「イタリア美術とナポレオン展」 大丸ミュージアム・東京

大丸ミュージアム・東京千代田区丸の内1-9-1 大丸東京店10階)
「イタリア美術とナポレオン展」
9/10-28



ナポレオンの生地、コルシカ島のフェッシュ美術館の「至宝」(ちらしより引用)を概観します。大丸東京店で開催中の「イタリア美術とナポレオン展」へ行ってきました。

まずは本展の概要です。

・フェッシュ美術館のイタリア美術品より、主に17世紀から18世紀の絵画、約80点を展観する。
・同美術館のイタリア絵画コレクションは、フランス国内においてルーヴル美術館に次ぐ規模である。
・ボッティチェッリ初期作「聖母子と天使」のアジア初公開。

続いて展覧会の構成です。

1.「光と闇のドラマ - 17世紀宗教画の世界」:ボッティチェッリの「聖母子と天使」など。
2.「日常の世界を見つめて - 17世紀風俗画の世界」:ルカ・ジョルダーノ「聖セバスティアヌスの殉教」他。
3.「18世紀イタリア絵画の世界」
4.「ナポレオンとボナパルト一族」:フランソワ・ジェラール「戴冠式のナポレオン1世」、ナポレオンのデスマスクなど。
5.「コルシカ島風景画家」:ご当地、コルシカ島の風景画家を数点紹介。エピローグ。

それでは印象に残った作品を挙げます。



マッティア・プレーティ(工房)「聖女ヴェロニカ」(17世紀後期)
天を見つめて涙するヴェロニカの姿。画像ではつぶれてしまったが、手元に聖顔布を持つお馴染みのポーズをとっている。悲しみを内にたたえたような清純な表情はやはり美しかった。

サンドロ・ボッティチェッリ「聖母子と天使」(1467ー70年)
ちらし表紙にも掲げられた本展の目玉。状態にもよっているのか、部分的に出来不出来の落差が激しいが、まるでレオナルドの描いたような中性的な天使は可愛らしい。流れるような巻き髪も軽やか。

サンティ=ディ・ティート「子供時代」(1570年頃)
今回の展示作品の中ではやや異質な印象を受ける一枚。人間の魂を表すという小鳥を握りしめ、足元には花のちらほら咲く土地の上に少女が立っている。非常に濃い空の青みが目に染みた。

ルカ・ジョルダーノ「聖セバスティアヌスの殉教」(1660年頃)
本展示の中で最も劇的な作品ではないだろうか。あたかも拳を振り上げるかのようなポーズをとるセバスティアヌスが画面中央に立ちふさがる。胸と腹に矢を刺し、目には大粒の涙をたたえていた。白く、銀色にも光る肉体はまるで化石のようだ。

フランチェスコ・ノレッティ「トルコ絨毯と壁布のある静物」(17世紀中期)
タイトルの如く絨毯の質感表現にこそ見るべき点がある作品。その毛羽立った糸の質感は、重厚な画肌によって巧みに再現されていた。

アントニオ・ジュゼッペ・バルバッツァ「死んだ鶏」(18世紀中期)
経歴が殆ど知られてない作家の一枚。絞め殺した鶏が真っ逆さまにぶら下がる姿が描かれている。いわゆる静物画の範疇に入るのだろうが、首筋から流れおちる血の描写など、否応無しに死の臭いが漂ってくる不気味な作品ではある。尾っぽの靡く様子はあたかも若冲。



フランソワ・ジェラール「戴冠式のナポレオン1世」(1806年)
江戸博のナポレオン展でも見た作品なのだろうか。重厚なガウンに身を包んで、まさに威厳に満ちた様で構えるボナパルトの姿が描かれている。ややアンニュイな表情が魅力的だ。

これらのイタリア絵画の基準作というのがあまり良く分からないので、所蔵品の質云々については不明ですが、暗がりの大丸ミュージアムの空間に、所狭しと並ぶ大作絵画群はなかなか壮観なものがありました。また濃厚極まりないルネサンス絵画を抜けると、最後には淡いタッチの軽妙な風景画が待ち構えているという構成も悪くありません。



なお出品リストは受付に申し出るといただけます。メモをとるのに重宝しました。

最終日を除き、会期無休にて連日夜8時(入場は午後7時半。)まで開館しています。

今月28日までの開催です。
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