Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
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素敵な人生のはじめ方

2013年06月07日 20時43分06秒 | 洋画2006年

 ◇素敵な人生のはじめ方(2006年 アメリカ 82分)

 原題 10 Items or Less

 staff 監督・脚本/ブラッド・シルバーリング 製作総指揮/モーガン・フリーマン

     撮影/フェドン・パパマイケル 美術/デニス・ピッツィーニ

     衣装デザイン/アイシス・マッセンデン 音楽/アントニオ・ピント

 cast モーガン・フリーマン パス・ベガ ボビー・カナヴェイル ダニー・デヴィート

 

 ◇10品か、それ以下

 なるほど、合理的だとおもう。

 というのは、アメリカのスーパーのレジのことだ。

 日本語で書けば、

「ご購入されるお品が10品かそれよりも少ないお客様はこちらのレジで受け賜ります」

 となるところを、アメリカのスーパーではなんともつっけんどんに、こう掲げる。

「10 Items or Less」

 合理的というのはこの仕組みで、

 たしかに、スーパーで並んでるとき、

 品数の少ない籠を下げている人を見ると、その後ろに並びたくなる。

 レジ打ちの側にしても、そうだろう。

 購入品目の少ない客はひと所で次々に処理した方が、速い。

 日本のスーパーではまったくといっていいほど見られない光景だ。

 で、こういう札が掲げられているスーパーというのは、

 田舎か、都市部の中でも下層階級の棲んでいる地域で、

 要するに、あんまり品の好いところじゃない。

 そんなところにやってくる客もたかが知れているし、働いている人間も同様だ。

 ということを、このレジの札は象徴している。

 わかりやすくて、いい原題だ。

 で、そんなスーパーにやってくるのが、モーガン・フリーマン演ずる映画俳優。

 4年間も役がつかず、もうインディペンデントの映画しか出演の機会がない。

 哀れな役どころだ。

 フリーマンが声をかけたレジ係パス・ベガも哀れなものだ。

 店長の夫は、彼女と同じレジ係に手をつけ、妊娠までさせ、彼女を捨てた。

 だから、パス・ベガとしては新たな人生をはじめるしかなく、

 建設会社の面接を受けようとしている。

 似た者同士ってことになるんだけど、

 フリーマンはそんな彼女にあれこれと世話を焼き、

 人生に絶望し、斜に構え、投げやりに面接を受けようとする彼女を励まし、

 なんとか、彼女に微笑みを取り戻させ、もう一度、人生に賭けてみようと、

 そんなふうな決意をちょっとだけするようになるってだけの、

 小ぢんまりとした話だ。

 けれど、これがアメリカの今かとおもわせるのは、英語が通じないことだ。

 ヒスパニック系や中国系や、ともかくいろんな系統の人種が坩堝になってるから、

 英語が英語でなくなってる。

 そんな地域で生きていくのは大変だし、そうした人達はそんな地域にしか棲めない。

 アメリカの現実、アメリカの事情。

 それを、ほんの半日の、

 ひとりのじーちゃんとおねーちゃんを追い掛けただけの話で、見せてくれる。

 モーガン・フリーマンは、たぶん、こういう映画を撮りたかったんだろう。

 地味だけど、どこかに輝くところがあって、決して誇張しない内容の作品を。

 でも、観客はそういうフリーマンを期待しちゃいない。

 ロバート・レッドフォードも、ブラッド・ピットも、みんな、そうだ。

 等身大の人間を演じてみたい、等身大の世界を描いてみたい。

 同じように想い、同じように考え、同じように悩んで、

 同じような映画を作ってる。

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イノセント・ガーデン

2013年06月06日 13時35分35秒 | 洋画2013年

 △イノセント・ガーデン(2013年 アメリカ、イギリス 99分)

