◇クロムウェル~英国王への挑戦~(2003年 イギリス、ドイツ 103分)
原題 To Kill a King
staff 監督/マイク・バーカー 脚本/ジェレミー・メイヒュー
撮影/アイジル・ブリルド 美術/ソフィー・ベッカー
衣装デザイン/ジョン・ブルームフィールド 音楽/リチャード・G・ミッチェル
cast ティム・ロス ダグレイ・スコット オリヴィア・ウィリアムズ ルパート・エヴェレット
◇1649年3月19日、イングランド共和国樹立
オリバー・クロムウェルといえば、
清教徒革命の中心人物で、チャールズ1世を処刑した後に、
イングランド共和国(コモンウェルス)をうちたて、
やがて護国卿になって独裁政治をおこなったってことくらいしか知らなかった。
だから、
冒頭、どこかの城門に骸骨が吊るされてるんだけど、
これがいったいどういう意味なのか、まるでわからなかった。
でも、英国民はわかるんだよね。
わかるっていうか、当然の知識として知ってるんだよね。
この城門のあるのがウェストミンスター宮殿で、
骸骨は墓場から掘り出されたクロムウェルで、
さらにこの後、頭蓋骨は半世紀にわたって、
ウェストミンスター・ホールの屋根の上に晒され続けたってことを。
でも、世界史の知識の乏しいぼくには、まるでわからなかった。
わかってようやく、こう納得した。
「ほほう、この映画は骸骨の回想だったのか~」
ただ、おもってみれば、
イギリスの長い歴史の中で、王が不在で、共和制が布かれたなんてのは、
このイングランド共和国の時代しかないってことに気づかされる。
いまさらなにをいってんだっていうくらい当たり前のことで、
こんな話を歴史専門の学生や研究者とかが聞いたら、
卒倒しそうになるほど無教養な話なんだろうけど、
それくらい知識のないぼくでも、なんとか観られた。
映画ってのは、なにも歴史を忠実に描く必要なんてさらさらなくて、
その時代に死んじゃってる人間が出てたって、なんにもおかしくない。
なぜって、
映画は、監督の頭の中にある世界を映像にしただけなんだから。
だから、ここでもクロムウェルの奥さんの父親が、
ほんとうなら数年前に死んじゃってるはずなのに、堂々と生きてる。
ま、そんなのは些細なことで、
要は、
クロムウェルとチャールズ1世の対立の構図と感情の交差がわかればいい。
そのあたりは見事によくわかった。
クロムウェルがある種の理想主義者であることもわかったし、
なにより、冒頭から胸がときめくような映像だった。
風にばたばたとはためく国旗のインサートで、いやほんと、鮮やかだった。
こういう疾走感は、好いね。