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経営者としてだけではない、稲盛和夫京セラ名誉会長

2022-08-30 19:14:42 | アラカルト

今日の午後、京セラの名誉会長の稲盛和夫さんの訃報が、報じられた。
老衰とのことだ。

この訃報を受け、多くのメディアは「経営者・稲盛和夫」という視点で、稲盛氏の功績を伝えている。
確かに、稲盛氏の「アメーバー経営」という考えは、「京セラ」という京都の小さな企業を現在のような大企業へと発展させることになった。
それだけではなく、破綻した日本航空の再建でも、その手腕を発揮されたことは、記憶に新しい。
いわゆる、ビジネス本と言われる経営に関する著書も多かったので、読まれた方も多いのでは?
その類まれな経営センスは、現在のパナソニックを創業した、松下幸之助氏と同様に「経営の神様」のような方であった、と言っても過言ではないかもしれない。

ただ、稲盛氏を経営・ビジネスという一面だけで功績をたたえる、ということには違和感がある。
というのも、稲盛氏は私財を投じ「稲盛財団」を立ち上げ、今では「(自然科学分野の)ノーベル賞の登竜門」とすら言われる「京都賞」を設立。
受賞者の中には、iPS細胞の山中伸弥教授、がんの免疫チェックポイント阻害剤・オブジーボの本庶佑教授、青色LEDの赤崎功さん等が、ノーベル賞を受賞する前に京都賞を受賞している。
それほど、世界では高い評価を受けている賞でもあるのだ。
それだけではない。
京都の大学に通う学生たちをボランティアとして運営の一部に参加させることで、応募した学生たちは世界のトップクラスの研究者や芸術家と直接触れ合う機会を設けられている。
未来の研究者、芸術家たちに大きな刺激を与え、次世代の育成にも心を砕いている。

他にも、InaRISと呼ばれる基礎科学研究や「ミュージック・デイ」という、社会啓発を目的とした教育・文化支援を行っている。
「ミュージック・デイ」に関しては、同じ京都に本社があるロームが、長期ネーミングライツ契約をしている「ロームシアター」が会場となっているのも、京都らしいという気がする。
ちなみに、ロームの創業者が大音楽好きであったことから「ロームミュージックファンデーション」という、基金を設立し毎年若い日本の音楽家たちが安心をして海外で学べるようなプログラムを提供している。
この奨学金を得て、若い日本の音楽家たちが海外の著名な音楽コンクールで入賞をしたりしている。

あくまでも個人的な思いなのだが、稲盛氏の功績はこのような文化・社会活動なのでは?という、気がしている。
「経営」という点だけであれば、稲盛氏よりも儲けがうまい経営者はいるかもしれないし、今後出てくる可能性はあると思う。
ただ、稲盛氏のように私財を投じて財団をつくり、科学分野にとどまらず様々な文化や社会に目を向け、「社会が豊かになるために」という志を持った経営者が、出てくるのか?と考えると、難しいのではないだろうか?