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クリスマスにクリスティーを!
「くりすますゥにィ、くりすてィーをゥ!
……ッてェ? なんのことでスかァ、ネーさ?」
これはね、テディちゃ、
もとはと言えば英国の出版社さんがブチ上げた広告のコピーです。
当時、アガサ・クリスティーさんの新刊は
クリスマスの少し前に発売されることが多かったんです。
そこで、『クリスマスにクリスティーを!』と
宣伝が繰り広げられました。
さあ、我々も!
2008年のクリスマスシーズンに
クリスティーさんの作品を御紹介いたしましょう!
こちらを、どうぞ~!
―― 復讐の女神 ――
著者はアガサ・クリスティーさん、原著は1971年に発行されました。
英原題は『NEMESIS』、意味はやはり、復讐の女神、ですね。
この御本で探偵役を務めますのは、
クリスティー作品の探偵さんとしてたいへん有名な
ミス・ジェーン・マープルさん。
「しッてまスゥ~!
おばあちゃまたんていィ、なのでスよッ」
イングランドの田舎に暮らす、
いつもにこにことして優しげな老婦人――ミス・マープル。
いえ、ミステリ好きさんなら知っている筈です。
彼女が実は、驚くべき人物であるのだと。
この作品は、ミス・マープルもの著作リスト上でも
最後期に属する長編作品です。
老いてますますその洞察力に磨きがかかるマープルさん、
またまたしても或る事件と
かかわる事態になったのですが……
係わってゆくその過程が、
とっても変則的。
「へんそくッ? はんそくゥ?」
反則じゃん!
といいたいのはマープルさんの方だったでしょう。
ロンドンの弁護士事務所に招かれたマープルさんに、
手渡されたのは一通の手紙。
つい先ごろ亡くなった財産家のラフィールさんが、
マープルさんに、と遺した書面には、
どうにも理解しがたい文章が……?
『正義のために働く』――?
はあ? いったい何のことでしょう?
「むむッ!
なぞなぞォ、みたいィ!」
ラフィールさんの遺志が、
マープルさんにはさっぱり解りません。
ですが、想い起こせば……そうです、
ふたりが知り合ったのはカリブ海のリゾート地、
そこで起こった犯罪が契機でした。
マープルさんは考えます。
では、手紙が示唆しているのは……犯罪?
ラフィールさんは私に何かの犯罪を捜査しろと遺言したの?
でも、犯罪は……どこに?
「ううゥ~、
このォなぞなぞッ、むずかしすぎるゥでスッ」
かくて、ジェーン・マープルさんは
雲をつかみ、濃霧をかきわけるような、
困難な捜査に着手するのです。
そう、ラフィールさんの遺志をなねつけるなど、
彼女には出来ません。
『復讐の女神』マープルさんが、暴き、正す、
時間の霧の向こうの犯罪とは――
「むぐむぐゥ~、とけないィ~」
マープルさんものの中では、
あまり派手なところのない作品、かも知れません。
しかし、『正義をつらぬく』=『悪を赦さない』物語は
クリスマスシーズンに相応しいものだとも思われます。
クリスティーは好きだけれど、
これはまだ読んでいないという御方は、ぜひ!
この御本の前作に当たる『カリブ海の秘密』も、お奨めです!
「まーぷるおばあちゃまァ、てつじんッ、なのでスッ!」