孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

国際的にも問題視される日本入管制度の過酷な実態 

2021-04-02 22:40:52 | 難民・移民

(衰弱して死亡したスリランカ人女性が名古屋出入国在留管理局の収容場から支援者に出した手紙やイラスト。日本語とローマ字が交ざり、「ほんとう に いま たべたい です」などと書かれている。【3月13日 朝日】)

 

【日本入管の難民像の塗り替え迫るミャンマー軍事クーデター  長期収容改善につながらない入管法改正】

近年はコンビニ・飲食店などで多くの外国人労働者を目にします。

名目はいろいろありますが、外国からの実質的な短期「労働力」確保については急速に進んでいます。

 

そうしたこともあって、私を含めて一般的日本人はあまり意識していませんが、永住につながるような難民認定に関しては、日本は「鎖国」といってもいいような厳しい対応を続けています。

 

“日本は難民認定率が他の先進国と比べ極端に低く、19年はドイツで25.9%、米国は29.6%だったのに対し、日本はわずか0.4%の44人。3月31日に入管庁が発表した統計では、20年も47人にとどまった。”【4月2日 ロイター】

 

そうした厳しい対応の一面として、2019年10月2日ブログ“日本の入管施設の長期収容問題 「仮放免」を求めるハンスト、「餓死」も 東京五輪に向けた治安対策”でも取り上げたように、「入管施設の長期収容」という問題も起きており、そのことが医療制度の不備もあって、収容者の生命に関わる事態となることにもなっています。

 

“19年末時点で、全国で収容されていた外国人は1054人。本来、収容所は退去強制令書を発出された人が退去するまでの間一時的に収容される場所だが、実際には1054人のうち約400人が6カ月超収容されていたという実態がある。”【同上】

 

長期収容を改善するとする入管法の改正が現在進められていますが、その中身は、難民申請中の者を含む退去拒否者へ刑事罰適用、収容に代わるものとして「監理措置」制度を新設するというものです。

 

こうした「改正」では、事態は更に厳しいものになる可能性があることも指摘されています。

 

また、現在起きているミャンマーでの軍事クーデター、その後の国軍による強権的対応は、「難民」とは何かという認識にも影響するものがあります。

 

****ミャンマー軍事クーデターが問う日本の入管法改正 知られざる法廷からの報告****

ミャンマーで起きた軍事クーデターが、日本で難民認定を求めるミャンマー人の裁判に波紋を広げている。

 

折しも政府は、入管難民法の改正案を国会に提出しているが、裁判の現場から見ていくと、根本的な疑問にたどり着く。改正案に妥当性はあるのか。難民保護のあるべき姿とは…。「知られざる法廷」から説き起こしたい。

 

▽民政移管後も続くミャンマー難民

2月16日、東京地裁。日本で難民認定を求めるミャンマー人男性Aさんの本人尋問で、発生したばかりの軍事クーデターが焦点となった。(中略)

 

Aさんは軍事政権時代の2002年に韓国から日本に入国した。06年、不法在留容疑で逮捕され、執行猶予付き有罪判決を受けて入管に収容、退去強制令書が出された。

 

その後、仮放免となり、軍政を批判する雑誌の編集や発行の活動などに関わった。これまでに4回、難民認定を申請したが、認められず、裁判では難民不認定とした国の処分取り消しなどを求めて争っている。

 

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)による19年の統計によれば、ミャンマーは難民の出身国として上位から5番目に入り、その数は約110万人に上る。「民政移管」したとされる11年以降も、世界におけるミャンマー難民の認定率は7~9割に上る。しかしこの期間、日本では難民と認定される人は激減している。

 

なぜ民政移管後もミャンマー人の難民申請者は後を絶たず、なぜ日本政府は難民と認めないのだろうか。

 

▽難民像の塗り替え迫るクーデター

(中略)

Aさん「入国管理局(組織改正で現在は出入国在留管理庁)の方から(スー・チー政権誕生で、安全に帰国できるのでは・・・という意味の)質問を受けましたが、NLDがたとえ政権を握ったとしても、軍の勢力が残っている限り、あるいは刑務所の中に民主化を望む政治犯がいる限り、私は帰れませんというふうに答えました」

