hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

道尾秀介「カラスの親指」を読む

2010年07月08日 | 読書2


道尾秀介著「カラスの親指 by rule of CROW’s thumb」2008年8月、講談社発行を読んだ。

主人公の「タケさん」こと武沢竹夫は、機械工具メーカーの営業マンで妻と娘の三人で暮らしていた。ところが、妻と娘の不幸な死と同僚の借金の肩代わりから闇金融に巻き込まれ、自身もアコギなことをして心に傷を負う。いまはケチな詐欺師に落ちぶれた彼のアパートへ、これも借金から悲惨な運命に落ち込んだ鍵屋のテツさんが転がり込む。そこに一人の少女が舞い込み、やがてさらに同居人が2名加わり、奇妙な共同生活が始まる。復讐し、過去と訣別するため、彼らは大計画をたてる。

日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞した作品で、作者の道尾秀介は『光媒の花』で山本周五郎賞受賞し、今直木賞候補にあげられていて売り出し中の有望新人だ。

初出:小説現代特別増刊号「メフィスト」2007年9月号―2008年5月号



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

闇金にどんどん追い詰められていく描写がリアルで読んでいるだけで息苦しくなる。さらに、キャラが立った5人の変わった共同生活が面白い。初めて知り合ったような他人同士のお互いの関係が微妙で、それでいてバランスが取れている。

後半は漫画のように強引な筋立てで、面白いのだが荒っぽさが目立つ。そして、最後の30ページほどで、都合の良すぎる偶然の出会いなどの謎が明かされ、大どんでん返しになる。この仕掛を何となく予想していた私でも、なかった方が良かったとの思いも残る。

私は、道尾秀介のどうでも良いような小道具が好きだ。
「テツさんの偽名、石霞英吾は、isigasmi。逆さから英語で読んで、アイム・サギシ」
「テツさんが、質屋を騙したときに名乗った名前は小野無斉ONOMUSAY。やすもの」
「鍵屋のテツさんが開錠を頼まれた家に行き、美しい女性に一目惚れし、生まれて初めて女性に声をかけた。『お住まいはどちらなんですか?』」
「親指がお父さん指、人差し指がお母さん、中指はお兄さん、薬指はお姉さん、小指は赤ちゃん。お母さん指は赤ちゃん指とだけ、くっつきにくい。しかし、お父さん指とお母さん指を付けて、赤ちゃん指にくっつけると、簡単につく。両親そろっているのが一番」



道尾秀介の略歴と既読本リスト




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