、キリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ党首は対露強硬派として知られ、ウクライナ侵略に関し、厳格な対露制裁を支持する立場を取る。

ウクライナへの武器供与を巡ってもショルツ首相より積極的な姿勢を示しており、政権交代によってウクライナ支援が加速する可能性がある。

メルツ氏は1月23日、外交政策に関する演説で「我々の安全はロシアによる深刻な脅威にさらされている」と語り、欧州の防衛力強化の必要性を訴えた。

「ウクライナは勝たなければならない」とも明確に述べた。ドイツは第2次世界大戦を招いたナチス時代への反省から、戦後一貫して紛争への関与に慎重な姿勢を保ってきただけに、ドイツ国内では踏み込んだ発言と受け止められた。

中道左派・社会民主党(SPD)のショルツ氏も、ウクライナ侵略を「時代の転換点」と位置づけ、ウクライナ支援ではほかの欧州諸国と歩調を合わせてきた。独政府によると、これまでの支援額は米国に次ぐ総額440億ユーロ(約7兆円)に上り、欧州では最大規模だ。

ただ、ショルツ氏はウクライナが求める長射程巡航ミサイル「タウルス」(射程約500キロ・メートル)の供与には一貫して慎重姿勢を保ってきた。ロシアを過度に刺激しかねないとする懸念に配慮した判断とみられる。

一方のメルツ氏は「欧州各国の同意を得られれば、タウルス供与の準備をすべきだ」と供与に前向きの立場だ。首相に就任すれば、供与に向けて英仏などと調整する考えを示している。

今後、タウルス供与の実現には連邦議会の承認が必要だ。キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、環境政党・緑の党は供与を支持する一方、SPDなどの左派や、ロシアに融和的な強硬右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は反対しており、多数派の合意形成が課題となる。

◆ Friedrich Merz 
企業弁護士、欧州議会議員を経て、1994年に独連邦議会議員に初当選。メルケル前首相の政敵で、党内の権力争いに敗れて2009年に一時政界を離れた。18年に復帰し、22年に党首就任。経済通として知られる一方、閣僚経験はなく手腕は未知数だ。【2月25日 読売】
*******************

【難航も予想される今後の連立交渉 次期政権が国民期待にこたえられなければ、次の選挙ではいよいよ極右AfDが第1党か・・・】
キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)だけでは過半数に至りませんので、今後は同党・メルツ氏を軸に社会民主党(SPD)などとの連立交渉が行われますが、これまで連立与党の一画を占めていた緑の党の扱いなど簡単ではないようです。

****「欧州の病人ドイツ」の治癒なるか?総選挙で保守中道が政権交代も連立交渉は難航、期待に沿えなければ次の選挙で“極右政権”の懸念も****
(中略)
連立交渉は難航か
CDU・CSUの28.5%という予想外に低い得票率は、メルツ氏の連立交渉を難しくする。メルツ氏は、選挙前に「二党連立が理想」と語っていた。しかしドイツの論壇では、「CDU・CSUとSPDが連立するだけでは不十分ではないか」という声が出ている。

次期連邦議会の議席数は630で、半数を超えるには316議席が必要だ。CDU・CSUとSPDの議席数の合計は328。半数を超えるものの、安定過半数とは言い難い。13人が造反または棄権したら、過半数を失うからだ。CDU・CSU、SPDに緑の党を加えた「ケニア連立(党のシンボルカラーがケニアの国旗の色と同じ黒、赤、緑になるため)」では、413議席となり、安定過半数が得られる。

つまりCDU・CSUは安定過半数を確保するために、SPDだけではなく緑の党も加える必要に迫られるかもしれない。

だがCDUの姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)のマルクス・ゼーダ―党首は、選挙後にドイツ第一テレビ(ARD)が放映した党首討論会でも「緑の党とは連立しない」と語っており、連立交渉は難航する可能性がある。

連立交渉を難しくするのは、政策の隔たりだ。最大のテーマは難民政策である。メルツ氏は、「滞在許可を持っていない外国人がドイツ国境に到着し、そこで『亡命を希望する』と言っても、国境で追い返す」と主張している。これに対し、SPDと緑の党は「亡命希望者を国境で追い返すことは、憲法とEU法に違反する」と反対している。

財政規律も大きな対立点だ。ドイツ連邦政府は憲法の規定により、国内総生産(GDP)の0.35%を超える財政赤字を禁じられている。この規則は債務ブレーキと呼ばれる。

SPDと緑の党は債務ブレーキを修正して、ウクライナ支援や軍備拡張、エネルギー転換などのための投資については、新規国債の発行を可能にするべきだと主張している。CDU・CSUは、債務ブレーキの変更に反対している。メルツ氏は、長期失業者に対する援助金など社会保障費用を減らすことによって、新たな財源を生み出すと説明している。

さらにデリケートなテーマが、社会保障だ。メルツ氏は選挙戦では、公的年金制度の改革について多くを語らなかった。有権者に痛みをもたらす改革だからだ。ショルツ政権は、インフレ率および賃金の上昇に合わせて、ここ数年は毎年公的年金の支給額を増やしてきた。だが経済学者の間では「ベビーブーマー(団塊の世代)が定年退職しつつある現在、公的年金制度を抜本的に改革することは不可欠」という意見が有力だ。

