都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「美術館物語 - モネ17歳の作品がやってきた(常設展示)」 埼玉県立近代美術館 5/7
埼玉県立近代美術館(さいたま市浦和区常盤9-30-1)
「美術館物語 - モネ17歳の作品がやってきた(常設展示)」
2006/4/24~2007/1/28
埼玉県立近代美術館の常設展示では今、モネ17歳の時の作品「ルエルの眺め」と、ドラクロワ晩年の「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」の2点が、寄託展示という形をとって公開されています。ちなみに「ルエルの眺め」は、モネ総目録の冒頭に登場するという記念すべき作品です。先日、ホルスト・ヤンセンの企画展へ行った際に見てきました。
今開催中の常設展(常設展H18年度第1期。7/17まで。)自体は4つのセクションに分かれていますが、このモネとドラクロワの2点は、入口すぐ脇の小部屋にて展示されています。まずはモネが17歳の時に描いた「ルエルの眺め」(1858)です。画家ブーダンによって才能を見出された当初の作品とのことですが、明るい画面やぽっかりと浮かぶ空の雲などには、確かにブーダンの影響を思わせる部分が感じられます。またこの高い写実性。光いっぱいの空の下に広がった小川のせせらぎ(水面に映り込んだ空と木の美しいこと!)と木々の煌めき、そして細かな草花。解説には「水辺に映る木や空などに後のモネの展開が予兆させる。」ともありましたが、私はむしろこの明るい画風に、モネの良い意味での瑞々しさと若さを見出したいと思います。後期のモネと関連させなくても、一目見て惚れるような美しい作品です。
もう一点の「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」(1860)は、ドラクロワ62歳の時、つまり死の3年前に描かれた作品でした。私はドラクロワが非常に苦手でなかなか好きになれないのですが、処刑後のステパノの亡骸を運ぶという奇異な主題に則った弟子たちの動きある表現には、劇的なシーンをまとめあげるドラクロワの高い構成力を感じます。特にステパノに寄り添う女性と、右下で跪く女性。彼女らの存在は、ステパノの無惨な頭部とともにこの場面の哀しみを強く伝えます。印象深い作品でした。
ところで今回の寄託展示とは、作品の所有者である丸沼芸術の森と埼玉県立近代美術館の間に結ばれた「登録美術品公開契約」によるもので、この2点は、今後5年ほど同美術館にて公開(または保存)されるのだそうです。ちなみにこの美術館では、2000年を最後に新たな作品の購入が行われていません。苦肉の策ではありますが、如何なる形であれ、コレクションをリフレッシュする試みは見る側にとっても嬉しいところです。常設展の充実度は美術館全体の質を表すとも言えるので、今回の制度を利用した取り組みにはこれからも注目していきたいと思いました。
モネとドラクロワの2点は、常設展開催期間中の来年1月28日まで展示されます。
*関連エントリ
「2006年常設展第1期」 埼玉県立近代美術館 5/7
「ホルスト・ヤンセン展」 埼玉県立近代美術館 5/7
「美術館物語 - モネ17歳の作品がやってきた(常設展示)」
2006/4/24~2007/1/28
埼玉県立近代美術館の常設展示では今、モネ17歳の時の作品「ルエルの眺め」と、ドラクロワ晩年の「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」の2点が、寄託展示という形をとって公開されています。ちなみに「ルエルの眺め」は、モネ総目録の冒頭に登場するという記念すべき作品です。先日、ホルスト・ヤンセンの企画展へ行った際に見てきました。
今開催中の常設展(常設展H18年度第1期。7/17まで。)自体は4つのセクションに分かれていますが、このモネとドラクロワの2点は、入口すぐ脇の小部屋にて展示されています。まずはモネが17歳の時に描いた「ルエルの眺め」(1858)です。画家ブーダンによって才能を見出された当初の作品とのことですが、明るい画面やぽっかりと浮かぶ空の雲などには、確かにブーダンの影響を思わせる部分が感じられます。またこの高い写実性。光いっぱいの空の下に広がった小川のせせらぎ(水面に映り込んだ空と木の美しいこと!)と木々の煌めき、そして細かな草花。解説には「水辺に映る木や空などに後のモネの展開が予兆させる。」ともありましたが、私はむしろこの明るい画風に、モネの良い意味での瑞々しさと若さを見出したいと思います。後期のモネと関連させなくても、一目見て惚れるような美しい作品です。
もう一点の「聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち」(1860)は、ドラクロワ62歳の時、つまり死の3年前に描かれた作品でした。私はドラクロワが非常に苦手でなかなか好きになれないのですが、処刑後のステパノの亡骸を運ぶという奇異な主題に則った弟子たちの動きある表現には、劇的なシーンをまとめあげるドラクロワの高い構成力を感じます。特にステパノに寄り添う女性と、右下で跪く女性。彼女らの存在は、ステパノの無惨な頭部とともにこの場面の哀しみを強く伝えます。印象深い作品でした。
ところで今回の寄託展示とは、作品の所有者である丸沼芸術の森と埼玉県立近代美術館の間に結ばれた「登録美術品公開契約」によるもので、この2点は、今後5年ほど同美術館にて公開(または保存)されるのだそうです。ちなみにこの美術館では、2000年を最後に新たな作品の購入が行われていません。苦肉の策ではありますが、如何なる形であれ、コレクションをリフレッシュする試みは見る側にとっても嬉しいところです。常設展の充実度は美術館全体の質を表すとも言えるので、今回の制度を利用した取り組みにはこれからも注目していきたいと思いました。
モネとドラクロワの2点は、常設展開催期間中の来年1月28日まで展示されます。
*関連エントリ
「2006年常設展第1期」 埼玉県立近代美術館 5/7
「ホルスト・ヤンセン展」 埼玉県立近代美術館 5/7
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「近代陶磁器にみる東と西」 泉屋博古館分館 5/3
泉屋博古館分館(港区六本木1-5-1)
「近代陶磁器にみる東と西」
4/1-5/21
何度か前を通ったことがありますが、実際に中へ入ったのは初めてです。これも「ぐるっとパス」ならではの楽しみ方でしょうか。泉屋博古館分館にて開催中の「近代陶磁器にみる東と西」展を見てきました。
私自身あまり磁器に関心がなく、こうした陶磁器だけを集めた展覧会へ足を運ぶのは稀ですが、(あとは、書や仏教美術の展覧会にも足が向きません。)素直に見て美しいと思える作品にいくつも出会うことが出来ました。程よいスペースにて、無駄に飾られることなくシンプルに見せた陶磁器の味わい。この美術館には、一点一点の磁器とゆっくり向き合える環境が整っています。これは見る側にとって嬉しいところです。
まずは「近代の茶道具」のセクションから、清水六兵衛(五代)の二つの茶碗を挙げたいと思います。「仁清写扇流模様茶碗」と「仁清鳳凰模様茶碗」(ともに大正時代)。前者は、淡い緑によって描かれた流水に赤い扇子が流されている、いわゆる扇子流しの構図をとった作品ですが、ややくねっと曲がった器の素朴な表情もまた魅力的です。(画像は白黒です…。)そしてその素朴な味わいは後者も同じ。こちらも自然体な曲線が茶碗を象り、そこに青と赤の龍が潜んでいます。清水六兵衛は他にも、10個揃いの「草花絵替わり蓋物向付」(大正時代)などが展示されていましたが、こちらも白梅、紅梅、ゆりなどが、丸みを帯びた器に健気に配されていて美しい作品でした。これもおすすめです。
「中国美術の学習」と題されたコーナーでは、宮川香山(初代)の大きな花瓶が目につきました。中でも釉薬を効果的に使用した二点の作品、「紅海鼠釉花瓶」と「倣洋紅意花瓶」(ともに明治時代)はかなり目立っています。ともに、光沢感のある赤い胴体が印象的ですが、前者が上から葉が垂れる一本の木とすれば、後者は下からふつふつと湧き上がる赤い液体とでも言えるでしょうか。宮川香山では他に、龍の絵付けが見事な「暁雲釉流画花瓶」(明治、大正時代)や、桃の木が実とともに艶やかに描かれた「青花紅彩桃樹文双耳花瓶」(明治、大正時代」)なども魅力的ですが、この釉薬による抽象模様の二点が特に印象に残りました。
最後は、この美術館が誇る板谷波山のコレクションから、「葆光彩磁葡萄唐草文花瓶」(大正4年)を挙げます。まるでミルクをかけたような白い花瓶に、精巧に描かれた葡萄の模様。思わず手で確かめたくなるような質感の温もりと、絵付けの美しさが見事に融合した作品です。また同じく波山の「葆光彩磁珍果文花瓶」(大正6年)も、その洗練されたフォルムに高い完成度を感じさせる名品ですが、私ならこの葡萄をとりたいと思います。
様々な意匠を凝らした陶器の数々。展示作品もそれほど多くはありませんが、肩の力を抜いて楽しめます。今月21日までの開催です。(ぐるっとパスを使いました。)
「近代陶磁器にみる東と西」
4/1-5/21
何度か前を通ったことがありますが、実際に中へ入ったのは初めてです。これも「ぐるっとパス」ならではの楽しみ方でしょうか。泉屋博古館分館にて開催中の「近代陶磁器にみる東と西」展を見てきました。
私自身あまり磁器に関心がなく、こうした陶磁器だけを集めた展覧会へ足を運ぶのは稀ですが、(あとは、書や仏教美術の展覧会にも足が向きません。)素直に見て美しいと思える作品にいくつも出会うことが出来ました。程よいスペースにて、無駄に飾られることなくシンプルに見せた陶磁器の味わい。この美術館には、一点一点の磁器とゆっくり向き合える環境が整っています。これは見る側にとって嬉しいところです。
まずは「近代の茶道具」のセクションから、清水六兵衛(五代)の二つの茶碗を挙げたいと思います。「仁清写扇流模様茶碗」と「仁清鳳凰模様茶碗」(ともに大正時代)。前者は、淡い緑によって描かれた流水に赤い扇子が流されている、いわゆる扇子流しの構図をとった作品ですが、ややくねっと曲がった器の素朴な表情もまた魅力的です。(画像は白黒です…。)そしてその素朴な味わいは後者も同じ。こちらも自然体な曲線が茶碗を象り、そこに青と赤の龍が潜んでいます。清水六兵衛は他にも、10個揃いの「草花絵替わり蓋物向付」(大正時代)などが展示されていましたが、こちらも白梅、紅梅、ゆりなどが、丸みを帯びた器に健気に配されていて美しい作品でした。これもおすすめです。
「中国美術の学習」と題されたコーナーでは、宮川香山(初代)の大きな花瓶が目につきました。中でも釉薬を効果的に使用した二点の作品、「紅海鼠釉花瓶」と「倣洋紅意花瓶」(ともに明治時代)はかなり目立っています。ともに、光沢感のある赤い胴体が印象的ですが、前者が上から葉が垂れる一本の木とすれば、後者は下からふつふつと湧き上がる赤い液体とでも言えるでしょうか。宮川香山では他に、龍の絵付けが見事な「暁雲釉流画花瓶」(明治、大正時代)や、桃の木が実とともに艶やかに描かれた「青花紅彩桃樹文双耳花瓶」(明治、大正時代」)なども魅力的ですが、この釉薬による抽象模様の二点が特に印象に残りました。
最後は、この美術館が誇る板谷波山のコレクションから、「葆光彩磁葡萄唐草文花瓶」(大正4年)を挙げます。まるでミルクをかけたような白い花瓶に、精巧に描かれた葡萄の模様。思わず手で確かめたくなるような質感の温もりと、絵付けの美しさが見事に融合した作品です。また同じく波山の「葆光彩磁珍果文花瓶」(大正6年)も、その洗練されたフォルムに高い完成度を感じさせる名品ですが、私ならこの葡萄をとりたいと思います。
様々な意匠を凝らした陶器の数々。展示作品もそれほど多くはありませんが、肩の力を抜いて楽しめます。今月21日までの開催です。(ぐるっとパスを使いました。)
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「出光美術館名品展1」 出光美術館 5/5
出光美術館(千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9F)
「開館40周年記念 出光美術館名品展1 受け継がれる伝統の美 -絵巻・室町屏風と中国陶磁- 」
4/29-6/18
「熱狂の日」のコンサートの合間に見てきました。(国際フォーラムと出光美術館は目と鼻の先です。)美術館の開館40周年記念に相応しいような、名品揃いの贅沢な展覧会です。
