◇愛人関係(1974年 フランス 106分)
原題/Les Seins De Glace
監督・脚本/ジョルジュ・ロートネル 音楽/フィリップ・サルド
出演/アラン・ドロン ミレーユ・ダルク クロード・ブラッスール ニコレッタ・マキャヴェッリ
◇リチャード・マシスン『Les Seins De Glace』より
南仏ニース、冬。
原題の意味は、空虚な心。誰の心かっていうと、アラン・ドロンとミレーユ・ダルクだ。どれだけ愛したところで、彼女の心は空虚なままだ。結局、自分もまたその空虚さに打ちのめされるのだ。てな感じの意味なんだろう。
いや~いかにもフランス的っていうか、アラン・ドロンのほかには、こんな気障な男は演じられないんだろう、たぶん。
とはいえ、ドロン映画は基本的に好きなんだけど、この脚本がちょっと心得違いっていうか、入り込みにくい。
過去になにがあったのか明確には知らされないまま、愛してしまいそうになると同時に、相手に対してどうしようもない殺意が芽生えて実行してしまうという、とんでもなく薄幸な、ある種の精神障害に掛かってしまった女を、これまたどうしようもなく憐れみ、愛してしまっている弁護士がいて、そういう複雑な関係が見えないまま、恋をしてしまい、危険に陥っていく脚本家の話なんだけど、脚本家と弁護士の役回りを一緒にすれば、サスペンス色も増すし、感情移入も容易だったんじゃないかっておもうだけどな~。
そのあたり、配給会社も頭を抱えたんだろう。だから、ドロンはミレーヌと関係をもったばかりの作品ってことで、内容とはまるでちがう邦題をつけるしかなかったんだろうけど。
ちなみに。
佳境、ついに脚本家が窮地に追い込まれ、展望台にミレーユを連れていって海を見たあと、ドロンの銃口から放たれた銃声が1発だったか2発だったか、ずっと論争されてるところだけど、ミレーユだけを殺したんなら、その罪を背負って生きていくってことになるし、心中したんなら、彼女への愛を抱えて永遠の眠りにつくってことになる。
まあ、これは、観た人それぞれの想いによって違うってことで。