このためメルツ氏は、今後公的年金の支給額の伸び率を抑えるなどの措置を打ち出すとみられている。SPDと緑の党は、社会保障サービスの切り詰めには反対している。

エネルギー政策でも隔たりがある。CDU・CSUは原子力回帰の方針を打ち出し、23年に停止された最後の3基の原子炉の再稼働が経済的・技術的に可能かどうかについて調査することや、小型モジュール原子炉(SMR)など次世代原子炉の研究開発に力を入れると宣言している。緑の党は原子力回帰に反対している。SPDは緑の党ほど原子力ルネサンスへの反対姿勢を明確に打ち出していないが、原則として脱原子力に賛成している。(中略)

CDU・CSUは、欧州議会が決めた、「35年以降は内燃機関の新車の販売を原則として禁止する」という法律の撤回を提案している。さらにショルツ政権が24年1月1日に施行させた、暖房の脱炭素化のための「建物エネルギー法」も撤回するという公約をマニフェストに明記した。これらの提案は、いずれも緑の党にとって受け入れがたい政策である。

安全保障政策でも、対立点がある。メルツ党首は、ウクライナ政府が要請しているドイツ製巡航ミサイル・タウルスの供与に賛成しているが、SPDのショルツ首相が率いるハト派勢力は、「タウルスの供与はロシアから交戦国と見なされる恐れがある」として反対している。

メルツ次期首相にとって難題が山積
メルツ氏には、時間をかけて連立交渉を行う余裕はない。直ちに取り組まなくてはならない経済・安全保障に関する難題が山積しているからだ。ドイツの実質GDP成長率は23年、24年と2年連続でマイナスだった。

トランプ政権が矢継ぎ早に打ち出す関税攻勢は、貿易大国ドイツの停滞をさらに深刻化させる危険がある。トランプ大統領が自動車に対する関税を予告していることは、ドイツの産業界に強い不安をもたらしている。メルツ氏は、企業に対する税金や社会保険料負担の引き下げを通じて企業の競争力を改善させることによって、GDP成長率を2%に回復させると国民に約束している。

だが工業生産額の減少、自動車業界の未曽有の危機、企業倒産数や失業者数の増加により、ドイツ人の不安は強まっている。メルツ氏が、「欧州の病人ドイツ」を健康体に回復させることができるかどうかを、欧州の他の国々も見守っている。

またこの国では「ウクライナ戦争が、欧州大戦に拡大するのではないか」という懸念が強まっている他、トランプ政権が停戦交渉をめぐって、ウクライナと欧州を蚊帳の外に置いていることも、ドイツと欧州の先行きに強い不透明感を与えている。

政局の次の焦点は、メルツ氏が、強い政策運営能力を持った政権を迅速に作り上げることができるかどうかだ。21年の連邦議会選挙では、CDU・CSUとAfDの得票率の間には、13.8ポイントの差があった。今回の選挙では、その差が7.7ポイントに縮まった。

メルツ氏が国民の期待に沿えなかった場合、AfDのヴァイデル氏の「次の選挙ではAfDがCDU・CSUを追い抜く」という予言が現実化する危険もある。メルツ氏には、勝利を祝っている時間はない。【2月26日 WEDGE】
**********************

【昨年9月の総選挙で極右政党が第1党になったオーストリア 難航した連立交渉がようやくまとまり、かろうじて極右政権誕生を阻止】
ドイツの動きを先取りするように、すでに極右政党が選挙で第1党となっているのが隣国オーストリア。

オーストリアでは24年9月の総選挙で反移民極右政党「自由党」が第1党になりました。自由党は1956年に元ナチス党員らが結成した政党。

連立交渉は先ず自由党以外の“反極右”で行われましたが失敗。次いで自由党を軸に現与党の中道右派「国民党」との交渉が行われました。

もし連立交渉がまとまれば、自由党出身者を首相とする初めての「極右」政権が発足・・・ということにもなりましたが、結局この連立交渉も失敗。

混迷する連立交渉を背景に、再選挙の可能性も取り沙汰されていました。
“世論調査によると、再選挙の場合、極右政党が議席を伸ばす公算が大きい。”【2月13日 時事】

そうした再選挙への警戒感もあってか、最初に失敗した“反極右”での連立がようやくまとまったようです。

****中道3党が連立合意=再選挙を回避、来月新政府―オーストリア****
2024年9月の総選挙以降、新政府樹立が遅れていたオーストリアで27日、中道3党が連立協定で合意した。公共放送ORFによると、早ければ3月3日に新政府が発足し、与党の中道右派・国民党のシュトッカー党首が首相に就任する。これにより再選挙は回避された。

新たな連立は、議会勢力第2〜4党の国民党、野党の中道左派・社会民主党、中道のNEOSで構成する。

3党は選挙後すぐに連立形成を試みたが、いったん決裂。その後、初の第1党となった極右・自由党に連立交渉の主導権が移ったものの、これも失敗し、中道3党が再び交渉していた。【2月27日 時事】 
******************

かろうじて極右政権誕生を阻止した中道3党ですが、次の選挙では・・・・。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリア  国民融和を目指す国民対話会議 クルド人勢力、IS、イスラエル・・・課題山積、道遥か

