hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

平野啓一郎『かたちだけの愛』を読む

2011年06月06日 | 読書2
平野啓一郎著『かたちだけの愛』2010年12月中央公論新社発行、を読んだ。

「美脚の女王」と呼ばれ、すべて美しく特徴がない女優、叶世(かなせ)久美子。離婚したばかりで、一部で高い評価を受けるインダストリアル・デザイナー、相良(あいら)郁哉。会社の前で交通事故が起き、相良は叶世を助けだすが、彼女は片足を失う。相良は人も羨むような彼女の義足を作ろうとする。彼女は絶望の中で、元の恋人の強引さに振り回され、やがて二人は・・・。

たちの悪い恋人から自分を奪ってくれることで愛を確かめようとする彼女。彼女と居るときの自分が好きだと気づき愛を確認する彼。愛の形を求め合う恋愛小説だ。

「『恋』は刹那(せつな)的に相手を求めること。でも『愛』はいったん結ばれた関係を持続させることで、時間的な長さが求められる」
「人のおかげで自分を好きになるし、自分を好きにさせてくれる相手をまた好きになる。他者との関係が循環的に持続していくから、夫婦愛だけじゃなく親子愛や師弟愛にも適用できる。人が亡くなるときの悲しさも、その人と一緒にいるときの“好きな自分”をもう生きられないことから来ているのだと思う」

産経のインタビューに著者平野啓一郎は、こう語っている。

この作品は、「読売新聞」夕刊2009年7月から2010年7月連載に加筆修正したものだ。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)


新聞小説だからだろうか、平野啓一郎らしからぬ風俗小説だ。
スキャンダルまみれの女優、愛人はガラの悪い道楽息子。写真家やファッション・デザイナーも登場し、車は大蛇、ハマー、ホテルはコンラッド東京、クライマックスがパリコレ。インダストリアル・デザインや義足に関してウンチクはあるが、どこにでもある小説になっている。
愛の形についても、特に深い考察や、なるほどと思う出来事、会話があるわけではない。


コメント
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