孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  「ボコ・ハラム」よる女子生徒連れ去り事件から3か月 分断されるナイジェリア

2014-07-15 23:10:30 | アフリカ

(“flickr”より By MaritimeFirst Newspaper https://www.flickr.com/photos/126119326@N08/14595452275/in/photolist-o8s9it-nQYA8t-nQXoBs-o8myrC-oaemgZ-o8jMgm-nQXyx8-nPqY1a-nT8EMw-oi6jCt-nL4Pzk-nWmpjD-o2o6QF-o44HNM-nLspX5-ogNyFg-oeBxiH-nPuNgn-nSvVBg-nSwk2H-ofnNBM-nPBSag-oeKvsT-oesxYz-nX9wbg-nRSRv9-nRSw7T-ogdCeQ-nTft6o-nKHJm5-nKYVoc-nT6aG2-o2Y6vM-nAU1SW-nRkPEA-nATAC2-nTiBtb-nTftTW-nRkNEu-nATzVa-nTftFS-nTiCsL-nTobxk-nATGSL-nATJob-obrxgA-nyiqvh-nT7ZZp-o3NDp6-nymvU8/)

事件以降も毎日のように北東部の村々が攻撃されているのは、どうしてなのか」】
ナイジェリア北東部ボルノ州で4月14日深夜から15日未明にかけ、女子高校をイスラム武装集団「ボコ・ハラム」が襲い、宿泊施設で休息中の女子生徒ら200人以上を連れ去った事件から3か月が経過しています。

「ボコ・ハラム」とは「西洋の教育は罪」という意味だそうですが、事件後に「連れ去った娘たちを奴隷として売り飛ばす」というビデオ映像が公表されたことで、欧米を中心とした国際社会の非難が強まりました。

しかし、事件は一向に進展していません。連れ去られた女子生徒の行方は未だわかりません。

****ナイジェリア:少女救出めど立たず 政府対応に不満渦巻く****
・・・・少女の救出を求める声は世界的に広がったものの、解決の目途は立たない。

一方、ボコ・ハラムによるとみられるテロ攻撃は中部にも拡大し、市民の間には不安や政府の対応への不満が渦巻いている。

「ブリング・バック・アワ・ガールズ(我々の少女を取り戻せ)」。9日、アブジャ中心部の公園を訪ねると、北東部ボルノ州チボクで拉致された生徒の救出を願う集会で、市民約50人が声を上げていた。

主要メンバーの女性、フローレンス・オゾーさんは「政府は軍を多数配置したというが、事件以降も毎日のように北東部の村々が攻撃されているのは、どうしてなのか」と、不満そうに話した。(中略)

生徒は同州の森林地帯で拘束されていると推測されている。ボコ・ハラム戦闘員たちと強制結婚させるのではと臆測を呼ぶ一方、政府側に拘束されている戦闘員と交換するのが目的との見方もある。

AP通信によると、元大統領や知事などでつくるナイジェリアの国家評議会のメンバーは8日、治安当局が少女の居場所を把握しており「近いうちに良いニュースがあるだろう」と、解決が間近との認識を示した。(後略)【7月10日 毎日】
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「近いうちに良いニュースがあるだろう」・・・・本当でしょうか? 発言から1週間が過ぎましたが、まだ何も“良いニュース”は聞きません。

“悪いニュース”なら連日聞きます。
連れ去り事件、村落襲撃事件も続発しています。

****ナイジェリアで女性60人以上拉致、ボコ・ハラムの犯行か****
ナイジェリア北東部で女性60人以上がイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」とみられる集団に拉致されたことが分かった。

女性の年齢は子供から大人までさまざまで、3~12歳の子供も含まれるという。ナイジェリアでは今年4月14日に、学校にいた200人以上の少女がボコ・ハラムに拉致されている。

今回の拉致事件が発生したのはナイジェリア北東部ボルノ州ダンボア地区のクンマブザ村。村は19日から襲撃を受け、その際に女性たちは拉致され、村人は家を捨てて逃げ出したという。

地元の自警団のリーダーは、逃げようとした村人4人がその場で射殺されたと語った。
ボルノ州の州都マイドゥグリに避難した別の住民は、村の男性30人以上が殺害され、村全体が3日間にわたって武装勢力に支配されたと語った。