2025-02-26 23:29:42 | 中東情勢

(会場に集まる「国民対話会議」の出席者=ダマスカスで2025年2月24日、AP【2月25日 毎日】
いかにもアラブ的な光景ですが、TVニュースで見たところ、会議の締めくくりの声明は女性が読み上げていました。そうした“女性を決して排除していない”という国際社会への配慮は持ち合わせているようです。)

【クルド人勢力は招かれなかった国民対話会議で国民融和を議論】
アサド政権が崩壊したシリアでは、旧反体制派の主力組織「シャーム解放機構(HTS)」の指導者アハマド・シャラア(通称ジャウラニ)氏がシリア暫定政権のトップに就任し、大統領選挙は4,5年先になるとの見通しとしていることなどは、2月7日ブログ“シリア 「新生シリア」に向けてHTS指導者のシャラア暫定大統領始動 影響力拡大を狙うトルコ”でも取り上げました。

もちろん課題山積。 北部のクルド人勢力とトルコの対立(トルコはHTSの支援国)、南ではイスラエルの攻撃、更にIS復活の動きなど。

そうしたなかで、国民融和に向けた「新生シリア」の基盤を話し合う国民対話会議が25日開かれました。ただし、クルド人勢力は招待されておらず、早くも国民融和の道が険しいことを示しています。

****シリアで国民対話会議、クルド人は招かれず 武力衝突と宗派対立も続き国民融和は見通せず****
昨年12月にアサド前政権が崩壊したシリアの首都ダマスカスで25日、国家再建策を話し合う国民対話会議が開かれた。

多民族・多宗派のシリアでは国民の和解が課題だが、北東部を実効支配する少数民族クルド人の地元当局者や、米軍と連携するクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)は招かれなかった。ロイター通信が伝えた。

会議にはシリア人約600人が出席した。現地に駐在する外交官は招待されなかったもよう。冒頭で演説したアハマド・シャラア(通称ジャウラニ)暫定大統領は、「(国の)強さは団結にある」と述べて国民融和の重要さを訴えた。各地の民兵組織は単一の軍の指揮下に入るべきだとも主張した。

出席者は司法制度や憲法、国家機構などテーマ別に6つのグループに分かれて討議した。討議結果に法的拘束力はないが、イスラム過激派「シリア解放機構(HTS)」が主導する暫定政府は3月1日に期限を迎えることから、後継の新体制に基本政策を提言する役割を担ったようだ。

一方、国内の軍事衝突や宗派対立が沈静化するかは見通せない。シリア人権監視団(英国)は25日、暫定政府の軍部隊とトルコ軍が北部アレッポでSDFと武力衝突したと伝えた。トルコ軍は24日、戦闘機でアレッポを空爆したという。HTSはトルコとの結びつきが深いとも指摘される。

また、同監視団は25日、所属宗派を巡る事件などで今年に入り150人以上が殺害されたとする集計結果を公表した。中部のホムスでは約80人、ハマでは40人以上が犠牲になった。

軍事衝突や宗派対立が深刻化すれば、国内の全勢力が参加する政権樹立の時機を失うことになりかねない。欧米や周辺のアラブ諸国もシリアの内政を注視しているようだ。【2月26日 産経】
***********************

暫定政府軍及びトルコの攻撃を受けるクルド人勢力(「シリア民主軍(SDF)  クルド人民防衛隊(YPG)を主体とする)としては、SDFを含む各勢力の武装解除は承諾しかねることでしょう。

*****シリア国民対話、軍以外の武装認めず=クルド人勢力が反発*****
シリアで各地の民族や宗教の代表らが参加して今後の国の在り方などを議論する「国民対話会議」が25日、閉幕した。国営通信によれば、閉幕後の声明では正規軍以外の武装組織は非合法として認めない方針を確認。

また、「民族や宗教宗派に基づく差別を拒み、全てのシリア人の平和的共存の原則をつくる」として、多様な国民の融和実現への決意を示した。

各勢力の武装解除や軍・治安機関の再編を進めるシャラア暫定大統領は、会議での演説で「国家が武器を独占することは義務だ」と主張。シリア北東部を実効支配するクルド人勢力を暗にけん制した。

AFP通信によると、クルド側は「会議は国民を代表しておらず、その結果は履行しない」と反発し、分断の解消は見通せない状況だ。【2月26日 時事】 
*********************

これまでクルド人勢力はアメリカが進めるIS掃討作戦の地上部隊の役割を担ってきましたが、トランプ大統領は「シリアなど放っておけ」という基本姿勢ですから、これまでのようなアメリカのバックアップは期待できず、トルコと暫定政府の強い圧力を受けることになると予想されます。

【ISの勢い「再び活発」 クルド人勢力が管理する元IS戦闘員の存在】
一方、米軍が掃討作戦を続けてきたISは勢いを取り戻しつつあるとも報じられています。

****シリアでISの勢い「再び活発」 人権監視団、暫定政府に懸念****
シリア人権監視団(英国)のアブドルラフマン代表は11日までに、シリアで昨年12月のアサド政権崩壊後、過激派組織「イスラム国」(IS)の勢いが「再び活発化している」とし、IS再興の恐れがあると述べた。

