◇ウォーター・ホース(2007年 アメリカ 112分)
原題 The Water Horse: Legend of the Deep
staff 原作/ディック・キング=スミス『おふろの中からモンスター』
監督/ジェイ・ラッセル 脚本/ロバート・ネルソン・ジェイコブス
撮影/オリヴァー・ステイプルトン 美術/トニー・バロウ
音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード 衣装デザイン/ジョン・ブルームフィールド
cast エミリー・ワトソン アレックス・エテル ベン・チャップリン デイヴィッド・モリッセー
◇1942年、ネス湖
とある友達がいて、そいつは今から30年前、ネス湖に旅立った。
ネッシーを観たいという、確率的にいえばゼロに近い希望を胸に。
あほなことをするやつだとおもったけど、実はぼくもしたかった。
それくらい、ぼくらの少年時代には、ネッシーは夢の対象だった。
『怪獣王子』っていうテレビドラマがあって、
原作は石川球太だったとおもうんだけど、
そこに出てくる怪獣はプロントサウルスながら、
ぼくらの目にはネッシーに映ったものだ。
ただ、それは小学校の低学年の頃で、長ずるに従い、
ネッシーの原型が首長竜のプレシオサウルスであることも知った。
同時に、スコットランドの伝説にある幻獣はケルピーといって、
NessieというのはLoch Ness Monsterの略称だってことも覚えた。
胸いっぱいに広がっていた夢がどんどんと輪郭を持つようになり、
ネス湖そのものからして、
首長竜のような大型の爬虫類が棲息することは難しいとわかり、
いよいよ落胆の度が深まったものの、
いくつかの目撃談や写真に対して藁にも縋るようなおもいになっていった。
ところが、
つぎつぎに目撃談や写真が科学的な見解によって否定されていく中、
忘れもしない1993年11月、
ぼくたちの最後の支えのひとつだった「外科医の写真」が、
そう、ネッシーを知らない人でもその写真を見れば、
「あ、これ、知ってる」とか「お、見たことあるわ」とかいう写真だけど、
これが1934年の4月に作られた偽物だったってことが暴露されたんだ。
ま、ちょっと注意すれば波紋の大きさが変じゃない?って意見は出るんだけど、
ほら、やっぱり、藁だからさ、
「なんとなくわかっちゃいたけど、そんなに否定しなくたっていいじゃんか~」
とおもっていたものが、脳天乾竹割のような凄まじさでまっぷたつにされちゃった。
で、そんなことを踏まえた上で、作られたのがこの映画だ。
「まだ、作るか」
とまではいわないにせよ、なんとなく色褪せた観は否めない。
けど、ネッシーに夢を馳せた少年は、観なくちゃいかんでしょ?
観た。
戦時中の話だった。
ネス湖にドイツ軍の潜水艦が侵攻してきたとして、
ウォーター・ホースが追い詰められ、対潜用の網に絡めとられようとするとき、
いったい、どうやって大西洋へ逃げるんだよってところが、味噌だ。
やっぱり、ネス湖に行きたくなった。
いつ、行けるんだろ?