hiyamizu's blog

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「<スピリチュアル>はなぜ流行るのか」を読む 

2007年10月22日 | 読書

「スピリチュアル」という言葉を最近聞く事が多い。日本でも、海外でも時代の流れの一つになっているようだ。たまたま、カナダ・バンクーバー滞在中にもヨガと結びついたかたちのスピリチュアルの話題が何回かでた。
神秘的なことは嫌いで、宗教に逃げたくないと思っている私は、スピリチュアルに偏見がある。
そこで、この「<スピリチュアル>はなぜ流行るのか」磯村健太郎 PHP新書451を読んでみた。


著者は元朝日新聞の事件記者で、身近な社会的話題も盛り込みながらの説明はわかりやすく、宗教・心理・社会学の最新研究にも触れている。スピリチュアルの概念があいまいで幅広いだけに明解とは言えないが、スピリチュアルの大枠が理解できたような気がした。また、宗教、ニューエイジ、エコロジー、セラピー、江原氏の「スピリチュアル・カウンセリング」との関係性も個別、具体例の紹介が多いが、感覚的には理解できた。

以下、(  )は私の感想で、それ以外は本書からの一部、簡単化した引用である。

スピリチュアルとは?
スピリチュアルについて、研究者の定義はわかりにくいが、名詞形のスピリチュアリティ spirituality とは、
(1)宗教の教えはかならずしも必要とせず、その人が体験したものこそが重視される。
(2)いわば超越的な次元にある「なにか」とつながる感覚。
(3)自己がなんらかのかたちで変容するような感覚をともなう。

(と言うことで、なんらかの超越的な存在と、それとつながる感覚のことだ。もっと、簡単に言うと、「目に見えない何かとつながる感覚」ということらしい。)

なぜ今、スピリチュアルなのか
宗教の役割が希薄になった日本で、「癒されたい」「救われたい」「つながりたい」という声なき願いに応えてくれる存在が求められている。

何かの宗教を信じている20代の若者は7%しかいないが、神や仏が存在すると思う人は33%で、なんとも言えないが30%。「宗教的なもの」を信じる若者はけっこう多い。
宗教はスピリチュアリティを根幹に持ってはいるが、その用意された世界観にリアリティをもてない人が増えている。また、宗教は個人をなにかと拘束するという印象がある。

日本の若い世代は、どこかうつろだったり、なにかにむかついていたりする。<私>とは?その意味を求めて漂流している。かっては宗教だったが、今は「宗教的なもの」に求める。

ブログ同士でスピリチュアルなつながりが生まれることがある。家族などとの固く結ぶ「絆」から自分でスイッチをON/OFFできる「つながり」へ移っている。

成熟社会では、どうゆうわけか存在してしまっている<私>というできごとそのものが個別的説明を必要としている。<私>こそが切実な「意味の欠如」であり、「いわれなき苦しみ」となる。スピリチュアルな感覚は「私という出来事」についてなにかを示唆するように受け止められる。理性ではなく、むしろ感覚によって。

現代の人々の関心は、宗教からセラピーへ、言い換えれば救済から癒しへ移っている。

(私について言えば、単純な理系頭であり、超越的存在、超自然的な力を信じない。もちろん、ありえないと証明はできないが、圧倒的にいんちきが多いことも知っているので、目の前で見てもにわかに信じない。なにしろ、奇跡は手品でも起きるのだから。したがって、入口でスピリチュアルに入れない。)


関連の動き
ニューエイジ New Age movement:米国で70年代以降に広まったスピリチュアリティを重んじる信念や実践。小さなグループがゆるやかなネットワークでつながっている。グループは基本的に出入り自由。汎神論的。瞑想、ヨガ、心理的技法を使ってこころの成長や意識の変容を目指す。

インナーチャイルド:あなたが神や宗教を信じていなくても、インナーチャイルドはそうした偉大ななにかを信じているものです。小さな子どもというものは、未知の力や神秘的な力をごく自然に受け入れるものだからです。こうした未知の、あるいは神秘的なものに対する祈りは、傷ついたインナーチャイルドを力強く守ってくれる効果があります。

江原氏のような「スピリチュアル・カウンセリング」は、(  )内は臨床心理学用語
(1) 霊視により、相談者は江原氏に急速に信頼をよせる(ラポール=信頼関係形成)
(2) 問題の遠因を過去の失敗・喪失・被害にもとめる(トラウマ理論)
(3) 問題を問題として感じている「ものの見方」そのものを変える(リフレーミング)

(ロハス、スローライフ、ガイヤなどとの関連も語られるが、いずれも特定の団体についての話の紹介に留まり、分析は十分ではない。)

(スピリチュアルの今後については、著者は「ケア」との関連に注目しているが、説得力はいまいちである。)



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