政権崩壊後の暫定政府は国内を部分的にしか支配できておらず、統治能力が不十分だと懸念を示した。訪問先のエジプト・カイロで共同通信の取材に応じた。

暫定政府は過激派「シリア解放機構(HTS)」が主導。HTS指導者のアハマド・シャラア(通称ジャウラニ)暫定大統領は全武装組織の解散を表明した。ただ、アブドルラフマン氏は約30の武装集団がシリアで活動中と指摘。ISと同様に過激思想を持つ一部集団がISに加わり、活動を拡大させているとした。

同氏は暫定政府に関し、人員不足と言及。首都ダマスカスと北西部イドリブ周辺を掌握するが影響力が及んでいない地域があり「国内情勢は依然、不安定だ」と述べた。

イスラム教アラウィ派や前政権関係者への「復讐」が横行し、市民らが宗派などを理由に殺害されたとも語った。【2月11日 共同】
**********************

その1S捕虜1万人近くをクルド人勢力が域内の収容施設に管理しています。
このIS捕虜が再び戦闘に参加する事態となれば、シリアの状況に大きく影響しますし、世界のテロ状況にも関係してきます。

このことは以前からシリアについて議論する際に指摘されてきた重要なファクターですが、「どうしてクルド人勢力はそんな厄介なものを引き受けてきたのだろう?」と疑問に思っていました。

しかし、IS捕虜収容施設管理はクルド人勢力にとって取引のカードとして使えるもののようで、クルド人勢力とアメリカとの間でこれまでも“かけひき”がなされてきたとも。

****シリア国内乱戦と核の恐怖****
「(2024年)12月8日、トルコが支援するシリア国民軍が、トルコ国境に近いクルド人支配都市のマンビジュでクルド人武装組織YPG(前出SDFの中核)を攻撃しました。10日にもコバニという別の町でYPGに激しい攻撃を仕掛けています。両戦闘ではトルコ空軍戦闘機が、地上部隊の進撃を空爆支援しました。

YPGの戦略的な重要性、つまり米国が今もYPGを支援し続けている理由は、YPGがISのテロリストたちの収容施設を管理しているからです。

シリア北東部の中心には、ISのテロリスト9000名以上を収容する20ヵ所の施設があります。そこをYPGが警備、管理運営している。もちろん、その資金源は米国です。

今回、トルコがYPGを攻撃しましたが、YPGの司令官は米政府がトルコを止めないことに不満を表明しました。さらに、YPGとトルコが支援する武装グループとの戦闘が激化するなか、YPGの主要部隊は『ISの容疑者を収容している刑務所の警備から、戦闘員を前線に回さざるを得なくなった』と発表しました。

これはYPGが米政府に対し、『われわれを見捨てるのであれば、ISのテロリストを野に放つぞ』という脅しです」(菅原氏(国際政治アナリスト))

トルコはなぜ、クルドに対して攻撃したのか。
「シリアの内戦は2011年に勃発しましたが、その頃のクルド勢力はシリア北東部のトルコとの国境沿いの地域をコントロールしているだけでした。しかし、今やシリア全土の3分の1を支配している。トルコはこれを押し戻そうとしています」(菅原氏)

しかし、それは米国が嫌がるはずだ。
「そうです。だから、これまでオバマ政権の時からバイデン政権に至るまで、クルドとの関係を維持し続けていました。

ただし、状況が変わったのは前トランプ政権の時です。トランプはトルコのエルドアン大統領ととても親しく、彼の話を聞いて『わかった。お前に任すから、我々は退くよ』と言ってしまいました。

米軍はトランプに『クルド民兵に任せている元IS戦士の収容所の管理ができなくなるので大変だ』と説明しましたが、トランプには理解不能。そこで米軍は『石油の利権が獲られます』と説明すると、トランプは乗せられて『石油は押さえないとダメだ』と言ってYPGとの関係を続けることにしました」(菅原氏)

つまり、クルド人民兵組織YPGは、「元IS兵士9000人を野に放つ」という"核兵器"を所持しているのだ。
しかし、トランプ次期大統領はトルコのエルドアン大統領に、再び「任せたぜ」と言いそうである。(後略)【2024年12月22日 小峯隆生氏 週プレNEWS “「シリアの首都・ダマスカスはなぜ陥落したのか?」その理由と今後の展開を専門家が徹底解説!”】
********************

クルド人勢力にとっては、今後もこの元IS戦闘員の存在は暫定政権との間で「取引」のカードになるのでしょう。

それにしても、石油とかレアアースとかカネの匂いのするものにしか興味を示さないトランプ氏の存在は世界の様々な紛争に影響します。

トランプ大統領を動かすには、いくら道理を説いても無駄で、カネの匂いをチラつかせるしかない・・・石破首相の対米1兆ドル投資とか・・・ということのようです。

【暫定政権はイスラエル軍の南部からの撤退を求めるも、攻撃を続けるイスラエル】
話を25日の国民対話会議に戻すと、シリア南西部に侵攻しているイスラエルに対して撤退を求めています。

****「イスラエル軍は撤退を」 シリアが「国民対話会議」で共同声明****
シリアの各地域や宗教の代表らが国家像を協議する「国民対話会議」は25日閉幕し、「シリアの融和を維持し、どのような分断も拒否する」との共同声明を発表した。また、イスラエル軍がシリア南西部に侵攻していることを非難し、「無条件の即時撤退」を求めた。
 