展示されている作品は、仏画、絵巻物、朝鮮・中国陶磁、書、茶道具、室町・中国絵画、そして工芸など、非常に多岐にわたっています。これだけ幅広いジャンルでお宝を展示されれば、必ずこれと言った作品は見つかるもの。会期中に一度展示替えがあり、約半数ほどの作品が入れ替わるとのことですが、満足感の高い内容に仕上がっていました。
まず始めは、この展覧会で最も見応えのあった「伴大納言絵巻」(平安時代)です。誰もが一度は教科書の図版などで見たことがあるのではないかと思うほど有名な作品ですが、現物を目にしてもその迫力、特に中央部分の炎上場面のおどろおどろしい表現には目を奪われます。866年の「応天門の変」の場面が千年以上の時を超えて伝わってくる。さすがに古い作品なので状態は良くありませんが、この生々しさ、臨場感には言葉を失いました。まるで龍が大暴れしているように激しく舞い上がる炎と、全てを覆い尽くそうとする神々しい黒煙。逃げ惑い、また慌てふためく者、そして野次馬。高みの見物をして笑う者までいる。無数に登場する(全部で400名ほどだそうです。)人物に、同じ表情をしている者はいません。今回の展示では、長大な絵巻物(全長26メートル)のごく一部だけしか公開されていませんが、この一点だけでも見に来た甲斐があったとさえ思いました。この卓越した表現力。とても千年以上前の作品とは思えません。必見です。(「伴大納言絵巻」は前期期間のみの展示です。5/23まで。ちなみに10/7-11/5の間は全巻公開も予定されています。)
「伴大納言絵巻」以外ではまず、朝鮮の陶磁から「青磁象嵌柳唐子文浄瓶」(高麗時代)を挙げたいと思います。スリムな体つきに、高く伸びた口。瓶そのものの形も美しいのですが、特に模様に注目です。青磁にうっすらと配された竹や柳。その合間には、何と小さなアヒル(?)や鶴が描かれています。白い線にてシンプルに象られながらも、その表情は大変に可愛らしい。思わず見落としてしまうほど目立っていませんが、この味わいには惹かれました。
中国陶磁では、「饕餮文か」(殷時代)という、とてつもなく古い一対の酒瓶が印象に残りました。素材はブロンズでしょうか。鹿をモチーフにしたのか、それに似た三脚の足と取っ手がついています。また開口部には二つの角のようなものが見えました。無骨な表情です。またもう一点、「金襴手孔雀文仙盞瓶」(明時代)も心に残ります。こちらはかなり時代の下った作品ですが、赤を基調とした精巧な図柄と、まるで逆さハートマークのような模様の組み合わせが興味深いところです。そして艶やかな孔雀の模様も目を引く。またそこには鮮やかな金が施されていました。
書は殆ど見たことなく、その味わい方もあまり良く分からないのですが、「古筆手鑑 見努世友」(奈良~室町時代)には惹かれます。聖武天皇や後鳥羽天皇だと伝えられる直筆の書。それが時代を追ってまとめられている。特に花園天皇による遊び心満載な、とても流麗な書には大変な美感がありました。書が絵画のように雄弁に語り出す。形として見ても極めて美しい作品です。
今月27日から始まる後期展示にも興味が湧いてきました。こちらも是非行きたいと思います。
前期展示 4/29-5/23
後期展示 5/27-6/18
*5/24-26は展示替えのため休館です。ご注意下さい。
*関連エントリ
「出光美術館名品展2」 出光美術館
「開館40周年記念 出光美術館名品展1 受け継がれる伝統の美 -絵巻・室町屏風と中国陶磁- 」
4/29-6/18
「熱狂の日」のコンサートの合間に見てきました。(国際フォーラムと出光美術館は目と鼻の先です。)美術館の開館40周年記念に相応しいような、名品揃いの贅沢な展覧会です。
展示されている作品は、仏画、絵巻物、朝鮮・中国陶磁、書、茶道具、室町・中国絵画、そして工芸など、非常に多岐にわたっています。これだけ幅広いジャンルでお宝を展示されれば、必ずこれと言った作品は見つかるもの。会期中に一度展示替えがあり、約半数ほどの作品が入れ替わるとのことですが、満足感の高い内容に仕上がっていました。
まず始めは、この展覧会で最も見応えのあった「伴大納言絵巻」(平安時代)です。誰もが一度は教科書の図版などで見たことがあるのではないかと思うほど有名な作品ですが、現物を目にしてもその迫力、特に中央部分の炎上場面のおどろおどろしい表現には目を奪われます。866年の「応天門の変」の場面が千年以上の時を超えて伝わってくる。さすがに古い作品なので状態は良くありませんが、この生々しさ、臨場感には言葉を失いました。まるで龍が大暴れしているように激しく舞い上がる炎と、全てを覆い尽くそうとする神々しい黒煙。逃げ惑い、また慌てふためく者、そして野次馬。高みの見物をして笑う者までいる。無数に登場する(全部で400名ほどだそうです。)人物に、同じ表情をしている者はいません。今回の展示では、長大な絵巻物(全長26メートル)のごく一部だけしか公開されていませんが、この一点だけでも見に来た甲斐があったとさえ思いました。この卓越した表現力。とても千年以上前の作品とは思えません。必見です。(「伴大納言絵巻」は前期期間のみの展示です。5/23まで。ちなみに10/7-11/5の間は全巻公開も予定されています。)
「伴大納言絵巻」以外ではまず、朝鮮の陶磁から「青磁象嵌柳唐子文浄瓶」(高麗時代)を挙げたいと思います。スリムな体つきに、高く伸びた口。瓶そのものの形も美しいのですが、特に模様に注目です。青磁にうっすらと配された竹や柳。その合間には、何と小さなアヒル(?)や鶴が描かれています。白い線にてシンプルに象られながらも、その表情は大変に可愛らしい。思わず見落としてしまうほど目立っていませんが、この味わいには惹かれました。
中国陶磁では、「饕餮文か」(殷時代)という、とてつもなく古い一対の酒瓶が印象に残りました。素材はブロンズでしょうか。鹿をモチーフにしたのか、それに似た三脚の足と取っ手がついています。また開口部には二つの角のようなものが見えました。無骨な表情です。またもう一点、「金襴手孔雀文仙盞瓶」(明時代)も心に残ります。こちらはかなり時代の下った作品ですが、赤を基調とした精巧な図柄と、まるで逆さハートマークのような模様の組み合わせが興味深いところです。そして艶やかな孔雀の模様も目を引く。またそこには鮮やかな金が施されていました。
書は殆ど見たことなく、その味わい方もあまり良く分からないのですが、「古筆手鑑 見努世友」(奈良~室町時代)には惹かれます。聖武天皇や後鳥羽天皇だと伝えられる直筆の書。それが時代を追ってまとめられている。特に花園天皇による遊び心満載な、とても流麗な書には大変な美感がありました。書が絵画のように雄弁に語り出す。形として見ても極めて美しい作品です。
今月27日から始まる後期展示にも興味が湧いてきました。こちらも是非行きたいと思います。
前期展示 4/29-5/23
後期展示 5/27-6/18
*5/24-26は展示替えのため休館です。ご注意下さい。
*関連エントリ
「出光美術館名品展2」 出光美術館
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「銀座あおぞらDEアート」へ行ってきました!
先週日曜日は雨で順延してしまった「銀座あおぞらDEアート」ですが、今日は小雨でも決行するとのことで立ち寄ってみました。ちなみにこの「あおぞらDEアート」とは、銀座の15の画廊が集まり作品の展示販売、もしくは各種イベントを行うという一日限りの催しです。昨年も開催されていたそうですが、今年初めて行ってきました。
場所は銀座5丁目にある泰明小学校の校庭です。まさに都会のど真ん中でしょうか。ビルの谷間の小さな学校でしたが、蔦のからんだ校舎などはなかなか趣があって、外から見てもかなり目を引きます。晴海通りの阪急百貨店(数寄屋橋)横の路地を奥へ入る。銀座のメインの繁華街からは少ししか外れていません。もちろん交通の便も良い。私が着いた時は既に15時を廻っていましたが、会場はなかなか賑わっていました。カラフルなテント小屋や、風に靡く旗がイベントの雰囲気を盛り上げます。
各画廊のブースでは、それぞれの出品作家の作品が販売されていました。価格帯もなかなか手頃です。またとてもオープンな空間(校庭!)での展示なので、気軽に作品へ見入ることが出来ます。そして各ブースには、有難いことにそれぞれの出品作家もいらっしゃいました。全く畏まった部分のない、実にカジュアルな、まるでフリーマーケットのような雰囲気。この辺は、何かと敷居が高いと思われがちな画廊のイメージを覆すことに完全に成功しています。こんなに手軽なアートのイベントもそうありません。
展示作品の多くはいわゆる平面作品です。若い方から年配の作家まで、思っていた以上にバリエーション豊かでした。また立体作品もいくつか並んでいます。こちらは多くの平面の中にあるだけに目立っていました。思わず欲しくなってしまう作品もあります。
さすがに一日限りのイベントなので、規模はそれほどでもありません。またあえて難を申せば、外から見た時に学校の建物ばかりが目立って「あおぞらDEアート」の存在感(ポスターがあまり目立ちません。エントランスも少し寂しい…。)が希薄なこと、そして会場の核となる華がないので、知らない方には一体何の催しなのか分かりにくいことが気になりました。私には立地が悪いと思えません。外から中へ人を誘い込む装置があれば、より一層楽しめるイベントになったのではないかと思います。また、これは難しいことかもしれませんが、画廊の垣根を取っ払った形で、テーマ性の高い展示、(これが一番欲しい!)もしくは企画があれば面白いと思いました。少し会場が雑然としていたもしれません。
何やら最後は文句ばかりになってしまいましたが、是非来年もまた発展する形にて開催していただきたいと思いました。今年のアットホームな味わい(無料のドリンクコーナーまでありました!)を残しながら、さらにこのイベントに核が加われば、もっと認知度が高まるのではないでしょうか。一日限りでは勿体ない。そんなイベントになれば大成功です。影ながら応援させていただきます!
場所は銀座5丁目にある泰明小学校の校庭です。まさに都会のど真ん中でしょうか。ビルの谷間の小さな学校でしたが、蔦のからんだ校舎などはなかなか趣があって、外から見てもかなり目を引きます。晴海通りの阪急百貨店(数寄屋橋)横の路地を奥へ入る。銀座のメインの繁華街からは少ししか外れていません。もちろん交通の便も良い。私が着いた時は既に15時を廻っていましたが、会場はなかなか賑わっていました。カラフルなテント小屋や、風に靡く旗がイベントの雰囲気を盛り上げます。
各画廊のブースでは、それぞれの出品作家の作品が販売されていました。価格帯もなかなか手頃です。またとてもオープンな空間(校庭!)での展示なので、気軽に作品へ見入ることが出来ます。そして各ブースには、有難いことにそれぞれの出品作家もいらっしゃいました。全く畏まった部分のない、実にカジュアルな、まるでフリーマーケットのような雰囲気。この辺は、何かと敷居が高いと思われがちな画廊のイメージを覆すことに完全に成功しています。こんなに手軽なアートのイベントもそうありません。
展示作品の多くはいわゆる平面作品です。若い方から年配の作家まで、思っていた以上にバリエーション豊かでした。また立体作品もいくつか並んでいます。こちらは多くの平面の中にあるだけに目立っていました。思わず欲しくなってしまう作品もあります。
さすがに一日限りのイベントなので、規模はそれほどでもありません。またあえて難を申せば、外から見た時に学校の建物ばかりが目立って「あおぞらDEアート」の存在感(ポスターがあまり目立ちません。エントランスも少し寂しい…。)が希薄なこと、そして会場の核となる華がないので、知らない方には一体何の催しなのか分かりにくいことが気になりました。私には立地が悪いと思えません。外から中へ人を誘い込む装置があれば、より一層楽しめるイベントになったのではないかと思います。また、これは難しいことかもしれませんが、画廊の垣根を取っ払った形で、テーマ性の高い展示、(これが一番欲しい!)もしくは企画があれば面白いと思いました。少し会場が雑然としていたもしれません。
何やら最後は文句ばかりになってしまいましたが、是非来年もまた発展する形にて開催していただきたいと思いました。今年のアットホームな味わい(無料のドリンクコーナーまでありました!)を残しながら、さらにこのイベントに核が加われば、もっと認知度が高まるのではないでしょうか。一日限りでは勿体ない。そんなイベントになれば大成功です。影ながら応援させていただきます!