 原題 Stoker

 staff 監督/パク・チャヌク 脚本/ウェントワース・ミラー

     製作/リドリー・スコット トニー・スコット マイケル・コスティガン

     撮影/チョン・ジョンフン 美術/テレーズ・デプレス 音楽/クリント・マンセル

 cast ミア・ワシコウスカ ニコール・キッドマン マシュー・グード ダーモット・マローニー

 

 △鍵で開かれるもの

 ヒッチコックに『疑惑の影』っていう映画がある。

 実業家の叔父に憧れているヒロインがいるんだけど、

 あるとき、この叔父が殺人を犯して追われているようで、

 ヒロインの屋敷に突然やってくるや、叔父を追って刑事まで登場し、

 ヒロインの叔父に対する憧れと恐れが巨大な疑惑になっていくって話だ。

 それが元になった物語かな~とかおもって観に行ったら、ちがってた。

 ただし、

 姪と叔父のおりなすサスペンスっていう構図はおんなじだ。

 行方不明だった叔父が帰ってくる前後から父親の惨殺と行方不明が前後し、

 その疑惑が叔父に向けられるんだけど、叔父は母親を誑し込み、

 叔母を殺害し、姪に対しては異常といえるような興味を持っているのか、

 ハイヒールをプレゼントし、姪を犯そうとした不良を殺す。

 で、どうなるんだって話だけど、

 これは、父親の葬儀のあった誕生日に、祖母から贈られた鍵が、物語の鍵になってる。

 鍵というのは、もちろん扉や棚や抽斗を開けるためのものだ。

 でも、心の開かせる、秘密を解かせる、っていう意味もある。

 で、鍵のかかった抽斗の中から、叔父から姪にあてた夥しい手紙が見つかる。

 問題は世界中から出しているように書かれているのに、

 封筒に印字されているのは、とある精神病院だ。

 つまり、叔父はそこに収容されているんだけど、

「なんで、何十年も入れられっぱなしだったたの?」

 っていう疑問が湧き、佳境へ突っ走る。

 でも、鍵の意味しているのは、少女から大人へ脱皮する鍵でもあるんだね。

 祖母は、孫に赤ん坊のときから同じ靴を送り続けた。

 それは、

「いつまでも可愛い孫でいてちょうだい、たとえ叔父の秘密を知った後でも」

 っていう祖母の願いが込められてる。

 一方、叔父は、実家へ帰ってきて初めて、姪にハイヒールをプレゼントした。

 それは、

「もう大人になるときがやってきたんだよ。おまえに伝えられた遺伝子の目覚めるときが」

 っていう叔父の期待が込められてる。

 叔父は、母親との情交を姪に見せつける。

 自分の母親が「女」になっているところを見るのは、なによりおぞましい。

 姪はどうしようもなく胸が弾み、体が疼き、不良を相手にセックスを誘う。

 なんで不良にしたかといえば、同級生が、こんなふうにいったとき助けてくれたからだ。

「おまえのかーちゃん、おじさんとセックスしてんだぜ。おまえは毎日オナニーしてんのか」

 その言葉が体内をめぐり、生まれて初めて発情したとき、

 初体験の相手にしたいとおもったのが自分を好きでいるらしい不良だったわけだ。

 けれど、そんなチンピラに犯されそうになる程度じゃ、彼女の目覚めは来ない。

 異常な遺伝子が蠢き出さない。

 叔父が巧みな指さばきでピアノを弾く横で、自分も指を乗せ、連弾をすることで、

 かすかに姪の異常遺伝子は蠢き、官能にめざめ、股を擦りつけて絶頂を知る。

 だけど、まだ足りない。

 叔父は手助けをしなくちゃいけない、そう、姪の上に乗っかっている不良を殺して。

 姪は、眼の前で人間が殺されるという異常事を目撃することで、初めて目覚める。

 そしてようやく、シャワーを浴びながら、自慰をして絶頂感を知り、遺伝子が動いた。

 姪は、おとなになった。

 ただし、異常なおとなにだ。

 過去に幼い弟を生き埋めにした叔父の目的は、異常な遺伝子をめざめさせ、

 Stoker家の正統な血を伝えてゆくというところにあるんだけど、

 ところが、

「めざめた姪は叔父以上の怪物になっていくんじゃないのか?」

 てな、展開が待ってる。

 冒頭、逆光気味に立っている姪のスカートは翻り、男物のベルトをつけ、

 白い花になぜか赤い斑点が飛び散り、それをほくそ笑みながら彼女は見つめてる。

(なんでこんなカットがあるんだろう?)

