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縄の中央にはトリクグラズという魔除けや祈祷札を呪物として吊るすことが多く、地域によって若干似た傾向は見られるものの、集落ごとにその形状は違い独特の造形のものとなっています。
勧請縄は滋賀県では湖東地方や湖南地方に集中しており、湖北地方ではほぼ見ることはなく、地域に伝わってきた信仰や民俗行事には大きな違いがあるようです。
しかし、勧請縄を吊るす集落は年々減少してきており、現地を訪れてももう中絶されてしまっていることが多々あり、いつまでも見られる行事ではなくなりつつあります。
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野洲市の市三宅の「屯倉神社」は、現在は「三宅」としていますが、神社は「屯倉」の文字となっています。
「屯倉」はヤマト王権の支配制度のことですが、「屯倉」「三宅」の文字を使っているということは古代においてヤマト王権と何らかの関わりがあったのでしょうか。
「屯倉神社」の由緒には“欽明天皇十一年に勧請された...”とありますから、ひとつの裏付けにもなります。
野洲には複数の古墳群や、その前時代の銅鐸などが多数発見されている地ですので、古墳時代の有力豪族と「屯倉」の関係も興味深い。
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「屯倉神社」の勧請縄は、鳥居を抜けて続く道幅の広い参道一杯に吊るされてとても長い主縄となっている。
主縄は縄ないで作られたものではなく、機械縄のため細く整ったものとなっており、かつては小縄が左右12本づつ吊るされていたようですが、現在は榊と紙垂だけが吊るされている。
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中央に下げられたトリクグラズはサイズが大きく、割竹で割目を2枚編んでその間にスギの葉が挟み込まれている。
トリクグラズの中心には丸い輪を前後に付けて、割目でとめているように見えます。
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過去に撮影された 「屯倉神社」の勧請縄とは少し変化があります。
変化点は、割竹が外側も内面も着色されており、あぶみ状に結った縄にサカキを付けた小縄がなくなったことがあり、手間がかからないよう縮小されているように感じます。
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「屯倉神社」では毎年8月に「野神まつり」が行われ、「野神さんの子供相撲」という神事が行われるという。
500年以上昔、境内で子供たちが相撲をとっているのを、御神木の銀杏の木から見ていた神様が、褒美をあげようと申し出たところ、子供たちは日照りで田畑の作物が枯れているので雨が欲しいと申し出た。
すると翌日に大雨が降り作物が生き返ったといい、本殿の前には現在も銀杏の木が御神木として祀られて、氏子の方々を見守っています。
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「野神さんの子供相撲」は雨乞い神事ということになり、拝殿の前には結界を張られた土俵を祀る場所があります。
子供相撲の時には、ここに土を盛り徳俵で土俵を作り、相撲やぐらを設置した土俵で5歳から14歳までの子供が相撲を奉納するといいます。
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屯倉神社の御祭神は日本武命と大己貴命の2柱で、境内社として大神宮社・日吉神社・門神社を祀ります。
市三宅は野洲川の河川に沿った場所にあり、野洲川の氾濫で作られた肥沃な土壌があったと思われる反面、洪水の被害もあったのかと想像します。
新興住宅や工場などが誘致されている地域ではありますが、勧請縄や野神さんや子供相撲の信仰が今も継続して続いています。
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次に昨年に引き続き行畑の「行事神社」に参拝しましたが、車両の走行の多い道路からでも一際目立つトリクグラズの付けられた特徴的な勧請縄です。
行事神社は724年、御上神社の神託を受けた三上宿禰海部廣国が勧請したのが最初とされ、「三上別宮」とも称されることから三上山を御神体とする御上神社との関係が伺われます。
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勧請縄は境内の参道に道切りのように吊るされており、長い小縄はカシの葉を下げたものを左右に6本づつ下げてあり、小縄には枝が挿されて幅広くした形で吊るされています。
トリクグラスの光を感じる神々しさもあって、まさに悪いものを聖域に寄せ付けない結界といえます。
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トリクグラズは細長く切った竹を24本、放射状に組み格子の真ん中に丸を入れて、中心には「上」と書いた木札を取り付けてあります。
神社に初詣にいった時に買う「御神符」もお札の入った袋には「上」と書いてあり、この「上」とは“つつしんで、ささげます”という意味があるそうです。
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行事神社は祭礼日だったようで数名の方が掃き掃除やお焚き上げするなど慌ただしくされており、本殿前には床几が並べられていました。
なんの祭礼なのかは不明でしたので、とにかく作業の邪魔にならないよう挨拶をしながら参拝させて頂きました。
境内にはかつての御神木と思われる木の根が玉垣に囲まれて残されていました。
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行事神社の御祭神は金山毘古神、境内社に八幡宮と春日神社をお祀りし、拝礼の順番も決められています。
境内は掃き清められ、本殿だけでなく拝殿や社務所も立派なものとなっており、清々しく感じるのは氏子の方々の信仰ゆえにということでしょう。
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神社の鳥居を出ると道筋には鎌倉期の石仏とされる「背くらべ地蔵」と「阿弥陀如来立像」の2躰が祀られている。
2躰の石仏は中山道を行き交う人の道中を護ったとされます。
当時は乳児がよく死んだので「我が子もこのお地蔵さんくらいになれば、あとはよく育つ」と背くらべさせるようになったとの伝承が伝わるそうです。
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