◇イグジステンズ(1999年 アメリカ 97分)
原題/Existenz
監督・脚本/デビッド・クローネンバーグ 音楽/ハワード・ショア
出演/ジェニファー・ジェイソン・リー ジュード・ロウ ウィレム・デフォー イアン・ホルム
◇ビデオドローム・ゲーム版
クローネンバーグを初めて体験したのは『ビデオ・ドローム』だった。
大学時代だったか、無機物が有機物と化してしまうどころか、それが女性化するところになんともいえないエログロ趣味が見られ、こんな変態映画を撮る人間って何者なんだろうとおもったものだ。
でも、もはや、時代はビデオからゲームに移った。昔から映画の中に入ったり、夢の中に入ったりと、ぼくたちの生きているこの世界からパラレルワールドに誘い込まれる物語はあった。クローネンバーグの場合は、その世界がエログロに満ち溢れていて、なんとも刺激的だった。
で、この映画は『ビデオ・ドローム』のゲーム版であり、しかも簡易版だという。ほうとおもって観てみれば、そうかな?って気がした。
「ビデオ・ドロームの方がよくわかる気がするんだけどな~」
それと、これって近未来ってことになってるけど、思想的にはちょっぴり過去に戻ってる気がしない?
反イグジステンズ主義者が地下に潜るような世界観を見ると、なんとなく戦後から70年代あたりまでの雰囲気が漂ってて、不気味なのは意匠や道具だけで、近未来そのものは穏やかな感じに見えてくるのはぼくだけなんだろうか?
それと、仮想ゲームそのものに若干の物足りなさを感じるのは、物語の構成が多重構造になってて、ゲーム世界よりもそういう構造を愉しんでねっていうメッセージなんだろうか?
そんなことを考えながら観てたんだけど、どうしても絵作りが明るすぎて、粘着質に満ちた暗さがもう少し欲しかったかなと。