 っていう最初の疑問が、佳境になってようやく明かされていくわけだ。

 いや、なんとも凄まじい、不思議の国のミア・ワシコウスカ。

 ただ、

 こんな淫靡で陰湿で異常な話をよく作ったもんだとおもいながらスタッフを見れば、

 いやまあ、びっくらこいた。

 製作が、リドリー・スコットとトニー・スコットじゃんか。

 だから、

 ブロンドの髪の毛が緑の草原になっていったりするカットが絶妙なのか~。

 あ。

 てことは、トニーの遺作?

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クロムウェル~英国王への挑戦~

2013年06月05日 20時28分46秒 | 洋画2003年

 ◇クロムウェル~英国王への挑戦~(2003年 イギリス、ドイツ 103分)

 原題 To Kill a King

 staff 監督/マイク・バーカー 脚本/ジェレミー・メイヒュー

     撮影/アイジル・ブリルド 美術/ソフィー・ベッカー

     衣装デザイン/ジョン・ブルームフィールド 音楽/リチャード・G・ミッチェル

 cast ティム・ロス ダグレイ・スコット オリヴィア・ウィリアムズ ルパート・エヴェレット

 

 ◇1649年3月19日、イングランド共和国樹立

 オリバー・クロムウェルといえば、

 清教徒革命の中心人物で、チャールズ1世を処刑した後に、

 イングランド共和国(コモンウェルス)をうちたて、

 やがて護国卿になって独裁政治をおこなったってことくらいしか知らなかった。

 だから、

 冒頭、どこかの城門に骸骨が吊るされてるんだけど、

 これがいったいどういう意味なのか、まるでわからなかった。

 でも、英国民はわかるんだよね。

 わかるっていうか、当然の知識として知ってるんだよね。

 この城門のあるのがウェストミンスター宮殿で、

 骸骨は墓場から掘り出されたクロムウェルで、

 さらにこの後、頭蓋骨は半世紀にわたって、

 ウェストミンスター・ホールの屋根の上に晒され続けたってことを。

 でも、世界史の知識の乏しいぼくには、まるでわからなかった。

 わかってようやく、こう納得した。

「ほほう、この映画は骸骨の回想だったのか~」

 ただ、おもってみれば、

 イギリスの長い歴史の中で、王が不在で、共和制が布かれたなんてのは、

 このイングランド共和国の時代しかないってことに気づかされる。

 いまさらなにをいってんだっていうくらい当たり前のことで、

 こんな話を歴史専門の学生や研究者とかが聞いたら、

 卒倒しそうになるほど無教養な話なんだろうけど、

 それくらい知識のないぼくでも、なんとか観られた。

 映画ってのは、なにも歴史を忠実に描く必要なんてさらさらなくて、

 その時代に死んじゃってる人間が出てたって、なんにもおかしくない。

 なぜって、

 映画は、監督の頭の中にある世界を映像にしただけなんだから。

 だから、ここでもクロムウェルの奥さんの父親が、

 ほんとうなら数年前に死んじゃってるはずなのに、堂々と生きてる。

 ま、そんなのは些細なことで、

 要は、

 クロムウェルとチャールズ1世の対立の構図と感情の交差がわかればいい。

 そのあたりは見事によくわかった。

 クロムウェルがある種の理想主義者であることもわかったし、

 なにより、冒頭から胸がときめくような映像だった。

 風にばたばたとはためく国旗のインサートで、いやほんと、鮮やかだった。

 こういう疾走感は、好いね。

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孫文 100年先を見た男

2013年06月04日 23時25分35秒 | 洋画2006年

 ◇孫文 100年先を見た男(2006年 中国 127分)

