京都国立博物館には6200余件もの寄託品が収蔵されているといい、この度「ICOM京都大会開催記念 特別企画」として寄託品の中から選りすぐりの名品の展覧会が開催されました。
展覧会は『京博寄託の名宝 ─美を守り、美を伝える─』と題して“陶磁・考古・肖像画・仏画・中世絵画・近世絵画・彫刻・中国絵画・書跡・染織・金工・漆工”の名品が惜しげもなく展示。
タイトル冒頭の「ICOM(国際博物館会議)」とはミュージアムの進歩発展を目的とした世界で唯一かつ最大の国際的非政府組織とされており、1951年に設立されて3年に一度、大会を開催しているようです。
今年2019年は京都での開催であり、京博ではそれを記念して寄託品の展示会を開催したといいます。
国宝・重文・重美に指定された名品がそれぞれのカテゴリーに分けられた展示品の中でも、個人的に最も関心が高かったのが【彫刻:京都の仏像・神像】の展示室となります。
19仏24躰の仏像はほぼ国宝か重要文化財で、彫刻の展示室へ入ってすぐの場所には京都・浄瑠璃寺の「多聞天立像(平安期・国宝)と京都・光明寺の「千手観音立像(奈良~平安期・重文)」が安置。
浄瑠璃寺の多聞天は、京博に寄託されているため浄瑠璃寺へ行っても見ることの出来ない仏像ですので、ここで出会えたのは嬉しい。
また、光明寺の千手観音立像のお顔のふっくらとした穏やかな表情は平安初期の仏像らしい雰囲気が漂い、2躰とも実に秀逸な仏像です。
展示室の中央に並んでいるのは安祥寺の「五智如来坐像(平安期・国宝)」。
智拳印を組んだ金剛界大日如来像を中心とする5躰の仏像はライティングの良さもあって、その姿を間近に拝観するのは怖れ多いとさえ感じてしまう。
京都・妙博寺の「十一面観音立像(平安期・重文)は三井寺スタイルともいえるずんぐりむっくりした幼児体型の観音さまで愛着が持てます。
その隣に並んでいるのは念願の西往寺「宝誌和尚立像(平安期・重文)」。やっと拝観できた嬉しさと共に、その特異な姿に驚きを隠せませんでした。
京博での宝誌和尚立像は壺はお持ちではなく、胸の内側に寄せた手の位置が特徴的で、しばし佇んでその姿に見とれてしまいました。
その想定外なお姿から最も印象に残ったのは京都・盧山寺の「如意輪観音半跏像(鎌倉期・重文)」になります。
一般的には“繊細で思索に耽っているかのような顔にほのかな微笑みを浮かべた如意輪観音”とは全く違い、力強い姿をされ着衣のヒダは深く折り込まれたように彫られた、まさに強調とリアリズムの世界の仏。
さすが京博といった仏像が並ぶ中、清涼寺式の「釈迦如来立像(文化庁・重文)」や、爪楊枝より細そうな千体仏に囲まれた報恩寺の厨子入千体地蔵菩薩像(鎌倉期・重文)」など素晴らしい仏像が次々と登場する。
ところで「肖像画:京の古寺と大画面の肖像画」のコーナーに神護寺の「伝源頼朝像」と「伝平重盛像」がありましたが、最近になって小学校の頃から親しんできたこの頼朝は別人物だったといわれていますね。
聖徳太子も同様ですが、源頼朝の姿は子供の頃から頭の中に刷り込まれているので今さら変えることは困難です。
「染織:神・人・仏を彩る染織」では友禅染の「束熨斗文様振袖(江戸期・重文)」の金糸の刺繍で縁取りされた艶やかな振袖の美しさに思わずため息。
桃山時代のペルシャ生地の「鳥獣紋様陣羽織(豊臣秀吉所用)」も我々が抱いている秀吉の豪奢なイメージを増幅させるものでした。
会場の廊下では体験コーナーがあり、大垣市で大量に出土された銅鏡「三角縁神獣鏡」に触ってみようの企画があり、手袋をはめて触らせて頂きました。
この神獣鏡は出土品を3Dプリンターによって模型を作り、それを元に銅鏡として再現したもので凸状の鏡と美しい装飾から古代へと思いは飛びます。(実物の展示もあり)
