「一休さんの最期のことばは “死にとうない”だった」という
ような話がネットで横行しています。
「一休さんのようなえらい坊さんでも、死は怖かった? 私たちと
同じだ」というような、安堵感。これも悟りだというのでしょう。
ですが、「一休が最後に“死にとうない”」と言ったという原史料はありません。
強いていえば、
一休は 最晩年に、酬恩庵の庭先に 自分の墓(寿塔)を建てています。
愛する森女や弟子たちに「一休の死後も、一休はここにいる」という
メッセージぐらいは語ったかもしれません。
一休自身の筆になる『狂雲集』の中の詩から想定できるのは
「一休は未来永劫生き続け、弥勒となって人々を苦から救おう」という
メッセージです。つまり「死にとうない」ではなく、「一休は死なない。
未来永劫生き続ける」という方が、一休の最期の言葉です。
その言葉の通り、一休は没年から600年経った今日でも
人々の心の中に生き続け、ほっとするような安らぎを与えてくれています。
人々は「一休」に名を借りて、笑ったり、喜んだり、留飲を下げたりして
満足感を得ているではないですか。