 原題 ROAD TO DAWN

 staff 監督/デレク・チウ 脚本/メイ・ズー

     撮影/チェン・チーイン 美術/テレンス・フォック

     音楽/パン・クオシン スー・ジュンジェ

 cast ウィンストン・チャオ アンジェリカ・リー ウー・ユエ チャオ・チョン チャオ・チョン

 

 ◇1910年7月19日、孫中山ペナン到着。

 中山というのは孫文の字なんだけど、

 そもそもこの字をつけたのは日本へ亡命していたときのことで、

 日比谷公園の近くに住んでいたとき、近くに中山さんっていう人の屋敷があり、

 その表札をひと目見るや気に入り、字にしたんだと。

 で、亡命してるときの変名が中山樵だってんだから、よほど気に入ったんだろう。

 現在の中国の人達も、まさか孫中山の字が日本人の苗字だとは知らないよね。

 で、この孫文、36歳、亡命してるときに最初の結婚をしてる。

 それも相手は日本人で、大月薫っていうらしい。

 この人のお孫さんだったか、この映画が封切られたときに講演会をされた。

 孫文という革命家は中国でも台湾でも尊敬されてる大きな存在だけど、

 日本でもたぶん好意をもって語られる人物なんじゃないだろか。

「辛亥革命の手本は明治維新である」

 というようなことをいったりして、

 少なくない日本人たちと手を携え、

 革命の本拠地を日本に置いた事実も関係してるだろう。

 だから、孫文の映画は日本でも作れるはずで、

 もちろん、語り部は大月薫ってことになるよね。

 ところが、どういうわけか、中国とかではよく孫文の映画は製作されるけど、

 日本に亡命してたときの話はほとんどないし、薫の話は皆無だ。

 なんだかな~とおもうのは余計なお世話なんだろうか?

 で、この映画だ。

 舞台は、マレー半島の島ペナン。

 1999年だったか、友達と出かけたことがある。

 タイのバンコクから夜行列車に乗って国境を越え、朝、ペナンに入った。

 たしかバーツの残りがまるでなくて、

 朝ご飯を食べる分すらなかったんだけど、

 夜に仲良くなった女性車掌さんが、ぼくらの困窮ぶりを憐れんだのか、

「朝ご飯をサービスしてあげるわ」

 とかいってくれたんだろう、朝食を出してくれた。

 かくして、まるで亡命者のようにしてペナンに着いたんだけど、

 孫文が9度も起義(蜂起)に失敗して、日本にもいられなくなり、

 ペナン島へ亡命してきたときは、英雄が凱旋したような感じだったんだろうから、

 ぼくらとは、まったく逆だ。

 比べるのも愚かだが、それはともかく、ペナンは美しい島だった。

 マレーシアは当時イギリス領だったから、

 ヴィクトリア様式の建物がいまよりも多く立ちならんでいたことだろう。

 マレー人よりも華僑の方が多かったかもしれないし、

 実際、ペナンを取り仕切っているのは華僑の成功者だったろう。

 だから、孫文は辛亥革命の資金を集めるべくペナンまでやってきたんだろう。

 映画では、この資金集めの旅に暗殺が絡んでくる。

 まあ、それは味付けで、

 ぼくとしては、孫文のペナンの日々をなんとなく知れたからそれでいい。

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L.A. ギャング ストーリー

2013年06月03日 00時11分06秒 | 洋画2013年

 ◇L.A. ギャング ストーリー(2013年 アメリカ 113分)

 原題 Gangster Squad

 staff 原作/ポール・リーバーマン『Gangster Squad』

     監督/ルーベン・フライシャー 脚本/ウィル・ビール

     撮影/ディオン・ビーブ 美術/メイハー・アーマッド

     音楽/スティーヴ・ジャブロンスキー 衣装デザイン/メアリー・ゾフレス

 cast ジョシュ・ブローリン ショーン・ペン エマ・ストーン ライアン・ゴズリング

 