60キロほど南のアスキラ・ウバ地区の3つの村も先週末に襲撃された。住民の1人は「多数」が死亡したと話しているが、公式な死傷者数は明らかになっていない。

専門家たちはボコ・ハラムが国内で収監されている仲間を解放させるために事件を起こした可能性があると指摘している。

ボコ・ハラムは現在も拘束している219人の女子生徒を、ナイジェリアの刑務所などに収監されている仲間と交換する形で解放する用意があるとほのめかしている。

ナイジェリア政府は当初、一切の取引を拒否していたが、その後は女子生徒と収監者の交換について話し合うことも含め、ボコ・ハラムとの交渉の開始に向けた動きも見せている。【6月25日 AFP】
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首都でも爆弾テロが起きています。
先月25日には首都アブジャにあるショッピングセンター付近で爆弾がさく裂し、少なくとも21人が死亡、17人が負傷しました。後日、ビデオによる犯行声明が出されています。

また、30日には、北東部ボルノ州の四つの村で教会を狙った襲撃事件が起き、50人近くが死亡したことが明らかになりましたが、これも「ボコ・ハラム」の犯行が疑われています。

やりたい放題・・・という感もありますが、ナイジェリア政府はこれまでも「ボコ・ハラム」を放置してきた訳でもなく、2013年5月にはボルノ州を含む北東部3州に非常事態宣言を発令して大規模な鎮圧作戦を展開しています。

女子生徒連れ去り事件後も、グッドラック・ジョナサン大統領は5月29日、ナイジェリアに文民政権が誕生してから15周年を迎えた記念式典で、「ボコ・ハラム」による少女集団拉致事件を念頭に「対テロ全面戦争」を行う決意を表明しています。

当初、ナイジェリア政府の対応が遅すぎる、ナイジェリアだけで解決できるのか・・・といった欧米の批判にナイジェリア政府には反発もありましたが、アメリカが軍やFBIなどからなるおよそ30人の専門家チームを派遣し、偵察機も投入すとか、5月17日にはパリで「ボコ・ハラム」への対策を話し合う「ナイジェリア安全保障サミット」が開催されるなど、国際的な協力態勢も一応とられてはいます。

にもかかわらず、連れ去り事件は解決しない、テロ・襲撃は連日のように繰り返される・・・・TV放映された被害者家族は、「政府は私たちのことなどどうでもいいと思っているのだ。もし政府の偉い人の娘が拉致されたら、こんなふうにはならないだろう」との怒りと悲しみを語っていました。

マララさん「大統領の責務を果たす必要がある」】
パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴え続け、2012年にイスラム武装勢力タリバンの襲撃で重傷を負い、現在はイギリスの高校に通うマララ・ユスフザイさん(17)がナイジェリアを訪問、大統領や被害者家族と面会しています。

マララさんはジョナサン大統領に、「大統領の責務を果たす必要がある。少女を取り戻せ、という人々の声を聞くべきだ」と、より一層の努力をしてほしい旨を伝えたとのことです。【7月15日 毎日より】

****マララさん、ナイジェリア大統領に拉致少女の親との面会求める****
・・・・マララさんはジョナサン大統領との面会に先立つ13日、拉致された少女たちの両親や脱出に成功した少女たちと面会した。

ジョナサン大統領との面会を終えたマララさんは記者会見で、拉致された女子生徒たちの親たちと会って、少女たちは必ず帰還できると勇気づけるよう大統領に求めたところ、大統領は一部の親に会うことに同意したと明かした。

マララさんは、親たちは絶望しきっており「大統領の支援を必要としている」と述べ、今月12日が自身の17歳の誕生日だったことから「私が今年の誕生日に願うことは、(拉致された)少女たちが家に戻って来ることです」語った。

ジョナサン大統領は女子生徒が拉致された事件での対応を、思いやりと迅速さの両方が欠けていると厳しく批判されている。

救出活動の初動で出遅れたうえ、軍が事件発生の数日後に出した、少女たちは解放されたとの発表も後に撤回された。

大統領自身も事件があったチボク地区を5月に訪れると発表していながら、何の説明もなく直前に訪問を中止した。これまでのところ、同大統領が拉致少女の親と会ったと明らかにされたことはない。【7月15日 AFP】
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もちろん、軍事的な力だけでは事態は改善しません。
昨年5月に非常事態宣言・大規模掃討作戦も結果として、組織の潜伏化と活動領域の拡散、民間人に対する残虐行為への傾斜という変質を「ボコ・ハラム」にもたらしたとの指摘もあります。【5月14日 白戸圭一氏 フォーサイト“「ボコ・ハラム」はなぜ多数の女子生徒を拉致したのか”】

