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ザ・シークレット・サービス

2007年02月06日 12時03分04秒 | 洋画1993年

 ◎ザ・シークレット・サービス(1993年 アメリカ )

 原題/In the Line of Fire

 監督/ウォルフガング・ペーターゼン 音楽/エンニオ・モリコーネ

 出演/クリント・イーストウッド ジョン・マルコヴィッチ レネ・ルッソ ジョン・マホーニー

 

 ◎アメリカの呪縛

 アメリカ合衆国にとって、ケネディはどんな存在なんだろう?

 理想的な大統領だったんだろうか?冷戦のまっただなかで、そこらじゅうできな臭い煙が上がっていた時代に、アメリカ人らしい精神で理想を語ろうとしていたことに憧れがあるんだろうか?

 そんなケネディを暗殺されてしまったという事実は、アメリカ人にとって忘れ難い記憶なのかもしれないけど、この映画もまた、その暗殺の瞬間をひきずってる。シークレットサービスのクリント・イーストウッドにとって、かつて、ダラスでケネディを守れなかったという苦い過去は、そのまま、かれの人生の呪縛になってる。これは、そうした呪縛から解き放たれる過程を描くのが主題だ。

 もちろん、やっぱり音楽好きなイーストウッドだから、画面はよく作ってるし、老いてしまった警吏の悲哀はよく見えるけど、枯れた雰囲気でウイスキーを傾け、ピアノを爪弾くところがなんとも好い。けど、老いらくの恋の相手の過去が見えないのと、犯人を演じたジョン・マルコヴィッチの狂気が、もうすこし緊迫した形で現されるともっといいのに、てな贅沢な注文もしてみたくなる。

 呪縛の話に戻るけど、マルコヴィッチもまた呪縛に囚われてる。マルコヴィッチの場合は、かれを怪物に育ててしまったアメリカという国家に対する呪縛と憎悪で、そんなアメリカの象徴を守ろうとするイーストウッドとは、当然、決着をつけなくちゃいけない。

 ふたりは、そういう関係にあるわけで、けれど、マルコヴィッチが複雑なのは、自分を作り上げたアメリカは憎悪の対象でありながら愛すべき対象でもあることで、イーストウッドを冷酷に射殺できず、ときには助けの手を差し伸べてしまうのは、そうした感情の揺れを表現してるからなんだろうね。

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