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左京区岡崎界隈には平安神宮などの歴史スポットや複数の美術館・動物園が隣接していますので人・人・人の渦にすっかりのまれてしまいましたよ。
目的は「ルネ・、マグリット展」を見ることだったのですが、入場券を買うまでの行列からして既に長い。最後尾の看板を持って案内に立つスタッフがいましたが、待ち時間まで掲示している美術展は記憶にないな。
京都市美術館では「ルーブル美術館展 日常を描く-風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」も別窓口で同時開催されていましたが、そちら側の列はもっと長く、クネクネと行列が折れ曲がって並んでおられましたよ。
ユニバの人気アトラクションにでも来たみたいな感じでね
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さて、美術展はマグリットの作風の変化を時代別に「第1章:初期作品」「第2章:シュルレアリスム」「第3章:最初の達成」「第4章:戦時と戦後」「第5章:回帰」と分類した分かりやすい構成にはなっていたものの、“難解な画家やなぁ”というのが実際の感想でした。
美術展の各所にコンセプトを説明する“説明書き”がありましたが、難解な美術論を聞かされているいるような内容で悩ましい。
横にいた女性グループも“これは和訳がおかしいの?意味が全然分からない”と頭をひねって考え込んでおられた様子でしたよ。
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《ピレネーの城》(ポストカード)
美術館へ行く前には、マグリットはベルギー出身のシュールレアリストで一部の代表作をネット等で見た程度の雑な知識しかなかったんですが、実際に130点にも及ぶ作品を一気に見ると、あまりの作風の変化にも悩まされてしまうことになりました。
ただし、ダダイストやシュールレアリストなどのアーティストにありがちな(精神まで)異質な人といった印象はなく、観念的であり逸脱しそうではあるけど逸脱はしない作品とも受け取れます。
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《恋人たち》(ポストカード)
上の「恋人たち」はかなりインパクトのある作品で説明によると、“マグリットが14才の時に入水自殺した母親が発見された時に顔にガウンが巻き付いた状態であった”ことへのトラウマが窺われるとされています。
マグリットは作風が確立した時代以外に初期のキュビズムの影響のある作品・シュールレアリズムの作品、後期のルノワールの影響(戦時下の影響)など作風が激しく変わりますが、シュールレアリズム時代のこの絵からは少しだけ人の部分が見えてくるようにも思えてきますね。
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《陵辱》(ポストカード)
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この絵は“偏執狂的な性的欲望を描いた”と言われていますが、ある意味で遊び的なものも感じられるような気がします。
有名なシュールレアリズムの言葉にロートレアモンの「手術台の上で・・・・・」ってのがありますが、“異質な物の出会いは脅威や驚きではなく笑いだよ”とでも言ってみたくなる感じで、ディープな欲望みたいな印象はあまり受けなかったな。
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《傑作あるいは地平線の神秘》(ポストカード)
「傑作あるいは地平線の神秘」は謎かけのような絵。“3人が月のことを考えれば3者3様の月が存在する(月はその人のものになる)”とされています。
こういうシルクハットの紳士が出てくる絵がいくつかありますが、マグリット自身のポートレートもこんな姿の写真が見られますね。
そんな感じの悩ましい状態で全作品を見終わりましたが、美術展に行くとよく買う展覧会の図録の購入を今回は見送って分かりやすそうな入門書を入手しました。
まだ読み切ってはいないのですが、“展覧会の会場で見た絵の印象”と“日が経ってから本で見る絵の印象”って随分違って見えるように思います。記憶に残るイメージってのは曖昧なもんなのですね。
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...ということで京都市美術館の建物を出て振り返ると入場口が入った時とは比べ物にならないくらいの長い列になっている。
“あの人たちはいつ入れるのやろな”と思いつつ、最寄りのJRの駅まで戻って立ち食いのケツネウドンをすする。
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