ただ、一方で、連れ去り事件のときも、軍は学校への襲撃について事前に情報を得ていたにもかかわらず、5時間近くも行動を起こさなかったとか、「兵士の多くが不満や疲れから戦闘の最前線に行くことを恐れていた」(アムネスティ・インターナショナルの報告書)とか、連れ去り後に辛くも逃げ帰った少女が軍・警察から犯人グループについて何にも訊かれていないとか、「やる気」を疑うような話も聞きます。

「ボコ・ハラム」の活動の背景には、成長著しい石油大国ナイジェリアにあって、富が偏在して格差が進行し、腐敗・汚職が蔓延している社会の現状がありますが、政府の統治能力にも問題がありそうです。

【「無知が存在すると、宗教は扱いにくい危険なものになる」】
「ボコ・ハラム」は、キリスト教徒とイスラム教徒が半々というナイジェリア社会を分断し、互いの憎しみをかきたて対立させることに見事に成功しています。

****ボコ・ハラムがあおるナイジェリア憎悪の連鎖****
女生徒誘拐事件で非難を浴びた非道なイスラム武装組織が中部の都市ジョスの住民を激しく分断させている

・・・・ナイジェリアの人口はアフリカ最多の1億7000万。イスラム教徒(主に北部に居住)とキリスト教徒(主に南部に居住)の比率はほぼ半々で、宗教開の衝突は日常茶飯事だ。

こうした不安定な状況を、ボコーハラムは一段と深刻化させ、この国を宗教戦争の瀬戸際へと追い込んでいる。(中略)

先住民特権の奪い合い
(2012年3月11日、キリスト・イスラム両教徒が拮抗する中部都市ジョスで「ボコ・ハラム」が起こした)聖フィンバー教会への攻撃に怒り狂ったキリスト教徒たちは、教会前の大通りを走るイスラム教徒のバイクタクシーを止めては運転手を引きずり下ろし、切り殺し、焼き、その肉を食ってしまった。

「ジョスではイスラム教徒にもキリスト教徒にも敵対心が刷り込まれている。多数派は少数派を迫害せずにいられない」と、アルハジ・オスマン・イブラヒム(40)は説明する。

イスラム教徒でビジネスマンのイブラヒムは、キリスト教徒地区に囲まれた地区の出身だ。
彼によると、ボコ・ハラムのせいで今は商売ができないという。

キリスト教徒のビジネスパートナーが、一緒に働くのを拒むからだ。「ボコーハラムは正体不明だから、私も仲間かもしれないと言われた」

暴力の連鎖は2つのコミュニティー間の信頼感を消し去ろうとしている。今では先に手を出したのはそっちだと非難し合い、これは報復だと正当化し合うのが日常茶飯事だ。

長年にわたる宗教対立にボコ・ハラムが加わって、今やジョスのキリスト教徒とイスラム教徒はほとんど接触を絶っている。

それぞれが独自の青空市場を開き、どんな子でも受け入れるはずの公立学校も、現在は宗教で分断されている。 

「断絶は大きな問題だ。住民は互いを知り、共存し、交流すべきなのに」とイザム・イシャク教育長(53)は言う。「無知が存在すると、宗教は扱いにくい危険なものになる」

ジョスの危機は宗教だけではなく、資源や権利をめぐる対立もある。住民はキリスト教徒の3つの主要部族とイスラム教徒のハウサーフラニ族から成る。

どちらも自分たちこそ先住民だと主張するが、土地所有をはじめ、公的雇用の配分や医療、大学の奨学金などで優先権が認められる「先住民の地位」はキリスト教徒が独占している。

イスラム教徒は憤り、二流市民扱いされていると感じる。(後略)【7月15日号 Newsweek日本版】
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あおられた憎しみが事態を悪化させ、ますます深みにはまっていくというのは、ひとりナイジェリアだけの話ではなく、世界のあちこちで見られる現実です。

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