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「播磨ゆかりの江戸絵画」 大倉集古館 5/3
大倉集古館(港区虎ノ門2-10-3 ホテルオークラ東京本館正面玄関前)
「播磨ゆかりの江戸絵画 -応挙・蘆雪・若冲を中心として- 」
4/1-5/28
若冲の名前に惹かれて行ってきました。大倉集古館で開催中の「播磨ゆかりの江戸絵画」展です。
展示作品の殆どは江戸時代の日本絵画です。その数は約60点ほどでしょうか。長澤蘆雪(7点)、森徹山(5点)、伊藤若冲(3点)、酒井抱一(2点)、円山応挙(2点)などの名前が並びます。ボリュームこそそれほどではありませんが、なかなか豪華なメンバーです。
まず目についたのは、円山応挙の二点から「梅に鶯図」でした。口を少し開けた可愛らしい鶯が、ちょこんととまっている様子。柔らかい毛並みと、ピリッと伸びた長い尾っぽ。その対比が実に見事です。もう一点の「雲龍図」の劇画的な激しい龍も魅力的ですが、私ならこの鶯をとりたいと思います。
伊藤若冲の二点は、まさに若冲ならではの遊び心に長けた作品でした。丸まった二羽の鶏がうずくまる「双鶏図」。墨の濃淡にて巧みに画面を作っていますが、二羽の表情が実に生き生きとしています。左の鶏が尾を長く伸ばして威嚇するかのように睨んでいるとすれば、手前の鶏はそれにやや怖じ気づきながらも応えている様子でしょうか。何やらその会話も聞こえてきそうな作品です。また、もう一点の「鶴図」は、まるで一筆書き(所要時間、数十秒?)にて出来上がってしまったような作品でした。それにしてもこの鶴の頭はどこにあるのでしょう。背中を大きく曲げている鶴は他の作品にも見られますが、もはや描くのが面倒くさくなってしまったかと言うほどに簡略化されています。このいい加減さもまた若冲ならではの味わいなのでしょうか。もはや滑稽です。
長澤蘆雪にとんでもない作品がありました。タイトルは「千羽鶴図」。まさにこれでもかと言うほどに鶴がたくさん描かれています。右上にいる6羽はまだ序の口でしょう。そして、中央に描かれた、川辺にてくつろぐ10羽以上の鶴の群れ。これもまだ大したことはありません。ともかく凄まじいのは、画面左奥方向に並ぶ鶴の大軍です。まるで満員電車のように鶴がぎゅうぎゅうに押し込まれている。あまりにも鶴が団子状になって重なり合っているので、見ていて気持ち悪くなるほどでした。ここに一体何羽いるのか。もはや数えることすら出来ません。と言うよりも、むしろこれは描き過ぎでしょう。
森徹山の「雨中狸図」はおすすめの作品です。フサフサとした毛の長い狸が、歯を見せながら一匹佇んでいます。目がくりくりとしていてなんとも愛くるしいのですが、体つきの巧みな立体感が見事でした。また画面の上から差し込む白いラインは雨の描写なのでしょうか。私には光の帯のようにも見えました。気持ち良さそうに日光浴をしている狸。そんなイメージも湧いてきます。ちょこんとのった小さな耳も可愛気でした。
閉館時間が迫っていたので駆け足での鑑賞だったのですが、なかなか楽しめました。今月28日までの開催です。(ぐるっとパスを使いました。)
「播磨ゆかりの江戸絵画 -応挙・蘆雪・若冲を中心として- 」
4/1-5/28
若冲の名前に惹かれて行ってきました。大倉集古館で開催中の「播磨ゆかりの江戸絵画」展です。
展示作品の殆どは江戸時代の日本絵画です。その数は約60点ほどでしょうか。長澤蘆雪(7点)、森徹山(5点)、伊藤若冲(3点)、酒井抱一(2点)、円山応挙(2点)などの名前が並びます。ボリュームこそそれほどではありませんが、なかなか豪華なメンバーです。
まず目についたのは、円山応挙の二点から「梅に鶯図」でした。口を少し開けた可愛らしい鶯が、ちょこんととまっている様子。柔らかい毛並みと、ピリッと伸びた長い尾っぽ。その対比が実に見事です。もう一点の「雲龍図」の劇画的な激しい龍も魅力的ですが、私ならこの鶯をとりたいと思います。
伊藤若冲の二点は、まさに若冲ならではの遊び心に長けた作品でした。丸まった二羽の鶏がうずくまる「双鶏図」。墨の濃淡にて巧みに画面を作っていますが、二羽の表情が実に生き生きとしています。左の鶏が尾を長く伸ばして威嚇するかのように睨んでいるとすれば、手前の鶏はそれにやや怖じ気づきながらも応えている様子でしょうか。何やらその会話も聞こえてきそうな作品です。また、もう一点の「鶴図」は、まるで一筆書き(所要時間、数十秒?)にて出来上がってしまったような作品でした。それにしてもこの鶴の頭はどこにあるのでしょう。背中を大きく曲げている鶴は他の作品にも見られますが、もはや描くのが面倒くさくなってしまったかと言うほどに簡略化されています。このいい加減さもまた若冲ならではの味わいなのでしょうか。もはや滑稽です。
長澤蘆雪にとんでもない作品がありました。タイトルは「千羽鶴図」。まさにこれでもかと言うほどに鶴がたくさん描かれています。右上にいる6羽はまだ序の口でしょう。そして、中央に描かれた、川辺にてくつろぐ10羽以上の鶴の群れ。これもまだ大したことはありません。ともかく凄まじいのは、画面左奥方向に並ぶ鶴の大軍です。まるで満員電車のように鶴がぎゅうぎゅうに押し込まれている。あまりにも鶴が団子状になって重なり合っているので、見ていて気持ち悪くなるほどでした。ここに一体何羽いるのか。もはや数えることすら出来ません。と言うよりも、むしろこれは描き過ぎでしょう。
森徹山の「雨中狸図」はおすすめの作品です。フサフサとした毛の長い狸が、歯を見せながら一匹佇んでいます。目がくりくりとしていてなんとも愛くるしいのですが、体つきの巧みな立体感が見事でした。また画面の上から差し込む白いラインは雨の描写なのでしょうか。私には光の帯のようにも見えました。気持ち良さそうに日光浴をしている狸。そんなイメージも湧いてきます。ちょこんとのった小さな耳も可愛気でした。
閉館時間が迫っていたので駆け足での鑑賞だったのですが、なかなか楽しめました。今月28日までの開催です。(ぐるっとパスを使いました。)
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雨の中の野球観戦。広島とロッテの交流戦を見てきました。
今年初めての野球観戦です。いつものマリンスタジアムで「ロッテ対広島」の交流試合を見てきました。パ・リーグでは千葉県民らしく(?)いつもロッテを応援していますが、カープとなれば話は全く別です。もちろん三塁側に座って声援を送りました。
去年の交流戦を見た時も雨だったのですが、今年もまた雨にたたられてしまいました。雨合羽を頭からかぶっての観戦。時折雨が強くなりましたが、試合は何とか最後まで続きます。結果は延長10回、カープのサヨナラ負けです。抑えのベイル投手がまさかの負傷にて降板し、急遽投げた林投手が打ち込まれました。最後はロッテのイチロー(?)こと福浦選手の鮮やかなサヨナラヒット。惜しい結果です。
ともかく今日は投手陣の頑張りが目立っていました。後の祭りと言ってしまえばそれまでですが、打線さえ繋がれば殆ど勝っていた試合です。先発の大竹投手が、5回まで3安打、4奪三振、無失点のベストピッチングにて試合をつくる。彼はブラウン監督の継投策により僅か59球にて降板してしまいますが、文句なしに今年一番の内容だったと言えるでしょう。(防御率6点以上とは思えません…。)力のあるストレートに、ボール先行ではあるものの要所を占めた変化球。今年はあまり元気がないとは言え、王者ロッテ打線を見事に抑えていきます。また大竹投手から交代した高橋健投手も、ソロホームランを打たれてしまったバスクチ選手への不用意な一球を除けば、なかなか見事な抑えぶりです。そしてその後の永川投手もやや荒れ球気味でしたが、力でロッテ打線をねじ伏せる。最後の林投手はもう仕方がありません。ベイル投手のアクシデントでこの試合の流れは決まりました。
また守備も、あまり守りには良いイメージがない東出選手の見事なプレーをはじめ、要所要所でロッテの攻撃を止めるようなキビキビしたプレーが印象に残りました。そして打撃では、栗原選手と森笠選手、さらには井生選手などの打順下位組の見事な打ちっぷりが目立ちます。期待の梵選手をはじめ、これまであまり光の当たらなかった選手の活躍が印象的でした。中継ぎ陣の踏ん張りをはじめ、裾野の広がった感のある下位打撃陣。この辺は去年のカープとはひと味違うかもしれません。
残念だったのは主軸の、特に嶋選手と新井選手です。ともかく今日の試合に関してはこの二人が大ブレーキ。ことごとくチャンスを潰してしまいます。やはり打つべき方が打たないと試合には勝てないのでしょう。ランナーをためた好機での凡退というシーンが何度も繰り返されました。今年はどうも打線の流れが悪いように思うのですが、それを象徴するような試合だったかもしれません。これは修正していただきたいです。(ラロッカ選手が抜けた穴はあまりにも大きい…。)
ブラウン新監督の采配については、大竹投手の交代などにその特徴が見られるかと思いますが、今日は成功こそしなかったものの、足を絡めた仕掛ける攻撃が印象に残りました。また、一回からバントをさせるなど、なかなか緻密に野球を進めます。今年のカープは非常に盗塁数が少ないので、今後もこの試合のように足を積極的に使って欲しいと思いました。
ロッテ戦にカープ戦。それぞれあと一試合くらいは見に行きたいと思います。寒い雨が降る中での観戦となりましたが、去年とは少し違うカープの姿。甘いかもしれませんが今年は期待したいです。
去年の交流戦を見た時も雨だったのですが、今年もまた雨にたたられてしまいました。雨合羽を頭からかぶっての観戦。時折雨が強くなりましたが、試合は何とか最後まで続きます。結果は延長10回、カープのサヨナラ負けです。抑えのベイル投手がまさかの負傷にて降板し、急遽投げた林投手が打ち込まれました。最後はロッテのイチロー(?)こと福浦選手の鮮やかなサヨナラヒット。惜しい結果です。
ともかく今日は投手陣の頑張りが目立っていました。後の祭りと言ってしまえばそれまでですが、打線さえ繋がれば殆ど勝っていた試合です。先発の大竹投手が、5回まで3安打、4奪三振、無失点のベストピッチングにて試合をつくる。彼はブラウン監督の継投策により僅か59球にて降板してしまいますが、文句なしに今年一番の内容だったと言えるでしょう。(防御率6点以上とは思えません…。)力のあるストレートに、ボール先行ではあるものの要所を占めた変化球。今年はあまり元気がないとは言え、王者ロッテ打線を見事に抑えていきます。また大竹投手から交代した高橋健投手も、ソロホームランを打たれてしまったバスクチ選手への不用意な一球を除けば、なかなか見事な抑えぶりです。そしてその後の永川投手もやや荒れ球気味でしたが、力でロッテ打線をねじ伏せる。最後の林投手はもう仕方がありません。ベイル投手のアクシデントでこの試合の流れは決まりました。
また守備も、あまり守りには良いイメージがない東出選手の見事なプレーをはじめ、要所要所でロッテの攻撃を止めるようなキビキビしたプレーが印象に残りました。そして打撃では、栗原選手と森笠選手、さらには井生選手などの打順下位組の見事な打ちっぷりが目立ちます。期待の梵選手をはじめ、これまであまり光の当たらなかった選手の活躍が印象的でした。中継ぎ陣の踏ん張りをはじめ、裾野の広がった感のある下位打撃陣。この辺は去年のカープとはひと味違うかもしれません。
残念だったのは主軸の、特に嶋選手と新井選手です。ともかく今日の試合に関してはこの二人が大ブレーキ。ことごとくチャンスを潰してしまいます。やはり打つべき方が打たないと試合には勝てないのでしょう。ランナーをためた好機での凡退というシーンが何度も繰り返されました。今年はどうも打線の流れが悪いように思うのですが、それを象徴するような試合だったかもしれません。これは修正していただきたいです。(ラロッカ選手が抜けた穴はあまりにも大きい…。)
ブラウン新監督の采配については、大竹投手の交代などにその特徴が見られるかと思いますが、今日は成功こそしなかったものの、足を絡めた仕掛ける攻撃が印象に残りました。また、一回からバントをさせるなど、なかなか緻密に野球を進めます。今年のカープは非常に盗塁数が少ないので、今後もこの試合のように足を積極的に使って欲しいと思いました。