 

弁護士「実際にあなたが心配している状況は、今回の軍事クーデターによって明らかになったということも言えますか」

 

Aさん「ミャンマーにいる民主化を望む人たち、日本で活動をしている人たちへの危険は一層増したと思います」

尋問でAさんは、クーデター後、民主化運動に関わりネットで影響力がある親類に逮捕状が出たことも明らかにした。

 

Aさんは民主化が進んだかのように見えながらも、一定の勢力を維持してきた軍の影におびえ、難民認定を繰り返し求めてきた。だが日本の入管は、Aさんが主張するミャンマーの現実に耳を貸そうとしなかった。そして、恐れていたことは現実となった。

 

2カ月前に取材した東京高裁判決を思い出す。この裁判では、ミャンマーの少数民族・カチンの女性が難民認定を求めていた。

 

裁判長は、16年にスー・チーさんが率いるNLD政権発足後もミャンマー国軍とカチンの武装勢力との紛争地域で、一般市民も巻き込んだ人権侵害が継続していたことは認めた。

 

ところが、軍の武力攻撃は、天然資源の取得などを目的とした局地的なものにとどまり、カチンなど少数民族の迫害が目的ではないなどとして難民性を否定した。入管側の主張に沿った判断だった。支援者らの間では、ミャンマー情勢に対する認識不足に失望感が広がった。

 

Aさんとカチンの女性の代理人を務める渡辺彰悟弁護士は「今回のクーデターは、入管が考えている難民像を塗り替えるものだ」と指摘する。

 

「民政移管されたと言っても状況は流動的で、現地ではさまざまなことが起こり得るし、現に起きている。軍に批判的な活動をした人は、もし軍が自分のことを知ったならば迫害されるのではないかと、将来への恐れや不安を抱いて難民認定を求めているが、日本の入管はこうした人を難民と認めてこなかった」

 

▽改正案では長期収容問題は解決しない

難民条約で難民とは「人種、宗教、国籍、政治的意見や特定の社会集団に属するなどの理由で、自分の国にいると迫害を受けるか、迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた人々」のことを言う。

 

さらに難民を、生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない、保護を求めた国へ不法入国し、また不法にいることを理由として罰してはいけないとも、うたわれている。

 

「私は国に帰れば迫害を受けるおそれがある。だから帰れない」。Aさんの法廷での主張を追っていくと、いま、国会に提出されている入管難民法の改正案は、本当に改正と言えるのか、難民条約の精神から外れているのではないかという問いかけにたどり着く。

 

改正の必要性について入管は、国外退去処分を受けた外国人の収容が長期化しているため、その解消を目的としていると主張する。

 

これに対して渡辺弁護士をはじめ、入管問題に詳しい関係者は「改正案は長期収容の解決にはつながらない」と真っ向から反論する。

 

「そもそも送還を拒む人がたくさん出てくるのは、難民と認定されるべき人が適正に認定されていないからだ。それに加え、東京五輪に向けて、入管が『収容』と『送還』を強化し、多くの人を収容した。帰るに帰れない人は送還に応じない。収容長期化は必然の結果だった」

 

弁護士や支援者の主張をもう少し掘り下げたい。

実は、退去処分とされた人の大半は自ら出国している。帰国を拒んでいるのは、Aさんのように「国に戻れば身の危険がある」と訴えている人や、日本に家族がいるケースだ。

 

19年の難民認定率を見ると、日本はわずか0・4%、欧米諸国に比べ、けた違いに少ない。難民条約の精神や国際的な水準を踏まえれば、本来、難民と認められるべき人が認められずに収容されていることが明らかだ。

 

こうした「難民鎖国」の土台の上に、入管の厳しい対応がある。

15年の入管局長通達は、相当期間が経過しても送還の見込みが立たない場合は「人道的な観点からも仮放免を活用する」されていた。

 

