僕はびわ湖のカイツブリ

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“男のためのガーデニング”改め

丹生谷文化財フェスタ~余呉町上丹生「上丹生薬師堂」~

2019-09-04 05:45:15 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 「丹生谷文化財フェスタ」では4つの寺院が公開され、そのうちの2つの寺院では特別開帳がされました。
特別開帳の仏像は「東林寺(菅並観音堂)」の観音菩薩像と「上丹生薬師堂」の薬師如来立像となる。

とはいえ、他の2つの寺院も通常非公開で予約拝観のみということですから、一日限りのフェスタではあるものの願ってもない参拝の機会となりました。
福井県側にある菅並から滋賀県側にある上丹生地区には「茶わん祭」という山車を使った祭りがあり、随分と昔に一度見たことがありますので丹生を訪れるのはそれ以来となります。



集落の入口付近に「茶わん祭りの館」という施設があり、そこの駐車場に車を停めて集落の中を歩く。
「上丹生薬師堂」の本尊が御開帳されるのは11:00と13:15からの30分間だけということでしたので早めに到着して、堂内に入ったのは30分前。



観音堂(江戸時代 宝永5年建築)が変わった形をしているのは、観音堂としての役割の他に「茶わん祭り」の山車の収納や集会所としての役割もあるからとか。
観音堂には既に先客が10名ほどおられましたが、御開帳の時間が迫るに連れて堂内は満員となり、後方では立ち見の方もおられたようです。



待っている間に興味深かったのは、脇侍である「木造聖観音座像」が東京の「びわ湖長浜KANNON HOUSE」へ出陣するための準備風景でした。
目の前で行われた入念なチェック作業や養生の丁寧さを見ることが出来たのは運が良かったとしか言えません。
特にチェック作業では、図面と仏像の各部分を照合しながら念入りな確認作業が行われていました。


(びわ湖長浜KANNON HOUSE)

また本来、閉じられている厨子の前に居られるはずのお前立ちの「薬師如来坐像(平安期)」の姿がないため聞いてみると、こちらは京都の美術院で修理に出ているとのこと。
挨拶の中で“今日はお前立ちの薬師さんも聖観音さんも居られませんので御本尊を特別開帳させていただきます。”
とのことで本来は5年に一度の茶わん祭りの時にしか拝めない御本尊の「薬師如来立像」の拝観が叶います。

時間となり厨子の扉が開かれると「薬師如来立像」が姿を現します。
像高は147.8cmの薬師さんは、かつて上丹生にあった長福寺の本尊だったと伝えられている仏像です。
均整の取れたお姿をされており、菅並の東林寺の観音菩薩立像と同様に地元の仏師によって造られたと推定されているようです。



須弥壇には厨子に納められた薬師如来の前に「日光・月光如来(平安期)」を従えた薬師三尊が並び、脇には「持国天」「多聞天」が御本尊を守護しています。
御本尊の薬師如来立像は建保3年(1215年)の銘があるといい、国の重要文化財に指定されている鎌倉期の仏像です。

また内陣の格子には「髪の毛」「箸」「穴あき石」などが奉納されていてこの地元に伝承されていた独特の風習が伺われます。
「髪の毛」は病気回復祈願の女性が自分の髪を切って奉納されたもので、「箸」は子供の歯が痛む時に借りて噛まして治ると12膳作って奉納する。

「穴あき石」は目・耳・鼻・口の病気、または願いが通じるように河原で穴のあいた石を拾って供えるという。
順番に内陣へ入らせていただくことが出来ましたが、中には懸仏が数多く掛けられていたのも特徴的です。
 


「上丹生薬師堂」は元は「医王山 長福寺」といい、隣にある「八幡神社」の神宮寺だったと伝わり、現在も隣り合わせの形で神仏習合した寺社となっています。
「茶わん祭り」の時には山車が八幡神社まで巡行してクライマックスを迎えるようです。



ところで、上丹生観音堂を拝観後はお昼になりましたので、菅並の妙理の里まで戻ってお弁当を買って食べる。
周辺は見渡す限り低山に囲まれ、横に流れる妙理川の渓流からの涼しい風を浴びながら、半ば遠足気分で食べるお弁当はごく一般的な弁当だったにも関わらずとても美味しく感じる。



通行止めになっている北へと向かう高架道路の上には望遠カメラ(大砲)を構えたカメラマンの姿。
猛禽狙いなのだろうと思いますが、ここは鳥見ポイントになっているのかも?



長閑な山里で食した昼食が終わり、再び妙理川に沿って下流にある上丹生の集落へと戻る。
妙理川には名も無き小さな滝がありましたが、山中には大きな滝があるかもしれませんね。





まさに日本の原風景が広がるような一帯に、地元の方が彫った仏像を祀り、守り続けられてきたのはこの地の人々の信仰心の厚さなのでしょう。
仏像は美術品という観点よりも、地元の方々の信仰の上に存在するものだと改めて感じられ、訪れたこちらの方も心が満たされる想いがします。




コメント
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