ロッテ戦にカープ戦。それぞれあと一試合くらいは見に行きたいと思います。寒い雨が降る中での観戦となりましたが、去年とは少し違うカープの姿。甘いかもしれませんが今年は期待したいです。
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「素顔の伊東深水展」 目黒区美術館 5/3
目黒区美術館(目黒区目黒1-4-36)
「素顔の伊東深水展 -Y氏コレクションから- 」
4/8-6/4
日本画家、伊東深水のスケッチと素描に焦点を当てた異色の展覧会です。深水ファン(?)には是非オススメしたい内容でした。
深水のいわゆる日本画も数点展示されていますが、展示作品の殆どは鉛筆による素描、もしくは小さな水彩画です。(総数約170点。)ちなみに「Y氏コレクション」のY氏とは、おそらくこの展覧会を協賛した宝古堂美術の山田春雄氏のことを指すのかと思いますが、このような匿名の形でコレクションを公開するというのはあまり他で聞きません。個人コレクションによる深水の貴重な素描を楽しめる。またとない、大変に有難い展覧会です。
伊東深水と言えばまさしく美人画の巨匠ですが、彼のそれは女性の艶、またはエロスを何気なく見せることに極めて長けています。所作の美とでも言うのでしょうか。その女性の最も美しい部分を、男性的な視点によって発露させること。ポーズ一つをとっても、深水の美人画はどことなく妖し気な美感を纏っています。気丈な顔を上に向けながらも、肩はだらっと落としてどことなく見る者を誘うような仕草。時に臀部を大きく強調して描いています。今にも崩れそ落ちそうな女性の甘美的なエロスと、ギリギリの部分で保たれる気品の高さ。もちろん全部の作品にそのようなエロスがあるわけではありませんが、このバランス感は独特です。そして今回の展覧会に出品されているスケッチにおいてもそれは同様でした。深水の美人画には構図段階にてエロスが存在している。オーバーな表現ではありますが、そう言いたくもなるようななよやかな女性ばかりです。
さて、美人画のスケッチ以外にも、興味深い作品がいくつか展示されていました。まずはあまり見慣れない風景画から「那智之瀧」です。鉛筆による下絵に丁寧に水彩が施されています。また花のスケッチ画として、「菊」や「花菖蒲」なども印象に残りました。こちらは大変に精緻なタッチです。さらに墨と水彩を織り交ぜた美しい作品も展示されていました。深水の創作の幅広さが見て取れます。
最後に触れておきたいのは、深水と戦争(第二次大戦)の関係を示す展示です。深水は1943年に4ヶ月間、旧日本軍に従軍し、「南方取材」ということでジャワ島へ出向いたそうですが、その際に描いた数多くのスケッチも展示されていました。「大東亜美術」や「戦争美術展集」などに出品された当地の風俗、文化を表す作品。さらには軍事郵便の絵葉書なども手がけたそうです。またいわゆる「銃後の妻」を描いた作品「針仕事」なども印象的でした。こちらも深水の意外な一面です。
スケッチが主ということで地味な印象は拭えませんが、展覧会そのものはなかなか良く出来ています。また深水以外にも、Y氏所有の日本画、または近代日本洋画なども展示されていました。来月4日までの開催です。(ぐるっとパスを使いました。)
「素顔の伊東深水展 -Y氏コレクションから- 」
4/8-6/4
日本画家、伊東深水のスケッチと素描に焦点を当てた異色の展覧会です。深水ファン(?)には是非オススメしたい内容でした。
深水のいわゆる日本画も数点展示されていますが、展示作品の殆どは鉛筆による素描、もしくは小さな水彩画です。(総数約170点。)ちなみに「Y氏コレクション」のY氏とは、おそらくこの展覧会を協賛した宝古堂美術の山田春雄氏のことを指すのかと思いますが、このような匿名の形でコレクションを公開するというのはあまり他で聞きません。個人コレクションによる深水の貴重な素描を楽しめる。またとない、大変に有難い展覧会です。
伊東深水と言えばまさしく美人画の巨匠ですが、彼のそれは女性の艶、またはエロスを何気なく見せることに極めて長けています。所作の美とでも言うのでしょうか。その女性の最も美しい部分を、男性的な視点によって発露させること。ポーズ一つをとっても、深水の美人画はどことなく妖し気な美感を纏っています。気丈な顔を上に向けながらも、肩はだらっと落としてどことなく見る者を誘うような仕草。時に臀部を大きく強調して描いています。今にも崩れそ落ちそうな女性の甘美的なエロスと、ギリギリの部分で保たれる気品の高さ。もちろん全部の作品にそのようなエロスがあるわけではありませんが、このバランス感は独特です。そして今回の展覧会に出品されているスケッチにおいてもそれは同様でした。深水の美人画には構図段階にてエロスが存在している。オーバーな表現ではありますが、そう言いたくもなるようななよやかな女性ばかりです。
さて、美人画のスケッチ以外にも、興味深い作品がいくつか展示されていました。まずはあまり見慣れない風景画から「那智之瀧」です。鉛筆による下絵に丁寧に水彩が施されています。また花のスケッチ画として、「菊」や「花菖蒲」なども印象に残りました。こちらは大変に精緻なタッチです。さらに墨と水彩を織り交ぜた美しい作品も展示されていました。深水の創作の幅広さが見て取れます。
最後に触れておきたいのは、深水と戦争(第二次大戦)の関係を示す展示です。深水は1943年に4ヶ月間、旧日本軍に従軍し、「南方取材」ということでジャワ島へ出向いたそうですが、その際に描いた数多くのスケッチも展示されていました。「大東亜美術」や「戦争美術展集」などに出品された当地の風俗、文化を表す作品。さらには軍事郵便の絵葉書なども手がけたそうです。またいわゆる「銃後の妻」を描いた作品「針仕事」なども印象的でした。こちらも深水の意外な一面です。
スケッチが主ということで地味な印象は拭えませんが、展覧会そのものはなかなか良く出来ています。また深水以外にも、Y氏所有の日本画、または近代日本洋画なども展示されていました。来月4日までの開催です。(ぐるっとパスを使いました。)
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スマートなゲルギエフ
NHK-FM ベストオブクラシック(5/11 19:30~)
曲 モーツァルト ピアノ協奏曲第20番K.466
ショスタコーヴィチ 交響曲第9番作品70
指揮 ワレリー・ゲルギエフ
演奏 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ マルクス・シルマー
収録:オーストリア・ウィーン学友協会 2006/4/23
久々にベストオブクラシックへ耳を傾けてみました。(時間の関係で2曲目のモーツァルトからです。)ゲルギエフとウィーンフィルという豪華なコンビによるモーツァルトのピアノ協奏曲と、ショスタコーヴィチの第9交響曲です。メモリアルイヤー同士の組み合わせでした。
ピアノ協奏曲は終始落ち着いた演奏です。ゲルギエフというと、どこか殺伐とした音作りをするイメージがあるのですが、その表情はここには見られません。中庸のテンポで、オーケストラを少しだけ煽り立てながらキビキビと音楽を進めていく。上昇音型での控えめなクレッシェンドは爽快です。それにヴァイオリンを所々浮き上がらせて、(第1楽章の終結部など。)音楽に厚みを持たせるのも印象的でした。また、第2楽章などの伸びやかなリズム感などは、ゲルギエフと言うよりも、ウィーンフィル自体の美感によるものかもしれません。特に木管楽器とピアノが絡み合う中間部での美しさは見事でした。あくまでも穏やかです。
マルクス・シルマーのピアノはまるでフォルテピアノのようでした。ピアノをあまり強く鳴らさずに、淡々と音楽を奏でていく。ただしカデンツァでの力の入れようだけは別です。彼の自作のカデンツァはあまり良いものに聴こえませんでしたが、その部分だけは何かが取り憑いたようにガンガン鳴らしていました。これには非常に違和感を感じます。
ショスタコーヴィチの第9交響曲は、その成立過程などからして何やらきな臭いものが感じられますが、純粋に音楽だけへ耳を傾ければ、これほど楽しめる曲もなかなかありません。気味が悪いほどに明るい第1楽章も、ゲルギエフはストレートに音を鳴らしていきます。続いての第2楽章ではやや腰を落として丁寧に表現していたでしょうか。ただ、そこに暗鬱な響きはありません。沈着でありながらも情緒的にならない、冷ややかな姿勢を感じます。また木管主導の旋律などは素直に牧歌的でした。随分とストレートに音楽を作ります。
第3楽章のスケルツォでは音楽が全く熱くなりません。もちろんリズミカルに音楽を進めていくのですが、途中出てくる印象的な金管のファンファーレもやや抑制的。この辺の処理は、殺伐としたゲルギエフのイメージにやや近いかもしれません。それに続く木管のソロもすこぶる沈着でした。
第5楽章はやや大人し過ぎたかもしれません。スピード感は抜群ですが、私としてはもっとハメを外して、この音楽の不気味な盛り上がりを聴かせて欲しかったと思います。どうもスマートにまとまってしまって、諧謔的な泥臭い部分が聴こえてきません。これは物足りない。辛口な感想になってしまいました…。
ゲルギエフはショスタコーヴィチの録音を積極的にリリースしています。それらはまさに新時代の名盤なのかもしれませんが、私にとってのショスタコーヴィチとは昔からコンドラシン。ずっと苦手だったショスタコーヴィチの音楽を、初めて楽しんで聴くことが出来た録音です。先日も全集が輸入盤にて発売されましたが、やはり何度聴いても飽きません。ゲルギエフの録音はどうなのでしょうか。また機会があれば聴いてみたいと思います。
曲 モーツァルト ピアノ協奏曲第20番K.466
ショスタコーヴィチ 交響曲第9番作品70
指揮 ワレリー・ゲルギエフ
演奏 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ マルクス・シルマー
収録:オーストリア・ウィーン学友協会 2006/4/23
久々にベストオブクラシックへ耳を傾けてみました。(時間の関係で2曲目のモーツァルトからです。)ゲルギエフとウィーンフィルという豪華なコンビによるモーツァルトのピアノ協奏曲と、ショスタコーヴィチの第9交響曲です。メモリアルイヤー同士の組み合わせでした。
ピアノ協奏曲は終始落ち着いた演奏です。ゲルギエフというと、どこか殺伐とした音作りをするイメージがあるのですが、その表情はここには見られません。中庸のテンポで、オーケストラを少しだけ煽り立てながらキビキビと音楽を進めていく。上昇音型での控えめなクレッシェンドは爽快です。それにヴァイオリンを所々浮き上がらせて、(第1楽章の終結部など。)音楽に厚みを持たせるのも印象的でした。また、第2楽章などの伸びやかなリズム感などは、ゲルギエフと言うよりも、ウィーンフィル自体の美感によるものかもしれません。特に木管楽器とピアノが絡み合う中間部での美しさは見事でした。あくまでも穏やかです。
マルクス・シルマーのピアノはまるでフォルテピアノのようでした。ピアノをあまり強く鳴らさずに、淡々と音楽を奏でていく。ただしカデンツァでの力の入れようだけは別です。彼の自作のカデンツァはあまり良いものに聴こえませんでしたが、その部分だけは何かが取り憑いたようにガンガン鳴らしていました。これには非常に違和感を感じます。
ショスタコーヴィチの第9交響曲は、その成立過程などからして何やらきな臭いものが感じられますが、純粋に音楽だけへ耳を傾ければ、これほど楽しめる曲もなかなかありません。気味が悪いほどに明るい第1楽章も、ゲルギエフはストレートに音を鳴らしていきます。続いての第2楽章ではやや腰を落として丁寧に表現していたでしょうか。ただ、そこに暗鬱な響きはありません。沈着でありながらも情緒的にならない、冷ややかな姿勢を感じます。また木管主導の旋律などは素直に牧歌的でした。随分とストレートに音楽を作ります。
