hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

「ルポ 貧困大国アメリカⅡ」を読む

2010年07月23日 | 読書2

堤 未果著「貧困大陸アメリカⅡ」岩波新書1225、2010年1月、岩波書店発行を読んだ。

著者の前著『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)が刊行された2008年秋にリーマンショック、経済危機が起こり、その後希望の星オバマの政権が誕生した。生活現場の声を取材した結果は、教育、年金、医療、そして刑務所までもが企業の論理で商品化され、貧困が拡大し、なにかあると中間層が社会の底辺へ直結し、再び立ち上がれない。それが現在ののアメリカ社会だという。
大企業の高額な政治献金が議員をあやつり、オバマになっても、なんにも社会は変っていないという。

第1章 公教育が借金地獄に変わる
大学も企業経営の利益追求の場となり、有名教授を集めるなど学費を増大させた。公立大学の学費は1995年から10年で59%も上昇した。一方、公的奨学金は企業の学資ローンに押しまくられて縮小する。学資ローン業界が政治家を動かし、学資ローンは消費者保護法からも除外され自己破産もできない。

第2章 崩壊する社会保障が高齢者と若者を襲う
もともと小さな公的年金が企業年金の拡大で縮小した。その企業年金も、最終的な給付額が本人の自己責任になる確定拠出型が主力になり、弱者にますます厳しい。

第3章 医療改革vs.医産複合体
貧乏人はますますひどい医療しか受けられなくなってきた。オバマの目指した単一支払い皆保険は、医療保険業界と製薬会社により潰されて、公的保険+民間保険にすりかわった。貧困層だけでなく中間層へも危険が迫っている。

第4章 刑務所という名の巨大労働市場
刑務所での労働の時給は40セントで、部屋代と医療費が一日2ドル引かれて赤字がたちまり返済不能な額まで膨れ上がった。企業も第三世界よりもローリスク・ハイリターンの囚人労働者に目をつけている。民営刑務所は軍需産業やIT産業と並んで人気上昇中の投資先だ。利益を増大させるために、ホームレスがどんどん刑務所に送られている。



堤 未果(つつみ・みか)は、東京生まれ。
ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号取得。
国連婦人開発基金(UNIFEM)、アムネスティ・インターナショナル・NY支局員を経て、米国野村證券に勤務中、9・11同時多発テロに遭遇。
以後、ジャーナリストとして各種メディアで発言。執筆・講演活動を続けている。
著書に、本書の前編である『ルポ 貧困大国アメリカ』(日本エッセイストクラブ賞、新書大賞2009受賞)
『グラウンド・ゼロがくれた希望』、『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』(黒田清・日本ジャーナリスト会議新人賞)、『アメリカは変われるか?』など。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

アメリカの負の情報はよく聞こえてくるようになったが、これほどひどいとは思わなかった。意見がほぼ自由に言えるアメリカがこんな状態のままで進むはずかないとも思う。ひどい話だけ集めたのではないかとの疑いも残る。
ルポという形なので、個別の例だけで,統計などマクロに見たデータも同時に示してもらわないと、全体像が見えない。
いずれにしても、日本でも福祉重視の声の一方で、いぜん市場原理、グルーバリゼーションが叫ばれている現在、豊かなアメリカの一断面を是非知るべきだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする