N響定期 「メンデルスゾーン:交響曲第3番(スコットランド)」他 ホグウッド

NHK交響楽団 第1653回定期公演 Aプログラム2日目

オール・メンデルスゾーン・プログラム
 序曲「フィンガルの洞窟」(ローマ版)
 ヴァイオリン協奏曲(初稿)
 交響曲第3番「スコットランド」

ヴァイオリン ダニエル・ホープ
管弦楽 NHK交響楽団
指揮 クリストファー・ホグウッド

2009/9/20 15:00 NHKホール



メンデルスゾーンの生誕200年を記念して、その楽譜の校訂にも取り組んでいるというホグウッドが定番の名曲を披露します。N響定期を聴いてきました。

コンサートの一般的な流れとしては大概、ラストに置かれたメインの大曲にこそ、完成度の高い演奏となるものですが、今回の公演で私が一番良いと感じたのは、言わば殆ど前座的な扱いなはずの「フィンガルの洞窟」でした。ここでのホグウッドは一般的な彼へのイメージ通りに、半ば古楽器演奏的なアプローチにて颯爽と音楽を処理していきましたが、インテンポでリズム感にも長けた横の軸と、一方での各パートのバランスにも配慮した縦の軸がうまく呼応したからなのか、響きに立体感と音楽そのものに力強さを感じる、非常にドラマテックなフィンガル像を生み出すことに成功していました。こうなると元々、情景の描写に豊かなフィンガルは実に生き生きと、またそれこそロマン派の風景絵画の如く雄弁と語りだすものです。管楽器の透明感に満ちたささやきが風となり、また弦のざわめきが波となって、まさに自然の景色を眼前に引き出していました。これは見事です。

さて一方でのソリストにホープを迎えたメンコン、さらには休憩を挟んでのスコッチは、そうしたフィンガルの出来からすると、それこそ尻下がりにテンションが下がる演奏に思えてなりませんでした。アンコールのラヴィ・シャンカールにこそしなやかな響きを聴かせたホープは、このメンデルスゾーン、いやむしろこのホグウッドとの呼吸が今ひとつあわなかったのかもしれません。楽章後半、特にピアニッシモの箇所こそ、ピンと緊張の糸が張りつめるような怜悧な響きを奏でてはいたものの、やや崩れ気味の入った冒頭楽章の他、カデンツァの箇所は、とても本調子とは思えない内容で拍子抜けするほどでした。またホグウッドによる、全体に抑制的な伴奏と合わせようとする意識が強く出過ぎたのかもしれません。突き抜けることなく、奇妙なほどこじんまりとした表現に終始してしまいました。

スコットランドについては、おそらく私の嗜好があまりにも偏っているからだと思います。押しの一辺倒にも思える、非常に前へ前へと早いスピードで進むテンポに、曲の細かい箇所を味わうまでもなく、いつの間にやら演奏が終わってしまいました。偉そうなことを申せば、もう少しじっくり構えていただきたかったというのが率直な印象です。

Mendelssohn: Symphony No. 3 「Scottish」 in A Minor, op. 56 (part 1)


非常に学究的なアプローチということもあるのか、フィンガルを除けば、やや無味乾燥なメンデルスゾーンであったかもしれません。ハイドンのロンドンにプロコを合わせた意欲的なCプロの方が、その持ち味は良い方向に出るような気もします。

連休ということもあってか、会場にはやや余裕がありました。とは言え、私の印象とは異なり、終演後は比較的温かい拍手がステージに送られていたことも付け加えておきたいと思います。
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