第3楽章のスケルツォでは音楽が全く熱くなりません。もちろんリズミカルに音楽を進めていくのですが、途中出てくる印象的な金管のファンファーレもやや抑制的。この辺の処理は、殺伐としたゲルギエフのイメージにやや近いかもしれません。それに続く木管のソロもすこぶる沈着でした。
第5楽章はやや大人し過ぎたかもしれません。スピード感は抜群ですが、私としてはもっとハメを外して、この音楽の不気味な盛り上がりを聴かせて欲しかったと思います。どうもスマートにまとまってしまって、諧謔的な泥臭い部分が聴こえてきません。これは物足りない。辛口な感想になってしまいました…。
ゲルギエフはショスタコーヴィチの録音を積極的にリリースしています。それらはまさに新時代の名盤なのかもしれませんが、私にとってのショスタコーヴィチとは昔からコンドラシン。ずっと苦手だったショスタコーヴィチの音楽を、初めて楽しんで聴くことが出来た録音です。先日も全集が輸入盤にて発売されましたが、やはり何度聴いても飽きません。ゲルギエフの録音はどうなのでしょうか。また機会があれば聴いてみたいと思います。
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熱狂の日音楽祭2006 「モーツァルト:ヴェスペレ」他 5/6
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2006
モーツァルト 証聖者の荘厳な晩課(ヴェスペレ)K.339
聖母マリアのオッフェルトリウム「創り主の魂」K.277
レジナ・チェリK.276
指揮 ペーター・ノイマン
合唱 ケルン室内合唱団
演奏 コレギウム・カルトゥシアヌム
ソリスト
ソプラノ フョン・ミョンヒ
メゾ・ソプラノ アリソン・ブラウナー
テノール ヴィンチェンツォ・ディ・ドナート
バス ティロ・ダールマン
2006/5/6 19:15 東京国際フォーラムホールA(アマデウス)
普段あまり演奏されない音楽を聴くのも「熱狂の日」ならではの楽しみ方です。このコンサートは元々予定していなかったのですが、ノイマンがとても良いという評判を聞き、急遽当日券にて聴いてきました。コレギウム・カルトゥシアヌム、ケルン室内合唱団による、モーツァルト、ザルツブルク時代の宗教音楽です。
コルボのレクイエムが「動」とするなら、このノイマンの作り上げた音楽は「静」でしょう。あくまでも美しい、また静謐な調べ。若きモーツァルトの瑞々しい響きが、このとてつもなく広いホールを優しく包み込みます。残念ながらオーケストラについては、私の座席位置では細部が聴き取れなかったので何とも書きようがありませんが、(それでも一階席のなるべく前の方へ座ったのですが…。)合唱だけは思わずうっとりさせられるような美感があって、全身でその響きを受け止めることが出来ました。音楽を聴くというよりもどっぷりと浸っている。そんな時間の連続です。
この三曲の中では「ヴェスペレ」が特に充実していました。堂々としたディクシットから力強いコンフィテボールへ。ノイマンの指揮の元に、ケルン室内合唱団の歌声が一つにまとまって美しいハーモニーを築きます。そしてベアートゥス・ヴィールにおけるソプラノのミョンヒの歌声。強靭な発声にて、合唱のハーモニーを突き破るかのような存在感です。ここがホールAだということを忘れさせる。一際輝いて聴こえました。
合唱の妙味を一番楽しめたのは最後の「レジナ・チェリ」です。僅か7分ほどの短い音楽ですが、終始ハレルヤの合唱が高らかに歌い上げられます。上昇音階にのって、心地良く、また華々しく響くアレルヤ。この時ばかりはソフトなケルン室内合唱団の響きも力強くなります。思わず椅子から乗り出したくなるようなリズミカルな合唱でした。
ノイマンによるモーツァルトの宗教音楽は録音でも有名ですが、まさにそこで聴かせてくれるような清々しい調べを堪能することが出来ました。ホールに難があるとは言え、少なくとも合唱の魅力は十分に楽しめる公演だったと思います。これは行って正解でした。
モーツァルト 証聖者の荘厳な晩課(ヴェスペレ)K.339
聖母マリアのオッフェルトリウム「創り主の魂」K.277
レジナ・チェリK.276
指揮 ペーター・ノイマン
合唱 ケルン室内合唱団
演奏 コレギウム・カルトゥシアヌム
ソリスト
ソプラノ フョン・ミョンヒ
メゾ・ソプラノ アリソン・ブラウナー
テノール ヴィンチェンツォ・ディ・ドナート
バス ティロ・ダールマン
2006/5/6 19:15 東京国際フォーラムホールA(アマデウス)
普段あまり演奏されない音楽を聴くのも「熱狂の日」ならではの楽しみ方です。このコンサートは元々予定していなかったのですが、ノイマンがとても良いという評判を聞き、急遽当日券にて聴いてきました。コレギウム・カルトゥシアヌム、ケルン室内合唱団による、モーツァルト、ザルツブルク時代の宗教音楽です。
コルボのレクイエムが「動」とするなら、このノイマンの作り上げた音楽は「静」でしょう。あくまでも美しい、また静謐な調べ。若きモーツァルトの瑞々しい響きが、このとてつもなく広いホールを優しく包み込みます。残念ながらオーケストラについては、私の座席位置では細部が聴き取れなかったので何とも書きようがありませんが、(それでも一階席のなるべく前の方へ座ったのですが…。)合唱だけは思わずうっとりさせられるような美感があって、全身でその響きを受け止めることが出来ました。音楽を聴くというよりもどっぷりと浸っている。そんな時間の連続です。
この三曲の中では「ヴェスペレ」が特に充実していました。堂々としたディクシットから力強いコンフィテボールへ。ノイマンの指揮の元に、ケルン室内合唱団の歌声が一つにまとまって美しいハーモニーを築きます。そしてベアートゥス・ヴィールにおけるソプラノのミョンヒの歌声。強靭な発声にて、合唱のハーモニーを突き破るかのような存在感です。ここがホールAだということを忘れさせる。一際輝いて聴こえました。
合唱の妙味を一番楽しめたのは最後の「レジナ・チェリ」です。僅か7分ほどの短い音楽ですが、終始ハレルヤの合唱が高らかに歌い上げられます。上昇音階にのって、心地良く、また華々しく響くアレルヤ。この時ばかりはソフトなケルン室内合唱団の響きも力強くなります。思わず椅子から乗り出したくなるようなリズミカルな合唱でした。
ノイマンによるモーツァルトの宗教音楽は録音でも有名ですが、まさにそこで聴かせてくれるような清々しい調べを堪能することが出来ました。ホールに難があるとは言え、少なくとも合唱の魅力は十分に楽しめる公演だったと思います。これは行って正解でした。
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熱狂の日音楽祭2006 「モーツァルト:レクイエム」 5/5
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2006
モーツァルト レクイエムK.626
指揮 ミシェル・コルボ
合唱 ローザンヌ声楽アンサンブル
演奏 シンフォニア・ヴァルソヴィア
ソリスト
ソプラノ カティア・ヴェレタズ
アルト ヴァレリー・ボナール・ビュクス
テノール ヴァレーリオ・コンタルド
バス ステファン・インボーデン
2006/5/5 16:30 東京国際フォーラムホールC(サリエリ)
今回の「熱狂の日」でも特に注目されていた公演だったのではないでしょうか。コルボとローザンヌ声楽アンサンブル、それにシンフォニア・ヴァルソヴィアによるレクイエムです。もちろんジュスマイアー版での演奏でした。
ともかく慟哭のレクイエムです。入祭誦こそファゴットの序奏に導かれながら静かに歌われていきますが、アタッカで入るキリエから徐々にヒートアップし、これまたほぼアタッカにて入った怒りの日では、まさに激しく荒れ狂う大波のように音楽がうねり出します。ローザンヌ声楽アンサンブルの力強い合唱が、時にコルボの指示によって恣意的にピアニッシモ方向へ沈みながら、それでいて一気に前へと押し出すように大きなフォルテッシモを築く。特に怒りの日における男声と女声の対比は明確です。まるでシュプレヒコールのように双方の合唱が呼び合います。劇的です。
トゥーバ・ミルムではバスのインボーデンがかなり強力でした。適度なキャパシティーでありながら、不思議と響かないこのホールにおいても十分に声を響かせています。また彼は、4名のソリストの中でも特に目立っていました。時に合唱を支えるかのようにして朗々と歌う様子が立派です。まるで魔笛におけるザラストロのような存在感を見せていました。
ローザンヌ声楽アンサンブルは、全体的にざらっとした味わいで美感にやや乏しくも感じられましたが、逞しい歌声と、そのこめられた情感には胸を強く打たれます。絶筆のラクリモサにおいては、女声合唱が男声合唱を巧みにリードして、あまりにも物悲しいこの音楽を切々と歌い上げる。また奉献誦の主イエス・キリストでも、フーガをリズミカルに展開して、イエスを大きく讃えていました。どちらかと言えばピアニッシモ方向よりも、ホールを大きく包み込むようなフォルテの方に持ち味があったかもしれません。明暗のハッキリした表現。(コルボの激しい指揮に反応していたのでしょうか。)女声の逞しさと男声の艶やかさが印象的でした。
サンクトゥス以降はテンポがさらにアップします。それまでも細部まできちっと鳴らさずに、むしろ全体の構造を大まかに捉えるアプローチをとっていましたが、それがより一層、このジュスマイヤーの音楽では強まっていくのです。これは私にはやや大味にも感じられましたが、このような快速テンポのレクイエムもまたコルボの新たな一境地なのかもしれません。サンクトゥスから聖体拝領唱までは、曲をじっくりと味わう間もないほどにあっさりと流れていきました。
シンフォニア・ヴァルソヴィアは、ローザンヌ声楽アンサンブルと比べるとやや弱かったかもしれません。弦こそコルボの指揮に喰らいつくかのように健闘していましたが、金管にもう一歩の美感があればとも思いました。ただティンパニの柔らかい打ち込みは好印象です。激しいこのレクイエムでも、あくまで穏やかに鳴り響きます。
余計な先入観ではありますが、コルボには静謐な音楽をつくるイメージがあったので、この激しいレクイエムには少し驚かされました。ドラマティックなリズムにのった、地の底から沸き出して来たような嘆きの合唱。疾風怒濤のレクイエム。思いがけない鮮烈な演奏です。コルボの音楽にもっと耳を傾けなくてはいけない。そんな気持ちにもさせるコンサートでした。
モーツァルト レクイエムK.626
指揮 ミシェル・コルボ
合唱 ローザンヌ声楽アンサンブル
演奏 シンフォニア・ヴァルソヴィア
ソリスト
ソプラノ カティア・ヴェレタズ
アルト ヴァレリー・ボナール・ビュクス
テノール ヴァレーリオ・コンタルド
バス ステファン・インボーデン
2006/5/5 16:30 東京国際フォーラムホールC(サリエリ)
今回の「熱狂の日」でも特に注目されていた公演だったのではないでしょうか。コルボとローザンヌ声楽アンサンブル、それにシンフォニア・ヴァルソヴィアによるレクイエムです。もちろんジュスマイアー版での演奏でした。
ともかく慟哭のレクイエムです。入祭誦こそファゴットの序奏に導かれながら静かに歌われていきますが、アタッカで入るキリエから徐々にヒートアップし、これまたほぼアタッカにて入った怒りの日では、まさに激しく荒れ狂う大波のように音楽がうねり出します。ローザンヌ声楽アンサンブルの力強い合唱が、時にコルボの指示によって恣意的にピアニッシモ方向へ沈みながら、それでいて一気に前へと押し出すように大きなフォルテッシモを築く。特に怒りの日における男声と女声の対比は明確です。まるでシュプレヒコールのように双方の合唱が呼び合います。劇的です。
トゥーバ・ミルムではバスのインボーデンがかなり強力でした。適度なキャパシティーでありながら、不思議と響かないこのホールにおいても十分に声を響かせています。また彼は、4名のソリストの中でも特に目立っていました。時に合唱を支えるかのようにして朗々と歌う様子が立派です。まるで魔笛におけるザラストロのような存在感を見せていました。
