テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

長い、長い、彼女の旅。

2012-01-29 23:02:51 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 1月最後の日曜日は……厳寒激寒の北風が吹きまくりましたね~!

「こんにちわッ、テディちゃでス!
 たいようさんッ、もうちょッとォ、がんばッてくださいィッ!」
「ぐるるー!ぐるるがるがるがるー!」(←訳:虎ですー!お散歩にも行けないねー!)

 では、暖房器具から程よい位置に陣取って、
 始めましょう、読書タ~イム!
 本日は、こちらを、どうぞ~!

  


 
              ―― サラの鍵 ――


 
 著者はタチアナ・ド・ロネさん、原著は2006年に、日本語版は2010年5月に発行されました。
 英原題は『Sarah’s Key』、
 ロネさんはフランス在住の作家さんですが、
 原著はフランス語ではなく英語で著述されています。
 先頃、この御本を原作とした映画も公開されましたね。

「ふむふむッ、ふらんすのォ、おはなしィ、でスねッ?」
「ぐるぐるるがるるるるがる!」(←訳:何かミステリアスな匂いがする!)

 主人公ジュリアさんは、“パリのアメリカ人”さん。
 滞仏生活は長く、フランス人の夫と、
 可愛い娘さんもいます。
 お仕事は、アメリカの週刊誌のライターで……と、
 《悲劇》や《波乱》とは無縁の生活。

 ですが、あるとき。

 ジュリアさんは知ります。
 改装作業を進めようとしている夫の一族所有のアパートに、
 長く封じられていた秘密を。

「ひみつゥ……??」
「がるぐるる?」(←訳:パリの秘密?)

 それは1942年、7月のこと。
 
 ナチス占領下のパリの街を
 何台ものバスが走っていました。
 バスに乗せられているのはパリに住む
 およそ13000人ものユダヤ人さんたち――
 
 『ヴェロドローム・ディヴェール(冬季自転車競技場)』、
 または『ヴェルディヴ』と略称されるこの一斉検挙によって
 連れ去られた人たちの多くは、
 アウシュヴィッツに送り込まれたといいます。

 走るバスの中には、少女もいました。
 彼女――サラは、
 掌に鍵を握り、
 ついさっき交わしたばかりの約束を思い出します。

 連行される寸前、
 彼女はアパートの納戸に
 弟のミシェルを隠したのでした。

  《あとでもどってきて、出してあげるからね。絶対に》

 そう約束して、
 納戸に鍵をかけ……
 けれど走るバスは、刻々と我が家から遠ざかってゆきます。
 遠くへ、遠くへ、もっと遠くへ……。

「ばすよッ、とまれッ!」
「がるるぐるぐるるがる!」(←訳:戻らなくちゃパリへ!)

 少女サラの存在を知って、
 ジュリアさんは平静でいられなくなります。
 
  サラが握りしめる、鍵。
  少女は納戸の鍵を開け、弟を救い出すことができたのだろうか……
  私は知りたい。
  いいえ、知らなければならない――

 時間と空間を超えて、
 少女サラとジュリアを結ぶ糸が
 手繰り寄せる事実、
 封印を解かれた扉の向こうに見出される風景とは……?

 読むうち、
 Mr.childrenさんの楽曲『終わりなき旅』が脳裏に鳴り響くようなこの御本は、
 フィクションではありますが、
 実際に起こった出来事を下敷きにしています。
 また、
 大戦下のパリで
 どのような悲劇がユダヤ人さんたちを襲い、
 ごく普通の人びとに癒やし難い傷を与えたのか、
 より理解したい御方には
 萩尾望都さんの作品『エッグ・スタンド』が参考になるでしょうか。

 『真っ暗闇の時代』と
 登場人物のひとりが呼ぶ、
 ヒトにヒトのこころを手放させてしまう
 《戦争》という怪物がもたらすものがたり――

「いちどォ、よんだらァ、わすれられないィ!」
「あるぐるるるっぐるぐる!」(←訳:読み始めたら、止められない!)

 すべての活字マニアさんに、おすすめです!  
コメント
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