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小川洋子さんの『遠慮深いうたた寝』に出て来る言葉。
《小説における言葉の美しさとはつまり、一文一文、一語一語に対する慎重さに尽きるのだ。(略)同じ簡潔な一文でも、無意識にあっさりと書かれたものより、混乱と逡巡の末にようやくたどり着いた文章の方が美しい。もちろん見た目には何も変わらない。途中の痕跡はきれいに消え去り、最初からこの姿でここに置かれていたのです、とでもいうようなさり気ない、しかし確固とした風情を漂わせている。にもかかわらず、やはり、残酷なほどに誤魔化しきれない違いが、そこにはある。何度もその一文に触れた、作者の指の体温が、言葉に奥行を与え、そこにこだまする音の響きが美しさを生む。その美はこれ見よがしにこちらに迫ってくることなく、あえて美しいと名づけられることも求めないまま、言葉の連なりの陰に身を潜めている。》
「小説」を、「詩」あるいは「随想」と置き換えてもいいのでしょう。
わたしも心しよう。