ローザンヌ声楽アンサンブルは、全体的にざらっとした味わいで美感にやや乏しくも感じられましたが、逞しい歌声と、そのこめられた情感には胸を強く打たれます。絶筆のラクリモサにおいては、女声合唱が男声合唱を巧みにリードして、あまりにも物悲しいこの音楽を切々と歌い上げる。また奉献誦の主イエス・キリストでも、フーガをリズミカルに展開して、イエスを大きく讃えていました。どちらかと言えばピアニッシモ方向よりも、ホールを大きく包み込むようなフォルテの方に持ち味があったかもしれません。明暗のハッキリした表現。(コルボの激しい指揮に反応していたのでしょうか。)女声の逞しさと男声の艶やかさが印象的でした。
サンクトゥス以降はテンポがさらにアップします。それまでも細部まできちっと鳴らさずに、むしろ全体の構造を大まかに捉えるアプローチをとっていましたが、それがより一層、このジュスマイヤーの音楽では強まっていくのです。これは私にはやや大味にも感じられましたが、このような快速テンポのレクイエムもまたコルボの新たな一境地なのかもしれません。サンクトゥスから聖体拝領唱までは、曲をじっくりと味わう間もないほどにあっさりと流れていきました。
シンフォニア・ヴァルソヴィアは、ローザンヌ声楽アンサンブルと比べるとやや弱かったかもしれません。弦こそコルボの指揮に喰らいつくかのように健闘していましたが、金管にもう一歩の美感があればとも思いました。ただティンパニの柔らかい打ち込みは好印象です。激しいこのレクイエムでも、あくまで穏やかに鳴り響きます。
余計な先入観ではありますが、コルボには静謐な音楽をつくるイメージがあったので、この激しいレクイエムには少し驚かされました。ドラマティックなリズムにのった、地の底から沸き出して来たような嘆きの合唱。疾風怒濤のレクイエム。思いがけない鮮烈な演奏です。コルボの音楽にもっと耳を傾けなくてはいけない。そんな気持ちにもさせるコンサートでした。
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熱狂の日音楽祭2006 「モーツァルト:ホルン協奏曲第3番」他 5/5
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2006
モーツァルト ディヴェルティメントK.137
ホルン協奏曲第3番K.447
ディヴェルティメントK.138
演奏 ベルリン古楽アカデミー
ホルン ヴァーツラフ・ルクス
2006/5/5 13:00 東京国際フォーラムホールB7(ダ・ポンテ)
ベルリン古楽アカデミーの演奏と言えば、私の愛聴盤はバッハなのですが、この日はモーツァルトの愉しい管弦楽曲と、ルクスとのコンビによるホルン協奏曲で楽しませてくれました。「熱狂の日音楽祭」コンサートの第1弾です。
ともかく印象深かったのは、2曲目のホルン協奏曲第3番でした。独奏ホルンはチェンバロ、またはオルガン奏者としても知られるというヴァーツラフ・ルクス。楽器はもちろんナチュラルホルンです。この曲は一般的なホルンで演奏されると、とても素朴で長閑な印象を与えますが、それがナチュラルホルンという不安定な楽器にかかると、一転してオーケストラとぶつかるかのようなスリリングな展開を見せてきます。まさにロイトゲープとモーツァルトの掛け合い。ナチュラルホルンとオーケストラの漫才です。
ルクスは、殆ど残響のないこのホールB7にて楽器と格闘します。忙しなく朝顔へ手を出し入れして、何とか楽器から音を出そうとするその必至な姿。もちろんバルブはありません。細かいパッセージはまさに手に汗を握る展開です。第1楽章のカデンツァの息を飲むような音の連なりと、それを演奏し終わった時の安堵感。演奏者の息遣いが間近に聴こえてきました。目まぐるしく表情が変化する第3楽章のロンドにおいても、時にオーケストラへ優しく寄り添い、また時にはいがみ合うようにしてホルンを奏でていく。賑やかな、あっという間の15分間でした。
ディヴェルティメントでは初めのK.137が秀逸です。もっとインテンポにて曲へ切り込むように演奏するのかと思いきや、意外にもソフトタッチのヴァイオリンを主導にして、曲の輪郭を丁寧になぞっていきます。オーケストラの後列にて、何やら得意げに存在を誇示する二人のコントラバス奏者。彼らが自己主張すると、オーケストラ全体に良い意味での緊張感をもたらします。全身を揺らしながら楽しそうに楽器を操る様子。それは演奏にもすぐに伝わります。平板な表現ではすぐに退屈になってしまうこの機会音楽を、安定した合奏力にてしっかりと聴かせてくれました。モーツァルト初期のロココ調の軽やかさ。それをたっぷり味わえる内容だったと思います。
「こんな楽団でシンフォニーの25番や31番を聴ければ。」と思ってしまうほど充実したコンサートでした。さすがのベルリン古楽アカデミー。決して無茶をしないで、古楽器演奏の王道をいくようなスタイルで楽しませてくれます。至福の一時でした。
モーツァルト ディヴェルティメントK.137
ホルン協奏曲第3番K.447
ディヴェルティメントK.138
演奏 ベルリン古楽アカデミー
ホルン ヴァーツラフ・ルクス
2006/5/5 13:00 東京国際フォーラムホールB7(ダ・ポンテ)
ベルリン古楽アカデミーの演奏と言えば、私の愛聴盤はバッハなのですが、この日はモーツァルトの愉しい管弦楽曲と、ルクスとのコンビによるホルン協奏曲で楽しませてくれました。「熱狂の日音楽祭」コンサートの第1弾です。
ともかく印象深かったのは、2曲目のホルン協奏曲第3番でした。独奏ホルンはチェンバロ、またはオルガン奏者としても知られるというヴァーツラフ・ルクス。楽器はもちろんナチュラルホルンです。この曲は一般的なホルンで演奏されると、とても素朴で長閑な印象を与えますが、それがナチュラルホルンという不安定な楽器にかかると、一転してオーケストラとぶつかるかのようなスリリングな展開を見せてきます。まさにロイトゲープとモーツァルトの掛け合い。ナチュラルホルンとオーケストラの漫才です。
ルクスは、殆ど残響のないこのホールB7にて楽器と格闘します。忙しなく朝顔へ手を出し入れして、何とか楽器から音を出そうとするその必至な姿。もちろんバルブはありません。細かいパッセージはまさに手に汗を握る展開です。第1楽章のカデンツァの息を飲むような音の連なりと、それを演奏し終わった時の安堵感。演奏者の息遣いが間近に聴こえてきました。目まぐるしく表情が変化する第3楽章のロンドにおいても、時にオーケストラへ優しく寄り添い、また時にはいがみ合うようにしてホルンを奏でていく。賑やかな、あっという間の15分間でした。
ディヴェルティメントでは初めのK.137が秀逸です。もっとインテンポにて曲へ切り込むように演奏するのかと思いきや、意外にもソフトタッチのヴァイオリンを主導にして、曲の輪郭を丁寧になぞっていきます。オーケストラの後列にて、何やら得意げに存在を誇示する二人のコントラバス奏者。彼らが自己主張すると、オーケストラ全体に良い意味での緊張感をもたらします。全身を揺らしながら楽しそうに楽器を操る様子。それは演奏にもすぐに伝わります。平板な表現ではすぐに退屈になってしまうこの機会音楽を、安定した合奏力にてしっかりと聴かせてくれました。モーツァルト初期のロココ調の軽やかさ。それをたっぷり味わえる内容だったと思います。
「こんな楽団でシンフォニーの25番や31番を聴ければ。」と思ってしまうほど充実したコンサートでした。さすがのベルリン古楽アカデミー。決して無茶をしないで、古楽器演奏の王道をいくようなスタイルで楽しませてくれます。至福の一時でした。
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5月の予定と4月の記録
「熱狂の日音楽祭」ばかりに夢中になってしまい、すっかり予定を立てるのを忘れてしまいました。毎月恒例の「予定と振りかえり」です。
5月の予定
展覧会
「ホルスト・ヤンセン展」 埼玉県立近代美術館(5/21まで)
「所蔵作品展 花より工芸」 東京国立近代美術館工芸館(5/21まで)
「近代陶磁器にみる東と西」 泉屋博古館分館(5/21まで)
「播磨ゆかりの江戸絵画」 大倉集古館(5/28まで)
「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第2期」 三の丸尚蔵館(5/28まで)
「エルンスト・バルラハ展」 東京藝術大学美術館(5/28まで)
「素顔の伊東深水展」 目黒区美術館(6/4まで)
「開館40周年記念 出光美術館名品展1」 出光美術館(6/18まで)
「ナポレオンとヴェルサイユ展」 江戸東京博物館(6/18まで)
「武満徹 -Visions in Time- 」 東京オペラシティーアートギャラリー(6/18まで)
「緑雨の景観 -美しき日本の自然- 」 山種美術館(6/25まで)
コンサート
「熱狂の日音楽祭2006 ベルリン古楽アカデミー」 モーツァルト「ホルン協奏曲第3番」他 5/5
「熱狂の日音楽祭2006 ローザンヌ声楽アンサンブル」 モーツァルト「レクイエム」 5/5
「熱狂の日音楽祭2006 ケルン室内合唱団」 モーツァルト「ヴェスペレ」他 5/6
「NHK交響楽団第1569回定期Aプロ」 ブルックナー「交響曲第8番」 5/12
「ラ・プティット・バンド東京公演」 バッハ「ブランデンブルク協奏曲第5番」他 5/19
4月の記録(リンクは私の感想です。)
展覧会
2日 「宇治山哲平展 -絵に遊ぶ、絵に憩う- 」 東京都庭園美術館
9日 「第25回損保ジャパン美術財団 選抜奨励展」 損保ジャパン東郷青児美術館
8日 「プラド美術館展」(その1) 東京都美術館
9日 「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第1期」 宮内庁三の丸尚蔵館
15日 「コシノヒロコ『襲かさね』展」 大丸ミュージアム・東京
15日 「建築家 グンナール・アスプルンド展」 松下電工汐留ミュージアム
22日 「生誕120年 藤田嗣治展」 東京国立近代美術館
23日 「Emerging Artist Support Program 2006 vol.1」 トーキョーワンダーサイト
23日 「私のいる場所 -新進作家展Vol.4 ゼロの年代の写真論- 」 東京都写真美術館
30日 「燕子花図と藤花図」 根津美術館
30日 「舞い降りた桜 ザハ・ハディドとめぐるドイツ銀行コレクション」 原美術館
ギャラリー
1日 「塚田守展 -妖怪 SPECTER- 」 小山登美夫ギャラリー
1日 「戸谷成雄 『ミニマルバロック』」 シュウゴアーツ
16日 「安岡亜蘭展 -kasane- 」 四季彩舎
16~30日 「現象からの新しいかたち展 鈴木太朗/小松宏誠/安藤孝浩」 和田画廊
27日 「カンノサカン新作展『シンクロ』」 ヴァイスフェルト
27日 「雄川愛展」 TARO NASU GALLERY
30日 「都市に生きるアール・デコ展」 資生堂ギャラリー+ハウスオブシセイドウ
コンサート
9日 「新国立劇場2005/2006シーズン」 マスカーニ「カヴァレリア」+レオンカヴァッロ「道化師」/ルイージ
17日 「東京都交響楽団第625回定期Aシリーズ」 ブルックナー「交響曲第9番」/デプリースト
22日 「東京二期会オペラ劇場」 モーツァルト「皇帝ティトの慈悲」/スダーン
ゴールデンウィーク中に見聞きした展覧会などが結構あります。(熱狂の日、深水展、大倉集古館、ヤンセン、出光、泉屋。)それらの感想も随時アップしていきたいです。
4月は、新国立劇場にて素晴らしい公演に二つも接することが出来ました。新国の音を変えた驚異のルイージと、コンヴィチュニーによる悲痛な「ティト」。ともに二度と忘れないような強烈な音楽体験です。また展覧会では、藤田、宇治山、プラドあたりが特に印象深い内容でした。藤田の線と色、宇治山の画肌、プラドでのムリーリョ。どれも記憶に残ります。(プラド展については、まだ後半部の感想を書いておりません。もう一度見に行くつもりなのでその際アップしたいです。)それに和田画廊の三名のグループ展や、戸谷成雄の個展なども楽しめました。今月も画廊巡り、またいくつか行きたいと思います。(来週へ延期となった「銀座あおぞらDEアート」も少し立ち寄りたいです!)
それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。(ブログリンクを更新しました。)
5月の予定
展覧会
「ホルスト・ヤンセン展」 埼玉県立近代美術館(5/21まで)
「所蔵作品展 花より工芸」 東京国立近代美術館工芸館(5/21まで)
「近代陶磁器にみる東と西」 泉屋博古館分館(5/21まで)
「播磨ゆかりの江戸絵画」 大倉集古館(5/28まで)
「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第2期」 三の丸尚蔵館(5/28まで)
「エルンスト・バルラハ展」 東京藝術大学美術館(5/28まで)
「素顔の伊東深水展」 目黒区美術館(6/4まで)
「開館40周年記念 出光美術館名品展1」 出光美術館(6/18まで)
「ナポレオンとヴェルサイユ展」 江戸東京博物館(6/18まで)
「武満徹 -Visions in Time- 」 東京オペラシティーアートギャラリー(6/18まで)
「緑雨の景観 -美しき日本の自然- 」 山種美術館(6/25まで)
コンサート
「熱狂の日音楽祭2006 ベルリン古楽アカデミー」 モーツァルト「ホルン協奏曲第3番」他 5/5
「熱狂の日音楽祭2006 ローザンヌ声楽アンサンブル」 モーツァルト「レクイエム」 5/5
「熱狂の日音楽祭2006 ケルン室内合唱団」 モーツァルト「ヴェスペレ」他 5/6
「NHK交響楽団第1569回定期Aプロ」 ブルックナー「交響曲第8番」 5/12
「ラ・プティット・バンド東京公演」 バッハ「ブランデンブルク協奏曲第5番」他 5/19
4月の記録(リンクは私の感想です。)
展覧会
2日 「宇治山哲平展 -絵に遊ぶ、絵に憩う- 」 東京都庭園美術館
9日 「第25回損保ジャパン美術財団 選抜奨励展」 損保ジャパン東郷青児美術館
8日 「プラド美術館展」(その1) 東京都美術館
9日 「花鳥 - 愛でる心、彩る技<若冲を中心に> 第1期」 宮内庁三の丸尚蔵館
15日 「コシノヒロコ『襲かさね』展」 大丸ミュージアム・東京
15日 「建築家 グンナール・アスプルンド展」 松下電工汐留ミュージアム
22日 「生誕120年 藤田嗣治展」 東京国立近代美術館
23日 「Emerging Artist Support Program 2006 vol.1」 トーキョーワンダーサイト
23日 「私のいる場所 -新進作家展Vol.4 ゼロの年代の写真論- 」 東京都写真美術館
30日 「燕子花図と藤花図」 根津美術館
30日 「舞い降りた桜 ザハ・ハディドとめぐるドイツ銀行コレクション」 原美術館
ギャラリー
1日 「塚田守展 -妖怪 SPECTER- 」 小山登美夫ギャラリー
1日 「戸谷成雄 『ミニマルバロック』」 シュウゴアーツ
16日 「安岡亜蘭展 -kasane- 」 四季彩舎
16~30日 「現象からの新しいかたち展 鈴木太朗/小松宏誠/安藤孝浩」 和田画廊
27日 「カンノサカン新作展『シンクロ』」 ヴァイスフェルト
27日 「雄川愛展」 TARO NASU GALLERY
30日 「都市に生きるアール・デコ展」 資生堂ギャラリー+ハウスオブシセイドウ
コンサート
9日 「新国立劇場2005/2006シーズン」 マスカーニ「カヴァレリア」+レオンカヴァッロ「道化師」/ルイージ
17日 「東京都交響楽団第625回定期Aシリーズ」 ブルックナー「交響曲第9番」/デプリースト
22日 「東京二期会オペラ劇場」 モーツァルト「皇帝ティトの慈悲」/スダーン
ゴールデンウィーク中に見聞きした展覧会などが結構あります。(熱狂の日、深水展、大倉集古館、ヤンセン、出光、泉屋。)それらの感想も随時アップしていきたいです。
4月は、新国立劇場にて素晴らしい公演に二つも接することが出来ました。新国の音を変えた驚異のルイージと、コンヴィチュニーによる悲痛な「ティト」。ともに二度と忘れないような強烈な音楽体験です。また展覧会では、藤田、宇治山、プラドあたりが特に印象深い内容でした。藤田の線と色、宇治山の画肌、プラドでのムリーリョ。どれも記憶に残ります。(プラド展については、まだ後半部の感想を書いておりません。もう一度見に行くつもりなのでその際アップしたいです。)それに和田画廊の三名のグループ展や、戸谷成雄の個展なども楽しめました。今月も画廊巡り、またいくつか行きたいと思います。(来週へ延期となった「銀座あおぞらDEアート」も少し立ち寄りたいです!)
それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。(ブログリンクを更新しました。)
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「舞い降りた桜 ザハ・ハディドとめぐるドイツ銀行コレクション」 原美術館 4/30
原美術館(品川区北品川4-7-25)
「舞い降りた桜 ザハ・ハディドとめぐるドイツ銀行コレクション」
3/25-5/21
原美術館がいつもとは若干異なった雰囲気を見せています。中庭の大きなオブジェと、建物の床の曲線模様。建築家ザハ・ハディドによってデザインされた空間に、ドイツ銀行のアートコレクション約150点が集まっている。そんな現代アートの展覧会です。
ともかくまず見るべき点は、庭に飾られたザハ・ハディドの巨大なオブジェでしょう。タイトルは「舞い降りた桜」。まさに花びらのように咲く真っ白な構造物。まるで折り紙にて作られた花か、はたまた布地を織り合わせて出来た花のようにも見えてきます。そしてオブジェ越しに見る庭の常設展示。これはなかなか趣深い。李やソル・ルウィットの作品がいつもと少し変わった雰囲気で佇んでいます。ちなみにザハ・ハディドのオブジェは、この巨大な「舞い降りた桜」だけではありません。庭にはこれを含めた大小3点のオブジェと、2階展示室にもう1点が展示されています。まるで建物に群生している花々です。
そしてオブジェの次は建物の床です。いつもは板張りになっていたかと思いますが、今回は全く異なった白い床が出現しています。白地にシャープな曲線を描く灰色の模様。一瞬何かと思ってしまう図柄ですが、これはハディドがデザインしたオブジェの影なのだそうです。つまりこの影とオブジェが、ドイツ銀行の150点の現代アートコレクションを包み込む。そういう仕掛けの企画と言うことでした。
さて、そのドイツ銀行アートコレクションの約150点の作品ですが、オブジェや「影」との相乗効果にて美しく映えていた数点を除くと、総じてパンチ力に欠けていたように感じられました。展示作品の主はドローイングや写真などですが、あまりこれと言った作品がありません。ただその中でも、お馴染みティルマンスの写真(「クリスマスの星」)や、リヒターの油彩(「船遊び」)などはさすがの貫禄を見せています。また、オラフ・ニコライのバックライト付きの大きな写真(「自然に習って1」)や、やなぎみわのビデオアート(「かごめかごめ」)なども印象に残る作品でした。これらは見応えがあります。
最後に一点だけ、特に印象深かったリヒターの「船遊び」(1965)を挙げてみましょう。川面に浮かぶ二艘の小舟。そこに乗っているのは、大きな帽子をかぶった、まるでルノワールの作品に出てくるかのような女性たちです。画面は当然ながらぼかされていて、それが何やら懐かしい雰囲気をも呼び起こします。まるでテレビの走査線のような、横へ伸びる無数の線は、ちょうど川の流れを表現しているかのようです。藍とも紺ともとれる深い青みが画面を美しく覆います。これは一推しです。
ハディドによるデザインは、建築の観点からも注目されているのか、雑誌「新建築」の最新号でも6ページほど特集されています。オブジェや影の配置などが、大きな写真入りで分かり易く掲載されていました。ご興味のある方は一度手に取ってみては如何でしょう。
今月21日までの開催です。
*屋上テラスから見たハディドのオブジェ(左)と、恒例のイメージケーキ(右)です。ケーキはチーズベース。美術館の建物に咲いたハディドのオブジェと言ったところでしょうか。
「舞い降りた桜 ザハ・ハディドとめぐるドイツ銀行コレクション」
3/25-5/21
原美術館がいつもとは若干異なった雰囲気を見せています。中庭の大きなオブジェと、建物の床の曲線模様。建築家ザハ・ハディドによってデザインされた空間に、ドイツ銀行のアートコレクション約150点が集まっている。そんな現代アートの展覧会です。
ともかくまず見るべき点は、庭に飾られたザハ・ハディドの巨大なオブジェでしょう。タイトルは「舞い降りた桜」。まさに花びらのように咲く真っ白な構造物。まるで折り紙にて作られた花か、はたまた布地を織り合わせて出来た花のようにも見えてきます。そしてオブジェ越しに見る庭の常設展示。これはなかなか趣深い。李やソル・ルウィットの作品がいつもと少し変わった雰囲気で佇んでいます。ちなみにザハ・ハディドのオブジェは、この巨大な「舞い降りた桜」だけではありません。庭にはこれを含めた大小3点のオブジェと、2階展示室にもう1点が展示されています。まるで建物に群生している花々です。
そしてオブジェの次は建物の床です。いつもは板張りになっていたかと思いますが、今回は全く異なった白い床が出現しています。白地にシャープな曲線を描く灰色の模様。一瞬何かと思ってしまう図柄ですが、これはハディドがデザインしたオブジェの影なのだそうです。つまりこの影とオブジェが、ドイツ銀行の150点の現代アートコレクションを包み込む。そういう仕掛けの企画と言うことでした。
さて、そのドイツ銀行アートコレクションの約150点の作品ですが、オブジェや「影」との相乗効果にて美しく映えていた数点を除くと、総じてパンチ力に欠けていたように感じられました。展示作品の主はドローイングや写真などですが、あまりこれと言った作品がありません。ただその中でも、お馴染みティルマンスの写真(「クリスマスの星」)や、リヒターの油彩(「船遊び」)などはさすがの貫禄を見せています。また、オラフ・ニコライのバックライト付きの大きな写真(「自然に習って1」)や、やなぎみわのビデオアート(「かごめかごめ」)なども印象に残る作品でした。これらは見応えがあります。
最後に一点だけ、特に印象深かったリヒターの「船遊び」(1965)を挙げてみましょう。川面に浮かぶ二艘の小舟。そこに乗っているのは、大きな帽子をかぶった、まるでルノワールの作品に出てくるかのような女性たちです。画面は当然ながらぼかされていて、それが何やら懐かしい雰囲気をも呼び起こします。まるでテレビの走査線のような、横へ伸びる無数の線は、ちょうど川の流れを表現しているかのようです。藍とも紺ともとれる深い青みが画面を美しく覆います。これは一推しです。
ハディドによるデザインは、建築の観点からも注目されているのか、雑誌「新建築」の最新号でも6ページほど特集されています。オブジェや影の配置などが、大きな写真入りで分かり易く掲載されていました。ご興味のある方は一度手に取ってみては如何でしょう。
今月21日までの開催です。
*屋上テラスから見たハディドのオブジェ(左)と、恒例のイメージケーキ(右)です。ケーキはチーズベース。美術館の建物に咲いたハディドのオブジェと言ったところでしょうか。
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「熱狂の日音楽祭2006」閉幕!