イスラエル軍は昨年12月のアサド政権崩壊後に占領地のゴラン高原を越えてシリア側に入り、駐留を続けている。ロイター通信によると、ネタニヤフ首相は23日、シリア軍が「首都ダマスカスより南へ来ることを認めない」と語り、シリア南部を「非軍事化」すべきだと主張した。

国営シリア・アラブ通信などによると、共同声明では「イスラエルの首相による挑発的な発言を拒否する」と表明し、国際社会に対して侵攻を止めるよう訴えた。(後略)【2月26日 毎日】
************************

しかし、イスラエルにとっての利益しか念頭にないネタニヤフ首相は聞く耳持たないでしょう。

*****イスラエル軍、シリア南部や首都近郊を空爆 「軍事拠点標的」****
イスラエル軍は25日、シリアの首都ダマスカス近郊の町と同国南部を空爆した。シリアの治安筋や放送局が伝えた。

治安筋とシリアテレビによると、複数のイスラエル軍機がダマスカスの南約20キロの町を攻撃。治安筋は軍事拠点が標的になったと述べたが、詳細は明らかにしなかった。

また、シリアテレビと住民によると、イスラエル軍は南部ダラア県の町も空爆した。

イスラエル軍はその後、司令部や武器保管施設を含むシリア南部の軍事拠点を攻撃したと発表した。

イスラエルのカッツ国防相の報道官は声明で「空軍はシリア南部を平穏な状態に戻す新たな政策の一環として、同地域を激しく攻撃している。メッセージは明確だ。シリア南部がレバノン南部のようになることを許さない」と述べた。

イスラエルは、昨年12月に国際武装組織アルカイダ系の団体が前身の組織「シャーム解放機構(HTS)」が主導する反体制派がアサド政権を打倒したことを受け、国連が監視するシリア国内の非武装地帯に地上部隊を派遣した。【2月26日 ロイター】
**********************

暫定政権の国内統治、国民融和への道は不透明で険しいです。

【EU 一部の制裁措置を停止】
明るい材料としては、EUがシリアに対する一部の制裁措置を停止したということが。

****EU、対シリア制裁を一部停止 エネルギー・銀行分野など****
欧州連合(EU)は24日、シリアに対する一部の制裁措置を直ちに停止した。エネルギー、銀行、輸送、復興に関連する制限措置が対象。

EUはシリアの個人や経済部門を対象にさまざまな制裁を実施しているが、昨年12月にシャーム解放機構(HTS)を中心とする勢力がシリアのアサド大統領を追放して以降、対リシア政策の見直しを進めている。

EUは24日にブリュッセルで開催した外相会合で、石油、ガス、電力に関する制限措置と輸送部門に対する制裁を停止することに合意。

また、銀行5行に対する資産凍結を解除したほか、シリア中央銀行に対する制限措置を緩和した。人道援助を促進する例外規定も無期限に延長した。

シリアのシェイバニ外相は「国民の重しになっている不当な制裁を緩和するため、この2カ月間、協議と外交努力を進めてきた」とし「特定分野の一部制裁を停止する今回のEUの決定を歓迎する」とXに投稿した。

EUは武器取引、軍民両用製品、監視用ソフト、シリアの文化遺産の国際取引など、アサド前政権に関連する他の一連の制裁は維持した。

EUは制裁の停止が適切であることを確認するため、シリア情勢の監視を続けると表明した。【2月25日 ロイター】
**********************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプ大統領の「Flood Zone」戦略 三権分立と法の支配を揺るがす連邦政府解体 メディア規制も

2025-02-25 23:22:27 | アメリカ

(【2月25日 日テレNEWS】メキシコ湾を「アメリカ湾」と呼ぶようにという政権主張に従わないAP通信に取材規制を課した件でのAP通信の訴訟を退けたことで、ホワイトハウス記者会見室のモニターに掲げられた「勝訴、アメリカ湾」)

【トランプ大統領が繰り出す「Flood Zone」戦略】
トランプ大統領は就任と同時に連日、多岐にわたる大統領令・覚書を発令し、世界を驚かせる発言を行っています。

ゼレンスキー大統領を独裁者と呼び、ロシアの主張を丸呑みしたかのようなウクライナ戦争に関する発言
ガザ住民を移住させ、ガザを観光地として再開発しようという計画
カナダ・メキシコ、中国、さらには全世界を対象にした関税
更に、不法移民強制送還 環境・温暖化対策の緩和・撤廃 連邦政府解体 「多様性・公平性・包括性=DEI」政策の廃止等々・・・女子のスポーツ競技へのトランスジェンダー参加禁止、紙ストロー廃止まで

そのあまりの多さ、広範さに批判する側も呆然として立ちつくす感がありますが、それはトランプ大統領からすれば“思うつぼ”であり、こうした圧倒的な量の命令・主張を一時期にまとめて行い、批判の焦点を絞らせない戦略を「Flood Zone」と呼ぶそうです。“特定地域に「洪水」を引き起こす”という意味合いです。

****もはやメディアもお手上げ!トランプが繰り出す「Flood Zone」戦略、乱発される大統領令に打つ手はないのか****
対応しきれないほどの多くの大統領令を矢継ぎ早に発動し、“監視役”の既存メディアを目くらまし状態に追い込む――。トランプ米政権が打ち出した「Flood Zone」と呼ばれる戦略がにわかに注目されている。 

