僕はびわ湖のカイツブリ

滋賀県の風景・野鳥・蝶・花などの自然をメインに何でもありです。
“男のためのガーデニング”改め

丹生谷文化財フェスタ~余呉町上丹生「源昌寺」~

2019-09-06 06:00:00 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 滋賀県の北部には「江州伊香三十三ヶ所観音霊場」という観音巡礼があり、今回の「丹生谷文化財フェスタ」では30番札所の「東林寺」と28番札所の「源昌寺」が開帳されています。
28番札所「源昌寺」には札所本尊の他にも、29番札所「西林寺観音堂」の御本尊も安置されており、西林寺の観音像は寺院が七々頭ヶ岳の山頂にあって御堂が老朽化しているため本尊を預かっているとのことです。

上丹生周辺にはかつて「養徳庵」「自在庵」「源昌庵」「清福庵」「永寿庵」「洞寿庵」の六ヶ寺があったといい、少しお金のある人が持つ私庵のようなものを持っていたと思われるといいます。
これらの小寺は経営難となって次々と廃寺になり、現在の「源昌寺」に統合されたため、源昌寺には各庵(寺院)にあった仏像が保管されているとのことです。



案内に従って、上丹生の集落を歩いて行くと「源昌寺」が見えてきますが、寺院というよりも民家のような造りになっています。
集落にある民家はどの家も間口が広く、蔵付きの家も多い。
“丹生”と地名に名が付くほどですから、かつては水銀などが採掘されて潤っていた地なのかとも思われます。



寺院に入って最初の間は田舎の民家に来たような雰囲気があり、近在に住む檀家の方らしき方が受け入れてくれます。
仏間へ入ると、2方向に向かって須弥壇があり、これは各寺院から預かった仏像があまりの多さからなのでしょう。



「江州伊香三十三ヶ所観音霊場」の28番札所「源昌寺」の御本尊は「薬師如来立像」で、秘仏本尊とお前立ちの2躰がある。
秘仏本尊は絶対秘仏となっており、お世話されている方も一度見ただけとのことでしたのでお前立ちを拝観する。



少しややこしいのは源昌寺の御本尊の薬師如来は、かつては丹生神社の神宮寺だった「中林寺」の観音像だったもので、昭和14年の「宗教団体法」により神社に仏像が置けなくなって源昌寺に移されたそうです。
承和2年(836年)伝教大師作との伝承があり、信ぴょう性はどうかと思いますが、東林寺や上丹生観音堂の仏像とは仏師も時代も違う仏像でした。



「江州伊香三十三ヶ所観音霊場」の29番札所「西林寺観音堂」の聖観音菩薩立像も須弥壇に並んで安置されており、こちらは木心彩色の仏像で中林寺(源昌寺)の仏像とは趣が随分と異なります。
西林寺は七々頭ヶ岳の山頂(693m)にある小堂だといい、この地域には菅並に「東林寺」、七々頭ヶ岳に「西林寺」、上丹生に「中林寺」と観音信仰の霊地が形成されていたようです。





須弥壇にはさらに福泉寺の「如意輪観音坐像」が祀られている。
横に“小谷如意輪観世音”とあるが、この小谷は余呉町の小谷のことと想像します。



もう片方の須弥壇には仏像が所狭しと安置されてあり、この仏像群はかつて存在した各庵から預けられたものなのでしょう。
それにしても現在はひっそりとした山里であるこの地域に、これだけの数の仏像を安置する庵があったとは驚くほかありません。



須弥壇の上には小さな「釈迦涅槃仏」も祀られています。
かつてどこかの庵で行われる「花まつり」に使われたものなのかと想像を膨らませます。



仏間の縁側に“壇”があり、桶が3つ置かれていたので不思議に思って聞いてみると“施餓鬼会で供物を供えるための桶なんですよ。”とのことでした。
片付けるのを忘れておられたようでしたが、庶民的な寺院にかえって安心します。

滋賀県の最北部にかくれ里のようにして存在する丹生谷には自然に対する信仰・仏像を守り続ける人々・神事や祭りを続けようとしている方々がいる。
山里の良さに溢れんばかりの魅力のある地域だと感じつつ、「丹生谷文化財フェスタ」を後にする。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする