◇クラム(1994年 アメリカ 120分)
原題/CRUMB
監督/テリー・ツワイゴフ 音楽/デヴィッド・ボーディンゴース
出演/ロバート・クラム アリン・コミンスキー チャールズ・クラム
◇フリッツ・ザ・キャットは葬られた
この、1943年8月30日にペンシルベニア州フィラデルフィアに生まれた、60年代カウンター・カルチャー運動の寵児にして、アンダーグラウンド漫画家ロバート・クラムの名前は知らなくても、かれの生み出した猫の名前を知ってる人はたぶんいるだろう。
フリッツ・ザ・キャットだ。
セックスと麻薬と暴力のはびこる60年代のアメリカで、皮肉なジョークと大胆なセックスでもって世相を語る猫の話だ。
「ああ、あれね~」
という人は、たぶん、団塊の世代だろう。
で、その世代の代表的な監督がデビッド・リンチなんだけど、どうやら、この16ミリ映画の試写のとき、リンチがやってきて激賞したらしい。だけど、とてもヒットしないだろうとおもったのか、自分の名前を製作陣に加えてくれれば、ちょっとは宣伝効果もあるんじゃないかってな申し出をしたもんで、クレジットされてるらしいんだけど、もともと、リンチはクラムが好きだったんだろうか?
映画そのものは可もなく不可もなくって感じだったけど、まあ、アンダーグラウンド・カルチャーの世界は、いかにもリンチの好きそうな世界ではあるんだけどね。
にしても、相手の女性達がセックスの内容や性癖まで語るのは凄い。
「バックが好きなのよ」
とかね。
でも、もともとクラムが、前衛的かつ急進的な芸術家であることは誰もが認めるところで、クラムの寂寞としたピアノの爪弾きは、かなり印象的だった。クラムの人間像もそうなんだけど、家族もまた奇妙だ。芸術と狂気が身近にあると、人生も性格も奇妙になっちゃうんだろか?