◇黒部の太陽(1968年 日本 196分)
監督/熊井啓 音楽/黛敏郎
出演/三船敏郎 石原裕次郎 宇野重吉 芦田伸介 辰巳柳太郎 志村喬 滝沢修
◇木本正次『黒部の太陽』
伝説になってしまうというのは、こういう映画なんだろう。
石原裕次郎は、生前、こう言い遺した。
「こういった作品は、劇場で観てほしい」
版権を持っているのは石原プロモーションで、かれらは裕次郎の言葉をかたくなに守り、ついにテレビにもビデオにもせず、ときおり、 海外向けに短縮された1時間短縮バージョンが、各地のホールなどで上映されるくらいで、あとはいっさいなく、幻の超大作として、33回忌まで押し通してきた。
けれど、東日本大震災が起こってまもなく、復興支援の一環として全国で巡業上映が行われ、短縮バージョンながらNHKのBSでも放送され、ついにBlu-ray/DVD化された。
ということから、劇場で公開された完全版を現代の日本人のいったい何人くらいが観ているのか、よくわからない。
さて。
ぼくが観たのは、2007年4月、調布のグリーン大ホールだった。監督の熊井啓さんが、ぼくよりも数列前で鑑賞しておられた。以前、カメラの金宇満司さんに、トンネル内に水が迸り、三船敏郎も石原裕次郎も必死の顔で逃げ出す場面について聞いたことがある。
大変だったそうだ。
石原裕次郎も怪我を負ったらしいんだけど、そうしたいろんなことが重なり、この映画は、製作面でも上映面でも、邦画界で伝説のひとつになった。
1本くらい、こんな作品があってもいい。
(ここまでの文章は後の改訂で、2013年6月29日17時06分に記した)