◇どぶろくの辰(1962年 日本 115分)
英題/Tatsu
監督/稲垣浩 音楽/石井歓
出演/三船敏郎 三橋達也 淡島千景 池内淳子 土屋嘉男 田崎潤 堺左千夫 小杉義男
◇中江良夫『どぶろくの辰』より
土方でも、東宝は品が良い。
ポスターのコピーは、
「豪快無比!大原野に炸裂する男性活劇巨篇!」
ま、たしかに。
もともとは中江良夫が新国劇の舞台のために書いた戯曲だそうな。それを田坂具隆が、大映で辰巳柳太郎主演の作品を撮り、さらにそれをリメイクしたのが本作ということになる。
まあ、作品の系譜はそういうことだが、
「三船さんが中心となっていた時代の東宝は健全な活気があったんだな~」
と想わせる肉弾相打つ明朗健全土方活劇だ。
飯場もまるで汚らしいところはなく、悪役もまるで憎めず、みんな妙に垢抜けてて、風流だったりしてる。有島一郎の尺八がまさしくそれだ。
まあ、三船敏郎が柄にもなく色恋に嵌まり、それも人妻に横恋慕し、ダイナマイトに火をつけて迫るなんていう度外れた面もあったりして、時間に余裕があるときには一度くらいはおさえておきたい感じもある。
けどまあ、時代性っていうんだろか、いまではこんな飯場も飲み屋も見られない。
日本の通過してきた道をほんわか鑑賞するにはいいかもしれない。