バス運転士のち仕分け作業員のち病院の黒子 by松井昌司

2001年に自分でも予想外だったバス運転士になり、2019年に某物流拠点の仕分け作業員に転職、2023年に病院の黒子に…

後ろからバス、横からジジイ

2017年08月05日 14時42分31秒 | バス運転士
あるバス停を発車した時、右ミラーに後方から迫る回送バスが映ったので、私は「その先の交差点を左折した後… とりあえず1つ目のバス停で止まって、追い抜いてもらおう」と思った。それから間もなく左折して、緩やかな坂を上り始めた時… 道路の右側にある某住宅地の転回場から出ようとしているバスに気が付いた。

私は「そのバスは右か左か、どっちへ出るんだ? 何処行きだ? 回送か?」と迷いながらも、反射的に「お先にどうぞぉ~」と停止… すると、そのバスの運転士さんは「いえいえ、どうぞどうぞぉ~ 先に行って下さぁ~い」と合図を送ってくれたので、私は再び緩やかな坂を上り始めた。

その時、そのバスの行き先表示を見たら“A駅経由B駅行き”だったので、「ゲゲッ… 同じ方向か… どうする、どうする?」とボケ脳はプチパニックに陥ってしまい、“1つ目のバス停で回送バスに追い抜いてもらう”という予定は忘却の彼方へ… 私は乗降客がいないことだけを確認して、1つ目のバス停を通過してしまった。

そして、2つ目のバス停で約30秒の時間調整停車… 私は「つい最近、経験したような場面だなぁ~」と思いながら、運行画面のデジタル時計と右ミラーを交互にチラ見… 発車時刻が近付いた時に、後ろからバスがやって来たので、今回は“そのバスの行き先表示”をチェック… 回送ではなくA駅経由B駅行きである(同じバス停を使う=追い抜かない)ことを確認して発車した。

3つ目のバス停で止まって両扉を開けると、3人ほどのお年寄りが降り、推定アラサーの綺麗なお母さんと小さな息子さんが乗った。ところが、バスに乗り慣れていないのか、お母さんは運賃箱を素通りしたので、私が「すいませぇ~ん」と呼び止めたところ、「えっ… 先に?」と言ったので、「はい、お願いします」と答えた。

すぐに大きな財布を取り出し、チャラチャラと210円分の小銭を探すお母さん… その時、中扉から降りたお爺さんが前扉の外を通ったのだが… お母さんに向かって「こらっ! ※▲☆◆×●!(ハッキリとは聞こえなかったのだが… 多分、お金くらい用意しとけ!)」と言ったのである。

一瞬の間の後、お母さんがお爺さんの方を見てから私を見て「えっ… 私?」と言ったので、私は心の中で「何を言っとるんだ、このクソジジイ!」と怒鳴りながら、ニコッと笑顔で「いいえ、違いますよ」と答えた。すると、お母さんは安心した様子で小銭探しを再開… 210円を投入したのだった。

バスが発車してしばらくすると、お母さんがやって来て「あぁ… 母一人子一人の生活は大変で… ねぇ、運転士さん… 今夜、時間ありますか?」と言っ…(ないない! イケメンでも何でもない妄想オヤジに言い寄って来る奇特な女性なんていねぇよ! もしも、そんな誘いがあったとしても… 思わせぶりな態度で引っ張られ引っ張られ… 子供のための生活費を吸い取られるのがオチだわさ! ハハハ…)