ところが16年の局長通知で一変する。東京五輪をにらんで、送還を拒んでいる人など社会に不安を与える外国人を大幅に縮減することが、喫緊の課題とされた。6カ月以上の長期収容者が増える傾向が生じたのは、このころからだ。

 

▽刑務所から入管施設への無限ループ

では、このたびの入管難民法の改正案は、何を目指すのか。

 

まず3回以上の難民申請者については、原則として強制退去の対象となる。現行法では難民認定手続き中は送還が停止されているが、取り払ってしまうのだ。日本も加入する難民条約は難民の可能性のある人の送還を禁止しており、これに明確に違反する。

 

Aさんのように4回申請してもはねつけられ、裁判で救いを求めようとする人は、それ以前の段階で、危険が迫る母国に送還されることになる。

 

退去強制の拒否には刑罰を設けた。帰国を拒めば、刑務所で服役させる。刑期満了後は入管施設に戻る。そこでまた送還を拒否すれば刑務所へ…。「身柄拘束の無限ループに陥る」と支援の弁護士は憂慮する。

 

「監理措置」という制度を新設した。上限300万円の保証金を払えば、入管が指定した「監理人」の下で社会生活を認める仕組みだ。しかし「監理人」には、対象となる人の監督、状況の届け出義務が生じ、違反すれば罰則が科せられる。「支援者や権利を守る立場で活動する弁護士と監視役は両立せず、なり手がいない。金銭で監理人を請け負うビジネスが始まるのではないか」と懸念が広がる。

 

▽命奪われる悲劇が繰り返された

今回の改正案は一昨年、長期収容に抗議したナイジェリア人がハンストの末、亡くなった事件を契機に浮上したが、深刻な事態は再び起きた。今年3月6日、名古屋入管で収容されていた30代のスリランカ人女性が無残な死に追い込まれた。

 

支援団体によると、女性は母国で大学卒業後、日本語を学んで日本の子どもたちに英語を教えるという夢を胸に、17年に来日した。しかし、日本語学校の学費が払えずに留学生ビザが失効し、昨年8月から収容されていた。

 

今年1月に血を吐き、その後も、おう吐を繰り返した。めまいや動悸(どうき)もあって、食べられず、水も飲めない状態になった。2月の面会時には、おう吐に備えてバケツを抱え、車いすで現れた。面会中も吐いていた。

 

亡くなる直前の3月3日、唇は黒く、話をすると泡を吹き、皮膚もかさかさ、指も曲がっていた。面会は10分ほどで中止に。最後の言葉は「きょう連れて帰って」だったという。

 

支援団体は「入院させて点滴を打つよう求めたが、入管は拒否した。助けようと思えば、仮放免で救えた命だった。収容・送還一辺倒の中で、事件は起きた」と訴える。

 

難民認定も、無期限の収容も、仮放免も、退去強制も、送還も、すべてにわたって第三者機関による関与・チェックがない。そのブラックボックスが、人の生死まで左右している。改正するなら、まずそこから見直さなければならない。

 

難民や入管のあり方をめぐって争われながら、傍聴人もほとんどいない、報道もされない裁判は、決して少なくない。知られざる法廷は、日本という国のあり方を根本から照射し、問いかけている。【3月28日 47NEWS】

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【スリランカ人女性の死は「突然のこと」か? 透ける入管の体質・本音】

上記、名古屋入管で収容されていた30代のスリランカ人女性の死について、名古屋人管は「突然のことで驚いている。」と。しかし・・・・

 

****どう見ても「突然」ではなかった*****

「突然のことで驚いている」

の言葉を何度も読み返した。3月6日、名古屋出入国在留管理局の単独室で33歳のスリランカ入女性が亡くなっているのが発見された。(中略)

 

女性の死について、名古屋人管が取材に応えたコメントの中にその言葉があった。「医師の指導に基づき適切な処置をしていた。突然のことで驚いている。心から哀悼の意を表したい」。これが8日夜の記事にあったコメントの全文だった。

 

きちんと対応していたのに突然亡くなってしまい驚いた、というニュアンス。だが、報道内容や支援団体の声明からは、どう見ても「突然」とは言い難い状況が見えてくる。

 