企画があるとすぐに参加してしまうのですが、神獣鏡は1㌔ほどあってずっしりと重く、紋様の美しさもあって実にいい体験をさせて頂きました。
(参考)
「考古:寄託の国宝─出土遺物から」では、今宮神社の「千彫四面仏石(平安期・重文)」も展示されており、四面に線彫りされた珍しい仏石に魅力を感じます。
仏石には1125年の銘があるといい、疫病から忌避するために神を祀り、それでも救われない者は仏に祈るといった神仏習合の想いも込められて彫られたのでしょう。
「中世絵画:初期狩野派の名作」では狩野正信の「竹石白鶴図屏風」などの花鳥図・山水画・八景図が展示。
中世・近世の日本の絵画には鳥を描かれることが多く、絵の鳥をいちいち識別してみるのも一つの楽しみです。
「近世絵画:京都の寺院障壁画」では大迫力の海北友松の建仁寺「雲龍図」がやはり素晴らしい。
寺院用の御朱印を頂き始めた最初の御朱印帳は、建仁寺の雲龍図の御朱印帳が始まりだったので思い入れもある。
京博では膨大な数の国宝・重文の展示品を見ることができて堪能出来て名宝が頭の中を渦巻いていましたが、さらに京博から横断歩道を挟んで向こう側にある国宝の宝庫「三十三間堂」へも参拝致しました。
三十三間堂は仏像の配置変えがされてから初めての参拝となり、中尊の千手観音坐像の横に並ぶ婆藪仙人の姿が特に記憶に焼き付きます。
国宝・重文揃いの京博の収蔵品にはさすが古都の歴史ある博物館と感心しましたが、すぐお隣の滋賀県大津市の「琵琶湖文化館」は今後どうなるのでしょう。
国宝17点、重文89点、県指定文化財3475点を含めて総数約1万1千点の文化財を有するといいますが、既に休館されて11年になる。
本来は仏教美術・近現代美術・アールブリュットを中心とする「新生美術館(近代美術館)」へ移設予定だったのが整備計画は頓挫してしまいました。
このまま保管庫に眠らせてしまうのはもったいない仏像群を是非ともあるべき姿で公開していって欲しいと思います。
展覧会は『京博寄託の名宝 ─美を守り、美を伝える─』と題して“陶磁・考古・肖像画・仏画・中世絵画・近世絵画・彫刻・中国絵画・書跡・染織・金工・漆工”の名品が惜しげもなく展示。
タイトル冒頭の「ICOM(国際博物館会議)」とはミュージアムの進歩発展を目的とした世界で唯一かつ最大の国際的非政府組織とされており、1951年に設立されて3年に一度、大会を開催しているようです。
今年2019年は京都での開催であり、京博ではそれを記念して寄託品の展示会を開催したといいます。
国宝・重文・重美に指定された名品がそれぞれのカテゴリーに分けられた展示品の中でも、個人的に最も関心が高かったのが【彫刻:京都の仏像・神像】の展示室となります。
19仏24躰の仏像はほぼ国宝か重要文化財で、彫刻の展示室へ入ってすぐの場所には京都・浄瑠璃寺の「多聞天立像(平安期・国宝)と京都・光明寺の「千手観音立像(奈良~平安期・重文)」が安置。
浄瑠璃寺の多聞天は、京博に寄託されているため浄瑠璃寺へ行っても見ることの出来ない仏像ですので、ここで出会えたのは嬉しい。
また、光明寺の千手観音立像のお顔のふっくらとした穏やかな表情は平安初期の仏像らしい雰囲気が漂い、2躰とも実に秀逸な仏像です。
展示室の中央に並んでいるのは安祥寺の「五智如来坐像(平安期・国宝)」。
智拳印を組んだ金剛界大日如来像を中心とする5躰の仏像はライティングの良さもあって、その姿を間近に拝観するのは怖れ多いとさえ感じてしまう。
京都・妙博寺の「十一面観音立像(平安期・重文)は三井寺スタイルともいえるずんぐりむっくりした幼児体型の観音さまで愛着が持てます。
その隣に並んでいるのは念願の西往寺「宝誌和尚立像(平安期・重文)」。やっと拝観できた嬉しさと共に、その特異な姿に驚きを隠せませんでした。