 ◇1950年、ミッキー・コーエン逮捕

 L.A.とついたら、すぐにおもいだされるのは『L.A.コンフィデンシャル』だ。

 この『L.A. ギャング ストーリー』は、その前日譚になってる。

『L.A.コンフィデンシャル』は、当時、マフィアの大立者だったミッキー・コーエンの逮捕から始まるけど、その逮捕劇が、この映画のおもな筋立てってわけだ。だから、雰囲気は、どうしても『L.A.コンフィデンシャル』に似てくるし、ちょっと前の時代のシカゴが舞台になってる『アンタッチャブル』ともよく似てる。

 ただ、どういうわけか、暴力は過剰なんだけど、ケレン味が利いてるようで利いてないって感じは否めない。

 山椒のような男ショーン・ペンはさすがにうまいけれども、もうすこしでかくて堂々としていた方が、コーエンらしい。小粒でぴりりと辛い老練な刑事の役はなかったんだろうか?ともおもうけど『アンタッチャブル』でのショーン・コネリー的な立場の刑事は、円熟味の出てきたロバート・パトリックが上手に演じてたしね。

「次の一瞬を狙って撃つんだ」

 空き缶を撃ってるときにいう台詞も、最後にほどよく利いてたし。

 難しいところだ。

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ウォーター・ホース

2013年06月02日 03時33分23秒 | 洋画2007年

 ◇ウォーター・ホース(2007年 アメリカ 112分)

 原題 The Water Horse: Legend of the Deep

 staff 原作/ディック・キング=スミス『おふろの中からモンスター』

     監督/ジェイ・ラッセル 脚本/ロバート・ネルソン・ジェイコブス

     撮影/オリヴァー・ステイプルトン 美術/トニー・バロウ

     音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード 衣装デザイン/ジョン・ブルームフィールド

 cast エミリー・ワトソン アレックス・エテル ベン・チャップリン デイヴィッド・モリッセー

 

 ◇1942年、ネス湖

 とある友達がいて、そいつは今から30年前、ネス湖に旅立った。

 ネッシーを観たいという、確率的にいえばゼロに近い希望を胸に。

 あほなことをするやつだとおもったけど、実はぼくもしたかった。

 それくらい、ぼくらの少年時代には、ネッシーは夢の対象だった。

『怪獣王子』っていうテレビドラマがあって、

 原作は石川球太だったとおもうんだけど、

 そこに出てくる怪獣はプロントサウルスながら、

 ぼくらの目にはネッシーに映ったものだ。

 ただ、それは小学校の低学年の頃で、長ずるに従い、

 ネッシーの原型が首長竜のプレシオサウルスであることも知った。

 同時に、スコットランドの伝説にある幻獣はケルピーといって、

 NessieというのはLoch Ness Monsterの略称だってことも覚えた。

 胸いっぱいに広がっていた夢がどんどんと輪郭を持つようになり、

 ネス湖そのものからして、

 首長竜のような大型の爬虫類が棲息することは難しいとわかり、

 いよいよ落胆の度が深まったものの、

 いくつかの目撃談や写真に対して藁にも縋るようなおもいになっていった。

 ところが、

 つぎつぎに目撃談や写真が科学的な見解によって否定されていく中、

 忘れもしない1993年11月、

 ぼくたちの最後の支えのひとつだった「外科医の写真」が、

 そう、ネッシーを知らない人でもその写真を見れば、

「あ、これ、知ってる」とか「お、見たことあるわ」とかいう写真だけど、

 これが1934年の4月に作られた偽物だったってことが暴露されたんだ。

 ま、ちょっと注意すれば波紋の大きさが変じゃない?って意見は出るんだけど、

 ほら、やっぱり、藁だからさ、

「なんとなくわかっちゃいたけど、そんなに否定しなくたっていいじゃんか~」

 とおもっていたものが、脳天乾竹割のような凄まじさでまっぷたつにされちゃった。

 で、そんなことを踏まえた上で、作られたのがこの映画だ。

「まだ、作るか」

 とまではいわないにせよ、なんとなく色褪せた観は否めない。

 けど、ネッシーに夢を馳せた少年は、観なくちゃいかんでしょ?