死因は不明とされたが、2月初旬から食道炎の症状。そして、嘔吐や吐血もしており、女性の体重は半年強で20ごも激減していたというのだ。

 

死の直前の経緯は、彼女と繰り返し面会してきた支援団体「START」による法務大臣・名古屋入管局長宛ての申大書に詳しい。

 

「3月3日は、もはや尋常な状態ではないことが見た目で分かるほど衰弱していた。しかし、貴局は、私たちが直ちに入院させ、点滴を打つよう強く申し入れたにもかかわらず、『予定はあります』としか答えなかった。3月5日、面会を試みたが、衰弱した本人は個室から動くことができなかった。その翌日、女性は亡くなったのである」

 

名古屋入管に問いたい。容体の重篤化は明らかだったし、取るべき対応があったのではないか。そしてそれが分かっているからこそ、自らの「不作為」への注目を遮るために、「突然のことで驚いている」という言葉をあえて選んだのではないか。

 

入管施設への収容については、期間の上限なく身体の自由を奪う仕組みであることの根本的な問題に加え、職員からの暴行やハラスメント、あるいは不適切な医療の問題など、人権侵害が何度も指摘されてきた。

 

そして、それらの結果としての自殺、ハンスト、餓死なども報じられてきたのだ。国連からは国際法違反であるとの意見書すら送付されている。

 

そんな施設の単独室で、女性は亡くなった。94一時間、密室の中の密室。そこには彼女と職員しかいない。彼女自身の言葉が奪われてしまった今、一方の当事者の言葉だけで、彼女の最期を「突然の死」と片付けていいとはとても思えない。

 

上川陽子法務大臣は死亡の経緯や対応について調査を指示したようだ。だが、政府による内部調査への信頼は、最近の総務省接待問題でも改めて地に落ちた。(中略)

 

密室には真実も人権もない。真実を知りたい、人権を守りたいと大臣が願うなら、そしてそう願っていることを信じてもらいたいのなら、外部の目を入れるべきだ。政府に権力を預けている市民の一人として、「驚いた」では納得できない。【4月6日号 Newsweek日本語版 望月優大氏】

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密室でのスリランカ女性の死を「突然のことで驚いている」と片づけてしまう入管の体質、それがほとんど問題にもならない日本社会の在り様・・・。

 

****入管による外国人長期収容、国連が国際法違反と指摘=支援団体****

在日外国人の支援活動を行う弁護士グループなどが5日、都内で記者会見を開き、国連の「恣意的拘禁作業部会(WGAD)」が9月に、日本の入管収容制度における長期収容について、国際法違反で「恣意的」であるとし、日本政府に意見書が送付されたことを明らかにした。

 

日本の入管収容分野で、同作業部会が「意見」を出すのは初めてのことだという。

 

会見の主催者が明らかにしたWGADの意見書によると、同作業部会は申し立てを行った被収容者2人の事案について「日本が国際法の下で負う義務に反していると認める」とし、世界人権宣言と国際法に違反し恣意的である、と結論。そのうえで、日本政府に対し、必要な措置をとるよう求めている。(後略)【2020年10月5日 ロイター】

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****日本の難民認定「プロセス厳格」 米、長期収容にも言及****

米国務省は、30日に公表した2020年の人権報告書の中で、日本の難民認定制度について「難民資格を与える法律があるが、難民認定のプロセスは厳格だ」と指摘した。

 

そのうえで、2019年の難民認定申請者数が1万375人、認定者数が44人だったことに言及し、「NGOや国連難民高等弁務官事務所は、難民認定する割合の低さに懸念を表明している」と記した。

 

また、「NGOや市民グループは、難民申請者の無期限の収容に懸念を表明している」と記述し、難民申請をしたが認められず、入管施設に長期収容される外国人の問題にも触れた。

 

人権報告書は国務省が毎年公表しているもので、世界各国の人権状況についてまとめている。【3月31日 朝日】

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上記記事の「厳格」というのは「厳しすぎる」という意味合いでしょう。

 

日本の常識、世界の非常識の類です。

 

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