ヤスミナ・カドラ「テロル」(早川書房)を読んだ。
本の裏表紙には、
「イスラエルの都市テルアビブに瀟洒な家をかまえるアラブ系の医師アーミンは、最愛の妻シヘムとともに幸福な生活をおくっていた。
だが、あの自爆テロがすべてを変えた。19名の犠牲者。その中にシヘムがいたのだ。呆然とするアーミンに刑事は衝撃的な言葉を吐く。「テロの首謀者はあなたの妻だ」
妻は妊婦をよそおって爆弾を腹に抱え、自爆したという。なぜ彼女がそんなことを・・・・・。
アーミンは真相を探る(以下略)。」
とある。
著者のヤスミナ・カドラは、アルジェリア軍の将校時代から女性名で話題作を発表し、フランスに亡命し、本書を2005年に発表。イスラムの声を伝える国際的作家だそうだ。訳者は藤本優子。
刑事は、「原理主義者がカミカゼを決行した」という。神風特攻隊も自爆テロの一種と考えられているのだろうか。テロとは何なのだろうか。テロの定義は?
初代韓国統監伊藤博文を暗殺した安重根は、「抗日闘争の英雄」として韓国では尊敬されているという。ナチと戦ったレジスタンスと、パレスチナのテロリストとの差は、相手が軍人と民間人であることだけなのか。
強大なイスラエルに対しはテロしか対抗手段がないのだろう。しかし、子供たちのいるところで自爆するとは・・・・。
「本当にテロしかないのか?なぜ残忍な行為にまで追い詰められてしまうのか?軍事力が強いと強圧的手段でテロ防止できると思っているのか?」など、結局この本を読んでも私の疑問はより大きくなったままだった。
主人公の父親の、「おまえの命以上のものなど何一つ存在しない。おまえの命にしても、他の者の命以上のものではない」と言う言葉が出てくる。また、イスラエルにも報復の繰り返しでは解決への道が見えないと考える人もいる。これらに期待するのも、厳しい現実の前ではただの幻想に思える。
イスラエルや、ブッシュ嫌いの私だが、熱狂的なイスラム教にもとてもじゃないが賛成などできない。思いはちぢに乱れるばかりなり。