「竹久夢二展」 新宿高島屋

高島屋新宿店11階 催会場(渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
「竹久夢二展 - ふたつのふるさと ふたつのコレクション - 」
8/26-9/6



夢二と縁のある二つの美術館コレクションを概観します。新宿高島屋で開催中の「竹久夢二展」へ行ってきました。

まずは本展に出品のある二つの美術館です。温泉地である伊香保の記念館は、実際に行かれた方も多いのではないでしょうか。

夢二郷土美術館(岡山):夢二の生家を整備してオープンしたゆかりの美術館。夢二の作品を約2000点を収蔵。
竹久夢二伊香保記念館(群馬):晩年に理想の創作を行うべく、夢二が拠点を移して活動した群馬の地の記念館。

会場は新宿高島屋の催事場とのことで、失礼ながら展示品も多くないだろうと高を括っていましたが、実際には装丁本やスケッチブック、それに肉筆の日本画から屏風絵までの400点もの作品が展示されていました。首都圏の夢二展というと、2007年の千葉市美の記憶も新しいところですが、それに匹敵する規模であると言えるかもしれません。既知の作品も多いのは事実ですが、じっくり楽しめました。



それではいつものように印象に残った作品を簡単に挙げていきます。

「春の巻」(1909)
夢二最初期の作品。早くも夢二風のほのぼのとしながらも、どこかに一抹の憂いを帯びた人物が描かれている。

「昼夜帯 原画『猫』」
飄々とした可愛らしい猫が墨で示される。夢二の猫はいつ見ても和む。

「初恋」(1912)
夢二の油彩画。大きな木の下で少し離れながらも、互いにひかれ合う男女の姿が描かれている。二人の間の思わせぶりなすれ違い感がたまらない。

「大川端」(明治末~大正)
淡彩による日本画。川縁に立ち並ぶ家々がぼんやりとしたタッチで表されている。



「こたつ」(1915)
六曲一隻の大作屏風。夢二作品でも最大級のものらしい。こたつの布団にくるまれて、芸者たちが三味線の稽古などをする姿が描かれている。にこやかな表情には全く嫌みがない。対となる屏風、「一力」と合わせて楽しみたい。

「浴衣図案」(大正)
本展ではこの浴衣の他、封筒や葉書などのデザイン作品も数多く紹介されている。草花を織り込んで、揺らぎのある伸びやかな図柄が微笑ましい。



「秋のいこい」(1920)
黄色のプラタナスの下で物思いにふける女性。この見つめる表情の優しさこそ夢二の魅力。代表作の一つでもある。

「大徳寺」(1929)
今回一番惹かれた夢二の美人画。斜め後ろから見た和装の女性が物悲しく示される。夢二はいつもこのように女性を美しく見ていたのだろうか。

「立田姫」(1931)
ちらし表紙を飾る屏風絵。富士を背景に恍惚と下様で舞を披露する女性が描かれている。赤い着物は輝かしい。ほっそりとしながら、なおかつ少しS字に曲げたような立ち姿は、まさに夢二美人の特徴。



上の作品の他には、夢二のスケッチが約100点、さらには本人使用の椅子や筆などの遺品なども紹介されています。実のところ、私は夢二が必ずしも大好きというわけではありませんが、それでも一揃えの作品を伊香保や岡山まで行かずに見られて満足出来ました。



なお本展は会期終了後、以下のスケジュールにて岡山と京都の高島屋へと巡回します。

2009/9/16~9/28@岡山高島屋
2010/1/6~1/25@京都高島屋

また図録も発行されていましたが、今回の開催に合わせて発売された「もっと知りたい竹久夢二」も非常に充実していました。夢二の生涯を豊富な図版とともに追いかけるには最適な一冊です。当然ながら本展の出品作も掲載されています。是非一度、書店などにてご覧下さい。

「もっと知りたい 竹久夢二/小川晶子/東京美術」

9月6日まで開催されています。(連日20時まで。9/5の土曜は20時半まで。最終日は18時閉場。)
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