 観た。

 戦時中の話だった。

 ネス湖にドイツ軍の潜水艦が侵攻してきたとして、

 ウォーター・ホースが追い詰められ、対潜用の網に絡めとられようとするとき、

 いったい、どうやって大西洋へ逃げるんだよってところが、味噌だ。

 やっぱり、ネス湖に行きたくなった。

 いつ、行けるんだろ? 

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ジャンゴ 繋がれざる者

2013年06月01日 03時38分26秒 | 洋画2012年

 ◎ジャンゴ 繋がれざる者(2012年 アメリカ 165分)

 原題 DJANGO UNCHAINED

 staff 監督・脚本/クエンティン・タランティーノ

     撮影/ロバート・リチャードソン 美術/J・マイケル・リヴァ

     主題歌/ロッキー・ロバーツ&ルイス・バカロフ『続・荒野の用心棒』より

     衣装デザイン/シャレン・デイヴィス

 cast ジェイミー・フォックス クリストフ・ヴァルツ レオナルド・ディカプリオ

 

 ◎タランティーノ、爆殺!

 子どもの頃、テレビでときどき西部劇を放送してた。

 マカロニ・ウエスタンってやつは、

 普通の西部劇とちがって、どういうわけか女の人が出てきて、

 ちょっとばかしエッチだったりした。

 ずっとあとになってマカロニ・ウエスタンがイタリアの西部劇だと知って、

 なるほど、それでやけにエロティックだったわけねと納得したんだけど、

 その中の1本に『続・荒野の用心棒』がある。

 クリント・イーストウッドの『荒野の用心棒』とはなんの関係もないのに、

「続」だ。

 邦画タイトルのいい加減さにはあんぐりくるけど、

 この原題が『DJANGO』だ。

 フランコ・ネロが棺桶をひきずりながら登場して、

 その中にはガトリング銃が仕舞われてて、いよいよってときにぶっ放される。

 いやまあ、凄かった。

 永井豪も相当な衝撃だったんだろう、

 すぐに『ハレンチ学園』でマカロニ先生が登場し、やっぱり棺桶をひきずってたけど、

 PTAとの大戦争になったときだったか、

 ガトリングを出そうとしたら骸骨だったんで、蜂の巣にされたんじゃなかったっけ?

 まあそれくらいフランコ・ネロの棺桶ガトリングは傑作だったんだけど、

 こんな棺桶ひきずったら隣町までも行けないじゃん、とかいう突っ込みは無しだ。

 そんなことより、主題歌がカッコよかった。

 ぼくらはベルト・フィアがイタリア語で歌ってる方はずっと後に聴いたから、

 耳に残ってるのは、ロッキー・ロバーツ&ルイス・バカロフの英語版だ。

 カッコよすぎた。

 タランティーノもそんな子ども時代を送ったんだろうか?

 のっけから、♪ジャンゴだ。

 来たな~とおもい、

「やっぱり最後の締めくくりはガトリングだろう」

 と期待してたら、残念なことに、そうじゃなかった。

 ま、それでも拳銃は撃ちまくるわ、血しぶきは飛び散りまくるわ、

 なにより、酒場のカウンターで、

 ジェイミー・フォックスにフランコ・ネロが名前を訊くと、やっぱり答えはこうだ。

「DJANGOだ。けど、Dは発音しねえ」

 やってくれるじゃないか、タランティーノ。

 ちなみに本人の登場は、ラスト近く。

 おもいきり爆裂してくれる。

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