マスメディアや野党を“溺死”状態に
「Flood Zone」とは直訳すると、特定地域に「洪水」を引き起こすことを意味するが、トランプ第二次政権が繰り出した戦略は、大統領の意のままに行政命令を短期間のうちに集中的に発動し、批判的なマスメディアや野党を“溺死”状態にすることで追及をかわす狙いがある。  

ニューヨーク・タイムズ紙は去る1月28日、「トランプの『Flood Zone』戦略で反対派を怒りと息切れ状態に」と題する緊急記事を掲載した。 それによると、もともとこの「戦略」は2018年当時、トランプ前政権下でストラテジストとして暗躍した極右思想家スティーブ・バノン氏が編み出したもので、大統領が思いのままの政策や方針を実現させるため、議会の承認を必要としない大統領命令を次々に打ち出すことで、野党民主党とメディアの反対を圧倒することが目的だった。  

しかし今回、トランプ第二次政権下で「戦略」はさらに徹底され、「洪水の激しさも規模も一段と拡大し、残酷なまでの効果を発揮しており、大統領は意図的に反対派をよろめかせ、抗議を希釈するために猛スピードで自らの政策課題を達成してきている」という。  

しかも、同戦略の“生みの親”でもあるバノン氏は、すでに5年前に、米公共放送「PBS」とのインタビューの中で「我々にとっての反対勢力は、唯一、メディアだ。しかし、彼らはいちどきに一つの問題にしか集中できない」と指摘、「では、あなたはどうするのか?」との問いに対し、次のように答えている:  

「われわれとしては、“ゾーン”で洪水を引き起こせばいいのだ。彼ら(メディア)に連日3つのパンチを食らわせる。やつらはそのひとつに打ち返してくる。しかし、それ以上は手が付けられないので、わが方の目的はつぎつぎに成果を挙げられる。彼らは疲労困憊で2度と立ち直れなくなるが、わが方はさらに追い打ちをかける……」(中略)

大手メディアもお手上げ状態
(中略)このように、トランプ大統領の「行政命令」をタテにした横暴ぶりに対し、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどの有力紙、NBC、CBS、CNNなどの主要テレビ含め大手メディアは、五月雨的な批判を繰り返すだけで、ほとんどお手上げ状態だ。  

本来なら、憲法が規定する三権分立の「チェック・アンド・バランス」が機能し、行き過ぎた行為にブレーキがかかることが期待される。しかし、議会は今や、上下両院ともに共和党が多数を制しているだけでなく、大統領の意のままに動く“トランプ党”と揶揄される存在に成り下がってしまっており、チェック機能は有名無実となっている。

今のところ、行政命令が法律や憲法上の大統領権限規定を逸脱した場合の唯一の歯止めは、訴訟による法廷闘争しかない。しかし、かりに、地裁、控訴裁で違法性の疑いのある行政命令に待ったがかかったとしても、トランプ政権が上訴し、最高裁に持ち込まれた場合、9人の判事のうち、6人がトランプ氏の息のかかった共和党系で固められているため、最終段階で棄却される可能性もある。(後略)【2月19日 WEDGE】
*********************

【三権分立と法の支配を揺るがす「トランプ-マスク」ラインの“越権行為” “先週何した”メールで政府内に混乱も】
「Flood Zone」のなかでも「トランプ-マスク」ラインで進む連邦政府解体とも言うべき動きは、憲法が保障する三権分立と力の均衡を変えようとするものとの批判があります。

*****〈イーロン・マスクがアメリカを壊す〉政府効率化省の“越権行為”が破壊する三権分立と法の支配、民主主義はもうないのか****
イーロン・マスクの率いる米政府効率化省は、行政府による権力奪取を隠蔽するものでもあると、2025年2月11日付のフィナンシャル・タイムズ紙 が強く批判している。

先週、イーロン・マスクは、米連邦政府の官僚制度を攻撃する自らのプロジェクトを「人民の革命」と呼んだ。しかし実際は、トランプ大統領に支持された行政府による権力奪取のように思える。

連邦政府機関の廃止、資金提供の凍結、政府職員への辞職の強要等は単なるリストラをはるかに超え、憲法が保障する三権分立と力の均衡を変えようとするものだ。

確かに米国の官僚組織の一部は肥大し非効率で近代化が必要だ。官僚組織を改革するには抜本的な取り組みが必要な場合も多い。しかし、そこには詳細な計画、透明性、そして監督も必要だが、現在のトランプ政権からはこれら全てが欠落している。

マスクの率いる政府効率化省は議会が設置したものではなく、行政命令で創られた曖昧な機関だ。シューマー上院少数党院内総務は、同機関には支出を決定する、あるいはプログラムを停止する権限はなく、まして省庁を丸ごと閉鎖する権限などないと言っている。

マスク・チームの20代のプログラマーたちは、節約案件を探し出し、財務省、国務省、保健福祉省等に侵入し、予算400億ドルの国際開発庁は事実上閉鎖され、何万もの公務員が解雇や停職に追い込まれた。政府効率化省のスタッフは機密情報から政府職員の個人情報まで膨大なデータにアクセスし、プライバシーや国家安全保障上のリスクが生じている。

この効率化を目指すとされる動きは、政府機構を破壊すると共に、その優先課題を押し通し、反対派を無力化すべく行政府の権限を強化することを隠蔽するために利用されているように思える。

