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(オバマ大統領の就任式を熱い視線で見つめる人々 この期待がいつまで続くのか
“flickr”より By Neno°
http://www.flickr.com/photos/ernest-morales/3213693716/)
現在の日本は概ね欧米と同じような価値観の社会(政治的な民主主義とか、経済的な資本主義とか)のように普段感じていますが、ときおり異質な側面に驚くこともあります。
****ダーウィンの進化論、米国人で信じているのは40%****
米世論調査企業ギャラップが11日に発表した調査結果によると、進化論を信じていると答えた米国人は、わずか40%だったという。過去10年間に行われた調査においても、44-47%の人が、神が過去1万年ほどの間に、人間を現在のような形で創造したと信じていると答えている。
米国では、学校で進化論についてはあまり教えられてはいないほか、多くの宗教団体がキリスト教の聖書の字義通りの解釈を主張している。(中略)
1968年になり、米最高裁はようやく、進化論を教えることを犯罪だとしていたアーカンソー州法を無効とする判決を下し、政教分離の政府の下で進化論を教えることを禁止するのは違憲だとする判断を示した。
その後、米最高裁は1987年、聖書の天地創造説を学校で教えることを強制するのは、公教育システムの中で宗教を奨励することにつながるとして、違憲であるとの判断を示した。【2月14日 AFP】
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残り60%が本当に進化論を信じていないのか、宗教的建前として否定しているのか・・・そのあたりは定かではありませんが、銃規制への対応と並んで“異質さ”を感じるところです。
【“社会主義化するアメリカ資本主義”】
先週のNewsweekを読んでいて、同様の異質さを感じるところがありました。
オバマ大統領の経済政策・景気対策を特集しているのですが、巻頭の記事の表題が「We are all socialists now 社会主義化するアメリカ資本主義」でした。
民間銀行・企業への公的介入という景気対策によって政府の役割が拡大することによる、欧州型国家(その典型としてフランスが引き合いに出されることが多いようですが)への変質に対する懸念・戸惑い・是非が論じられています。
もちろん、公的介入や“大きな政府”に対する議論は日本でもあるところですが、“社会主義”という言葉を持ち出す大仰さ(その裏にある抵抗感)にある種の“異質さ”を感じた次第です。
先日も金融機関の“国有化”の噂で株式市場が敏感に反応したりする場面もありました。
特に、こうした“社会主義化”への懸念は共和党支持者に強いようで、オバマ大統領が目指した“超党派”の取組みは早くも民主党・共和党の対決ムードになりつつあるようです。
そうした“大きな政府”をめぐる党派対立は、24日にオバマ大統領が行った初の議会演説に対する反応にもあらわれています。
****オバマ大統領:「福祉重視」鮮明に 初の議会演説****
オバマ米大統領の24日の初の議会向け演説は、経済危機に直面する米国の再生を目指す「国家再建シナリオ」を明確に示し、国民に自信と活力を吹き込む狙いがあった。エネルギー、医療、教育が3本柱だが、透けて見えるのは連邦政府主導の福祉重視国家だ。これに対する共和党の反発は強く、新たな党派的亀裂も広がるなど、オバマ流の国家像をめぐる論争は今後も拡大しそうだ。
オバマ大統領は演説で26日に議会に提出する予算教書が「アメリカのビジョン、将来の青写真になる」と明言。「決定的に重要」な政策としてエネルギー、医療、教育の三つを挙げ、国際的競争力の向上に意欲を示した。
しかし、演説に対する共和党側の対抗演説で、次期大統領選の有力候補とされるジンダル・ルイジアナ州知事は「米国の強さは政府ではなく、市民の温情深い心と起業家精神にこそある」と真っ向から反発した。
共和党には医療や教育は民間や州政府の仕事との考えが根強い。オバマ氏の医療保険改革には750億ドル(約約7兆2600億円)の巨費がかかるとの試算もあり、「米国は社会主義国家になる」(ギングリッチ元下院議長)と危惧(きぐ)する声も出ている。
演説でも「これ以上、医療保険改革を先延ばしにすることはできない」とオバマ大統領が訴えると、民主党議員が総立ちで拍手を送ったが、共和党議員の大半は座席に身を沈めたままで、対立の根深さを見せ付けた。(後略)【2月25日 毎日】
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「米国の強さは政府ではなく、市民の温情深い心と起業家精神にこそある」という信念は、付け焼刃的な“構造改革”とは土台が違うようで、日本的にはさほど違和感もない(政策的に妥当かどうかという議論は別にして)福祉重視も「米国は社会主義国家になる」云々の話につながるようです。
【「自民党は実は社会民主主義の政党」】
一方、日本では、与謝野馨経済財政担当相が2月10日の参院財政金融委員会で、「この10年間の自民党の政策は外国から輸入したものを無理やりに移植してきたのではないか」「この10年間の経済界の動きは決して我々が目指している社会ではない」「『強者が栄え、弱者が滅びる』という感じは自民党内にはあまりない。自民党は実は社会民主主義の政党だと思っている」と語っています。
自民党が社会民主主義の政党かどうかは別として(自民党がかつての社会党との対立の時代にあって、社会党が理念的に主張しているものを政策的に取り込み実現していくことで、安定した支持を獲得してきた・・・ということはよく言われる話ですが)、昨今の派遣切り・雇い止めに対する世論の反応など見ていると、日米の社会には相当に異質な価値観があるようにも感じます。