hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」を読む

2010年07月06日 | 読書2

辻村深月著「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」

育った地元の企業で契約社員になったチエミは、地味で合コンでも目立つことなく未婚のまま両親と暮らす。一家はいまどき奇妙なくらい仲が良い。
幼馴染のみずほは、勉強もできて東京の大学に行き、一度故郷に帰るが、再び東京に出てフリーライターとして頑張っている。理解ある夫と結ばれたが、幼い頃厳しかった母親との確執から実家に帰ることがない。
都会で結婚したみずほと地元で未婚のチエミ、二人はいつのまにか離れた道を歩くことになっていた。しかし、警察の手を逃れ失踪することになったチエミの居所を、みずほは地元のかっての合コン仲間を訪ね、チエミに何が起きたのかを探り続ける。

講談社の本書宣伝のHP
辻村さんへのインタビュー(動画)


酒井順子さんの「負け犬の遠吠え」を読んだんです。・・・文庫版には林真理子さんが解説を書いているんですが、それを読んで「あっ」と思ったんです。「ワイドショーで、チャリンコにのったボサボサ髪の主婦が、『私たち勝ち犬は』と言うのを聞き、それこそヒッと叫んだことがある。」と。酒井さんが考える勝ち犬はそうした主婦たちではない、ここで書かれている「負け犬」とは地方で事務服を着て仕事している女子たちではない、と。私は昨年まで兼業作家で、地方(山梨)でまさに制服を着て事務職をしていたので、この言葉はとてもしっくりきました。・・・
女子の息苦しさ。特に「地方負け犬」という観点で考えるうちに、女として切実な「格差」の存在にぶつかりました。東京と地方、モテる、モテない。それと無視できなかったのが「母娘」の関係です。・・・私は小説としての結論を書きたかった。で、「母親殺し」の物語を書こう、と一年かけていろいろ試行錯誤しました。





私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

地方の田舎住いで、婚活に必死になり、母親との関係で悩む女性たちの気持ちがよくかけており、縁のない私にはなるほどと面白かった。いつのまにか拓いていく差、女性の見栄、狭い世界、そして仲が良すぎてべったりした母娘、逆に厳しすぎて溝が深くなる母娘。

失踪したチエミをたどりながら、疎遠になった何年間の空白を解いていく経緯は、多少冗長だったが、わけの分からないタイトルの意味が解ったときは、衝撃だった。


辻村深月(つじむら・みづき)の略歴と既読本リスト






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