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殺陣師段平(1962)

2007年06月28日 16時34分00秒 | 邦画1961~1970年

 ◇殺陣師段平(1962)

 監督/瑞穂春海 音楽/高橋半

 出演/市川雷蔵 中村鴈治郎 高田美和 田中絹代 山茶花究 上田吉二郎 須賀不二男

 

 ◇長谷川幸延『殺陣師段平』より

 大正初年、新国劇創立。

 もともと、黒澤明の脚色による映画は、1950年にマキノ雅弘が月形龍之介と市川右太衛門で撮ったものだ。

 これが興行的に成功したんだけど、マキノ雅弘としては不満があったんだろう。それでみずから脚本を書いて『人生とんぼ返り』と題して、森繁久彌と川津清三郎で撮った。

 残念なことに、ぼくはこの2本を観てないから、どんな映画だったんだろうっていう想像しかできない。

 だから、黒澤明の脚本がどのように改訂されて、本作が撮られたのかも、まるでわからない。たぶん、ほとんど手は入れられてないとおもうんだけど、どうなんだろう?

 内容は、いわずとしれた沢正こと沢田正二郎が、松井須磨子の芸術座を脱退して新国劇を旗揚げしたものの、いっかなふるわず、女と酒に目がなかったせいで落ちぶれた酔いどれ殺陣師市川段平と巡り合い、やがて「右に芸術、左に大衆」を合言葉に隆盛をきわめていくものの、立ち回りだけでは駄目だと感じて他の演劇に走る沢正と、殺陣のみに生きる段平との軋轢が生じ、やがて段平は死の床で一世一代の新しい殺陣を見せるというもので、まあ、いわゆる男の生きざまの真骨頂のような話だ。

 ただ、流石、大映。装置が見事なんだよね。

 女髪結い『村瀬』の店舗住宅は、正に写実そのものだ。田中絹代も地味な良い芝居だし、段平役の鴈治郎をはじめ、沢正の神経質なところを眼鏡姿の雷蔵がぴりぴりと演じてる。新人の高田美和もとっても可愛らしくていい。

 でもなあ、おしむらくは主役二人の絡みがちょっと希薄なんだよね。

 あ、ちなみに。いわずもがなのことながら、この作品がなかったら、丹下段平の登場する『あしたのジョー』は、産声を上げなかったんじゃないかっておもうんだけど、そんなことはないのかしら?

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