政府効率化省による決済システムをコンロールしようする動きも、トランプ政権による連邦政府の供与や融資を凍結する試みと一致する。両方とも、議会が承認した支出を大統領が拒否することを違法とした1974年の法律に挑戦し、力の均衡を立法府から行政府側に傾けようとする動きのように思える。

議会が無気力な今、憲法秩序を守るのは裁判所の役割だが、トランプ政権が矢継ぎ早に繰り出す命令や活動は、民主主義活動家や裁判官が事態について行くのを難しくしている。

ヴァンス副大統領は、大統領による公務員解雇の動きを止めようとした裁判所の判決を大統領は無視できる、と示唆した。他のポピュリスト政権と同様、トランプ政権は自分たちの意図や計画を邪魔したとして裁判官たちをも非難する可能性がある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大統領令の一部差し止めの可能性
このフィナンシャル・タイムズ紙の社説は、的を射た良い社説である。(中略)

三権分立は危機に
このDOGEをめぐる騒動は、三権分立や法の支配という民主主義の根幹にある理念を否定する大きな問題であり、危機意識を持って考える必要があろう。

そうしないと、トランプとイーロン・マスクが、米国を大統領が議会や裁判所に優位に立つ、チェック・バランスがない非民主主義的な国家にしてしまう危険があるように思われる。

優れたデマゴーグとそれに説得される選挙民の組み合わせが民主主義をダメにした例は、ワイマール共和国のように、これまでにもあったことを考える必要がある。【2月24日 WEDGE】
*********************

上記記事の内容には問題ありませんが、“〈イーロン・マスクがアメリカを壊す〉”という表題は間違いでしょう。
アメリカを壊しているということでは、マスク氏を「もっと攻撃的にやれ」と煽っているトランプ大統領が“主犯”でしょう。

国民には連邦政府解体で行政サービスが低下することへの懸念があります。

****マスク氏の「政府効率化省」、国民はサービス悪化を懸念=調査*****
ロイター/イプソスの最新世論調査によると、米国民の過半数は実業家イーロン・マスク氏が進める連邦政府機関の縮小で地元のサービスに悪影響が出ることを懸念している。(中略)

回答者の58%は、公的年金や奨学金といった連邦政府の制度で給付に遅れが生じることを懸念。懸念していないとの回答は29%だった。(後略)【2月20日 ロイター】
********************

この連邦政府解体は、いわゆる“先週何した”メールの配信、回答がなければ解雇というマスク氏の方針で政府内部が混乱しています。

****マスク氏、成果報告なければ解雇とまた警告 政権「返信不要」でも****
トランプ米政権で「政府効率化省(DOGE)」を率いる実業家イーロン・マスク氏は24日、連邦政府職員に過去1週間の成果を示すよう求めたメールについて、従わなければ解雇すると改めて警告した。

連邦政府の人事管理局(OPM)は先に、職員がメールに返信しなくても辞職とは見なされず、返信する義務はないと各省庁の人事担当者に伝えていた。

連邦政府職員は22日、過去1週間に行った業務の詳細を24日午後11時59分までに報告するよう指示するメールを受け取った。その直前にマスク氏は、返答しない場合は辞職と見なすとXに投稿していた。

返信期限が迫る中、マスク氏は「メールでの要求は極めてささいなことで、合格の基準は幾つかの単語を入力して送信ボタンを押すだけだった」とXに投稿。「しかし、このつまらないテストにさえ合格しなかった人は非常に多く、中には上司に促された人もいた」と書き込んだ。

その上で「大統領の裁量により、彼らにはもう1回チャンスが与えられる。2回目に回答しない場合は解雇されることになる」とした。

マスク氏の投稿についてホワイトハウスのコメントは得られていない。

OPMが指針を示した後も、一部機関は職員に返信を促した。連邦政府の建物を管理する連邦政府一般調達局(GSA)の関係筋によると、同局幹部は任意としながらも返信を奨励したという。

また、指針を出したOPM内でも、返信は任意だが「強く推奨される」とするメールを局長代理が職員に送った。

トランプ大統領が24日の記者会見で、マスク氏のメールについて「素晴らしい」などと擁護したことも混乱を一層強めた。トランプ氏は「天才的なアイデアだ。われわれは職員が仕事をしているか調べようとしている」と語った。

OPMの指示に先立ち、司法省、国防総省、国土安全保障省、米連邦捜査局(FBI)、国務省などは指揮系統以外に返信しないよう職員に指示。一方、運輸省、財務省、米連邦取引委員会(FTC)や連邦通信委員会(FCC)などは要請に応じるよう求め、政権内で対応が分かれた。【2月25日 ロイター】
*******************

各省庁を束ねるトランプ“忠臣”の間でも強引な「トランプ-マスク」ラインのやり様には反感・抵抗があるようです。 将来的に政権内部の亀裂につながるのか?

