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マルメロの陽光

2013年06月18日 21時33分15秒 | 洋画1992年

 ◇マルメロの陽光(1992年 スペイン 132分)

 原題 Elsol del Membrillo

 staff 原案/ビクトル・エリセ アントニオ・ロペス 監督・脚本/ビクトル・エリセ

     製作/マリア・モレノ(アントニオ・ロペス夫人)

     撮影/ハヴィエル・アギレサロベ アンヘル・ルイス・フェルナンデス

     音楽/パスカル・ゲーニュ 編集/ホアン・イグナシオ・サン・マテオ

 cast アントニオ・ロペス マリア・モレノ エンリケ・グラン

 

 ◇この小さな庭には世界のすべてがある

 現代美術に関心の薄いぼくは、アントニオ・ロペスがスペインを代表する画家のひとりで、マドリッド・リアリズムの旗手と呼ばれてることすら知らなかった。知らないことは多いもので、ぼくはスペインは好きな国のひとつなんだけど、九月二十八日がマドリッドにとっては特別な日で、夏の太陽が戻ってくる日といわれてて、しかもそれが「マルメロの陽光」といわれてることも知らなかった。まったくもって知らないことだらけの人間が、まるで知らない世界を観てるんだから、困ったもんだ。

 けど、写実に徹底的に拘り、マルメロがどんどんと育っていくのをいろんな工夫をして追い駆けていくさまは、なんともほほえましいドキュメントとして成立してるように感じられた。んだけど、なんだか、ラスト近くになってきて、ロペス本人が寝床で夢を見、その夢を語っている内に、それまで徹底したリアリズムで撮られていたのに、どういうわけか、にわかに幻想味を帯び始める。

「え。これ、セミ・ドキュメントの脚本があって、撮影されてるんじゃないの?」

 てな印象を受けたんだけど、勘違いなんだろか…。ま、それはそれとして、マルメロが育ち、たわわに実り、やがて落ちてゆく過程を、一心不乱に描き出そうとする画家も偉ければ、それを見守る友人と妻と娘も偉く、またそうした人々を丹念に撮り続けたスタッフたちも偉いっていうか、この映画は時間という概念を越えたところになにがあるんだろうっていうような、独特の人生観や死生観を淡々と見続ける我慢の映画なんだってことを観てる途中からおもいはじめたものの、でも、結局、ビクトル・エリセのふしぎな時間軸に捉えられている自分に観終わったときに気づくんだよね。

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