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海は見ていた

2007年06月29日 01時30分09秒 | 邦画2002年

 ◇海は見ていた(2002年 日本 119分)

 監督・脚本潤色/熊井啓 脚色/黒澤明 音楽/松村禎三 山本純之介

 出演/清水美砂 遠野凪子 永瀬正敏 吉岡秀隆 野川由美子 石橋蓮司 奥田瑛二

 

 ◇山本周五郎『なんの花か薫る』『つゆのひぬま』より

 追悼、熊井啓。

 黒澤明の遺稿を熊井啓が演出したっていうのが売りだったんだけど、じゃあどっちの映画なんだといえば、熊井啓の映画だろう。

 黒澤が『雨あがる』と『海は見ていた』のどちらを先に撮りたかったのか、ぼくにはわからないけれど、前者は川の氾濫、後者は岡場所の洪水と、どちらも豪雨を原因にする水が関係してる。

 なんで水だったんだろう?

 黒澤にとっての雨は昔から重要な要素だったけれども、最後までなんでそこまで水にこだわったんだろう?

 この水について、熊井啓はどう表現したかったんだろう?

 物語自体は他愛もない話で、問題になるのは最後の洪水だ。それをどうしたかったんだろうって、おもった。

 ただ、もともとのキャスティングは宮沢りえと原田美枝子だったらしい。このふたりが出演していれば、相当ちがった印象だったろう。

 悔やまれることといえばそれだけど、ま、いいか。

 ところで、熊井啓はおそらくとっても生真面目な人で、たしかに岡場所というか娼婦たちの生態や人生については、相当な憐憫や惻隠の情をもって見つめてきたにちがいない。

 当然、この登場人物たちにも思い入れはつよくなる。

 ただ、この映画は、黒澤の単純明解予定調和な物語をどれだけ艶っぽく出来るかというのが見所で、どこまでも粋に行かなくちゃいけなかったはずなのに、愛情の量が多すぎると、なんとなく垢抜けないものになりかねない。

 で、どうだったかっていうのは、見る人の考えることだわね。

 あとひとつ、CGが多用できないためか、それとも、大掛かりな水のセットを組めなかったためか、大水のカットが妙に浮いてしまうのはわかってたことだけど、残念だ。

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