京博での宝誌和尚立像は壺はお持ちではなく、胸の内側に寄せた手の位置が特徴的で、しばし佇んでその姿に見とれてしまいました。
その想定外なお姿から最も印象に残ったのは京都・盧山寺の「如意輪観音半跏像(鎌倉期・重文)」になります。
一般的には“繊細で思索に耽っているかのような顔にほのかな微笑みを浮かべた如意輪観音”とは全く違い、力強い姿をされ着衣のヒダは深く折り込まれたように彫られた、まさに強調とリアリズムの世界の仏。
さすが京博といった仏像が並ぶ中、清涼寺式の「釈迦如来立像(文化庁・重文)」や、爪楊枝より細そうな千体仏に囲まれた報恩寺の厨子入千体地蔵菩薩像(鎌倉期・重文)」など素晴らしい仏像が次々と登場する。
ところで「肖像画:京の古寺と大画面の肖像画」のコーナーに神護寺の「伝源頼朝像」と「伝平重盛像」がありましたが、最近になって小学校の頃から親しんできたこの頼朝は別人物だったといわれていますね。
聖徳太子も同様ですが、源頼朝の姿は子供の頃から頭の中に刷り込まれているので今さら変えることは困難です。
「染織:神・人・仏を彩る染織」では友禅染の「束熨斗文様振袖(江戸期・重文)」の金糸の刺繍で縁取りされた艶やかな振袖の美しさに思わずため息。
桃山時代のペルシャ生地の「鳥獣紋様陣羽織(豊臣秀吉所用)」も我々が抱いている秀吉の豪奢なイメージを増幅させるものでした。
会場の廊下では体験コーナーがあり、大垣市で大量に出土された銅鏡「三角縁神獣鏡」に触ってみようの企画があり、手袋をはめて触らせて頂きました。
この神獣鏡は出土品を3Dプリンターによって模型を作り、それを元に銅鏡として再現したもので凸状の鏡と美しい装飾から古代へと思いは飛びます。(実物の展示もあり)
企画があるとすぐに参加してしまうのですが、神獣鏡は1㌔ほどあってずっしりと重く、紋様の美しさもあって実にいい体験をさせて頂きました。
(参考)
「考古:寄託の国宝─出土遺物から」では、今宮神社の「千彫四面仏石(平安期・重文)」も展示されており、四面に線彫りされた珍しい仏石に魅力を感じます。
仏石には1125年の銘があるといい、疫病から忌避するために神を祀り、それでも救われない者は仏に祈るといった神仏習合の想いも込められて彫られたのでしょう。
「中世絵画:初期狩野派の名作」では狩野正信の「竹石白鶴図屏風」などの花鳥図・山水画・八景図が展示。
中世・近世の日本の絵画には鳥を描かれることが多く、絵の鳥をいちいち識別してみるのも一つの楽しみです。
「近世絵画:京都の寺院障壁画」では大迫力の海北友松の建仁寺「雲龍図」がやはり素晴らしい。
寺院用の御朱印を頂き始めた最初の御朱印帳は、建仁寺の雲龍図の御朱印帳が始まりだったので思い入れもある。
京博では膨大な数の国宝・重文の展示品を見ることができて堪能出来て名宝が頭の中を渦巻いていましたが、さらに京博から横断歩道を挟んで向こう側にある国宝の宝庫「三十三間堂」へも参拝致しました。
三十三間堂は仏像の配置変えがされてから初めての参拝となり、中尊の千手観音坐像の横に並ぶ婆藪仙人の姿が特に記憶に焼き付きます。
国宝・重文揃いの京博の収蔵品にはさすが古都の歴史ある博物館と感心しましたが、すぐお隣の滋賀県大津市の「琵琶湖文化館」は今後どうなるのでしょう。
国宝17点、重文89点、県指定文化財3475点を含めて総数約1万1千点の文化財を有するといいますが、既に休館されて11年になる。
本来は仏教美術・近現代美術・アールブリュットを中心とする「新生美術館(近代美術館)」へ移設予定だったのが整備計画は頓挫してしまいました。
このまま保管庫に眠らせてしまうのはもったいない仏像群を是非ともあるべき姿で公開していって欲しいと思います。