「熱狂の日」音楽祭閉幕、チケット売り上げ16万枚(yomiuri on-line)
東京・有楽町の東京国際フォーラムで3日から開かれていたクラシック音楽の祭典「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン『熱狂の日』音楽祭2006」(東京国際フォーラム主催、読売新聞社特別協力)が6日、大盛況のうちに閉幕した。
有楽町から丸の内界隈に人の波を築いた「熱狂の日音楽祭2006」。私は集中して音楽を聴くことがあまり出来ない性質なもので、初めは2公演だけを予定していましたが、「ノイマンが良い!」との評判を聞き、急遽最終日の「ノイマン+コレギウム・カルトゥシアヌム」を追加して聴いてきました。結局3公演です。
5/5 13:00(B7) ベルリン古楽アカデミー 「ディヴェルティメント」K.137など
5/5 16:30(C) コルボ・ローザンヌ声楽アンサンブル 「レクイエム」
5/6 19:15(A) ノイマン・ケルン室内合唱団 「ヴェスペレ」K.339など
まだ感想を一つも挙げておりません…。(無精者です。)拙いですが追々アップしていきたいと思います。(P.S アップしました。5/11)
ともかく今回の音楽祭は、事前認知度が高かったせいか、前売段階にてチケットがかなりはけてしまいました。ただ、その分(と言っては問題かもしれませんが)、昨年見られたようなチケットブースでの混乱などは皆無で、会場全体もかなりスムーズに流れていたかと思います。また、全体来場者もチケット販売枚数も昨年を大きく上回ったそうです。これは「大成功」でしょう。
さて、早くも来年についてのアナウンスが出ています。それによるとテーマは「国民学派」。おそらくこの名称は、イベントにしては硬派過ぎるので変わると思いますが、チャイコフスキーやドヴォルザーク、またはグリーグからシベリウス、それにバルトークやドビュッシー、ラヴェルなどの名前が怒濤のように挙がっています。何やら選り取りみどりの状態で、聴く方も大変になってしまいそうですが、個人的には大好きなシベリウスに期待したいです。純度の高いアンサンブルにてシンフォニーをまとめて聴ければとも思いました。(もちろん出来ればCホールで…。)
ベートーヴェン、モーツァルトとビックネームが続いて、一気に東京のゴールデンウィークの一大イベントとして認知された「熱狂の日音楽祭」。来年も楽しみです。
*会場にて、こもへじさん(ブログ『10億人が楽しめる手描き文字絵』)にいただいたモーツァルトの可愛い文字絵カードです。
*関連エントリ
「熱狂の日」の展覧会?! 「モーツァルト展」(5/6)
モーツァルト市場で見つけたこんなもの…。 「熱狂の日音楽祭2006」(5/5)
「熱狂の日音楽祭」のあとは「ぶらあぼ」で!(5/4)
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン〈熱狂の日〉音楽祭 2006」、ついに開幕!(4/30)
東京・有楽町の東京国際フォーラムで3日から開かれていたクラシック音楽の祭典「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン『熱狂の日』音楽祭2006」(東京国際フォーラム主催、読売新聞社特別協力)が6日、大盛況のうちに閉幕した。
有楽町から丸の内界隈に人の波を築いた「熱狂の日音楽祭2006」。私は集中して音楽を聴くことがあまり出来ない性質なもので、初めは2公演だけを予定していましたが、「ノイマンが良い!」との評判を聞き、急遽最終日の「ノイマン+コレギウム・カルトゥシアヌム」を追加して聴いてきました。結局3公演です。
5/5 13:00(B7) ベルリン古楽アカデミー 「ディヴェルティメント」K.137など
5/5 16:30(C) コルボ・ローザンヌ声楽アンサンブル 「レクイエム」
5/6 19:15(A) ノイマン・ケルン室内合唱団 「ヴェスペレ」K.339など
まだ感想を一つも挙げておりません…。(無精者です。)拙いですが追々アップしていきたいと思います。(P.S アップしました。5/11)
ともかく今回の音楽祭は、事前認知度が高かったせいか、前売段階にてチケットがかなりはけてしまいました。ただ、その分(と言っては問題かもしれませんが)、昨年見られたようなチケットブースでの混乱などは皆無で、会場全体もかなりスムーズに流れていたかと思います。また、全体来場者もチケット販売枚数も昨年を大きく上回ったそうです。これは「大成功」でしょう。
さて、早くも来年についてのアナウンスが出ています。それによるとテーマは「国民学派」。おそらくこの名称は、イベントにしては硬派過ぎるので変わると思いますが、チャイコフスキーやドヴォルザーク、またはグリーグからシベリウス、それにバルトークやドビュッシー、ラヴェルなどの名前が怒濤のように挙がっています。何やら選り取りみどりの状態で、聴く方も大変になってしまいそうですが、個人的には大好きなシベリウスに期待したいです。純度の高いアンサンブルにてシンフォニーをまとめて聴ければとも思いました。(もちろん出来ればCホールで…。)
ベートーヴェン、モーツァルトとビックネームが続いて、一気に東京のゴールデンウィークの一大イベントとして認知された「熱狂の日音楽祭」。来年も楽しみです。
*会場にて、こもへじさん(ブログ『10億人が楽しめる手描き文字絵』)にいただいたモーツァルトの可愛い文字絵カードです。
*関連エントリ
「熱狂の日」の展覧会?! 「モーツァルト展」(5/6)
モーツァルト市場で見つけたこんなもの…。 「熱狂の日音楽祭2006」(5/5)
「熱狂の日音楽祭」のあとは「ぶらあぼ」で!(5/4)
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン〈熱狂の日〉音楽祭 2006」、ついに開幕!(4/30)
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「熱狂の日」の展覧会?! 「モーツァルト展」
丸ビル・丸ビルホール(千代田区丸の内2-4-1 丸ビル7F)
「海老沢敏コレクション モーツァルト展」
5/3~7
今日で全コンサートを終えた「熱狂の日音楽祭」ですが、丸の内地区全域を巻き込んだお祭りと言うことで、国際フォーラムだけでなく、この界隈の各所にて様々なイベントが開催されています。その中でも特に興味深かったのが、この「海老沢敏コレクション モーツァルト展」でした。
会場には、モーツァルト研究家として有名な海老沢敏氏の個人コレクションがズラリと並んでいます。モーツァルトの油彩肖像画一点「15歳のモーツァルト」(チニャローリ作。上の画像のものです。)と、自筆譜や初版譜、もしくはそれらの複製、さらにはモーツァルトと関係を持った人物たちの自筆書簡。これらの品々がガラスケース越しに展示されていました。全体の構成は写真パネルによる解説がメインなので、見るべき展示品の数は決して多いとは言えませんが、モーツァルトの自筆楽譜はもちろんのこと、ダ・ポンテやサリエーリの自筆書簡などはなかなか見る機会がありません。モーツァルト好きなら一度は見たい内容かと思います。
私が興味深かったのは、今も挙げたダ・ポンテやサリエーリらの自筆書簡です。文字は人を表すとでも言うのでしょうか。とっても可愛らしい丸字のダ・ポンテや、実に神経質そうな細かい字を書くサリエリ、またはビシッと整然と並んだヨーゼフ2世の文字などは、まさに彼らのイメージ通りでした。
また、美術好きにもおすすめしたい展示があります。それはモーツァルトにちなんだ版画やリトグラフ作品(数点)です。その中ではシャガールのリトグラフ「魔笛」(1966)が目立ちました。青を基調にしたシャガールならではの美しい画面に、まさにメルヘンの「魔笛」を体現したかのような愉快な人物たち。シャガールが、このオペラをモチーフにして作品を制作していたとは知りませんでした。意外な場所で出会えた佳い作品です。
展示は明日、日曜日までです。わざわざ出向くほどではないかもしれませんが、東京駅近辺に用事のある方なら、立ち寄ってみても損はないかと思います。また会場では、展示されたフォルテピアノによるレクチャー、もしくはミニコンサートも行われています。(それぞれ13:30、15:30、17:30より。)入場無料です。
「海老沢敏コレクション モーツァルト展」
5/3~7
今日で全コンサートを終えた「熱狂の日音楽祭」ですが、丸の内地区全域を巻き込んだお祭りと言うことで、国際フォーラムだけでなく、この界隈の各所にて様々なイベントが開催されています。その中でも特に興味深かったのが、この「海老沢敏コレクション モーツァルト展」でした。
会場には、モーツァルト研究家として有名な海老沢敏氏の個人コレクションがズラリと並んでいます。モーツァルトの油彩肖像画一点「15歳のモーツァルト」(チニャローリ作。上の画像のものです。)と、自筆譜や初版譜、もしくはそれらの複製、さらにはモーツァルトと関係を持った人物たちの自筆書簡。これらの品々がガラスケース越しに展示されていました。全体の構成は写真パネルによる解説がメインなので、見るべき展示品の数は決して多いとは言えませんが、モーツァルトの自筆楽譜はもちろんのこと、ダ・ポンテやサリエーリの自筆書簡などはなかなか見る機会がありません。モーツァルト好きなら一度は見たい内容かと思います。
私が興味深かったのは、今も挙げたダ・ポンテやサリエーリらの自筆書簡です。文字は人を表すとでも言うのでしょうか。とっても可愛らしい丸字のダ・ポンテや、実に神経質そうな細かい字を書くサリエリ、またはビシッと整然と並んだヨーゼフ2世の文字などは、まさに彼らのイメージ通りでした。
また、美術好きにもおすすめしたい展示があります。それはモーツァルトにちなんだ版画やリトグラフ作品(数点)です。その中ではシャガールのリトグラフ「魔笛」(1966)が目立ちました。青を基調にしたシャガールならではの美しい画面に、まさにメルヘンの「魔笛」を体現したかのような愉快な人物たち。シャガールが、このオペラをモチーフにして作品を制作していたとは知りませんでした。意外な場所で出会えた佳い作品です。
展示は明日、日曜日までです。わざわざ出向くほどではないかもしれませんが、東京駅近辺に用事のある方なら、立ち寄ってみても損はないかと思います。また会場では、展示されたフォルテピアノによるレクチャー、もしくはミニコンサートも行われています。(それぞれ13:30、15:30、17:30より。)入場無料です。
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