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雨あがる

2007年06月24日 11時22分44秒 | 邦画1991~2000年

 ◇雨あがる(2000年 日本 91分)

 監督/小泉堯史 脚本・題字/黒澤明 音楽/佐藤勝

 出演/寺尾聰 宮崎美子 三船史郎 仲代達矢 原田美枝子 井川比佐志 檀ふみ

 

 ◇山本周五郎『雨あがる』より

 1998年9月6日、黒澤明、没。

 正直、黒澤に撮ってもらいたかった。

 いつでも撮れるように準備されていたという作品だと知ったときから、どうしても黒澤が撮った『雨あがる』が観たくなってたからだ。

 ぼくが銀幕で黒澤作品に出合ったのは高校2年のときで、それまではテレビで『羅生門』と『七人の侍』を観ただけだった。それも、中学生のときだったからそんな印象も深くなく、ちょうどその頃『デルス・ウザーラ』も公開されたんだけど、なんだか観る気がしなくて、結局、大学になってから文芸地下で観た。

 まあ、高校から大学にかけて、ぼくは熱狂した。ちょっとおかしいんじゃないかってくらいの入れ込みようだった。

 ただ、そんな黒澤の晩年の作品については、まあいいたいことはあるけど、それでも『雨あがる』は黒澤の演出で観たかった。

 だからといって、小泉版『雨あがる』がどうとかいうわけじゃない。

 晩年の黒澤の絵はこんなふうになったのかもしれないな~ともおもった。ある意味、師の遺作を受け継いで撮り上げなくちゃいけないってのは、相当なストレスだったんだろうっておもうし、この作品が黒澤を野辺に送るものになったんだろうなあともおもえる。

 まあ、優しいだけでは生きていけないけど優しくないのは駄目だという主題が、ちょっとばかり厭味な感じで圧しつけられているような気もしないではない。優しさが欠点になっている人間が、克服も反省もせずに妻が開き直るというのが正解かどうか。ほんのちょっとだけど、そんなこともおもった。

 ただ、黒澤明のヒューマニズムは、山本周五郎のそれに近いんだろうし、一連の黒澤作品から漂ってくるものはみんな共通してる。そういう意味でいえば、ほぼまちがいなく、この作品は、黒澤の第2の遺作かもしれないね。

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