◇孫文 100年先を見た男(2006年 中国 127分)
原題 ROAD TO DAWN
staff 監督/デレク・チウ 脚本/メイ・ズー
撮影/チェン・チーイン 美術/テレンス・フォック
音楽/パン・クオシン スー・ジュンジェ
cast ウィンストン・チャオ アンジェリカ・リー ウー・ユエ チャオ・チョン チャオ・チョン
◇1910年7月19日、孫中山ペナン到着。
中山というのは孫文の字なんだけど、
そもそもこの字をつけたのは日本へ亡命していたときのことで、
日比谷公園の近くに住んでいたとき、近くに中山さんっていう人の屋敷があり、
その表札をひと目見るや気に入り、字にしたんだと。
で、亡命してるときの変名が中山樵だってんだから、よほど気に入ったんだろう。
現在の中国の人達も、まさか孫中山の字が日本人の苗字だとは知らないよね。
で、この孫文、36歳、亡命してるときに最初の結婚をしてる。
それも相手は日本人で、大月薫っていうらしい。
この人のお孫さんだったか、この映画が封切られたときに講演会をされた。
孫文という革命家は中国でも台湾でも尊敬されてる大きな存在だけど、
日本でもたぶん好意をもって語られる人物なんじゃないだろか。
「辛亥革命の手本は明治維新である」
というようなことをいったりして、
少なくない日本人たちと手を携え、
革命の本拠地を日本に置いた事実も関係してるだろう。
だから、孫文の映画は日本でも作れるはずで、
もちろん、語り部は大月薫ってことになるよね。
ところが、どういうわけか、中国とかではよく孫文の映画は製作されるけど、
日本に亡命してたときの話はほとんどないし、薫の話は皆無だ。
なんだかな~とおもうのは余計なお世話なんだろうか?
で、この映画だ。
舞台は、マレー半島の島ペナン。
1999年だったか、友達と出かけたことがある。
タイのバンコクから夜行列車に乗って国境を越え、朝、ペナンに入った。
たしかバーツの残りがまるでなくて、
朝ご飯を食べる分すらなかったんだけど、
夜に仲良くなった女性車掌さんが、ぼくらの困窮ぶりを憐れんだのか、
「朝ご飯をサービスしてあげるわ」
とかいってくれたんだろう、朝食を出してくれた。
かくして、まるで亡命者のようにしてペナンに着いたんだけど、
孫文が9度も起義(蜂起)に失敗して、日本にもいられなくなり、
ペナン島へ亡命してきたときは、英雄が凱旋したような感じだったんだろうから、
ぼくらとは、まったく逆だ。
比べるのも愚かだが、それはともかく、ペナンは美しい島だった。
マレーシアは当時イギリス領だったから、
ヴィクトリア様式の建物がいまよりも多く立ちならんでいたことだろう。
マレー人よりも華僑の方が多かったかもしれないし、
実際、ペナンを取り仕切っているのは華僑の成功者だったろう。
だから、孫文は辛亥革命の資金を集めるべくペナンまでやってきたんだろう。
映画では、この資金集めの旅に暗殺が絡んでくる。
まあ、それは味付けで、
ぼくとしては、孫文のペナンの日々をなんとなく知れたからそれでいい。