【国民はトランプ大統領の権限拡大に懸念】
こうした“トランプ劇場”全開にさすがのアメリカ国民もやや危険なものを感じているようです。

****トランプ大統領の権限拡大に懸念 米調査、「あまりに危険」65%****
米調査機関ピュー・リサーチ・センターは14日、米大統領の権限拡大に米国民の大半が懸念を示しているとする調査結果を発表した。さまざまな課題に直接対処するようトランプ米大統領により大きな権限を与えるのは「あまりに危険」とする回答は65%に上った。

民主党員や同党寄りの90%が懸念を示した。共和党員や同党寄りで危険視したのは39%だった。

トランプ政権は、多様性やクリーンエネルギーの推進撤回を求めた大統領令に沿うかどうか検証するため、補助金や融資の一時停止を指示。裁判所による差し止め命令が出たが、守っていないとの司法判断も出た。

対外支援を担う国際開発局や教育省の解体に向けた言動もあり、こうした動きは大統領権限を逸脱するとの批判がある。

トランプ氏に限らず、米大統領の権限拡大に78%が懸念を示した。米国では共和党と民主党のどちらが大統領職を掌握するかによって、両党員の権限拡大に対する意識は変わる。

調査は1月27日〜2月2日、全米から無作為に抽出した約5090人を対象に行った。【2月16日 共同】
************************

「独裁者は誰だ?」・・・といった感も。

【政権の在り様をチェックするメディアに対する攻撃 AP通信への取材規制】
本来、権力をチェックすべきメディアの効果的な批判力が低下しているなかで、政権側からのメディア攻撃も。

****AP通信によるトランプ政権取材の再開認めず 米地裁****
アメリカ連邦地裁は、トランプ政権による「メキシコ湾」改称の方針に従わずホワイトハウスでの取材を規制された大手通信社「AP通信」について、取材の再開を認めない判断を示しました。

AP通信は、トランプ政権が「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に改称する方針に従わなかったことで、ホワイトハウスなどでの取材を規制されています。

これを受けAP通信は21日、言論の自由を保障した憲法に違反しているとして、取材規制を撤回するよう裁判所に訴えを起こしていました。しかし、ワシントン連邦地裁は24日、この訴えを棄却。

AP通信によりますと、判事は理由について、「AP通信が回復不可能な損害を被ったと証明していない」としています。その一方で、政権側に対し、「AP通信が『メキシコ湾』と表記するのを禁じるのは法律上ふさわしくない」と指摘しました。

判断を受けAP通信は、「報道機関と市民が政府の報復にさらされることなく、自由に発言する権利のため戦い続ける」とコメント。

ホワイトハウスは、記者会見室のモニターに「勝訴、アメリカ湾」と掲げています。【2月25日 TBS NEWS DIG】
*******************

取材規制に対し、APは21日、取材規制が言論の自由を定める憲法修正第1条に違反しているとして、取材規制の即時撤回を求めてワイルズ大統領首席補佐官、ブドウィッチ次席補佐官、レビット報道官のホワイトハウス当局者3人を相手取り訴訟を起こしていました。

回復不可能な損害を被ったと証明していない・・・という判断は、別の社による代表取材によって「同じ情報にアクセスできる」などがその理由とか。

“判断を下した地裁のマクファデン判事はトランプ氏が第1次政権時に指名した。”【2月25日 ロイター】とも。

なお、“アメリカの連邦地裁は、AP通信の大統領執務室などの取材を規制したホワイトハウスの措置を当面の間、認めるとの判断を下しました”【2月25日 FNNプライムオンライン】ということで、“当面の間”とも。

それにしても“ホワイトハウスは、記者会見室のモニターに「勝訴、アメリカ湾」と掲げています”というのは、あまりに“子供のケンカ”レベルの反応で憂慮に堪えません。何かと批判ばかりする大嫌いなメディアからの訴訟を退けて嬉しいのでしょうが・・・。

【実体経済はインフレ加速の懸念】
三権分立やメディアのチェックが崩壊しつつあるなかで、トランプ大統領の暴走を止めるのはインフレ加速の気配を見せる実体経済の動きかも。

****「トランプ大統領は経済がわかっているのか?」関税戦争の足元でインフレ加速…「最も馬鹿げた貿易戦争」米経済専門紙が批判****
貿易相手国に関税戦争を仕掛ける米国のトランプ政権の足元で、インフレが急速に加速し出し、経済のプロの間から「トランプは経済がわかっているのか?」という声が上がり始めている。

3年先の予想物価上昇率が1年1カ月ぶりの高水準に
ニューヨーク連邦準備銀行は13日、3年先の予想物価上昇率が3%と前月比0.4%上昇し、1年1カ月ぶりの高水準になったと発表した。FRB(連邦制度理事会)が目標とする2%を大幅に上回ることになる。

また食品やエネルギーなど中核の消費者物価も、1月は前年比3.3%上昇を記録し、インフレが予想以上に進行していることを示唆した。

「バイデン政権の経済政策の失敗がインフレを助長させた」と選挙戦を戦って勝利したトランプ大統領だったが、そのバイデンフレーションを退治できなかっただけでなく悪化させさてしまったのだ。

加えて、トランプ大統領の目玉政策である関税引き上げを行うと、輸入製品の値上がりにつながり、インフレはさらに悪化すると大方のエコノミストは指摘する。

トランプ大統領は13日、これについて記者に問われると次のように弁明した。
「これから上がるのは就職率だ。上がるぞ。物価も短期的には上がるだろうが、その後下がるはずだ」
「インフレ再燃はトランプ政権にとって最大の脅威」(後略)【2月17日 FNNプライムオンライン】
****************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする