道尾秀介著「鬼の跫音(あしおと)」2009年1月、角川書店発行を読んだ。
webKADOKAWAにはこうある。
本書『鬼の跫音』は、道尾秀介初の短編集。・・・
著者は動画インタビューの中で、長編は登場人物間の関係で制約を受けるが、短編はやりたい放題にできると語っている。
初出:野性時代(角川書店)2006年12月号~2008年5月号に不定期掲載されたものに加筆・修正を加えました。
狂気に基づく猟奇的な6つの短編。怪談話のように恐怖をあおる演出、狂気がいや増す男や女。確かに、著者が言うように、短編だからこそ一つのトリックが鮮やかに光る。
鈴虫:妻の元恋人Sが崖の下に落ちて(落とされて)死ぬ。そして死体を埋めたのは・・・。その時侘しげに鳴いていた鈴虫の声が思わぬところで聞こえる。完全犯罪をよそおった不完全犯罪。
犭(ケモノ):家族の中で一人惨めな立場にある青年が偶然椅子を壊す。受刑者が作った椅子の足に書いてあったメッセージの謎を解こうと、かって猟奇事件が起こった福島の村を訪ねる。惨めな上に悲惨となる最後は必要なのだろうか。
よいぎつね:よい狐の祭りの夜に悪友にそそのかされて殺人を犯した私は、20年ぶりに戻った現地で、死体を埋めたのは誰か、夢か現実かも分からなくなる。
箱詰めの文字:作家の家に泥棒に入ったという青年が返しに来たのは、見たことない招き猫だった。その中には作家を破滅に追いこむメッセージが。
冬の鬼:1月8日から始まり1月1日に終わる日記を過去に遡りながらたどる。愛し、愛される人と幸せに暮らしているが、一つだけ違和感があり、その解消を1日に図る。
悪意の顔:陰湿ないじめを繰り返す同級生。人をその中に取り込むというキャンバスを持つあやしい女性。二転三転し、結局ハッピーエンドかと思いきや。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
意外性にあふれたサスペンスでミステリー。ストーリーのひねり方は見事で面白いが、あまりにも暗い結末ばかりだ。こうだろうと思う話を途中でひっくり返して驚かせる。作者の思うがままに操られているようで、6編も続くといやになる。伏線を入れておけば、いくらでも意外な展開にできるんじゃないのかと負け惜しみを言いたくなる。
また、ハッピーエンドとはいかなくとも、なんで最後で必ず暗く悲惨な結末にもっていくのか。
道尾秀介の略歴と既読本リスト