オフロードタイヤ
SX125R。
左は以前履いていた、ダンロップのD603、右は今履いている、ダンロップのD604。
603は、かなり目の粗いイボイボタイヤで、いわゆるオフロード向きのタイヤ。モトクロスタイヤに近いデザインで、泥はけが良く、不整地で滑りにくいが、舗装路では逆にイボの歪みで滑ったりする。特に濡れた舗装路には弱い。舗装路ではイボの発する騒音も大きいし、転がりも重く、摩耗も早い。
604は、オンロード向きのオフタイヤと宣伝されているが、実際は、サイズ的にオンロードタイヤが選びにくいオフロードバイク用の、オンロードタイヤだ。見てのとおり、イボイボブロックではない、深溝タイヤだ。ラリーレイドイメージと言えなくもないのかな。舗装路なら、濡れていようが、ブーツを擦るくらいバイクを寝かせても普通に走れる。非舗装路も、極端なぬかるみででもなければ普通に走れてしまうし、ぬかるみだってまったく無理ということもない。走行音は静かで、転がりも軽い。
オンとかオフという表現をするけど、要するに舗装路がオン、非舗装路がオフ、という程度の使い分けのようだ。
細かいことを言えば、非舗装路も道路だから、そこを走ればオンザロードだし、路外であれば、舗装されていようがオフザロードなのだが。
日本の道は、舗装が進んでいる。
平成16年の調査では、最も舗装率(道路の舗装されている延長÷道路の総延長)の高い大阪府で95.2%、最も低い岩手県で58.2%らしい。わが北海道はブービーで、62.7%だった。
そのデータは全ての道路に対するものなので、国道及び都道府県道に限れば、舗装率は全国で97%にものぼる(国交省 道路統計年報による)。
こうなると完全舗装と言ってもいいレベルなので、よほどの裏道ソマ道をわざわざ探しでもしない限り、非舗装路を走るチャンスはほぼ皆無だろう。
したがって、オフロードタイヤを公道で履く必要性もまた、ほぼ皆無だ。
仮に非舗装区間に遭遇したとしても、オフロードタイヤでなければという必然性はない。30年や40年前は、どこにも非舗装路があって、みんなそこを普通のタイヤで普通に走っていたのだから。
オフロードタイヤは、もはやレースのような本当に路外の不整地走行にしか必然性を見出せない。それでも新車に標準で履かされているのは、たぶん「そのほうがオフ車っぽいから」というだけのことだろう。
困るのは、そのような市場ができあがってしまっているためか、オフロードタイプのバイクに合うオンロードタイヤの選択肢が、極端に少ないのだ。
ジープのゲタ山も然り。ましてやマッドナントカみたいなイボイボタイヤを普通に履くメリットは、自己顕示欲を満たす以外、一切ない。むしろ、やかましい走行音は迷惑だし、一般に燃料も食ううえ、操縦性も劣悪だ。
バイクは、車体形状と体格が乗車姿勢に直接関係する。だから、たとえ舗装路を走るためでも、オフロードタイプの車体のニーズはある。たとえば俺のように、深く腰掛ける姿勢が辛い者には、ハーレーみたいなのは長時間だと無理だ。
一方クルマはどうか。舗装路を走る乗り物として、いわゆるエスユーブイは無用だろう。無意味と言ってもいい。いわんやオフロードタイヤをや、だ。
ジープの場合、クラシックカーとしてのオリジナリティを保つという意味では、ゲタ山もありかもしれないが、まあ、イベントとかショーのときだけにしとくのが大人の良識かもしれない。実際、実用にゲタ山を履いていたこともあるが、うるさすぎて疲れてしまった。
オフロードタイヤは、いわば、スポーツのユニフォームのようなものだろう。本当に必要なシーンでしかサマにならない。街中でイボタイヤ履いてるのは、ゴルフ服でその辺うろうろしてるオッサンみたいなもんかな。うわ、そう考えたら、なんかものすごくカッコわり。
まあ、ヒトが何履こうが好きずきだし、知ったこっちゃないが、俺はもうオフロードタイヤは履かないだろう。恥ずかしいし。