こうの史代の漫画『この世界の片隅に』は、戦争、原爆を
今までにない視点で描き、「文化庁メディア芸術祭の
マンガ部門・優秀賞」を受賞した。驚きである。
広島から20kmほど南の軍港町、呉に住む主人公すずと
家族、周囲の人々の、日常の生活を克明に描き、ストー
リーはゆっくりと進行していく。そして、やがて呉には
空爆が、広島には原爆が投下されるが、悲惨な情景や
エキセントリックな描写は無く、淡々と日常を描きながら、
主人公の心が崩れて行く内面をえぐり出しているのだ。
NHK「ラジオ深夜便」で、こうの史代はこう語っていた。
毎日のように図書館に通い、当時の雑誌や新聞を漁り、
各地の「昭和記念館」に出向いて、当時の日常生活が
どのようなものだったのか。町の風景、家の中の様子、
看板、電信柱のポスター、日々の事件など、徹底的に
資料を集めた。食べものが無くなって、どんなものを
食べていたのか、それと同じものを作って食べてみて、
味や口当たりを体感した」と。その努力があらばこその
彼女の漫画は徹底したリアリズムなのだ。
我々庶民は“世界の片隅”に、たくましく生きている。
そして“世界の片隅”では、今も戦争が起きている。
それを知らされても、対岸の火事ほどにも思っていない。
いつの日か、その火の粉が降りかかってくることに 気
づこうともしない。
そして気づいた時は、もう取り返しのつかない事態に
陥っている。それが「原爆」だったのだ。そうした描き
方で、恐ろしさをより強く、深く感じるのだ。
『ねがい』 広島市立大洲中学校3年有志(2002年)作詞
山ノ木竹志編詞 たがだりゅうじ作曲
1.もしも この頭上に 落とされたものが
ミサイルではなくて 本やノートで あったなら
無知や 偏見から 解き放たれて
君は 戦うことを やめるだろう
2.もしも この地上に 響きあうものが
爆音ではなくて 歌の調べで あったなら
恐怖や 憎しみに とらわれないで
人は 自由の歌を 歌うだろう
3.もしも この足元に 植えられたものが
地雷ではなくて 小麦の種で あったなら
飢えや 争いに 苦しまないで
共に分かあって 暮らすだろう
4.もしも ひとつだけ 願い叶うならば
戦争捨てて 世界に 愛と平和を
この願い 叶うまで 私たちは
歩み続けることを やめないだろう
この願い 叶うまで 私たちは
歩み続けることを やめないだろう
『あの日の授業-新しい憲法の話』笠木透作詞 安川誠作曲
新しい憲法とは、現在の憲法が生まれた時の喜びと感動を歌った
ものだ。今一度あの時の感動を呼び起こしたい。
1.あの日の先生は 輝いて見えた
大きな声で 教科書を 読んでくださった。
ほとんど何も わからなかったけれど
心に刻まれた あの日の授業
(詩の朗読)
そこで今度の憲法では、日本の国が決して二度と戦争を
しないように、二つのことを決めました。
その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をする
ためのものは、いっさい持たないということです。
これから先、日本には、陸軍も海軍も空軍も無いのです。
これを戦争の放棄といいます。「放棄」とは「捨ててしまう」
ということです。しかし、皆さんは、決して心細く思う
ことはありません。日本は正しいことを、他の国より先に
行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものは
ありません。
2.あの日の先生は 熱っぽかった
これだけは 決して 忘れてはいかんぞ
泡を吹いて 吼えたり 叫んだり
心に刻まれた あの日の授業
(詩の朗読)
もう一つは、よその国と争いごとが起こった時、決して
戦争によって、相手を負かして、自分の言い分を通そうと
しない、ということを決めたのです。
穏やかに相談をして、決まりをつけようというのです。
なぜならば、戦をしかけることは、結局自分の国を滅ぼす
ような羽目になるからです。
また、戦争とまで行かずとも、国の力で相手を脅すような
ことは、いっさいしないことに決めたのです。そうして、
よその国と仲良くして、世界中の国が良い友達になって
くれるようにすれば、日本の国は栄えてゆけるのです。
3.あの日の先生は 涙ぐんでいた
教え子を戦場へ 送ってしまった
自らを責めて おられたのだろう
今ごろ分かった あの日の授業
4. (1番をくり返す)
あの日の先生は 輝いて見えた
大きな声で 教科書を 読んでくださった。
ほとんど何も わからなかったけれど
心に刻まれた あの日の授業
心に刻まれた あの日の授業
『死んだ男の残したものは』
1.死んだ男の残したもものは 一人の妻と一人の子供
他には何も残さなかった 墓石ひとつ残さなかった
2.死んだ女の残したもものは しおれた花と一人の子供
他には何も残さなかった 着物一枚残さなかった
3.死んだ兵士の残したもものは こわれた銃とゆがんだ地球
他には何も残せなかった 平和ひとつ残さなかった
4.死んだ彼らの残したもものは 生きてる私 生きてる貴方
他には誰も残っていない 他には誰も残っていない
5.死んだ歴史の残したもものは 輝く今日と また来る明日
他には何も残っていない 他には何も残っていない
戦争があって、多くの人が死に、そして今日の自分が生きて
あることに、深い感慨と使命を呼び起こす詩だ。じんとくる。